CUPS 印刷サーバーの設定および使用


Red Hat Enterprise Linux 10

CUPS サーバーとして動作するようにシステムを設定し、プリンター、印刷キュー、印刷環境を管理する

Red Hat Customer Content Services

概要

Common Unix Printing System (CUPS) は {ProductName} での印刷を管理します。ユーザーはホスト上の CUPS でプリンターを設定して印刷します。さらに、CUPS でプリンターを共有し、ホストをプリントサーバーとして使用できます。
CUPS は次のプリンターへの印刷をサポートしています。
  • AirPrint™ および IPP Everywhere™ プリンター
  • プリンターアプリケーションを備えたネットワークおよびローカル USB プリンター
  • 従来の PostScript Printer Description (PPD) ベースのドライバーを備えたネットワークおよびローカル USB プリンター

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第1章 CUPS のインストールと設定

CUPS を使用してローカルホストから印刷できます。このホストを使用してネットワーク内でプリンターを共有し、プリントサーバーとして機能させることもできます。

手順

  1. cups パッケージをインストールします。

    # dnf install cups
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  2. CUPS をプリントサーバーとして設定する場合は、/etc/cups/cupsd.conf ファイルを編集し、次の変更を加えます。

    1. CUPS をリモートで設定する場合、またはこのホストをプリントサーバーとして使用する場合は、CUPS がリッスンする IP アドレスとポートを設定します。

      Listen 192.0.2.1:631
      Listen [2001:db8:1::1]:631
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      デフォルトでは、CUPS は localhost インターフェイス (127.0.0.1 および ::1) でのみリッスンします。IPv6 アドレスは角括弧で囲んで指定します。

      重要

      信頼できないネットワーク (インターネットなど) からのアクセスを許可するインターフェイスをリッスンするように CUPS を設定しないでください。

    2. <Location/> ディレクティブで IP 範囲を許可することで、サービスにアクセスできる IP 範囲を設定します。

      <Location />
        Allow from 192.0.2.0/24
        Allow from [2001:db8:1::1]/32
        Order allow,deny
      </Location>
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    3. <Location /admin> ディレクティブで、CUPS 管理サービスにアクセスできる IP アドレスと範囲を設定します。

      <Location /admin>
        Allow from 192.0.2.15/32
        Allow from [2001:db8:1::22]/128
        Order allow,deny
      </Location>
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      この設定では、IP アドレス 192.0.2.15 および 2001:db8:1::22 を持つホストのみが管理サービスにアクセスできます。

    4. オプション: Web インターフェイスで設定ファイルとログファイルへのアクセスを許可する IP アドレスと範囲を設定します。

      <Location /admin/conf>
        Allow from 192.0.2.15/32
        Allow from [2001:db8:1::22]/128
        ...
      </Location>
      
      <Location /admin/log>
        Allow from 192.0.2.15/32
        Allow from [2001:db8:1::22]/128
        ...
      </Location>
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  3. firewalld サービスを実行し、CUPS へのリモートアクセスを設定する場合は、firewalld で CUPS ポートを開きます。

    # firewall-cmd --permanent --add-port=631/tcp
    # firewall-cmd --reload
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    複数のインターフェイスを持つホストで CUPS を実行する場合は、必要なネットワークにアクセスを制限することを検討してください。

  4. cups サービスを有効にして起動します。

    # systemctl enable --now cups
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検証

  • ブラウザーを使用して、http://<hostname>:631 にアクセスします。Web インターフェイスに接続できれば、CUPS は動作しています。

    Administration タブなどの一部の機能では、認証と HTTPS 接続が必要であることに注意してください。デフォルトでは、CUPS は HTTPS アクセスに自己署名証明書を使用するため、認証時の接続はセキュアではありません。

第2章 CUPS サーバーでの TLS 暗号化の設定

CUPS は TLS 暗号化接続をサポートしており、デフォルトでは、サービスは認証を必要とするすべてのリクエストに対して暗号化接続を強制します。証明書が設定されていない場合、CUPS は秘密鍵と自己署名証明書を作成します。これで十分なのは、ローカルホスト自体から CUPS にアクセスする場合だけです。ネットワーク経由でセキュアに接続するには、認証局 (CA) によって署名されたサーバー証明書を使用します。

警告

暗号化がない場合や自己署名証明書を使用している場合、中間者 (MITM) 攻撃によって次のような機密データが漏洩する可能性があります。

  • Web インターフェイスを使用して CUPS を設定する場合の管理者の認証情報
  • ネットワーク経由で印刷ジョブを送信する際の機密データ

前提条件

  • CUPS が設定されている
  • 秘密鍵の作成 が完了していて、その秘密鍵に対するサーバー証明書が CA から発行されている。
  • 中間証明書をサーバー証明書に追加している (サーバー証明書を検証するために中間証明書が必要な場合)。
  • CUPS にはサービスが鍵を読み取るときにパスワードを入力するオプションがないため、秘密鍵はパスワードで保護されません。
  • 証明書の正規名 (CN) またはサブジェクト代替名 (SAN) フィールドが、次のいずれかと一致する。

    • CUPS サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN)
    • DNS によってサーバーの IP アドレスに解決されるエイリアス
  • 秘密鍵とサーバー証明書ファイルが、Privacy Enhanced Mail (PEM) 形式を使用している。
  • クライアントが CA 証明書を信頼している。
  • FIPS モードが有効になっている場合、クライアントは Extended Master Secret (EMS) 拡張機能をサポートしているか、TLS 1.3 を使用している。EMS を使用しない TLS 1.2 接続は失敗します。詳細は、Red Hat ナレッジベースソリューション TLS extension "Extended Master Secret" enforced を参照してください。

手順

  1. /etc/cups/cups-files.conf ファイルを編集し、次の設定を追加して自己署名証明書の自動作成を無効にします。

    CreateSelfSignedCerts no
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  2. 自己署名証明書と秘密鍵を削除します。

