10.3. アーキテクチャー
このセクションでは、MTV カスタムリソース、サービス、およびワークフローを説明します。
10.3.1. MTV カスタムリソースおよびサービス
Migration Toolkit for Virtualization (MTV) は、Red Hat OpenShift Operator として提供されます。以下のカスタムリソース (CR) およびサービスを作成し、管理します。
MTV カスタムリソース
-
Provider
CR は、MTV がソースおよびターゲットプロバイダーに接続し、対話できるようにする属性を保存します。 -
NetworkMapping
CR は、ソースおよびターゲットプロバイダーのネットワークをマッピングします。 -
StorageMapping
CR は、ソースおよびターゲットプロバイダーのストレージをマッピングします。 -
Plan
CR には、同じ移行パラメーターと関連するネットワークおよびストレージマッピングを持つ仮想マシンのリストが含まれます。 Migration
CR は移行計画を実行します。一度に実行できる
Migration
CR は、移行計画ごとに 1 つのみです。単一のPlan
CR に複数のMigration
CR を作成できます。
MTV サービス
Inventory
サービスは以下のアクションを実行します。- 移行元プロバイダーおよびターゲットプロバイダーに接続します。
- マッピングおよび計画に関するローカルインベントリーを維持します。
- 仮想マシンの設定を保存します。
-
仮想マシンの設定の変更が検出されたら、
Validation
サービスを実行します。
-
Validation
サービスは、ルールを適用して移行の適合性を確認します。 Migration Controller
サービスは移行のオーケストレーションを行います。移行計画の作成時に、
Migration Controller
サービスは計画を検証し、ステータスラベルを追加します。計画の検証に失敗した場合には、計画のステータスはNot ready
となり、その計画を使用して移行を行うことができません。計画が検証をパスすると、計画のステータスはReady
となり、移行を実行するために使用できます。移行に成功すると、Migration Controller
サービスは計画のステータスをCompleted
に変更します。-
Populator Controller
サービスは、Volume Populator を使用して、ディスク転送を調整します。 -
Kubevirt Controller
およびContainerized Data Import (CDI) Controller
サービスは、ほとんどの技術操作を処理します。
10.3.2. 移行ワークフローの概要
ワークフローの概要では、ユーザーの観点から移行プロセスを示しています。
- 移行元プロバイダー、ターゲットプロバイダー、ネットワークマッピング、およびストレージマッピングを作成します。
以下のリソースを含む
Plan
カスタムリソース (CR) を作成します。- 移行元プロバイダー
- ターゲットプロバイダー (MTV がターゲットクラスターにインストールされていない場合)
- ネットワークマッピング
- ストレージマッピング
- 1 つ以上の仮想マシン (VM)
Plan
CR を参照するMigration
CR を作成して移行計画を実行します。何らかの理由ですべての仮想マシン移行できない場合は、すべての仮想マシンが移行されるまで、同じ
Plan
CR に対して複数のMigration
CR を作成できます。-
Plan
CR の仮想マシンごとに、Migration Controller
サービスは仮想マシン移行の進行状況をMigration
CR に記録します。 Plan
CR 内の各仮想マシンのデータ転送が完了すると、Migration Controller
サービスによってVirtualMachine
CR が作成されます。すべての仮想マシンが移行されると、
Migration Controller
サービスはPlan
CR のステータスをCompleted
に更新します。各ソース仮想マシンの電源状態は、移行後も維持されます。
10.3.3. 移行ワークフローの詳細
詳細な移行ワークフローを使用して、失敗した移行のトラブルシューティングを行うことができます。
ワークフローでは、以下の手順を説明します。
ウォームマイグレーションまたはリモート OpenShift クラスターへの移行:
Migration
カスタムリソース (CR) を作成して、移行計画を実行すると、Migration Controller
サービスはソース仮想マシンディスクごとにDataVolume
CR を作成します。各仮想マシンディスクで以下を実行します。
-
Containerized Data Importer (CDI) Controller
サービスは、DataVolume
CR で指定されるパラメーターに基づいて永続ボリューム要求 (PVC) を作成します。 -
StorageClass
に動的プロビジョナーがある場合、永続ボリューム (PV) はStorageClass
プロビジョナーによって動的にプロビジョニングされます。 -
CDI Controller
サービスはImporter
Pod を作成します。 Importer
