6.2 リリースノート
Red Hat Enterprise Linux 6.2 のリリースノート
エディッション 2
概要
前書き
注記
第1章 ハードウェアサポート
biosdevname パッケージはバージョン 0.3.8 にアップグレードされ、--smbios
および --nopirq
コマンドラインパラメーターを提供します。これらのコマンドラインパラメーターを使って、codepath を削除したソースコードパッチはビルドプロセスから削除できます。
第2章 インストール
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、initrd.img
ファイルに使用される圧縮形式が変更しました。イメージは Gzip ではなく LZMA を使用して圧縮されるようになりました。
xz -d
コマンドを使用します。例えば以下のとおりです。
~]# xz -dc initrd.img | cpio -id
xz -9 --format=lzma
コマンドを使用します。例えば以下のとおりです。
~]# find . | cpio -c -o | xz -9 --format=lzma > initrd.img
無人インストールの場合、ファイバーチャネルと SAS (シリアルアタッチド SCSI) デバイスは、WWN (ワールドワイドネーム) やワールドワイド識別子 (WWID) で指定できるようになりました。WWN は IEEE 標準の一部で、SAN (ストレージエリアネットワーク) や他の高度なネットワークトポロジーを活用するユーザーにとってはインストール時にストレージデバイスを特定しやすくなります。冗長性やパフォーマンス向上の目的で、ストレージデバイスが複数の物理パスを使用するサーバーに接続される場合、デバイスを特定するためにはそうしたパスの WWN で十分です。
64-bit PowerPC および 64-bit IBM POWER Series システムの初期 ramdisk ファイルは initrd.img
と呼ばれます。以前のリリースでは、ramdisk.image.gz
と呼ばれていました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 でネットワークインストールを行う場合、ipv6
ブートオプションに静的 IPv6 アドレスを指定できます。指定するアドレスは以下の形式にする必要があります。
<IPv6 address>[/<prefix length>]
3ffe:ffff:0:1::1/128
です。プレフィックスが省略されると、64
値が仮定されます。ipv6
ブートオプションに静的 IPv6 アドレスを指定することで、ipv6
ブートオプション用に指定された既存の dhcp
および auto
パラメーターを補完します。
第3章 カーネル
Red Hat Enterprise Linux 6.2 以前は、qla4xxx
アダプターファームウェアは iSCSI ターゲットへの検出とログインを管理していました。Red Hat Enterprise Linux 6.2 の新機能により、open-iscsi を使用して、qla4xxx
検出とログインプロセスを管理できます。これで、さらに一元的な管理プロセスが可能になります。
qla4xxx
iSCSI ファームウェアの設定は、以下のようにアクセスできます。
~]# iscsiadm -m fw
ql4xdisablesysfsboot=1
のパラメーターを以下のように設定することで無効にできます。
/etc/modprobe.d
ファイルのパラメーターを設定します。~]#
echo "options qla4xxx ql4xdisablesysfsboot=1" >> /etc/modprobe.d/qla4xxx.conf
qla4xxx
モジュールをリロードします。その方法には 2 つあります。次のコマンドセットを実行するか~]#
rmmod qla4xxx
~]#modprobe qla4xxx
qla4xxx
デバイスからブートしている場合は、システムをリブートします。
qla4xxx
デバイスからブートする場合、Red Hat Enterprise Linux 6.1 から Red Hat Enterprise Linux 6.2 へアップグレードすると、システムは新しいカーネルでブートできなくなります。これに関する既知の問題については、テクニカルノート を参照してください。
kdump (kexec ベースのクラッシュダンプの仕組み) は、次のような Red Hat Enterprise Linux 6 のファイルシステムでのコアダンプに対応するようになりました。
- Btrfs (このファイルシステムはテクノロジープレビューです)
- ext4
- XFS (XFS はレイヤー製品であり、kexec kdump を有効にするにはインストールする必要があります)
pkgtemp
モジュールは coretemp
モジュールにマージされたため、pkgtemp
モジュールは非推奨になりました。coretemp
モジュールは、以前にサポートしていたすべての機能に加えて、pkgtemp
モジュールによりサポートされていた機能にも対応するようになりました。
coretemp
はコアの温度ごとに提供し、pkgtemp
モジュールは CPU パッケージの温度を提供していただけでした。Red Hat Enterprise Linux 6.2 では coretemp
モジュールにより、コア (core)、非コア (uncore)、およびパッケージ (package) の温度を読み取ることが可能になりました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、SCSI midlayer はオプションの SCSI ドライバー queuecommand
機能のロックレスディスパッチをサポートしています。
scsi_host_template
構造にあるこれまで使われていないフラグを使用して、SCSI ホストバスロックが有効にされることなくドライバー queuecommand
がディスパッチされることを SCSI midlayer に示します。
queuecommand
ディスパッチ中に Scsi_Host
ロックは有効となります。scsi_host_alloc
の前に scsi_host_template
ロックレスビットを設定すると、Scsi_Host
ロックが有効にされることなくドライバー queuecommand
機能がディスパッチされます。そのような場合、必要となるロック保護の責任はドライバー queuecommand
コードパスに 引き下げ られます。
queuecommand
を使用するよう更新された SCSI Drivers は、以下のとおりです。
- iscsi_iser
- be2iscsi
- bnx2fc
- bnx2i
- cxgb3i
- cxgb4i
- fcoe (ソフトウェア fcoe)
- qla2xxx
- qla4xxx
Red Hat Enterprise Linux 6.2 には、テクノロジープレビュー として FCoE ターゲットモードに対するサポートが含まれています。このカーネル機能は、targetadmin を使って設定でき、fcoe-target-utils パッケージにより提供されます。FCoE は、DCB (データセンターブリッジング) をサポートするネットワーク上で使用されるよう設計されています。詳細については、dcbtool(8)
と targetadmin(8)
の man ページに記載されています。
重要
Red Hat Enterprise Linux 6.1 では、BZ#605786 のとおり crashkernel=auto
ブートパラメーターは非推奨でした。Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、crashkernel=auto
に対するサポートはすべての Red Hat Enterprise Linux 6 システムで継続されます。
mdadm
および mdmon
ユーティリティは、Array Auto-Rebuild、RAID Level Migrations、RAID 5 サポート制限、SAS-SATA ドライブローミングをサポートするよう更新されました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 はフラッシュ要求のマージに対応して、フラッシュの実行が遅いデバイスをサポートします。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では UV2 Hub サポートを追加しました。UV2 は UVhub チップで、現在の UV1 hub チップに取って代わるものです。UV2 は現在開発中の HARP ハブチップを使用します。UV2 は新しい Intel ソケットに対応します。UV2 の新機能によりパフォーマンスが向上します。UV2 は SSI の 64 TB メモリーに対応するよう設計されています。加えて、ノードコントローラー MMR も UV システム向けに更新されました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、kdump が ACPI RSDP アドレスを渡すよう acpi_rsdp
