2.8. クラスタリングと高可用性
このセクションでは、Red Hat Enterprise Linux 6 と Red Hat Enterprise Linux 7 との間でなされたクラスタリングおよび高可用性の変更の概要について説明しています。
2.8.1. Luci 置換制限 (pcs)
Red Hat Enterprise Linux 6 では、luci
が Red Hat Enterprise Linux 5 と Red Hat Enterprise Linux 6 の両方の高可用性クラスターを制御していました。
Red Hat Enterprise Linux 7 では、pcs
に置き換えられ、luci
は削除されました。pcs
で制御できるのは、Red Hat Enterprise Linux 7 の Pacemaker ベースのクラスターのみです。Red Hat Enterprise Linux 6 rgmanager ベースの高可用性クラスターは制御できません。
2.8.2. Piranha に代わる Keepalived
Red Hat Enterprise Linux 7 の Load Balancer Add-On には、keepalived
サービスが追加されました。このアドオンにより、piranha
で使用可能な機能および追加機能の両方が提供されます。したがって、piranha
は、Red Hat Enterprise Linux 7 の keepalived
サービスに置き換えられました。
併せて、設定ファイルとその形式が変更になりました。keepalived
は、デフォルトで /etc/keepalived/keepalived.conf
ファイルで設定されます。このファイルで使用する設定フォーマットおよび構文の詳細は、keepalive.conf
の man ページに記載してあります。
$ man keepalived.conf
2.8.3. オンライン移行の制限
Red Hat Enterprise Linux 6 から Red Hat Enterprise Linux 7 へのオンライン移行では、クラスターがサポート対象外となっています。
また、Red Hat Enterprise Linux 6 の高可用性スタックは、Red Hat Enterprise Linux 7 の高可用性スタックと互換性がありません。したがって、Red Hat Enterprise Linux 6 から Red Hat Enterprise Linux 7 への高可用性クラスターのオンライン移行はサポートされていません。
2.8.4. 新リソースマネジャー (Pacemaker)
Red Hat Enterprise Linux 7 では、rgmanager と cman が、pacemaker および corosync に置き換えられています。
Pacemaker は、多くの便利な機能を持つ高可用性リソースマネジャーです。
- マシンおよびアプリケーションレベルの障害を検出して回復。
- 多くの冗長設定をサポート。
- 定足数およびリソース駆動型クラスターをサポート。
- クォーラムが失われる場合の処理に対する設定可能な戦略 (複数マシンの失敗時)。
- アプリケーションがどのマシンにあるかに関わらず、アプリケーションのスタートアップおよびシャットダウンの順位付けの指定をサポート。
- アプリケーションが同一マシンで稼働する必要があるかないかについての指定をサポート。
- アプリケーションを複数マシン上でアクティブにすることの指定をサポート。
- マスターやスレーブのようなアプリケーションの複数モードをサポート。
- どの失敗やクラスター状態にも立証可能な正しい反応。
- 状況が発生する前に、その状況に対する反応がオフラインでテスト可能。
Pacemaker の詳細については、高可用性アドオンのドキュメントを参照してください。
2.8.5. 新機能: リソースエージェント
Red Hat Enterprise Linux 7 では、Pacemaker リソースマネージャーと連携するリソースエージェントが導入されています。リソースエージェントは、クラスターリソースを概念化し、クラスター環境でリソースを管理する標準インターフェイスを提供します。Red Hat Enterprise Linux 7 で利用可能なリソースエージェントの詳細については、高可用性アドオンのドキュメントを参照してください。
DB2 を高可用性環境のクラスターリソースとして使用して管理する IBM DB2 リソースエージェントのサポートが Red Hat Enterprise Linux 7.2 に追加されています。
2.8.6. quorum 実装の変更
Red Hat Enterprise Linux 6 に同梱されていた qdiskd は mRed Hat Enterprise Linux 7 では削除されました。新たな quorum 実装は、corosync パッケージに含まれる votequorum
で提供されており、ほとんどのユースケースで qdiskd に代わるように拡張されています。拡張子 (wait_for_all
、auto_tie_breaker
、last_man_standing
) は votequorum.5
man ページに詳細に記載されています。
$ man 5 votequorum