    # rm /etc/cups/ssl/<hostname>.crt /etc/cups/ssl/<hostname>.key
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  3. オプション: サーバーの FQDN を表示します。

    # hostname -f
    server.example.com
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  4. 秘密鍵とサーバー証明書を /etc/cups/ssl/ ディレクトリーに保存します。次に例を示します。

    # mv /root/server.key /etc/cups/ssl/server.example.com.key
    # mv /root/server.crt /etc/cups/ssl/server.example.com.crt
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    重要

    CUPS では、秘密鍵に <fqdn>.key、サーバー証明書ファイルに <fqdn>.crt という名前を付ける必要があります。エイリアスを使用する場合は、ファイルに <alias>.key および <alias>.crt という名前を付ける必要があります。

  5. root ユーザーのみがこのファイルを読み取ることができるように、秘密鍵にセキュアなパーミッションを設定します。

    # chown root:root /etc/cups/ssl/server.example.com.key
    # chmod 600 /etc/cups/ssl/server.example.com.key
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    証明書は、セキュアな接続を確立する前のクライアントとサーバー間の通信の要素であるため、どのクライアントも認証なしで証明書を取得できます。したがって、サーバー証明書ファイルに厳密なパーミッションを設定する必要はありません。

  6. SELinux コンテキストを復元します。

    # restorecon -Rv /etc/cups/ssl/
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  7. オプション: 証明書の CN フィールドと SAN フィールドを表示します。

    # openssl x509 -text -in /etc/cups/ssl/server.example.com.crt
    Certificate:
      Data:
        ...
        Subject: CN = server.example.com
        ...
        X509v3 extensions:
          ...
          X509v3 Subject Alternative Name:
            DNS:server.example.com
      ...
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  8. サーバー証明書の CN または SAN フィールドにサーバーの FQDN とは異なるエイリアスが含まれている場合は、ServerAlias パラメーターを /etc/cups/cupsd.conf ファイルに追加します。

    ServerAlias alternative_name.example.com
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    この場合、以降の手順で FQDN の代わりに代替名を使用します。

  9. デフォルトでは、CUPS は、Web インターフェイスの /admin ページで管理タスクを実行する場合など、タスクで認証が必要な場合にのみ暗号化接続を強制します。

    CUPS サーバー全体の暗号化を強制するには、/etc/cups/cupsd.conf ファイル内のすべての <Location> ディレクティブに Encryption Required を追加します。次に例を示します。

    <Location />
      ...
      Encryption Required
    </Location>
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  10. CUPS を再起動します。

    # systemctl restart cups
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検証

  1. ブラウザーを使用して、https://<hostname>:631/admin/ にアクセスします。アクセスするには、ブラウザーが CA 証明書を信頼している必要があります。接続が成功すれば、CUPS で TLS 暗号化が正しく設定されています。
  2. サーバー全体の暗号化を必須とするように設定した場合は、http://<hostname>:631/ にアクセスします。この場合、CUPS は Upgrade Required というエラーを返します。

トラブルシューティング

  • cups サービスの systemd ジャーナルエントリーを表示します。

    # journalctl -u cups
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    HTTPS プロトコルを使用した Web インターフェイスへの接続に失敗した後、ジャーナルに Unable to encrypt connection: Error while reading file というエラーが含まれている場合は、秘密鍵とサーバー証明書ファイルの名前を確認します。

第3章 Web インターフェイスで CUPS サーバーを管理するための管理権限の付与

デフォルトでは、sysroot、および wheel グループのメンバーは、Web インターフェイスで管理タスクを実行できます。しかし、他の特定のサービスもこれらのグループを使用します。たとえば、wheel グループのメンバーは、デフォルトで sudo を使用して root 権限でコマンドを実行できます。CUPS 管理者が他のサービスで予期しない権限を取得しないようにするには、CUPS 管理者専用のグループを使用します。

前提条件

  • CUPS が設定されている
  • 使用するクライアントの IP アドレスに、Web インターフェイスの管理領域にアクセスする権限がある。

手順

  1. CUPS 管理者用のグループを作成します。

    # groupadd cups-admins
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  2. Web インターフェイスでサービスを管理する必要があるユーザーを、cups-admins グループに追加します。

    # usermod -a -G cups-admins <username>
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  3. /etc/cups/cups-files.conf ファイルの SystemGroup パラメーターの値を更新し、cups-admin グループを追加します。

    SystemGroup sys root wheel cups-admins
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    cups-admin グループのみに管理アクセス権を与える必要がある場合は、パラメーターから他のグループ名を削除します。

  4. CUPS を再起動します。

    # systemctl restart cups
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検証

  1. ブラウザーを使用して、https://<hostname_or_ip_address>:631/admin/ にアクセスします。

    注記

    ユーザーは HTTPS プロトコルを使用する場合のみ、Web UI の管理領域にアクセスできます。

  2. 管理タスクの実行を開始します。たとえば、Add printer をクリックします。
  3. Web インターフェイスで、ユーザー名とパスワードの入力を求められます。続行するには、cups-admins グループのメンバーであるユーザーの認証情報を使用して認証します。

    認証が成功すると、このユーザーは管理タスクを実行できます。

第4章 プリンタードライバーを含むパッケージの概要

Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、CUPS 用のプリンタードライバーを含むさまざまなパッケージを提供しています。これらのパッケージの概要と、パッケージに含まれるドライバーが対応するベンダーを以下に示します。