ブートパラメーターを導入したため、kdump カーネルは EFI (拡張ファームウェアインターフェース) なしにブートできます。
以下の拡張機能が、QETH ネットワークデバイスドライバーに追加されました。
af_iucv
HiperSockets トランスポートに対するサポート- シグナルアダプターの強制表示のサポート
- ストレージブロックの非同期配信に対するサポート
if_ether
モジュールに新しいイーサネットプロトコル ID を追加
IBM zEnterprise 196 による、新しい CPACF (CP Assist for Cryptographic Function) アルゴリズムへのサポートが追加されました。アルゴリズムを加速する新しいハードウェアは以下のとおりです。
- AES の CTR モード
- DES および 3DES の CTR モード
- キーの長さが 128 ビットと 256 ビットである AES の XTS モード
- GCM モードの GHASH メッセージダイジェスト
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、pci=realloc
カーネルパラメーターによる条件付きのリソース再配分に対応します。この機能は、回帰することなく追加で PCI リソースを動的に再配分するための一時的な解決策を提供します。デフォルトでは動的な再配分は無効ですが、pci=realloc
カーネルコマンドラインパラメーターにより有効にできます。
デフォルトでは、動的な再配分は無効です。pci=realloc
カーネルコマンドラインパラメーターにより有効にできます。また、ブリッジリソースは PCI assign unassigned
コールの広範囲を提供できるよう更新されました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、カーネルの SMEP (Supervision Mode Execution Protection) を有効にします。SMEP は強制メカニズムを提供し、スーパーバイザーモードにある間にユーザーページから実行される予定がない要件をシステムが設定できるようにします。その後、この要件は CPU により強制されます。この機能により、システムコードの脆弱性に関係なく、CPU がスーパーバイザーモードにある間にユーザーモードページから実行されるすべての攻撃を防止することができます。
最新の Intel プラットフォーム用の強化された高速文字列 REP
MOVSB
/STORESB
の手順に対するサポートが追加されました。
USB 3.0 xHCI ホスト側のドライバーが更新され、分割ハブサポートが追加されました。USB 3.0 roothub と USB 2.0 roothub を登録することで xHCI ホストコントローラーが外部 USB 3.0 ハブとして機能できます。
ACPI、APEI、EINJ パラメーターのサポートはデフォルトでは無効です。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、pstore — プラットフォーム依存の永続ストレージに対するファイルシステムインターフェースへのサポートを追加しました。
printk ベースの APEI (ACPI Platform Error Interface) ハードウェアエラー報告に対するサポートが追加されました。様々なソースからのエラーを統合して、システムコンソールに送る方法を提供します。
ioatdma
ドライバー (dma
エンジンドライバー) が、dma
エンジンを使用する Intel プロセッサに対応するよう更新されました。
Digi/IBM PCIe 2-port Async EIA-232 Adapter に対するサポートが、8250 PCI シリアルドライバーに追加されました。また、Digi/IBM PCIe 2-port Async EIA-232 Adapter の EEH (拡張エラー処理) サポートが、8250 PCI シリアルドライバーに追加されました。
ARI (Alternative Routing- ID Interpretation) サポート、PCIe v2 機能が Red Hat Enterprise Linux 6.2 に追加されました。
PCIe OBFF (Optimized Buffer Flush/Fill) 有効/無効サポートが、Intel の最新プラットフォーム向けに追加されました。OBFF は、割り込みとメモリーアクティビティ、それらの低下する可能性があるパワーの影響に関する情報をデバイスに提供して、最終的にはエネルギー効率を改善します。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、カーネルは dmesg
バッファーからカーネルの oops/panic レポートを PowerPC アーキテクチャの NVRAM にキャプチャするため有効です。
MXM ドライバーは、NVIDIA プラットフォームでグラフィックススイッチングを処理する役割があり、Red Hat Enterprise Linux 6.2 にバックポートされました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、ページコアレッシングを導入しました。これは、IBM Power サーバーにある機能で、論理パーティション間で同一ページをコアレッシングできます。
L3 キャッシュパーティション分割に対するサポートが、最新の AMD family CPU に追加されました。
thinkpad_acpi
モジュールが更新され、新しい ThinkPad モデルが追加されました。
最新の Intel processor C-State サポートが intel_idle に追加されました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、AMD システムで IOMMU (I/O メモリー管理ユニット) に関する警告を表示します。
ブート時の dmesg
へのボード、システム、BIOS 情報のログが追加されました。
cputable
エントリがカーネルに追加され、最新 IBM PowerPC プロセッサファミリーに対応するようになりました。
VPHN (Virtual Processor Home Node) 機能が IBM System p で無効になりました。
以下のドライバーは、最新の Intel チップセットでサポートされています。
i2c-i801
SMBus ドライバーahci
AHCI モード SATAata_piix
IDE モード SATA ドライバー- TCO Watchdog ドライバー
- LPC Controller ドライバー
IBM PowerPC システムでは、sysctl または /proc/sys/kernel/exec-shield
パラメーターの exec-shield
値は強制でなくなりました。
64-bit PowerPC および 64-bit IBM POWER Series システムの kdump
をサポートするための確認と修正が追加で行われました。
UV MMTIMER モジュール (uv_mmtimer
) が SGI プラットフォームで有効になりました。uv_mmtimer
モジュールにより、ユーザーランドがすべてのハブ全体に同期された UV システムのリアルタイムクロックに直接アクセスできます。
IB700
モジュールへのサポートが Red Hat Enterprise Linux 6.2 に追加されました。
aer_mask_override
モジュールパラメーターが追加され、PCI デバイスに対する修正済みまたは未修正マスクをオーバーライドする方法を提供します。マスクは、ステータスに対応するビットが aer_inject()
機能に渡されるようにします。
USB 3.0 ホストコントローラーのサポートが、64-bit PowerPC および 64-bit IBM POWER Series システムに追加されました。
改善されたアップストリームの OOM (Out of Memory) killer の実装が、Red Hat Enterprise Linux 6.2 にバックポートされました。改良点は以下のとおりです。
