2.3. Red Hat Ceph Storage ワークロードに関する考慮事項
Ceph Storage クラスターの主な利点の 1 つとして、パフォーマンスドメインを使用して、同じストレージクラスター内のさまざまなタイプのワークロードをサポートする機能があります。各パフォーマンスドメインには、異なるハードウェア設定を関連付けることができます。ストレージ管理者は、ストレージプールを適切なパフォーマンスドメインに配置し、特定のパフォーマンスとコストプロファイルに合わせたストレージをアプリケーションに提供できます。これらのパフォーマンスドメインに適切なサイズ設定と最適化されたサーバーを選択することは、Red Hat Ceph Storage クラスターを設計するのに不可欠な要素です。
データの読み取りおよび書き込みを行う Ceph クライアントインターフェイスに対して、Ceph Storage クラスターはクライアントがデータを格納する単純なプールとして表示されます。ただし、ストレージクラスターは、クライアントインターフェイスから完全に透過的な方法で多くの複雑な操作を実行します。Ceph クライアントおよび Ceph オブジェクトストレージデーモン (Ceph OSD または単に OSD) はいずれも、オブジェクトのストレージおよび取得にスケーラブルなハッシュ (CRUSH) アルゴリズムで制御されたレプリケーションを使用します。Ceph OSD は、ストレージクラスター内のコンテナーで実行できます。
CRUSH マップはクラスターリソースのトポロジーを表し、マップは、クラスター内のクライアントホストと Ceph Monitor ホストの両方に存在します。Ceph クライアントおよび Ceph OSD はどちらも CRUSH マップと CRUSH アルゴリズムを使用します。Ceph クライアントは OSD と直接通信することで、オブジェクト検索の集中化とパフォーマンスのボトルネックとなる可能性を排除します。CRUSH マップとピアとの通信を認識することで、OSD は動的障害復旧のレプリケーション、バックフィル、およびリカバリーを処理できます。
Ceph は CRUSH マップを使用して障害ドメインを実装します。Ceph は CRUSH マップを使用してパフォーマンスドメインの実装も行います。パフォーマンスドメインは、基礎となるハードウェアのパフォーマンスプロファイルを反映させます。CRUSH マップは Ceph のデータの格納方法を記述し、これは単純な階層 (例: 非周期グラフ) およびルールセットとして実装されます。CRUSH マップは複数の階層をサポートし、ハードウェアパフォーマンスプロファイルのタイプを別のタイプから分離できます。Ceph では、デバイスの classes でパフォーマンスドメインを実装しています。
たとえば、これらのパフォーマンスドメインを同じ Red Hat Ceph Storage クラスター内に共存させることができます。
- ハードディスクドライブ (HDD) は、一般的にコストと容量を重視したワークロードに適しています。
- スループットを区別するワークロードは通常、ソリッドステートドライブ (SSD) の Ceph 書き込みジャーナルで HDD を使用します。
- MySQL や MariaDB のような IOPS を多用するワークロードでは、SSD を使用することが多いです。
図2.3 パフォーマンスおよび障害ドメイン
ワークロード
Red Hat Ceph Storage は、3 つの主要なワークロードに対して最適化されています。
ストレージクラスターの価格とパフォーマンスに大きな影響を与えるので、どのハードウェアを購入するかを検討する前に、Red Hat Ceph Storage クラスターで実行するワークロードを慎重に検討してください。たとえば、ワークロードの容量が最適化されいるにも拘らず、スループットが最適化されたワークロードに、対象のハードウェアがより適している場合に、ハードウェアが必要以上に高価になってしまいます。逆に、ワークロードのスループットが最適化されていて、容量が最適化されたワークロードに、対象のハードウェアが適している場合は、ストレージクラスターのパフォーマンスが低下します。
IOPS を最適化: IOPS (Input, Output per Second) が最適化されたデプロイメントは、MYSQL や MariaDB インスタンスを OpenStack 上の仮想マシンとして稼働させるなど、クラウドコンピューティングの操作に適しています。IOPS が最適化された導入では、15k RPM の SAS ドライブや、頻繁な書き込み操作を処理するための個別の SSD ジャーナルなど、より高性能なストレージが必要となります。一部の IOPS のシナリオでは、すべてのフラッシュストレージを使用して IOPS と総スループットが向上します。
IOPS が最適化されたストレージクラスターには、以下のプロパティーがあります。
- IOPS あたり最小コスト
- 1 GB あたりの最大 IOPS。
- 99 パーセンタイルのレイテンシーの一貫性。
IOPS に最適化されたストレージクラスターの用途は以下のとおりです。
- 典型的なブロックストレージ。
- ハードドライブ (HDD) の 3x レプリケーションまたはソリッドステートドライブ (SSD) の 2x レプリケーション。
- OpenStack クラウド上の MySQL
最適化されたスループット: スループットが最適化されたデプロイメントは、グラフィック、音声、ビデオコンテンツなどの大量のデータを提供するのに適しています。スループットが最適化されたデプロイメントには、高帯域幅のネットワークハードウェア、コントローラー、高速シーケンシャル読み取り/書き込み機能のあるハードディスクドライブが必要です。高速なデータアクセスが必要な場合は、スループットを最適化したストレージ戦略を使用します。また、高速な書き込み性能が必要な場合は、ジャーナルに SSD (Solid State Disks) を使用すると、書き込み性能が大幅に向上します。
スループットが最適化されたストレージクラスターには、以下のような特性があります。
- MBps あたりの最小コスト (スループット)。
- TB あたり最も高い MBps。
- BTU あたりの最大 MBps
- Watt あたりの MBps の最大数。
- 97 パーセンタイルのレイテンシーの一貫性。
スループットを最適化したストレージクラスターの用途は以下のとおりです。
- ブロックまたはオブジェクトストレージ。
- 3x レプリケーション。
- ビデオ、音声、およびイメージのアクティブなパフォーマンスストレージ。
- 4K 映像などのストリーミングメディア
最適化された容量: 容量が最適化されたデプロイメントは、大量のデータを可能な限り安価に保存するのに適しています。容量が最適化されたデプロイメントは通常、パフォーマンスがより魅力的な価格と引き換えになります。たとえば、容量を最適化したデプロイメントでは、ジャーナリングに SSD を使用するのではなく、より低速で安価な SATA ドライブを使用し、ジャーナルを同じ場所に配置することがよくあります。
コストと容量が最適化されたストレージクラスターには、次のような特性があります。
- TB あたり最小コスト
- TB あたり最小の BTU 数。
- TB あたりに必要な最小 Watt。
コストと容量が最適化されたストレージクラスターの用途は以下のとおりです。
- 典型的なオブジェクトストレージ。
- 使用可能な容量を最大化するイレイジャーコーディング
- オブジェクトアーカイブ。
- ビデオ、音声、およびイメージオブジェクトのリポジトリー。