表4.1 ドライバーパッケージのリスト
パッケージ名プリンター用ドライバー

cups

Zebra、Dymo

c2esp

Kodak

foomatic

Brother、Canon、Epson、Gestetner、HP、Infotec、Kyocera、Lanier、Lexmark、NRG、Ricoh、Samsung、Savin、Sharp、Toshiba、Xerox など

gutenprint-cups

Brother、Canon、Epson、Fujitsu、HP、Infotec、Kyocera、Lanier、NRG、Oki、Minolta、Ricoh、Samsung、Savin、Xerox など

hplip

HP

pnm2ppa

HP

splix

Samsung、Xerox など

パッケージによっては、同じプリンターベンダーまたはモデル用の、異なる機能を持つドライバーが含まれている場合があることに注意してください。

必要なパッケージをインストールした後、CUPS Web インターフェイスまたは lpinfo -m コマンドを使用してドライバーのリストを表示できます。

第5章 プリンターがドライバーレス印刷をサポートしているかどうかの確認

CUPS はドライバーレス印刷をサポートしています。つまり、ハードウェア固有のソフトウェアをプリンターに提供しなくても印刷できます。ドライバーレス印刷を使用するには、プリンターからクライアントにその機能を通知し、次のいずれかの標準をプリンターで使用する必要があります。

  • AirPrint™
  • IPP Everywhere™
  • Mopria®
  • Wi-Fi Direct Print Services

ipptool ユーティリティーを使用すると、プリンターがドライバーレス印刷をサポートしているかどうかを確認できます。

前提条件

  • プリンターまたはリモートプリントサーバーが、インターネット印刷プロトコル (IPP) をサポートしている。
  • ホストが、プリンターまたはリモートプリントサーバーの IPP ポートに接続できる。デフォルトの IPP ポートは 631 です。

手順

  • ipp-versions-supported 属性と document-format-supported 属性を照会し、get-printer-attributes テストに合格することを確認します。

    • リモートプリンターの場合は、次のように入力します。

      # ipptool -tv ipp://<ip_address_or_hostname>:631/ipp/print get-printer-attributes.test | grep -E "ipp-versions-supported|document-format-supported|get-printer-attributes"
      Get printer attributes using get-printer-attributes      [PASS]
          ipp-versions-supported (1setOf keyword) = ...
          document-format-supported (1setOf mimeMediaType) = ...
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    • リモートプリントサーバー上のキューの場合は、次のように入力します。

      # ipptool -tv ipp://<ip_address_or_hostname>:631/printers/<queue_name> get-printer-attributes.test | grep -E "ipp-versions-supported|document-format-supported|get-printer-attributes"
      Get printer attributes using get-printer-attributes      [PASS]
          ipp-versions-supported (1setOf keyword) = ...
          document-format-supported (1setOf mimeMediaType) = ...
      Copy to Clipboard

    ドライバーレス印刷が機能することを確認するには、出力で次のことを確認します。

    • get-printer-attributes テストが PASS を返す。
    • プリンターがサポートする IPP バージョンが 2.0 以降である。
    • 形式のリストに次のいずれかが含まれている。

      • application/pdf
      • image/urf
      • image/pwg-raster
    • カラープリンターの場合、前述の形式のいずれかに加えて、image/jpeg が出力に含まれている。

第6章 ドライバー不要の USB 印刷とスキャン

ドライバーレス印刷およびスキャンには、USB を使用して接続されたデバイス用のバリエーションがあります。これは IPP over USB 標準で対応されています。ドライバーレス印刷およびスキャンを機能させるには、ipp-usb パッケージをインストールする必要があります。ローカルホスト上の Avahi にデバイスを登録し、USB デバイスをネットワークデバイスとして表示します。

6.1. デバイス機能のインストールと確認

ドライバーレス印刷では、ネットワーク上でデバイスを識別し、プリントサーバーを使って印刷キューを設定することで、デバイスを使用できるようにします。その後、印刷キュー内の設定にアクセスするか、ipptool などのツールを使用して、デバイスの機能を確認できます。

前提条件

  • デバイスのファームウェアを更新する。
  • リモートプリントサーバーからプリンターをインストールするために cups-browsed サービスが使用されていない場合は、このサービスを停止して無効にする。この場合、BrowsePoll サーバーは /etc/cups/cups-browsed.conf ファイルで使用されることに注意してください。

手順

  1. ipp-usb パッケージをインストールします。

    # dnf install ipp-usb
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    注記

    ipp-usb パッケージは、CUPS および sane-airscane パッケージとともにデフォルトでインストールされます。

  2. デバイスに印刷機能があるかどうかを確認します。

    1. デバイスが ipp-usb によって認識されていることを確認します。

      # sudo ipp-usb check
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    2. 既存の宛先の中でデバイスが CUPS によって識別されるかどうかを確認します。ipp-usb によって作成されたサービス名には、接尾辞 _USB が付きます。

      $ lpstat -e
      Canon_MF440_Series_USB
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      ipp-usb によって作成されたサービス名には、_USB 接尾辞が付きます。たとえば、Canon_MF440_Series_USB は Canon I-Sensys MF433 という IPP-over-USB デバイスを表します。

      重要

      Canon_MF440_Series_USB が lpstat -e コマンドの出力には表示されるものの、アプリケーションには表示されない場合は、アプリケーションに問題を報告してください。

    3. デバイスの機能を確認します。

      # ipptool -tv ipp://localhost:60000/ipp/print get-printer-attributes.test
      
      # lpoptions -p Canon_MF440_Series_USB -l
      Copy to Clipboard

      ipptool コマンドは、デバイスがサポートするすべての IPP 属性を返します。IPP 応答に印刷オプションが存在するにもかかわらず、lpoptions 出力には存在しない場合、一部の属性から PPD オプションが生成されているため、CUPS 側の問題です。lpoptions ユーティリティーは、使用可能な PPD オプションを返します。

  3. デバイスにスキャン機能があるかどうかを確認します。

    1. sane-airscan バックエンドがデバイスを認識しているかどうかを確認します。

      # scanimage -L
      
      device `airscan:e0:HP LaserJet MFP M130fw' is a eSCL HP LaserJet MFP M130fw ip=127.0.0.1
      Here, the HP LaserJet MFP M130fw device here is used for illustration, it does not show its real IPP-over-USB compatibility or its real options shared via AirScan from ipp-usb.
      Copy to Clipboard
    2. デバイスの機能を確認します。