- OOM killer は終了しようとしているプロセスの方を選択します。
- OOM kill プロセスは、選択されたプロセスの子も kill します。
- ヒューリスティックが追加され、
forkbomb
プロセスを kill します。
oom_score_adj
/proc
調整可能なパラメーターは、各プロセスの oom_score_adj
変数に保管されている値を追加し、/proc
で調整可能です。これにより、ユーザースペースで OOM killer がそれぞれのプロセスを選択する度合いを調整することができます。-1000
に設定すると OOM kill を全体的に無効にし、+1000
に設定するとこのプロセスを OOM のプライマリ kill ターゲットとしてマークすることになります。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 には更新された zram
ドライバーが備わっています (汎用 RAM ベースの圧縮ブロックデバイスを作成)。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、top ユーティリティが使用するマイクロ秒の粒度で CPU 時間を提供することによって、カーネルの taskstat ユーティリティ (ASET タスクステータスを表示) が強化されました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、バージョン 3.1 へのカーネルアップグレードと併せて perf ユーティリティをアップストリームバージョン 3.1 に更新しました。perf ユーティリティにより提供された新しくサポートされるカーネル機能については、BZ#725524 を参照してください。perf ユーティリティの更新版には、以下が含まれます。
- cgroup サポートを追加
/proc/sys/kernel/kptr_restrict
の処理の追加- キャッシュミス比率の表示の追加
- CPU イベントを表示するための
-d -d
および-d -d -d
オプションの追加 --sync/-S
オプションの追加PERF_TYPE_RAW
パラメーターに対するサポートの追加-f/--fields
オプションに関するドキュメントの追加- python binding サポートへの python-perf パッケージの追加
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は最新 Intel プロセッサに対する OProfile サポートを追加します。
IRQ (割り込み要求) の数は すべての irq の合計 (sum of all irq) カウンターでカウントされており、/proc/stat
ファイルのルックアップコストを削減します。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、スリープおよびプリエンプトパスの次の buddy ヒントについてスケジューラにヒントが提供されるようスケジューリングを改善しました。このヒント/拡張機能は、複数のタスクグループにある複数タスクのワークロードに役立ちます。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、Transparent Hugepage がカーネルの数箇所でサポートされるようになりました。
- mremap、mincore、mprotect のシステムコール
/proc
の調整可能なパラメーターである、/proc/<pid>/smaps
と/proc/vmstat
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、FIPS-140 要件に適合するよう XTS (XEX ベースの Tweaked CodeBook) AES256 self-tests を追加しました。
以前は、SELinux netfilter フックがパケットをドロップすると NF_DROP
を返していました。Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、netfilter フックのドロップは永続かつ致命的なエラーとして示され、一時的なものではありません。そうすることでエラーはスタックにまで戻され、一部ではアプリケーションは問題があった迅速な対話を可能にします。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、再マウントのマウントオプション (mount -o remount
) は新しい LSM フックに渡されます。
Red Hat Enterprise Linux 6.0 および 6.1 では、物理アドレスモードで実行中の UEFI システムにデフォルト設定されていました。Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、仮想アドレスモードで実行中の UEFI システムにデフォルト設定されています。以前の動作は、physefi
カーネルパラメーターを渡すことで取得できる場合があります。
Red Hat Enterprise Linux 6 では、SSH 経由でコアを kdump するためのデフォルトの方法 core_collector
が、scp
から makedumpfile
に変更しました。これは、ネットワークリンクでコピーする場合にコアファイルのサイズを縮小するのに役立ち、高速なコピーが可能になります。
/etc/kdump.conf
ファイルで以下を指定します。
core_collector /usr/bin/scp
第4章 リソース管理
Linux カーネルの CFS (Completely Fair Scheduler) は、プロポーショナルシェアスケジューラです。タスクの優先度/ウェイトやタスクグループに割り当てられたシェアに応じ、タスクグループ間で CPU 時間を比例して配分します。システムに利用可能なアイドル CPU サイクルが十分にある場合は、CFS では、スケジューラが持つ仕事量保存型の性質によりタスクグループは CPU のシェア以上を得ることができます。
- 従量課金
- 複数のカスタマーを対象にするエンタープライズシステムでは、クラウドサービスプロバイダーは、サービスレベルに基づき決まった CPU 時間を仮想ゲストに割り当てる必要があります。
- サービスレベルの保証
- カスタマーは、それぞれの仮想ゲストに対してサービスの中断なく CPU リソースの割合を保持することを希望します。
Red Hat Enterprise Linux 6 では、追加設定なく cgroups を有効にして、libvirt はゲストモデルごとに cgroups を作成していました。大規模な SMP システムでは、cgroups の数が増えるとパフォーマンスは低下していました。しかし、Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、cgroups CPU のスケーラビリティが大幅に向上し、パフォーマンスに影響を与えることなく一度に数百もの cgroups を作成、実行することができます。
/proc
調整可能なパラメーターである dd sysctl_sched_shares_window
が追加されました。デフォルトは 10 秒に設定されています。
cgroups I/O コントローラーの設計は、I/O コントローラー内のロック使用を減らすよう改善されたため、パフォーマンスも向上しました。また、I/O コントローラーは cgroup の統計ごとにサポートするようになりました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、page_cgroup
アレイに対して割り振られたオーバーヘッドを 37% 減らすことで、メモリーコントローラーにおけるメモリー使用のオーバーヘッドを改善しました。また、直接の page_cgroup-to-page
ポインターが削除されたため、メモリーコントローラーのパフォーマンスが向上しました。
CFQ の group_isolation
変数のデフォルトは、0
から 1
(/sys/block/<device>/queue/iosched/group_isoaltion
) に変更されました。多くのユーザーからの報告や様々なテストの実施後、デフォルト 1
がより役立つことが分かりました。0
に設定すると、すべてのランダム I/O キューは、アプリケーションが一部である実際の cgroup ではなく root cgroup の一部となります。そのため、アプリケーションにとってサービスの違いはありません。
注記
第5章 デバイスドライバー
