6.9. Cluster Autoscaler について
Cluster Autoscaler は、現行のデプロイメントのニーズに合わせて OpenShift Container Platform クラスターのサイズを調整します。これは、Kubernetes 形式の宣言引数を使用して、特定のクラウドプロバイダーのオブジェクトに依存しないインフラストラクチャー管理を提供します。Cluster Autoscaler には cluster スコープがあり、特定の namespace には関連付けられていません。
Cluster Autoscaler は、リソース不足のために現在のワーカーノードのいずれにもスケジュールできない Pod がある場合や、デプロイメントのニーズを満たすために別のノードが必要な場合に、クラスターのサイズを拡大します。Cluster Autoscaler は、指定される制限を超えてクラスターリソースを拡大することはありません。
Cluster Autoscaler は、コントロールプレーンノードを管理しない場合でも、クラスター内のすべてのノードのメモリー、CPU、および GPU の合計を計算します。これらの値は、単一マシン指向ではありません。これらは、クラスター全体での全リソースの集約です。たとえば、最大メモリーリソースの制限を設定する場合、Cluster Autoscaler は現在のメモリー使用量を計算する際にクラスター内のすべてのノードを含めます。この計算は、Cluster Autoscaler にワーカーリソースを追加する容量があるかどうかを判別するために使用されます。
作成する ClusterAutoscaler
リソース定義の maxNodesTotal
値が、クラスター内のマシンの想定される合計数に対応するのに十分な大きさの値であることを確認します。この値は、コントロールプレーンマシンの数とスケーリングする可能性のあるコンピュートマシンの数に対応できる値である必要があります。
Cluster Autoscaler は 10 秒ごとに、クラスターで不要なノードをチェックし、それらを削除します。Cluster Autoscaler は、以下の条件が適用される場合に、ノードを削除すべきと考えます。
-
ノードの使用率はクラスターの ノード使用率レベル のしきい値よりも低い場合。ノード使用率レベルとは、要求されたリソースの合計をノードに割り当てられたリソースで除算したものです。
ClusterAutoscaler
カスタムリソースで値を指定しない場合、Cluster Autoscaler は 50% の使用率に対応するデフォルト値0.5
を使用します。 - Cluster Autoscaler がノードで実行されているすべての Pod を他のノードに移動できる。Kubernetes スケジューラーは、ノード上の Pod のスケジュールを担当します。
- Cluster Autoscaler で、スケールダウンが無効にされたアノテーションがない。
以下のタイプの Pod がノードにある場合、Cluster Autoscaler はそのノードを削除しません。
- 制限のある Pod の Disruption Budget (停止状態の予算、PDB) を持つ Pod。
- デフォルトでノードで実行されない Kube システム Pod。
- PDB を持たないか、制限が厳しい PDB を持つ Kuber システム Pod。
- デプロイメント、レプリカセット、またはステートフルセットなどのコントローラーオブジェクトによってサポートされない Pod。
- ローカルストレージを持つ Pod。
- リソース不足、互換性のないノードセレクターまたはアフィニティー、一致する非アフィニティーなどにより他の場所に移動できない Pod。
-
それらに
"cluster-autoscaler.kubernetes.io/safe-to-evict": "true"
アノテーションがない場合、"cluster-autoscaler.kubernetes.io/safe-to-evict": "false"
アノテーションを持つ Pod。
たとえば、CPU の上限を 64 コアに設定し、それぞれ 8 コアを持つマシンのみを作成するように Cluster Autoscaler を設定したとします。クラスターが 30 コアで起動する場合、Cluster Autoscaler は最大で 4 つのノード (合計 32 コア) を追加できます。この場合、総計は 62 コアになります。
Cluster Autoscaler を設定する場合、使用に関する追加の制限が適用されます。
- 自動スケーリングされたノードグループにあるノードを直接変更しないようにしてください。同じノードグループ内のすべてのノードには同じ容量およびラベルがあり、同じシステム Pod を実行します。
- Pod の要求を指定します。
- Pod がすぐに削除されるのを防ぐ必要がある場合、適切な PDB を設定します。
- クラウドプロバイダーのクォータが、設定する最大のノードプールに対応できる十分な大きさであることを確認します。
- クラウドプロバイダーで提供されるものなどの、追加のノードグループの Autoscaler を実行しないようにしてください。
Horizontal Pod Autoscaler (HPA) および Cluster Autoscaler は複数の異なる方法でクラスターリソースを変更します。HPA は、現在の CPU 負荷に基づいてデプロイメント、またはレプリカセットのレプリカ数を変更します。負荷が増大すると、HPA はクラスターで利用できるリソース量に関係なく、新規レプリカを作成します。十分なリソースがない場合、Cluster Autoscaler はリソースを追加し、HPA で作成された Pod が実行できるようにします。負荷が減少する場合、HPA は一部のレプリカを停止します。この動作によって一部のノードの使用率が低くなるか、完全に空になる場合、Cluster Autoscaler は不必要なノードを削除します。
Cluster Autoscaler は Pod の優先順位を考慮に入れます。Pod の優先順位とプリエンプション機能により、クラスターに十分なリソースがない場合に優先順位に基づいて Pod のスケジューリングを有効にできますが、Cluster Autoscaler はクラスターがすべての Pod を実行するのに必要なリソースを確保できます。これら両方の機能の意図を反映するべく、Cluster Autoscaler には優先順位のカットオフ機能が含まれています。このカットオフを使用して "Best Effort" の Pod をスケジュールできますが、これにより Cluster Autoscaler がリソースを増やすことはなく、余分なリソースがある場合にのみ実行されます。