      # scanimage --help -d 'airscan:e0:HP LaserJet MFP M130fw (E700D6)'
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6.2. 既存のクラシック印刷キューとスキャナーデバイスの移行

ipp-usb パッケージは IPP-over-USB デバイス用の従来の印刷およびスキャンドライバーと互換性がないため、アップグレード後にユーザーの選択に応じて手動介入する必要があります。利用可能な印刷機能とスキャン機能を確認し、デバイスに使用するサポートの種類を決定できます。

  • ドライバーレス
  • クラシックドライバー

手順

ドライバーレスを使用して USB デバイスをサポートする

従来のドライバーを使用した既存の設定を USB デバイスのドライバーレスサポートに移行するには、デバイスの機能に応じて以下の手順に従います。

  1. デバイスに印刷機能がある場合は、これまでにデバイスにインストールされた既存のプリンターをすべて削除します。
  2. プリンター名を検索するには、次のコマンドを実行します。

    # lpstat -a
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  3. プリンターを削除します。

    # lpadmin -x <printer_name>
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  4. デバイスにスキャン機能がある場合は、スキャンサポートを提供する SANE バックエンド (例: hpaio) を無効にします。無効にする方法として、設定ファイル /etc/sane.d/dll.conf またはディレクトリー /etc/sane.d/dll.d 内の特定のファイルでその名前をコメントアウトするか、スキャンドライバーをアンインストールします。たとえば、hpaio スキャンバックエンドを無効にするには、次のようにします。

    # scanimage -L
    device `hpaio:/usb/laserjet_mfp_m129-m134?serial=XXXX' is a Hewlett-Packard laserjet_mfp_m129-m134 all-in-one
    device `airscan:e0:HP LaserJet MFP M130fw (E700D6)' is a eSCL HP LaserJet MFP M130fw (E700D6) ip=127.0.0.1
    
    # sudo sed -i 's,^\s*hpaio$,#hpaio,' /etc/sane.d/dll.d/hpaio
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    その結果、バックエンド HPAIO でサポートされているスキャンデバイスは、スキャナーのリストに表示されません。

クラシックドライバーを使用してデバイスをサポートする

クラシックドライバーを選択するには ipp-usb 設定でプリンターモデルを拒否する必要があります。

  1. デバイスのモデル名を検索します。

    # sudo ipp-usb check
    Configuration files: OK
    IPP over USB devices:
     Num  Device              Vndr:Prod  Model
       1. Bus 001 Device 005  04a9:2823  "Canon MF440 Series"
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  2. ipp-usb の quirk を作成し、/etc/ipp-usb/quirks ディレクトリー内の新しい quirk ファイルでその名前を使用します。.conf 接尾辞が必要であることに注意してください。

    # cat /etc/ipp-usb/quirks/canon.conf
    
    [Canon MF440 Series]
    blacklist = true
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  3. ipp-usb サービスを再起動します。

    $ systemctl restart ipp-usb
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    この現象が原因で ipp-usb でのデバイスのサポートが拒否され、従来のドライバーが動作します。ipp-usb によって生成されたプリンターは、既存のプリンターのリストから削除されます。

注記

ipp-usb パッケージを削除し、DNF 操作から除外することで、ドライバーレス USB サポートをオプトアウトできます。

第7章 レガシープリンターの設定

ドライバーレス標準をサポートしていないレガシープリンターをサポートするには、プリンターアプリケーションを使用できます。プリンターアプリケーションにレガシープリンターをインストールすると、このアプリケーションによってレガシープリンターが CUPS で使用できるようになります。

重要

CUPS でクラシックドライバーを使用してプリンターをインストールすることは推奨されません。

プリンターアプリケーションで従来のプリンターを設定することにより、従来の CUPS ドライバーを最新の印刷アーキテクチャーで利用できます。現在、RHEL には、lprintlegacy-print-app など、PAPPL に基づくプリンターアプリケーションが含まれています。RHEL の現在の PAPPL ベースのプリンターアプリケーションと、そのアプリケーションがリッスンしている TCP ポートは次のとおりです。

  • LPrint: 8000
  • レガシープリンターアプリケーション: 8001

7.1. PAPPL ベースのプリンターアプリケーションの設定

さまざまな印刷要件を簡単かつ効果的にサポートし、従来のプリンターのインストールを準備するために、PAPPL ベースのプリンターアプリケーションを設定できます。

前提条件

  • CUPS が TLS 証明書を使用して設定されている。

手順

  1. PAPPL ベースのプリンターアプリケーションパッケージ (例: lprint) をインストールします。

    # dnf install <printer_application_name>
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  2. オプション: リモートホストからプリンターアプリケーションの Web インターフェイスにアクセスできるように、firewalld でポート 8000 を有効にします。

    # firewall-cmd --permanent --add-port=8000/tcp
    # firewall-cmd --reload
    Copy to Clipboard
  3. サービスを有効にして起動します。

    # systemctl enable --now <printer_application_name>
    Copy to Clipboard

/etc/lprint.conf 設定ファイルでポートを確認できます。

7.1.1. Web インターフェイスを使用して PAPPL ベースのプリンターアプリケーションにレガシープリンターをインストールする

PAPPL ベースのプリンターアプリケーション Web インターフェイスを使用して、レガシープリンターをインストールできます。

前提条件

  • CUPS が TLS 証明書を使用して設定されている。
  • プリンターアプリケーションが設定され、実行されている。

手順

  1. プリンターアプリケーションのホームページで、Add Printer をクリックします。
  2. printer namedevice、ネットワークプリンターの場合は hostname/IP address を選択し、表示されたリストからドライバー名を選択して、Add Printer をクリックします。自動検出オプションを使用してドライバーを検索することもできます。

    ドライバーの自動検出オプションを使用すると、デバイスモデルが利用可能なドライバーと大きく異なる場合、デバイスと互換性のないドライバーが見つかる可能性があります。印刷前に割り当てられたドライバーを確認し、印刷の問題を防ぐためにドライバーを手動で変更することを推奨します。