Emulex LPFC FC/FCoE ドライバーに対するデフォルトの割り込み設定は、INT-X から MSI-X に変更されました。例として、以前の 0
の代わりに 2
にデフォルト設定されている lpfc_use_msi
モジュールパラメーター (/sys/class/scsi_host/host#/lpfc_use_msi
内) があります。この変更の詳細については、Red Hat Enterprise Linux 6.2 Technical Notes を参照してください。
- Emulex Fibre Channel Host Bus Adapters の
lpfc
ドライバーがバージョン 8.3.5.45.2p に更新されました。 mptfusion
ドライバーがバージョン 3.4.19 に更新されました。- Broadcom Netxtreme II 57712 チップの
bnx2fc
がバージョン 1.0.4 に更新されました。 - QLogic Fibre Channel HBA の
qla2xxx
ドライバーがバージョン 8.03.07.05.06.2-k に更新されました。 megaraid
ドライバーがバージョン 5.38 に更新されました。- Areca RAID コントローラーの
arcmsr
ドライバーが更新されました。 beiscsi
ドライバーがバージョン 2.103.298.0 に更新されました。- IBM Power Linux RAID SCSI HBA の
ipr
ドライバーがバージョン 2.5.2 に更新されました。 cciss
ドライバーが更新され、kdump 障害のcciss
ドライバーに関する解決策を提供します。hpsa
ドライバーが更新され、kdump 障害のhpsa
ドライバーに関する解決策を提供します。- Broadcom NetXtreme II iSCSI の
bnx2i
ドライバーがバージョン 2.7.0.3 に更新され、Multi-Port Single-Chip 10G Ethernet Converged Controllers の 578xx family に対応します。 mpt2sas
ドライバーがバージョン 09.101.00.00 に更新されました。- Brocade BFA FC SCSI ドライバー (
bfa
ドライバー) がバージョン 2.3.2.4 に更新されました。 - ServerEngines BladeEngine 2 Open iSCSI デバイスの
be2iscsi
ドライバーがバージョン 4.0.160r に更新されました。 ata_generic
ドライバーが更新され、Intel IDE-R ATA サポートが追加されました。isci
ドライバーがバージョン 2.6.40-rc に更新されました。libfc
、libfcoe
、fcoe
ドライバーが更新されました。qib
ドライバー TrueScale HCAs が更新されました。libata
モジュールが更新され、エラー処理が改善されました。md
ドライバーが更新され、dm-raid ターゲットを含むようになりました。DM インターフェースにより、RAID 機能が改善されました。現在、dm-raid コードはテクノロジープレビューです。- Device Mapper のサポートがアップストリームバージョン 3.1+ に更新されました。
- bsg/netlink インターフェースを使用する
qla4xxx
に対するアプリケーションサポートが追加されました。 - DIF/DIX カーネルコードが最新のアップストリームバージョンに更新され、
scsi
、block
、dm
/md
に適用されました。
- NetXen Multi port (1/10) Gigabit Network デバイスの
netxen
ドライバーがバージョン 4.0.75 に更新されました。 vmxnet3
ドライバーが更新されました。bnx2x
ドライバーがバージョン 1.70 に更新されました。- ServerEngines BladeEngine2 10Gbps ネットワークデバイスの
be2net
ドライバーがバージョン 4.0.100u に更新されました。 ixgbevf
ドライバーがバージョン 2.1.0-k に更新されました。- Chelsio Terminator4 10G Unified Wire Network Controllers の
cxgb4
ドライバーが更新されました。 - ネットワークデバイスの Chelsio T3 Family 用の
cxgb3
ドライバーが更新されました。 - Intel 10 Gigabit PCI Express ネットワークデバイスの
ixgbe
ドライバーがバージョン 3.4.8-k に更新されました。 - Intel PRO/1000 ネットワークデバイスの
e1000e
ドライバーがバージョン 1.3.16-k に更新されました。 - Intel PRO/1000 ネットワークデバイスの
e1000
ドライバーが更新され、Marvell Alaska M88E1118R PHY に対応するようになりました。 e100
ドライバーが更新されました。- Cisco 10G Ethernet デバイスの
enic
ドライバーがバージョン 2.1.1.24 に更新されました。 igbvf
ドライバーがバージョン 2.0.0-k に更新されました。- Intel Gigabit Ethernet Adapters の
igb
ドライバーが更新されました。 - NetXtreme II 1 Gigabit Ethernet コントローラーの
bnx2
ドライバーがバージョン 2.1.6+ に更新されました。 - Broadcom Tigon3 イーサネットデバイスの
tg3
ドライバーがバージョン 3.119 に更新されました。 - HP NC-Series QLogic 10 Gigabit Server Adapters の
qlcnic
ドライバーがバージョン 5.0.16+ に更新されました。 bna
ドライバーが更新されました。r8169
ドライバーが更新され、Rx チェックサムオフロードに関する 2 つのバグが修正されました。qlge
ドライバーがバージョン 1.00.00.29 に更新されました。cnic
ドライバーが更新され、Multi-Port Single-Chip 10G Ethernet Converged Controllers の 578xx family に対する iSCSI および FCoE のサポート、VLAN サポート、新しいbnx2x
ファームウェアインターフェースが追加されました。iwl6000
およびiwlwifi
が EEPROM バージョン 0x423 で更新されました。
radeon
ドライバーが 3.0 後の修正で更新され、drm/agp コードがバックポートされました。nouveau
およびi915
ドライバーが更新され、drm/agp コードがバックポートされました。- Ricoh メモリースティックドライバー (
R5C592
) が新しい KFIFO アプリケーションプログラムインターフェースで更新されました。 netjet
ドライバーが更新され、Digium TDM400P PCI Card がブラックリストに追加されました。lm78
ドライバーが更新されました。wacom
ドライバーが更新され、Cintiq 21UX2、Intuos4 WL、DTU-2231 アダプターカードのサポートが追加されました。synaptics
ドライバーが更新され、マルチタッチサポートが追加されました。- ALSA HDA オーディオドライバーが更新され、新しいチップセットと HDA オーディオコーディックに対するサポートが有効、改善されました。
edac
ドライバーが更新され、AMD プラットフォーム用の新しい Northbridge チップに対応するようになりました。
第6章 ストレージ
iprutils パッケージには、ipr
SCSI ストレージデバイスドライバーによりサポートされている SCSI デバイスを管理、設定するユーティリティが備わっています。iprutils パッケージは、IBM POWER7 の新しい 6 GB SAS アダプターに対して SAS VRAID 機能をサポートするよう更新されました。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、MD の RAID 機能が テクノロジープレビュー として LVM に追加されました。利用可能な基本機能は、RAID 論理ボリュームの作成、表示、名前変更、削除です。自動化されたフォールトトレランスはまだ利用できません。
--type <segtype>
引数を指定することで、RAID 論理ボリュームを作成できます。以下に数例を示します。
- RAID1 アレイ (LVM の
mirror
セグメントタイプとは異なる RAID1 の実装) を作成します。~]#