Pod は仮想マシンディスクを PV にストリーミングします。仮想マシンディスクの転送後に、以下を実行します。
Migration Controller
サービスは、VMWare からのインポート時に、PVC が接続されたconversion
Pod を作成します。conversion
Pod はvirt-v2v
を実行して、ターゲット仮想マシンの PVC にデバイスドライバーをインストールし、設定します。-
Migration Controller
サービスは、PVC に接続されたソース仮想マシン (VM) ごとにVirtualMachine
CR を作成します。 仮想マシンがソース環境で実行されている場合は、
Migration Controller
が仮想マシンの電源を入れ、KubeVirt Controller
サービスがvirt-launcher
Pod とVirtualMachineInstance
CR を作成します。virt-launcher
Pod は、仮想マシンディスクとして割り当てられた PVC でQEMU-KVM
を実行します。
RHV または OpenStack からローカル OpenShift クラスターへのコールド移行:
Migration
カスタムリソース (CR) を作成して、移行計画を実行すると、Migration Controller
サービスはソース仮想マシンディスクごとにPersistentVolumeClaim
CR を作成し、ソースが RHV の場合はOvirtVolumePopulator
を作成し、ソースが OpenStack の場合はOpenstackVolumePopulator
CR を作成します。各仮想マシンディスクで以下を実行します。
-
Populator Controller
サービスは一時的な永続ボリューム要求 (PVC) を作成します。 StorageClass
に動的プロビジョナーがある場合、永続ボリューム (PV) はStorageClass
プロビジョナーによって動的にプロビジョニングされます。-
Migration Controller
サービスは、ダミー Pod を作成して、すべての PVC をバインドします。Pod の名前にはpvcinit
が含まれます。
-
-
Populator Controller
サービスは、populator
Pod を作成します。 populator
Pod は、ディスクデータを PV に転送します。仮想マシンディスクの転送後に、以下を実行します。
- 一時的な PVC は削除され、最初の PVC はデータを含む PV を指します。
-
Migration Controller
サービスは、PVC に接続されたソース仮想マシン (VM) ごとにVirtualMachine
CR を作成します。 仮想マシンがソース環境で実行されている場合は、
Migration Controller
が仮想マシンの電源を入れ、KubeVirt Controller
サービスがvirt-launcher
Pod とVirtualMachineInstance
CR を作成します。virt-launcher
Pod は、仮想マシンディスクとして割り当てられた PVC でQEMU-KVM
を実行します。
VMWare からローカル OpenShift クラスターへのコールドマイグレーション:
Migration
カスタムリソース (CR) を作成して、移行計画を実行すると、Migration Controller
サービスはソース仮想マシンディスクごとにDataVolume
CR を作成します。各仮想マシンディスクで以下を実行します。
-
Containerized Data Importer (CDI) Controller
サービスは、DataVolume
CR に指定されたパラメーターに基づいて、空の永続ボリューム要求 (PVC) を作成します。 -
StorageClass
に動的プロビジョナーがある場合、永続ボリューム (PV) はStorageClass
プロビジョナーによって動的にプロビジョニングされます。
すべての仮想マシンディスクの場合:
-
Migration Controller
サービスは、ダミー Pod を作成して、すべての PVC をバインドします。Pod の名前にはpvcinit
が含まれます。 -
Migration Controller
サービスは、すべての PVC のconversion
Pod を作成します。 conversion
Pod はvirt-v2v
を実行します。これにより、仮想マシンが KVM ハイパーバイザーに変換され、ディスクのデータが対応する PV に転送されます。仮想マシンディスクの転送後に、以下を実行します。
-
Migration Controller
サービスは、PVC に接続されたソース仮想マシン (VM) ごとにVirtualMachine
CR を作成します。 仮想マシンがソース環境で実行されている場合は、
Migration Controller
が仮想マシンの電源を入れ、KubeVirt Controller
サービスがvirt-launcher
Pod とVirtualMachineInstance
CR を作成します。virt-launcher
Pod は、仮想マシンディスクとして割り当てられた PVC でQEMU-KVM
を実行します。