  3. 使用するドライバーは、block Status の 2 行目にあります。Print Test Page をクリックすると機能をテストできます。

7.1.2. コマンドラインインターフェイスを使用して、PAPPL ベースのプリンターアプリケーションにレガシープリンターをインストールする

コマンドラインインターフェイスを使用して、PAPPL ベースのプリンターアプリケーションにレガシープリンターをインストールできます。

前提条件

  • CUPS が TLS 証明書を使用して設定されている。
  • プリンターアプリケーションが設定され、実行されている。

手順

  1. PAPPL ベースのプリンターアプリケーションで利用可能なドライバーを検索します。

    # lprint drivers
    zpl_2inch-203dpi-dt "Zebra ZPL 2-inch/203dpi/Direct-Thermal
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  2. プリンターをインストールします。たとえば、指定したドライバーを使用してネットワークプリンターをインストールするには、次のように入力します。

    # lprint add -d <printer name> -v socket://<hostname> -m zpl_2inch-203dpi-dt
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検証

  1. プリンターのリストにプリンターと、生データを送信するための生ソケットが表示されていることを確認します。

    # lprint printers
    <printer_name> - printer - ipp://localhost/ipp/print/<printer_name>
    <printer_name> - raw socket - socket://localhost:9101/
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7.2. 生成されたネットワークプリンターを CUPS の永続キューとして設定する

コマンドラインインターフェイスを使用して、専用のプリンターアプリケーションから生成されたネットワークプリンターを CUPS の永続キューとして設定できます。

注記

次の手順では、LPrint プリンターアプリケーションを例として使用します。ただし、同様の手順は、PAPPL ベースのすべてのプリンターアプリケーションにも適用されます。

前提条件

  • CUPS が TLS 証明書を使用して設定されている。
  • CUPS でプリンターを管理する権限がある。
  • レガシープリンターがプリンターアプリケーションにインストールされている。

手順

  1. 生成されたネットワークプリンターが使用可能かどうかを確認します。

    # lpstat -e
    <printer_name_in_printer_application>
    Copy to Clipboard
  2. プリンターアプリケーションが使用しているポートを検索します。

    # grep 'server-port=' /etc/lprint.conf
    server-port=8000
    Copy to Clipboard
  3. ポート番号 8000 を使用して永続キューをインストールします。

    # lpadmin -p <printer_name_in_CUPS> -v ipps://localhost:8000/ipp/print/<printer_name_in_printer_application> -m everywhere -E
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  4. CUPS キューがインストールされているかどうかを確認します。

    # lpstat -a
    <printer_name_in_CUPS>  accepting requests since Wed 07 May 2025 02:31:04 AM EDT
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第8章 Web インターフェイスを使用した CUPS へのプリンターの追加

ユーザーが CUPS 経由で印刷できるようにするには、事前にプリンターを追加する必要があります。ネットワークプリンターと、USB 経由などで CUPS ホストに直接接続されているプリンターの両方を使用できます。

CUPS ドライバーレス機能を使用するか、PostScript Printer Description (PPD) ファイルを使用してプリンターを追加できます。

注記

CUPS はドライバーレス印刷を優先しており、ドライバーの使用は非推奨です。

Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、mDNS レスポンダーにクエリーを実行することでリクエストを解決する、Name Service Switch Multicast DNS プラグイン (nss-mdns) を提供しません。そのため、RHEL では、mDNS を使用したローカルドライバーレスプリンターの自動検出とインストールは利用できません。この制限を回避するには、1 台のプリンターを手動でインストールするか、cups-browsed を使用してリモートプリントサーバーで使用可能な多数の印刷キューを自動的にインストールします。

前提条件

手順

  1. ブラウザーを使用して、https://<hostname>:631/admin/ にアクセスします。

    Web インターフェイスには HTTPS プロトコルを使用して接続する必要があります。使用しないと、セキュリティー上の理由から、CUPS が後のステップで認証できなくなります。

  2. Add printer をクリックします。
  3. ユーザーがまだ認証されていない場合、CUPS は管理ユーザーの認証情報の入力を求めます。許可されたユーザーのユーザー名とパスワードを入力します。
  4. ドライバーレス印刷を使用せず、追加するプリンターが自動的に検出された場合は、それを選択し、Continue をクリックします。
  5. プリンターが検出されなかった場合は、以下を実行します。

    1. プリンターがサポートするプロトコルを選択します。

      プロトコルの選択

      プリンターがドライバーレス印刷をサポートしており、この機能を使用する場合は、ipp または ipps プロトコルを選択します。

    2. Continue をクリックします。
    3. プリンターまたはリモートプリントサーバー上のキューへの URL を入力します。

      プリンターの URL を入力
    4. Continue をクリックします。
  6. 名前を入力し、必要に応じて説明と場所を入力します。CUPS をプリントサーバーとして使用し、他のクライアントが CUPS を介してこのプリンターで印刷できるようにする場合は、Share this printer も選択します。

    プリンターの詳細の追加
  7. Make リストからプリンターの製造元を選択します。プリンターの製造元がリストにない場合は、Generic を選択するか、プリンターの PPD ファイルをアップロードします。
  8. Continue をクリックします。
  9. プリンターのモデルを選択します。

    • プリンターがドライバーレス印刷をサポートしている場合は、IPP Everywhere を選択します。なお、以前にプリンター固有のドライバーをローカルにインストールしていた場合は、リストに <printer_name> - IPP Everywhere などのエントリーも含まれている可能性があります。
    • プリンターがドライバーレス印刷をサポートしていない場合は、モデルを選択するか、プリンターの PPD ファイルをアップロードします。
    プリンターモデルの選択
  10. Add Printer をクリックします。
  11. Set printer options ページの設定とタブは、ドライバーとプリンターがサポートする機能によって異なります。このページを使用して、用紙サイズなどのデフォルトのオプションを設定します。