lvcreate --type raid1 -m 1 -L 1G -n my_lv my_vg
- RAID5 アレイ (3 つのストライプ + 1 つの暗黙のパリティ) を作成します。
~]#
lvcreate --type raid5 -i 3 -L 1G -n my_lv my_vg
- RAID6 アレイ (3 つのストライプ + 2 つの暗黙のパリティ) を作成します。
~]#
lvcreate --type raid6 -i 3 -L 1G -n my_lv my_vg
iSER イニシエーターとターゲットは完全にサポートされるようになりました。Red Hat Enterprise Linux は、InfiniBand を使用する実稼働環境、高スループットと低レイテンシが重要な要件となる環境の iSCSI イニシエーターとストレージサーバーとして機能できます。
LVM デバイスは、アクティベートとアクティベート解除をする時間が以前と比べて短くなりました。これは多くの LVM 設定と関わる高密度環境と関連しています。この例として、それぞれが 1 つ以上の論理ボリュームを使用する数百もの仮想ゲストをサポートするホストがあります。
第7章 ファイルシステム
現在 XFS ファイルシステムは Red Hat Enterprise Linux 6.2 でサポートされており、単一ホストの非常に大規模なファイルおよびファイルシステムに適合します。このファイルシステムによる利点としては、統合バックアップとリストア、直接 I/O、ファイルシステムのオンラインリサイズがあります。
Parallel NFS (pNFS) は NFS 4.1 スタンダードの一部で、クライアントが同時に直接ストレージデバイスにアクセスすることができます。pNFS アーキテクチャは、今日デプロイされている NFS サーバーに関連するスケーラビリティおよびパフォーマンスの課題を解決します。
/etc/modprobe.d/dist-nfsv41.conf
ファイルを作成して、システムをリブートします。
alias nfs-layouttype4-1 nfs_layout_nfsv41_files
-o minorversion=1
マウントオプションが指定されると、サーバーは pNFS が有効になり、pNFS クライアントコードは自動的に有効になります。
CIFS (共通インターネットファイルシステム) プロトコルにより、別のオペレーティングシステム上のリモートファイルにアクセスする統一的な方法を提供します。従来、CIFS クライアントは同期書き込みのみを許可していたため、クライアントプロセスは、書き込みが正しく完了するまでは制御を戻しませんでした。これでは、完了までに長時間かかる大規模なトランザクションの場合だと、パフォーマンスが低下する原因になる場合があります。CIFS クライアントでは、順次書き込みを待つ必要なく、同時にデータを書き込めるように更新されました。この変更により、パフォーマンスが最大で 200 % 改善します。
NTLMSSP 認証に対するサポートが、CIFS に追加されました。加えて、CIFS はカーネルの crypto API を使用するようになりました。
autofs4
モジュールがカーネルバージョン 2.6.38 に更新されました。
固定トレースポイントが ext3
および jbd
に追加されました。
ext4
における -o nobarrier
マウントオプションのサポートと、そのユーティリティである tune2fs、debugfs、libext2fs が追加されました。
第8章 ネットワーキング
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、マルチメッセージ send
システムコールを導入しました。これは Red Hat Enterprise Linux 6 にある既存の recvmmsg
システムコールの send
バージョンです。
sendmmsg
ソケット API は以下のようになります。
struct mmsghdr { struct msghdr msg_hdr; unsigned msg_len; }; ssize_t sendmmsg(int socket, struct mmsghdr *datagrams, int vlen, int flags);
Red Hat Enterprise Linux 6.2 には、マルチキューデバイス用の XPS (送信パケットステアリング) が含まれています。XPS は、パケットの送信に関わるプロセッサを特別に対象とすることにより、マルチキューデバイス用のネットワークパケットを効率良く送信することができます。XPS により、設定に基づいたパケット送信に関して送信キューを選択できます。これは、受信キューに基づいてプロセッサの選択が可能だった Red Hat Enterprise Linux 6.1 で実装されていた受信側の機能性と類似しています (RPS)。XPS はスループットを 20% から 30% 改善しました。
以前は、ブリッジはすべてのポートの未登録グループにパケットをフラッドしていました。しかし、この動作は未登録グループへのトラフィックが常に存在する環境では望ましくありません。Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、トラフィックが送信されるのは、ルーターとしてマークされたポートへの未登録グループのみです。強制的に任意のポートへフラッディングを行うには、ルーターとしてそのポートをマークしてください。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では SCTP マルチホーミングに対するサポートが追加されました — ノード (つまり、マルチホームノード) が複数の IP アドレスで到達可能です。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、UDP パケットドロップイベントにトレースポイントがさらに追加されました。こうしたトレースポイントにより、UDP パケットがドロップされる理由を分析できます。
カーネルの IPSet 機能が追加され、複数の IP アドレスまたはポート番号を格納するようになりました。また、それらを iptables を通じてコレクションと照合します。
初期 TCP 受信ウィンドウのデフォルトは 4 kB から 15 kB に増加しました。これによる利点は、どのデータ (15 kB > ペイロード > 4 kB) も初期ウィンドウに適合するようになった点です。4 kB 設定 (IW3) では、4 kB を越えるペイロードは複数の転送に分割される必要があります。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、初期 TCP 輻輳ウィンドウのデフォルトは、RFC 5681 に従い 10
に設定されています。加えて、TCP および CCID-2 に共通の初期ウィンドウコードが統合されました。
IPv6 の転送パスに対する GSO (汎用セグメンテーションオフロード) サポートが追加され、GSO が有効の場合にはホスト/ゲスト通信のパフォーマンスが向上します。
vios-proxy は、ストリームソケットのプロキシで、仮想ゲストのクライアントと Hypervisor ホストのサーバー間の接続を提供します。通信は virtio-serial リンク上で発生します。この機能は、Red Hat Enterprise Linux 6.2 ではテクノロジープレビューとして導入されています。
第9章 認証と相互運用性
Red Hat Enterprise Linux 6.2 にはアイデンティティ管理機能が備わっているため、ユーザー ID、ポリシーベースのアクセス制御、認証サービスといった中央管理が可能になります。以前は IPA と呼ばれていたこのアイデンティティ管理サービスは、オープンソース FreeIPA プロジェクトが基になっています。こうしたサービスは、以前の Red Hat Enterprise Linux 6 リリースでは、テクノロジープレビューとして表示されていました。今回のリリースで、アイデンティティ管理は完全にサポートされています。
注記
PIV (個人識別情報検証) インターフェースを使用したスマートカードに対するサポートが Red Hat Enterprise Linux 6.2 に追加されました。これで、FIPS 201 に準拠する PIV カードを使用できるため、データをセキュアに利用できます。PIV カードにより、カード保有者へのアクセスを制限することでデータの機密性を確保できます。また、カード保有者にのみ修正できる許可を与えることで、データの整合性を確保します。さらに、情報の信頼性を保証して、データが否認不可されないようにします。PIV カードの使用は、国土安全保障に関する大統領指令 12 (U.S. Homeland Security Presidential Directive 12 : HSPC-12) により義務化されており、政府のすべての IT システムへアクセスする場合にもこうした種類の技術を使用することが必須となります。
