第18章 ネットワーク
以下の章では、ネットワークに関する RHEL 9 と RHEL 10 の間の最も重要な変更点を説明します。
ネットワークチームドライバーが削除される
teamd
サービスと libteam
ライブラリーは Red Hat Enterprise Linux 10 で削除されました。代替として、ネットワークチームの代わりにボンディングを設定します。
Red Hat は、機能が類似するボンディングとチームの機能を 2 つ管理しなくてもいいように、カーネルベースのボンディングに注力しています。ボンディングコードは、顧客の採用率が高く、堅牢で、活発なコミュニティー開発が行われています。その結果、ボンディングコードは拡張、更新されます。
チームをボンディングに移行するには、ネットワークチーム設定をネットワークボンディングに移行する を参照してください。
ifcfg 形式のネットワーク設定ファイルのサポートが削除される
RHEL 9.0 以降、RHEL は新しく作成されたネットワーク設定をキーファイル形式で /etc/NetworkManager/system-connections/
ディレクトリーに保存しました。以前から /etc/sysconfig/network-scripts/
ディレクトリーに古い ifcfg 形式で設定が保存されていた接続は、中断されることなく動作し続けました。ただし、RHEL 10 リリースでは、ifcfg 形式ベースのネットワーク設定ファイルのサポートが削除されました。
dhclient
ユーティリティーが削除される
dhclient
ユーティリティーは、DHCP サーバーから IP アドレス、ネットワーク設定、およびその他の情報を取得するために使用されるクライアントプログラムです。dhclient
は、2022 年初頭時点で開発されなくなったため、このユーティリティーは Red Hat Enterprise Linux 10 で削除されました。削除した結果、/etc/NetworkManager.conf
で dhcp=dhclient
を設定できなくなります。代わりに、NetworkManager 設定で dhcp=internal
(デフォルト) を使用してください。
iPXE に関連する NIC デバイスドライバーが削除される
Internet Preboot eXecution Environment (iPXE) ファームウェアは、マシンをリモートで起動する必要がある環境でよく使用される、ネットワーク経由の各種起動オプションを提供します。これには、多数のデバイスドライバーも含まれています。RHEL 10 リリースでは、以下が削除されます。
-
完全な
ipxe-roms
サブ RPM パッケージ ipxe-bootimgs-x86
サブ RPM パッケージからのデバイスドライバーを含むバイナリーファイル:-
/usr/share/ipxe/ipxe-i386.efi
-
/usr/share/ipxe/ipxe-x86_64.efi
-
/usr/share/ipxe/ipxe.dsk
-
/usr/share/ipxe/ipxe.iso
-
/usr/share/ipxe/ipxe.lkrn
-
/usr/share/ipxe/ipxe.usb
-
代わりに、iPXE はプラットフォームファームウェアに依存して、ネットワークブート用の NIC ドライバーを提供するようになりました。/usr/share/ipxe/ipxe-snponly-x86_64.efi
および /usr/share/ipxe/undionly.kpxe
iPXE バイナリーファイルは ipxe-bootimgs
パッケージの一部であり、プラットフォームファームウェアが提供する NIC ドライバーを使用します。
NetworkManager-initscripts-updown
を利用できない
関連する network-scripts
パッケージが RHEL 9 ですでに削除されているため、NetworkManager-initscripts-updown
サブパッケージは RHEL 10 で削除されています。
いくつかのカーネルモジュールを kernel-modules-extra
に移動する
以下のユーティリティーに関連するすべてのカーネルモジュールは、kernel-modules-extra
パッケージに移動されました。
-
iptables
-
ip6tables
-
ipset
-
ebtables
-
arptables
ATM カプセル化が削除される
非同期転送モード (ATM) カプセル化により、ATM アダプテーションレイヤー 5(AAL-5) のレイヤー 2(ポイントツーポイントプロトコル、イーサネット) またはレイヤー 3(IP) 接続が可能になります。RHEL 9 では、ATM 実装はサポートされておらず、非推奨でした。RHEL 10 ではカーネル機能がカーネル内で無効化されており、ATM は利用できなくなりました。
PF_KEYv2
カーネル API が削除される
以前の RHEL バージョンでは、アプリケーションは非推奨の PV_KEYv2
と新しい netlink
API を使用して、カーネルの IPsec 実装を設定できました。PV_KEYv2
はアップストリームで積極的にメンテナンスされておらず、最新の暗号、オフロード、拡張シーケンス番号のサポートなどの重要なセキュリティー機能が欠けています。その結果、RHEL 10 では PV_KEYv2
API が削除されました。アプリケーションでこのカーネル API を使用していた場合は、代わりに最新の netlink
API を使用するようにアプリケーションを移行してください。
firewalld
のロックダウン機能が削除される
firewalld
のロックダウン機能では、root
として実行中のプロセスが自身を許可リストに追加するのを防止できませんでした。RHEL 10 では、この機能は削除されました。