    プリンターオプションの設定
  12. Set default options をクリックします。

検証

  1. Web インターフェイスで Printers タブを開きます。
  2. プリンターの名前をクリックします。
  3. Maintenance リストで、Print test page を選択します。

トラブルシューティング

第9章 lpadmin ユーティリティーを使用して CUPS にプリンターを追加する

ユーザーが CUPS 経由で印刷できるようにするには、事前にプリンターを追加する必要があります。ネットワークプリンターと、USB 経由などで CUPS ホストに直接接続されているプリンターの両方を使用できます。

CUPS ドライバーレス機能を使用するか、PostScript Printer Description (PPD) ファイルを使用してプリンターを追加できます。

注記

CUPS はドライバーレス印刷を優先しており、ドライバーの使用は非推奨です。

Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、mDNS レスポンダーにクエリーを実行することでリクエストを解決する、Name Service Switch Multicast DNS プラグイン (nss-mdns) を提供しません。そのため、RHEL では、mDNS を使用したローカルドライバーレスプリンターの自動検出とインストールは利用できません。この制限を回避するには、1 台のプリンターを手動でインストールするか、cups-browsed を使用してリモートプリントサーバーで使用可能な多数の印刷キューを自動的にインストールします。

前提条件

手順

  • CUPS にプリンターを追加します。

    • ドライバーレスサポートを使用してプリンターを追加するには、次のように入力します。

      # lpadmin -p Demo-printer -E -v ipp://192.0.2.200/ipp/print -m everywhere
      Copy to Clipboard

      お使いのプリンターで -m everywhere オプションが機能しない場合は、-m driverless:<uri> を試してください (例: -m driverless:ipp://192.0.2.200/ipp/print)。

    • ドライバーレスサポートを使用してリモートプリントサーバーのキューを追加するには、次のように入力します。

      # lpadmin -p Demo-printer -E -v ipp://192.0.2.201/printers/example-queue -m everywhere
      Copy to Clipboard

      お使いのプリンターで -m everywhere オプションが機能しない場合は、-m driverless:<uri> を試してください (例: -m driverless:ipp://192.0.2.200/printers/example-queue)。

    • ファイル内のドライバーを使用してプリンターを追加するには、次のように入力します。

      # lpadmin -p Demo-printer -E -v socket://192.0.2.200/ -P /root/example.ppd
      Copy to Clipboard
    • ファイル内のドライバーを使用してリモートプリントサーバーのキューを追加するには、次のように入力します。

      # lpadmin -p Demo-printer -E -v ipp://192.0.2.201/printers/example-queue -P /root/example.ppd
      Copy to Clipboard
    • ローカルドライバーデータベース内のドライバーを使用してプリンターを追加するには、次の手順を実行します。

      1. データベース内のドライバーをリスト表示します。

        # lpinfo -m
        ...
        drv:///sample.drv/generpcl.ppd Generic PCL Laser Printer
        ...
        Copy to Clipboard
      2. データベース内のドライバーへの URI を使用してプリンターを追加します。

        # lpadmin -p Demo-printer -E -v socket://192.0.2.200/ -m drv:///sample.drv/generpcl.ppd
        Copy to Clipboard

    これらのコマンドでは、次のオプションを使用します。

    • -p <printer_name>: CUPS 内のプリンターの名前を設定します。
    • -E: プリンターを有効にします。CUPS はそのプリンターのジョブを受け付けます。このオプションは -p の後に指定する必要があることに注意してください。詳細は、お使いのシステムの man ページでオプションの説明を参照してください。
    • -v <uri>: プリンターまたはリモートプリントサーバーキューへの URI を設定します。
    • -m <driver_uri>: ローカルドライバーデータベースから取得した指定のドライバー URI に基づいて PPD ファイルを設定します。
    • -P <PPD_file>: PPD ファイルへのパスを設定します。

検証

  1. 使用可能なプリンターを表示します。

    # lpstat -p
    printer Demo-printer is idle. enabled since Fri 23 Jun 2023 09:36:40 AM CEST
    Copy to Clipboard
  2. テストページを印刷します。

    # lp -d Demo-printer /usr/share/cups/data/default-testpage.pdf
    Copy to Clipboard

第10章 Web インターフェイスを使用した CUPS プリンターのメンテナンスおよび管理タスクの実行

プリンター管理者は、場合によってはプリントサーバー上でさまざまなタスクを実行する必要があります。以下に例を示します。

  • 技術者がプリンターを修理している間のプリンターの一時停止などのメンテナンスタスク
  • プリンターのデフォルト設定の変更などの管理タスク

これらのタスクは、CUPS の Web インターフェイスを使用して実行できます。

前提条件

手順

  1. ブラウザーを使用して、https://<hostname>:631/printers/ にアクセスします。

    Web インターフェイスには HTTPS プロトコルを使用して接続する必要があります。使用しないと、セキュリティー上の理由から、CUPS が後のステップで認証できなくなります。

  2. 設定するプリンターの名前をクリックします。
  3. メンテナンスタスクを実行するか管理タスクを実行するかに応じて、リストから必要なアクションを選択します。
  4. ユーザーがまだ認証されていない場合、CUPS は管理ユーザーの認証情報の入力を求めます。許可されたユーザーのユーザー名とパスワードを入力します。
  5. タスクを実行します。

第11章 Samba を使用した Kerberos 認証による Windows プリントサーバーへの印刷

samba-krb5-printing ラッパーを使用すると、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) にログインした Active Directory (AD) ユーザーは、Kerberos を使用して Active Directory (AD) に対して認証して、Windows プリントサーバーに印刷ジョブを転送するローカルの CUPS プリントサーバーに印刷を出力できます。

この設定の利点は、RHEL 上の CUPS の管理者が、設定で固定ユーザー名およびパスワードを保存する必要がないことです。CUPS は、印刷ジョブを送信するユーザーの Kerberos チケットで AD に対して認証します。

注記

Red Hat は、ローカルシステムから CUPS への印刷ジョブの送信のみをサポートしています。Samba プリントサーバー上のプリンターの再共有はサポートしていません。