第10章 エンタイトルメント
新しいサブスクリプション管理のプラットフォームは、Red Hat サブスクリプションとソフトウェアサービスを柔軟に、スケーラブルかつセキュアに実現します。Red Hat Enterprise Linux 6 システムの新規インストール時、ユーザーは X.509 証明書を受け取ります。それには、インストールされている Red Hat 製品の情報、マシンがコンシュームしているサブスクリプション情報が含まれています。サブスクリプション情報には、サポートレベル、有効期限、Red Hat アカウント番号、Red Hat 契約番号が含まれています。また、X.509 証明書によりマシンは Red Hat Content Delivery Network (CDN) に認証を行うことができます。世界中にディストリビュートされた Red Hat Content Delivery Network (CDN) は、Red Hat システムの停止時にも機能するよう設計されています。北アメリカ以外のユーザーは、新しいシステムで改善された更新スピードや可用性を感じるはずです。RHN Classic は、コンピューターの登録や更新の受信を行う上でデフォルトオプションとして引き続き利用されます。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 で利用可能な新機能と併せて Red Hat カスタマーポータルにより、カスタマーは完全に接続が切断された最大 25 のマシンを登録、サブスクライブすることが可能です。この機能拡張が行われる前は、接続が切断されたシステムを使用するカスタマーは、サブスクリプション情報からの利点や RHN Web サイトからの追跡を受け取ることはできませんでした。25 を越える接続が切断されたマシンを使用するカスタマーの場合は、追加料金をお支払いいただくことで RHN Satellite を引き続き推奨されるオプションとして使用できます。
サブスクリプション更新後、新しいエンタイトルメント証明書を自動的に再生成することが可能になりました。この機能拡張が行われる前は、ソフトウェア更新や他のサブスクリプションサービスを引き続き受信するためには、カスタマーは手動で証明書を再生成する必要がありました。自動的に証明書を再生成できることで、サービスが中断する可能性を最小限に抑えます。また、証明書の自動再生成が正しく行われなかった場合にはその旨がユーザーに通知されます。詳細については、https://www.redhat.com/rhel/renew/faqs/ を参照してください。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、システムの登録時 Red Hat サブスクリプションマネージャがデフォルトで使用されます。
注記
第11章 セキュリティ、標準、認定
Red Hat Enterprise Linux 6.2 ベータ版では、Red Hat Enterprise Linux 6 はコモンクライテリアの EAL (評価保証レベル) 4+ で評価段階にあります。コモンクライテリアには、セキュリティ要件を示す標準化された方法があり、製品を評価する一連の厳密な基準を定義しています。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 ベータ版では、Red Hat Enterprise Linux 6 暗号化モジュールは FIPS-140 認定の評価段階にあります。FIPS-140 は、米国政府のセキュリティ標準で、暗号化モジュールの認証に使用されます。Red Hat Enterprise Linux は、米国連邦政府により義務付けされた法的要件を満たしているため、すべての行政機関による暗号化モジュールを使用できます。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 には、トラステッドブートメカニズムである Intel Trusted Boot (tboot パッケージにより提供) が備わっています。トラステッドブートはインストール時のオプションのコンポーネントであり、Intel の TXT (トラステッドエグゼキューションテクノロジー) がオペレーティングシステムカーネルの評価および検証済みの起動を実行できるようにします。トラステッドブートは、Intel x86 および Intel 64 アーキテクチャーの両方でサポートされています。
第12章 コンパイラとツール
SystemTap は、ユーザーがオペレーティングシステム (特にカーネル) のアクティビティを詳細に学習、監視できるトレーシングおよびプロービングツールです。SystemTap は、netstat、ps、top、iostat などのツールの出力に類似した情報を提供します。ただし、SystemTap は収集した情報に対してより多くのフィルタリングと分析オプションを提供するよう設計されています。
- カーネルモジュールの名前にはハイフン ("
-
") が付いています。i2c-core
などが適切に処理されるようになりました。 process.mark
はプローブパラメーターを読み取るため$$parms
に対応しています。- SystemTap compile-server および client の動作が、以下のとおり改善、簡略化されました。
- compile-server がスクリプトビルドの結果をキャッシュする場合があるため、パフォーマンスが向上しました。
- compile-server および client はバージョン情報を通信して、それに従い通信プロトコルを調節し利用可能なサーバーの最新版を使用します。
- 非推奨のツール、stap-client、stap-authorize-server-cert、stap-authorize-signing-cert、stap-find-or-start-server、stap-find-servers が削除されました。
- リモート実行の場合、
--remote USER@HOST
機能が複数回指定できるようになりました。また、個別のカーネルとアーキテクチャ設定用に自動的にスクリプトをビルドして、すべての名前付きマシンでスクリプトを一度に実行します。 - staprun ユーティリティにより、同じスクリプトの複数のインスタンスを同時に実行できるようになりました。
第13章 クラスタリング
動的スキーマの生成を導入することで、エンドユーザーは Red Hat Enterprise Linux High Availability アドオンのカスタムリソースエージェントとフェンスエージェントを非常に柔軟に接続することができます。また、/etc/cluster.conf
設定ファイルの有効性をそうしたエージェントと検証する可能性も維持します。厳しい要件として、カスタムエージェントが正しいメタデータ出力を提供して、そうしたエージェントがすべてのクラスターノードでインストールされていなければなりません。
クラスタ環境における Samba のサポートは、Red Hat Enterprise Linux 6.2 で完全に対応するようになりました。Samba クラスタリングは、すべてのノードで利用できる共有のクラスタ化ファイルシステムに依存しています。Red Hat Enterprise Linux のコンテキストでは、Samba クラスタリングはネイティブの共有ストレージファイルシステムである GFS2 と機能するよう設定されています。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、自動回復機能を持つ冗長リングに対するサポートをテクノロジープレビューとして導入しました。このテクノロジープレビューに関する既知の問題を表示した一覧は、テクニカルノート を参照してください。
corosync-cpgtool は、デュアルリング (dual ring) 設定で両方のインターフェースを指定するようになりました。この機能はテクノロジープレビューです。
/etc/cluster.conf
設定ファイルを変換して、pacemaker により使用されるようにすると、rgmanager を無効にする必要があります。これを行わないことで生じるリスクレベルは高くなります。変換が正しく成功すると、同一ホストで rgmanager と pacemaker を開始できるようになるため、同じリソースを管理できます。
- rgmanager が
/etc/cluster.conf
に<rm disabled="1">
フラグがあることを認識すると、rgmanager は起動を拒否する必要があります。 - 再設定中に