カットオフ値よりも低い優先順位を持つ Pod は、クラスターをスケールアップせず、クラスターのスケールダウンを防ぐこともありません。これらの Pod を実行するために新規ノードは追加されず、これらの Pod を実行しているノードはリソースを解放するために削除される可能性があります。
クラスターの自動スケーリングは、マシン API が利用可能なプラットフォームでサポートされています。
6.9.1. Cluster Autoscaler リソース定義
この ClusterAutoscaler
リソース定義は、Cluster Autoscaler のパラメーターおよびサンプル値を表示します。
apiVersion: "autoscaling.openshift.io/v1" kind: "ClusterAutoscaler" metadata: name: "default" spec: podPriorityThreshold: -10 1 resourceLimits: maxNodesTotal: 24 2 cores: min: 8 3 max: 128 4 memory: min: 4 5 max: 256 6 gpus: - type: <gpu_type> 7 min: 0 8 max: 16 9 logVerbosity: 4 10 scaleDown: 11 enabled: true 12 delayAfterAdd: 10m 13 delayAfterDelete: 5m 14 delayAfterFailure: 30s 15 unneededTime: 5m 16 utilizationThreshold: "0.4" 17
- 1
- Cluster Autoscaler に追加のノードをデプロイさせるために Pod が超えている必要のある優先順位を指定します。32 ビットの整数値を入力します。
podPriorityThreshold
値は、各 Pod に割り当てるPriorityClass
の値と比較されます。 - 2
- デプロイするノードの最大数を指定します。この値は、Autoscaler が制御するマシンだけでなく、クラスターにデプロイされるマシンの合計数です。この値は、すべてのコントロールプレーンおよびコンピュートマシン、および
MachineAutoscaler
リソースに指定するレプリカの合計数に対応するのに十分な大きさの値であることを確認します。 - 3
- クラスターにデプロイするコアの最小数を指定します。
- 4
- クラスターにデプロイするコアの最大数を指定します。
- 5
- クラスターのメモリーの最小量 (GiB 単位) を指定します。
- 6
- クラスターのメモリーの最大量 (GiB 単位) を指定します。
- 7
- オプション: GPU 対応ノードをデプロイするようにクラスターオートスケーラーを設定するには、使用する GPU タイプを表す
type
値を指定します。たとえば、Nvidia T4 GPU を表すにはnvidia-t4 を
使用し、A10G GPU を表すにはnvidia-a10g を
使用します。注記タイプの
値は、そのタイプの GPU 対応ノードを管理するマシンセット内のspec.template.spec.metadata.labels[cluster-api/accelerator]
ラベルの値と一致する必要があります。この値はマシンセットのラベルとして使用するため、英数字、-
、_
、または.
で設定され、先頭と末尾は英数字である必要があります。 - 8
- クラスターにデプロイする指定されたタイプの GPU の最小数を指定します。
- 9
- クラスターにデプロイする指定されたタイプの GPU の最大数を指定します。
- 10
- ロギングの詳細レベルを
0
から10
の間で指定します。次のログレベルのしきい値は、ガイダンスとして提供されています。-
1
: (デフォルト) 変更に関する基本情報。 -
4
: 一般的な問題をトラブルシューティングするためのデバッグレベルの詳細度。 -
9
: 広範なプロトコルレベルのデバッグ情報。
値を指定しない場合は、デフォルト値の
1
が使用されます。 -
- 11
- 12
- Cluster Autoscaler が不必要なノードを削除できるかどうかを指定します。
- 13
- オプション: ノードが最後に 追加 されてからノードを削除するまで待機する期間を指定します。値を指定しない場合、デフォルト値の
10m
が使用されます。 - 14
- オプション: ノードが最後に 削除 されてからノードを削除するまで待機する期間を指定します。値を指定しない場合、デフォルト値の
0s
が使用されます。 - 15
- オプション: スケールダウンが失敗してからノードを削除するまで待機する期間を指定します。値を指定しない場合、デフォルト値の
3m
が使用されます。 - 16
- オプション: 不要なノードが削除の対象となるまでの期間を指定します。値を指定しない場合、デフォルト値の
10m
が使用されます。 - 17
- オプション: node utilization level を指定します。この使用率レベルを下回るノードは、削除の対象となります。
ノード使用率は、要求されたリソースをそのノードに割り当てられたリソースで割ったもので、
"0"
より大きく"1"
より小さい値でなければなりません。値を指定しない場合、Cluster Autoscaler は 50% の使用率に対応するデフォルト値"0.5"
を使用します。この値は文字列として表現する必要があります。
スケーリング操作の実行時に、Cluster Autoscaler は、デプロイするコアの最小および最大数、またはクラスター内のメモリー量などの ClusterAutoscaler
リソース定義に設定された範囲内に残ります。ただし、Cluster Autoscaler はそれらの範囲内に留まるようクラスターの現在の値を修正しません。
Cluster Autoscaler がノードを管理しない場合でも、最小および最大の CPU、メモリー、および GPU の値は、クラスター内のすべてのノードのこれらのリソースを計算することによって決定されます。たとえば、Cluster Autoscaler がコントロールプレーンノードを管理しない場合でも、コントロールプレーンノードはクラスターのメモリーの合計に考慮されます。
6.9.2. Cluster Autoscaler のデプロイ
Cluster Autoscaler をデプロイするには、ClusterAutoscaler
リソースのインスタンスを作成します。
手順
-
カスタムリソース定義を含む
ClusterAutoscaler
リソースの YAML ファイルを作成します。 以下のコマンドを実行して、クラスター内にカスタムリソースを作成します。
$ oc create -f <filename>.yaml 1
- 1
<filename>
はカスタムリソースファイルの名前です。