前提条件

  • ローカルの CUPS インスタンスに追加するプリンターが、AD プリントサーバーで共有されている。
  • AD のメンバーとして RHEL ホストに参加している。
  • CUPS が RHEL にインストールされており、cups サービスが実行されている。
  • プリンターの PostScript Printer Description (PPD) ファイルが /usr/share/cups/model/ ディレクトリーに保存されている。

手順

  1. samba-krb5-printingsamba-client、および krb5-workstation パッケージをインストールします。

    # dnf install samba-krb5-printing samba-client krb5-workstation
    Copy to Clipboard
  2. 必要に応じて、ドメイン管理者として認証を行い、Windows プリントサーバーで共有されるプリンターの一覧を表示します。

    # smbclient -L <windows_print_server> -U administrator@<AD_KERBEROS_REALM> --use-kerberos=required
    
    	Sharename       Type      Comment
    	---------       ----      -------
    	...
    	Example         Printer   Example
    	...
    Copy to Clipboard
  3. 必要に応じて、CUPS モデルのリストを表示して、プリンターの PPD 名を指定します。

    lpinfo -m
    ...
    samsung.ppd Samsung M267x 287x Series PXL
    ...
    Copy to Clipboard

    次のステップでプリンターを追加する場合は、PPD ファイルの名前が必要です。

  4. CUPS にプリンターを追加します。

    # lpadmin -p "<printer_name>" -v smb://<windows_print_server>/<printer_share_name> -m samsung.ppd -o auth-info-required=negotiate -E
    Copy to Clipboard

    このコマンドでは次のオプションを使用します。

    • -p <printer_name> は、CUPS にプリンターの名前を設定します。
    • -v <URI_to_Windows_printer> は、Windows プリンターに URI を設定します。smb://<host_name>/<printer_share_name> の形式を使用します。
    • -m <PPD_file> は、プリンターが使用する PPD ファイルを設定します。
    • -o auth-info-required=negotiate は、印刷ジョブをリモートサーバーに転送する際に CUPS が Kerberos 認証を使用するように設定します。
    • -E はプリンターを有効にします。CUPS はそのプリンターのジョブを受け付けます。

検証

  1. AD ドメインユーザーとして RHEL ホストにログインします。
  2. AD ドメインユーザーとして認証します。

    # kinit <domain_user_name>@<AD_KERBEROS_REALM>
    Copy to Clipboard
  3. ローカルの CUPS プリントサーバーに追加したプリンターにファイルを出力します。

    # lp -d <printer_name> <file>
    Copy to Clipboard

第12章 cups-browsed を使用してリモートプリントサーバーのプリンターをローカルに統合する

cups-browsed サービスは、DNS サービス検出 (DNS-SD) と CUPS ブラウジングを使用して、共有リモートプリンターのすべて、またはフィルタリング後のサブセットを、ローカルの CUPS サービスで自動的に利用できるようにします。

たとえば、管理者はワークステーションでこの機能を使用して、信頼できるプリントサーバーのプリンターのみをアプリケーションの印刷ダイアログで使用できるようにすることができます。プリントサーバーが多数のプリンターを共有している場合、リストに表示されるプリンターの数を減らすために、参照するプリンターを特定の条件でフィルタリングするように cup-browsed を設定することもできます。

注記

アプリケーションの印刷ダイアログが DNS-SD などの他のメカニズムを使用してリモートプリンターのリストを表示している場合、cups-browsed は影響を及ぼしません。また、cups-browsed サービスは、ユーザーがリストにないプリンターに手動でアクセスすることを妨げるものではありません。

前提条件

  • CUPS サービスがローカルホストで設定されている
  • リモート CUPS プリントサーバーが存在する。このサーバーには次の条件が適用されます。

    • サーバーが、クライアントからアクセス可能なインターフェイスでリッスンしている。
    • /etc/cups/cups.conf ファイル内のサーバーの <Location /> ディレクティブにある Allow from パラメーターにより、クライアントの IP アドレスからのアクセスが許可されている。
    • サーバーがプリンターを共有している。
    • ファイアウォールルールにより、クライアントからサーバーの CUPS ポートへのアクセスが許可されている。

手順

  1. /etc/cups/cups-browsed.conf ファイルを編集し、次の変更を加えます。

    1. ポーリングするリモート CUPS サーバーごとに BrowsePoll パラメーターを追加します。

      BrowsePoll remote_cups_server.example.com
      BrowsePoll 192.0.2.100:1631
      Copy to Clipboard

      リモート CUPS サーバーが 631 とは異なるポートでリッスンする場合は、ホスト名または IP アドレスに :_<port>_ を追加します。

    2. オプション: フィルターを設定して、ローカル CUPS サービスに表示されるプリンターを制限します。たとえば、名前に sales_ が含まれるキューをフィルタリングするには、次のパラメーターを追加します。

      BrowseFilter name sales_
      Copy to Clipboard

      さまざまなフィールド名でフィルタリングしたり、フィルターを無効にしたり、正確な値を照合したりできます。詳細は、システムの cups-browsed.conf(5) man ページのパラメーターの説明と例を参照してください。

    3. オプション: ポーリング間隔とタイムアウトを変更して、参照サイクルの数を制限します。

      BrowseInterval 1200
      BrowseTimeout 6000
      Copy to Clipboard

      プリンターが参照リストから消えるのを避けるために、BrowseIntervalBrowseTimeout の両方を同じ比率で増やしてください。つまり、BrowseInterval の値を 5 以上の整数で乗算し、その計算結果の値を BrowseTimeout に使用します。

      デフォルトでは、cups-browsed は 60 秒ごとにリモートサーバーをポーリングし、タイムアウトは 300 秒です。ただし、キューの数が多いプリントサーバーでこれらのデフォルト値を使用すると、大量のリソースが消費される可能性があります。