<rm disabled="1">
フラグが/etc/cluster.conf
に表示された場合は、rgmanager はすべてのリソースを停止して、終了する必要があります。
第14章 高可用性
ファイルシステムリソースとして Red Hat Enterprise Linux 6.2 High Availability アドオンと併せた XFS の使用は、完全にサポートされるようになりました。
VMWare ベースのゲスト内で実行するアプリケーションは、高可用性用に設定できるようになりました。また、環境内の GFS2 共有ストレージファイルシステムの使用も完全にサポートしています。必要な場合に、ゲストをフェンスできる新しい SOAP ベースのフェンスエージェントが追加されました。
クラスタを設定するための Web ベースの管理 UI である Luci は、以下の機能を含むよう更新されました。
- RBAC (ロールベースアクセス制御) では、特定のクラスタ動作にアクセスするユーザークラスを定義することによって細かなアクセスレベルを有効にしました。
- クラスタ内の破壊的な操作に対する応答時間を改善しました。
IP マルチキャストがクラスタトランスポートに対する唯一のオプションでした。IP マルチキャストは本質的に設定が複雑で、多くの場合ネットワークスイッチの再設定が必要です。一方で、UDP-Unicast はクラスタの設定にシンプルな方法を使用する、クラスタ通信用の確立したプロトコルです。UDP-Unicast は初めはテクノロジープレビューとして導入され、現在では完全にサポートされるようになりました。
watchdog は、Linux で利用できる一般的なタイマーサービスで、システムリソースを定期的に監視するために使用します。フェンスエージェントは watchdog と統合したため、fence_scsi
を使用したノードフェンシング後に watchdog サービスはノードをリブートできるようになりました。これにより、fence_scsi
を使用したノードフェンシング後に手動介入してノードをリブートする必要性がありません。
第15章 仮想化
- 仮想 CPU のタイムスライスシェアリング
- 仮想 CPU のタイムスライスシェアリングとは、Linux スケジューラレベルでパフォーマンスを強化する機能です。 稼働している仮想 CPU は、CPU の生成前にそのタイムスライスのリマインダーを別の仮想 CPU に手渡しできます。 この機能は、SMP システムに存在する特有のロックホルダープリエンプションの課題に対処し、仮想 CPU のパフォーマンスに影響を与える場合があります。この機能は、マルチプロセッサゲストで安定したパフォーマンスを実現します。また、Intel および AMD プロセッサ両方でサポートされており、Intel プロセッサでは Pause Loop Exiting (PLE)、AMD プロセッサでは Pause Filter と呼ばれます。
KVM ネットワークパフォーマンスは、仮想化とクラウドベースの製品とソリューションにとって不可欠な要件です。Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、多くのネットワークパフォーマンスの最適化を実現して、様々な設定における KVM ネットワークの準仮想化ドライバーパフォーマンスを強化します。
- 小さなメッセージの KVM パフォーマンスの向上
- Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、小さなメッセージの KVM パフォーマンスを改善して、小さなメッセージ (< 4K) を生成する様々なネットワークワークロードを満たすようになりました。
- KVM ネットワークドライバーのワイヤスピード要件
- ネットワークワークロードを実行する仮想化およびクラウド製品は、ワイヤスピードで実行する必要があります。Red Hat Enterprise Linux 6.1 までは、CPU 使用が低い 10 GB Ethernet NIC のワイヤスピードに達する唯一の方法は、PCI デバイスの割り当てを使用することでした (パススルー) 。これにより、メモリーのオーバーコミットやゲスト移行のような他の機能が制限されます。macvtap/vhost ゼロコピー機能により、高いパフォーマンスが必要な場合にユーザーはそうした機能を使用することができます。この機能は VEPA ユースケースの Red Hat Enterprise Linux 6 ゲストのパフォーマンスを改善します。これはテクノロジープレビューとして導入されています。
- KVM ネットワークドライバーに対する UDP チェックサムの最適化
- チェックサムがホスト NIC により検証されている場合、UDP チェックサムの最適化により、ゲストはチェックサムを検証する必要性がなくなりました。この機能は、Red Hat Enterprise Linux 6.2 ゲストとホストで 10 GB Ethernet カードを使って外部とゲスト間の UDP をスピードアップさせます。UDP チェックサムの最適化は、
virtio-net
ドライバーで実装されます。 - ホストがゲストより遅い場合の I/O パスパフォーマンスの向上
- Red Hat Enterprise Linux 6.2 KVM ネットワークドライバーは、I/O パスパフォーマンスを改善しました。仮想マシンが終了、中断することが少なくなったため、迅速なデータ配信が実現しました。この改善により、パフォーマンスペナルティを発生させることなく、遅いホスト上で速いゲストを実行することも可能になりました。この機能拡張は、強化された
virtio
リング構造と、virtio
およびvhost-net
におけるイベントインデックスサポートにより実現します。
- SNMP によるシステム監視
- この機能は、ベアメタルシステムを使ったデータセンターですでに使用されている安定した技術に KVM サポートを提供します。SNMP は監視基準で、計算効率が良いだけでなく非常によく知られている機能です。Red Hat Enterprise Linux 6.2 の SNMP によるシステム監視により、KVM ホストがイベントの SNMP トラップを送信できるため、ハイパバイザーイベントは標準 SNMP プロトコルによりユーザーと通信することができます。これは、新しいパッケージ libvirt-snmp の追加機能として提供されています。これはテクノロジープレビューとして導入されています。
- ゲストデバッグ機能の強化
- ゲスト OS がハングアップしてクラッシュダンプを開始する必要がある場合、データセンターを仮想化するユーザーは、デバッグする方法が必要となります。物理システムで頻繁に使用される方法が 2 つあります。
- ゲストの NMI (マスク不可能割り込み) をトリガーする
- ゲストに SysRq シーケンスを送る
こうした機能が KVM コンソールにより直接提供されている一方で、多くのユーザーはそうした 2 つの機能がない libvirt API および virsh により KVM を使用します。Red Hat Enterprise Linux 6.2 は KVM スタック全体でゲストデバッグ機能を改善したため、ユーザーはゲストの NMI をトリガーし、SysRq キーシーケンスをゲストに送ることができます。 - 仮想マシンのブートアクセスの改善
- データセンターを仮想化するユーザーは、ゲストのブートプロセスを追跡して、BIOS 全体とカーネルブートメッセージを始めから表示する必要があります。この機能がないと、ブート前にユーザーは virsh console をインタラクティブに使用できません。この機能と併せて qemu-kvm への追加機能も提供するために、新しいパッケージ、sgabios が Red Hat Enterprise Linux 6.2 に追加されました。
- ライブスナップショット (Live Snapshot)
- Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、テクノロジープレビューとして Live Snapshot 機能が導入されています。Live Snapshot 機能では、ハードディスク上に仮想マシンイメージの自動バックアップを提供して、外部の qcow2 イメージを使用して各ドライブごとの仮想ディスクのスナップショットを透過的に提供します。マルチディスクのライブスナップショットの作成は、ディスクがあるだけ多くのスナップショットを取る前に qemu を一時停止することにより、データの整合性を維持するのに役立ちます。そのため、マルチディスクのスナップショットは同じ時点からのデータを含むすべてのディスクを保有します。ファイルシステムの一貫性に限りがあることを認識しておくことは重要です。ただし、スナップショットイメージを再利用すると、クラッシュコンシステントとなります。ユーザーは、ファイルシステムチェック (
fsck
) の実行、ジャーナルエントリの再生を行う必要があります。これは電源コードを抜いた後にブートすることに似ています。 - マルチプロセッサ (NUMA) チューニングの改善
- Red Hat Enterprise Linux 6.2 は libvirt API スタックのチューニングを改善しました。その結果、SPECvirt 評価の実施時に、特別な設定をすることなくパフォーマンスが向上します。Red Hat Enterprise Linux 6.2 では、仮想マシン作成時に NUMA ノードと関連するメモリーを設定できるようになりました。
- USB 機能拡張
- USB 2.0 のエミュレーションが qemu-kvm 用に実装されました。これは、QEMU に対してのみ直接利用可能です。Libvirt サポートが次回のリリースに向けて計画されています。Remote Wakeup サポートが USB ホストコントローラーに追加されました。ゲスト OS との連携とともに、頻繁に発生する 1000hz ポーリングモードを停止して、デバイスをスリープモードにできます。どの仮想マシンにもある共通のデバイスの一つ — USB マウスエミュレーション (またはタブレット) を使って、パワーの活用と仮想マシンの CPU 消費を飛躍的に改善します。
- メモリーバルーニング
- メモリーバルーニングは、Red Hat Enterprise Linux 6.2 準仮想化 Xen ゲストによりサポートされるようになりました。
- ドメインメモリーの上限
- x86_64 domU PV ゲストのメモリー上限は、128 GB、
CONFIG_XEN_MAX_DOMAIN_MEMORY=128
に増加しました。 - タイムアカウンティング
xen_sched_clock
実装 (失われていないナノ秒数を返す) は、xen_clocksource_read
実装により置換されました。
Red Hat Enterprise Linux 仮想化ガイドは、個別に説明したガイドに分かれています。
spice-protocol パッケージがバージョン 0.8.1 にアップグレードされ、以下の新機能が備わっています。
- ボリューム変更のサポート
- ゲストの非同期 I/O 書き込みと割り込みに対するサポート
- ゲストの I/O 書き込み関連のサスペンド (S3) のサポート
- ゲストバグを示す割り込みに対するサポート
Linux Containers は、ワークロードを完全に仮想化する必要なく、ベアメタルシステム上でのアプリケーションランタイム含有に柔軟な方法を提供します。Red Hat Enterprise Linux 6.2 は、アプリケーションレベルのコンテナを提供して、cgroup と名前空間によるアプリケーションリソースの使用ポリシーを別々にして管理します。このリリースでコンテナのライフサイクルの基本的な管理を導入するために、libvirt API および virt-manager GUI によるコンテナの作成、編集、削除を可能にしました。Linux Containers はテクノロジープレビューです。
rhev-hypervisor パッケージのサイドバイサイド (side-by-side) インストールを実行するには、/etc/yum.conf
ファイルを編集して installonlypkgs
オプションを追加することで、rhev-hypervisor が installonly パッケージになるよう yum を設定します。
[main] ... installonlypkgs=rhev-hypervisor
yum.conf
の man ページ (man yum.conf 5
) にあります。
第16章 グラフィックス
ATI/AMD GPU シリーズ HD2xxx、HD4xxx、HD5xxx、FirePro へのサポートが強化されました。新しい HD6xxx シリーズ、FirePro シリーズの新モデル、新しい携帯型の GPU HD6xxxM シリーズへのサポートも追加されました。
Intel IvyBridge クラスのチップセットのサポートが追加されました。
2D/Xv アクセラレーションは GeForce GT2xx (および Quadro と同等) でサポートされるようになりました。サスペンド/レジューム機能のサポートも強化されました。
RandR 有効のドライバー (intel、nouveau、radeon) では、非対称のマルチヘッド構成でカーソルを画面の可視エリア内に制限するようになりました。
/etc/X11/xorg.conf
に加えて /etc/X11/xorg.conf.d/
の設定ファイルのスニペットで管理できるようになりました。こうしたスニペットの X.org 入力デバイス設定は、ランタイム時に X server がデバイスを利用可能な場合に適用されます。
リリースノートに関する Mesa 7.11 の今後の告知情報については、http://mesa3d.org/relnotes-7.11.html を参照してください。
第17章 更新全般
Red Hat Enterprise Linux 6.2 の Matahari は、x86 および AMD64 アーキテクチャでのみ完全にサポートされています。他のアーキテクチャ用のビルドは、テクノロジープレビューとされています。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は ABRT 2.0 を導入しています。ABRT は、ローカルシステム上でのソフトウェアクラッシュの詳細をログ記録して、Red Hat サポートを含め様々な問題追跡チケットシステムに問題を報告するインターフェース (グラフィカルとコマンドラインベースの両方) を提供します。この更新により、次の拡張機能が実現します。
- 新しい構文による、さらに柔軟な設定が可能です。
- プラグインプロセスの分離機能 (プラグインは別々のプロセスで実行され、プロセス間通信により他のプロセスと通信を行う)。こうした設計による利点は、以下のとおりです。
- プラグインのバグはメインのデーモンを破壊しません。
- 大半のプロセスは通常ユーザー (root 以外のユーザー) で行われるため、よりセキュアです。
- プラグインはどのプログラミング言語でも記述できます。
- バックエンドの報告は、すべての Red Hat 問題報告ツール全体に渡って共有されます。
- ABRT、sealert、python-meh (Anaconda、firstboot) のすべてのユーザーです。
- 上記のすべてのツールは同じ設定を共有するため、記述しなければならないのは 1 回のみです。
注記
Red Hat Enterprise Linux 6.2 は System z の Linux に最適化された線形代数数式ライブラリを実現します。それにより、コンパイラは高いプロファイル機能用にコードを生成できるため、最新ハードウェア機能が持つ利点を活用できます。
Red Hat Enterprise Linux 6.2 では Wacom デバイスへのサポートを向上しました。デバイスが取り外されて接続し直した後に、デバイスを再設定する必要はなくなりました。
NetworkManager はバッググラウンドでワイヤレスネットワークをスキャンするため、良質なユーザーエクスペリエンスを実現できます。
gnome-system-monitor ユーティリティは、CPU が 64 を越えるシステムを監視することができます。
付録A コンポーネントバージョン
コンポーネント
|
バージョン
|
---|---|
カーネル
|
2.6.32-202
|
QLogic qla2xxx ドライバー
|
8.03.07.05.06.2-k
|
QLogic qla2xxx ファームウェア
|
ql23xx-firmware-3.03.27-3.1
ql2100-firmware-1.19.38-3.1
ql2200-firmware-2.02.08-3.1
ql2400-firmware-5.06.01-1
ql2500-firmware-5.06.01-1
|
Emulex lpfc ドライバー
|
8.3.5.45.2p
|
iSCSI initiator utils
|
6.2.0.872-27
|
DM-Multipath
|
0.4.9-43
|
LVM
|
2.02.87-3
|
X Server
|
1.10.4-3
|
付録B 改訂履歴
改訂履歴 | |||
---|---|---|---|
改訂 2-2.400 | 2013-10-31 | ||
| |||
改訂 2-2 | 2012-07-18 | ||
| |||
改訂 1-0 | Tue Dec 6 2011 | ||
|