  2. cups-browsed サービスを有効にして起動します。

    # systemctl enable --now cups-browsed
    Copy to Clipboard

検証

  • 使用可能なプリンターをリスト表示します。

    # lpstat -v
    device for Demo-printer: implicitclass://Demo-printer/
    ...
    Copy to Clipboard

    プリンターの出力に implicitclass が含まれていれば、cups-browsed サービスが CUPS でプリンターを管理しています。

第13章 systemd ジャーナルの CUPS ログへのアクセス

デフォルトでは、CUPS はログメッセージを systemd ジャーナルに保存します。ここでは、以下の点を説明します。

  • エラーメッセージ
  • アクセスログエントリー
  • ページログエントリー

手順

  • ログエントリーを表示します。

    • すべてのログエントリーを表示するには、次のように入力します。

      # journalctl -u cups
      Copy to Clipboard
    • 特定の印刷ジョブのログエントリーを表示するには、次のように入力します。

      # journalctl -u cups JID=<print_job_id>
      Copy to Clipboard
    • 特定の期間内のログエントリーを表示するには、次のように入力します。

      # journalectl -u cups --since=<YYYY-MM-DD> --until=<YYYY-MM-DD>
      Copy to Clipboard

      YYYY は年に、MM は月に、DD は日に置き換えます。

第14章 systemd ジャーナルではなくファイルにログを保存するように CUPS を設定する

デフォルトでは、CUPS はログメッセージを systemd ジャーナルに保存します。ログメッセージをファイルに保存するように CUPS を設定することもできます。

手順

  1. /etc/cups/cups-files.conf ファイルを編集し、AccessLogErrorLog、および PageLog パラメーターを、これらのログファイルを保存するパスに設定します。

    AccessLog /var/log/cups/access_log
    ErrorLog /var/log/cups/error_log
    PageLog /var/log/cups/page_log
    Copy to Clipboard
  2. /var/log/cups/ 以外のディレクトリーにログを保存するように CUPS を設定する場合は、このディレクトリーに cupd_log_t SELinux コンテキストを設定します。たとえば、次のように設定します。

    # semanage fcontext -a -t cupsd_log_t "/var/log/printing(/.*)?"
    # restorecon -Rv /var/log/printing/
    Copy to Clipboard
  3. cups サービスを再起動します。

    # systemctl restart cups
    Copy to Clipboard

検証

  1. ログファイルを表示します。

    # cat /var/log/cups/access_log
    # cat /var/log/cups/error_log
    # cat /var/log/cups/page_log
    Copy to Clipboard
  2. /var/log/cups/ 以外のディレクトリーにログを保存するように CUPS を設定した場合は、ログディレクトリーの SELinux コンテキストが cupd_log_t であることを確認します。

    # ls -ldZ /var/log/printing/
    drwxr-xr-x. 2 lp sys unconfined_u:object_r:cupsd_log_t:s0 6 Jun 20 15:55 /var/log/printing/
    Copy to Clipboard

第15章 高可用性 CUPS プリントサーバー環境の設定

クライアントが中断することなくプリンターにアクセスする必要がある場合は、複数のホストに CUPS を設定し、印刷キュー参照機能を使用して高可用性を実現できます。印刷クライアントは、さまざまな印刷サーバーにより共有される印刷キューを自動的に設定します。クライアントが印刷ジョブをローカル印刷キューに送信すると、クライアント上の CUPS はジョブを印刷サーバーの 1 つにルーティングし、印刷サーバーはそのジョブを処理してプリンターに送信します。

手順

  1. 2 台以上のサーバーに CUPS をセットアップします。

    1. CUPS をインストールして設定します
    2. TLS 暗号化を有効にします
    3. lpadmin ユーティリティー または Web インターフェイス を使用して、すべての CUPS インスタンスに印刷キューを追加します。Web インターフェイスを使用する場合は、プリンターを追加するときに Share this printer オプションを選択してください。lpadmin ユーティリティーでは、この設定がデフォルトで有効になります。

      重要

      高可用性シナリオでは、1 台のプリントサーバー上の各キューには、他のサーバー上に完全に同じ名前のキューが必要です。lpstat -e コマンドを使用すると、各サーバーのキュー名を表示できます。

      オプション: 各サーバーのキューを、異なるプリンターを参照するように設定できます。

  2. 印刷クライアントの場合は以下を行います。

    1. /etc/cups/cups-browsed.conf ファイルを編集し、各 CUPS 印刷サーバーの BrowsePoll ディレクティブを追加します。

      BrowsePoll print_server_1.example.com:631
      BrowsePoll print_server_2.example.com:631
      Copy to Clipboard
    2. cups サービスと cups-browsed サービスの両方を有効にして起動します。

      # systemctl enable --now cups cups-browsed
      Copy to Clipboard

検証

  • クライアントで使用可能なプリンターを表示します。

    # lpstat -t
    ...
    device for Demo-printer: implicitclass://Demo-printer/
    Demo-printer accepting requests since Fri 22 Nov 2024 11:54:59 AM CET
    printer Demo-printer is idle.  enabled since Fri 22 Nov 2024 11:54:59 AM CET
    ...
    Copy to Clipboard

    出力例は、Demo-printer キューが implicitclass バックエンドを使用していることを示しています。その結果、cups-browsed は、このキューの印刷ジョブを、このクライアントの BrowsePoll ディレクティブで指定されたホストにルーティングします。

第16章 CUPS ドキュメントへのアクセス

CUPS では、CUPS サーバーにインストールされているサービスのドキュメントにブラウザーからアクセスできます。このドキュメントには次のものが含まれます。

  • コマンドラインによるプリンターの管理やアカウンティングなどに関する管理ドキュメント
  • man ページ
  • 管理 API などのプログラミングドキュメント
  • 参考資料
  • Specifications

前提条件

手順

  1. ブラウザーを使用して、http://<hostname_or_ip_address>:631/help/ にアクセスします。
  2. Online Help Documents のエントリーを展開し、参照するドキュメントを選択します。

法律上の通知

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