25.5. シークレットが漏洩した場合の Ansible での IdM サービス vault シークレットの変更
以下の手順に従って、サービスインスタンスが危険にさらされたときに Ansible Playbook を再利用し、サービス vault に保存されているシークレットを変更します。以下の例のシナリオでは、シークレットを保存する非対称 vault への鍵は漏洩されておらず、webserver3.idm.example.com で取得したシークレットの情報が漏洩した場合を前提としています。この例では、管理者は 非対称 vault でシークレットを保存する時 および IdM ホストに非対称 vault からシークレットを取得する時 に Ansible Playbook を再利用します。この手順のはじめに、IdM 管理者は新規シークレットを含む新しい PEM
ファイルを非対称 vault に保存し、不正アクセスのあった Web サーバー (webserver3.idm.example.com) に新しいシークレットを配置しないようにインベントリーファイルを調節し、もう一度この 2 つの手順を実行します。
前提条件
次の要件を満たすように Ansible コントロールノードを設定した。
- Ansible バージョン 2.14 以降を使用している。
-
Ansible コントローラーに
ansible-freeipa
パッケージがインストールされている。 - ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を使用して Ansible インベントリーファイル を作成している (この例の場合)。
-
この例では、secret.yml Ansible vault に
ipaadmin_password
が保存されていることを前提としています。
-
ターゲットノード (
ansible-freeipa
モジュールが実行されるノード) が、IdM クライアント、サーバー、またはレプリカとして IdM ドメインに含まれている。 - IdM 管理者 パスワードが分かっている。
- サービスシークレットの保存先の 非対称 vault を作成している。
-
IdM ホストで実行中の Web サービスの
httpd
鍵を新たに生成し、不正アクセスのあった以前の鍵を置き換えている。 -
新しい
httpd
キーが /usr/share/doc/ansible-freeipa/playbooks/vault/private-key-to-an-externally-signed-certificate.pem ファイルなど、Ansible コントローラーのローカルに保存されている。
手順
/usr/share/doc/ansible-freeipa/playbooks/vault
ディレクトリーに移動します。$ cd /usr/share/doc/ansible-freeipa/playbooks/vault
インベントリーファイルを開き、以下のホストが正しく定義されていることを確認します。
-
[ipaserver]
セクションの IdM サーバー [webservers]
セクションのシークレット取得先のホスト。たとえば Ansible に対して webserver1.idm.example.com と webserver2.idm.example.com にシークレットを取得するように指示するには、以下を入力します。[ipaserver] server.idm.example.com [webservers] webserver1.idm.example.com webserver2.idm.example.com
重要このリストに不正アクセスのあった Web サーバーが含まれないようにしてください (現在の例では webserver3.idm.example.com)。
-
- data-archive-in-asymmetric-vault-copy.yml ファイルを開いて編集します。
ファイルを変更するには、
ipavault
タスクセクションに以下の変数を設定します。-
ipaadmin_password
変数は IdM 管理者パスワードに設定します。 -
name
変数は vault の名前 (例: secret_vault) に設定します。 -
service
変数は vault のサービス所有者に設定します (例: HTTP/webserver.idm.example.com)。 -
in
変数は "{{ lookup('file', 'new-private-key-to-an-externally-signed-certificate.pem')| b64encode }}" に設定します。この設定では、Ansible が IdM サーバーではなく、Ansible コントローラーの作業ディレクトリーから秘密鍵のあるファイルを取得するようになります。 action
変数はmember
に設定します。今回の例で使用するように変更した Ansible Playbook ファイル:
--- - name: Tests hosts: ipaserver gather_facts: false vars_files: - /home/user_name/MyPlaybooks/secret.yml tasks: - ipavault: ipaadmin_password: "{{ ipaadmin_password }}" name: secret_vault service: HTTP/webserver.idm.example.com in: "{{ lookup('file', 'new-private-key-to-an-externally-signed-certificate.pem') | b64encode }}" action: member
-
- ファイルを保存します。
Playbook を実行します。
$ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i inventory.file data-archive-in-asymmetric-vault-copy.yml
- retrieve-data-asymmetric-vault-copy.yml ファイルを開いて編集します。
ファイルを変更するには、
ipavault
タスクセクションに以下の変数を設定します。-
ipaadmin_password
変数は IdM 管理者パスワードに設定します。 -
name
変数は vault の名前 (例: secret_vault) に設定します。 -
service
変数は vault のサービス所有者に設定します (例: HTTP/webserver1.idm.example.com)。 -
private_key_file
変数は、サービス vault のシークレットの取得に使用する秘密鍵の場所に設定します。 -
out
変数は、現在の作業ディレクトリーなど、new-private-key-to-an-externally-signed-certificate.pem シークレットの取得先となる IdM サーバーの場所に設定します。 action
変数はmember
に設定します。今回の例で使用するように変更した Ansible Playbook ファイル:
--- - name: Retrieve data from vault hosts: ipaserver become: no gather_facts: false vars_files: - /home/user_name/MyPlaybooks/secret.yml tasks: - name: Retrieve data from the service vault ipavault: ipaadmin_password: "{{ ipaadmin_password }}" name: secret_vault service: HTTP/webserver1.idm.example.com vault_type: asymmetric private_key: "{{ lookup('file', 'service-private.pem') | b64encode }}" out: new-private-key-to-an-externally-signed-certificate.pem state: retrieved
-
Playbook に、IdM サーバーから Ansible コントローラーにデータファイルを取得するセクションを追加します。
--- - name: Retrieve data from vault hosts: ipaserver become: true gather_facts: false tasks: [...] - name: Retrieve data file fetch: src: new-private-key-to-an-externally-signed-certificate.pem dest: ./ flat: true mode: 0600
インベントリーファイルの
webservers
セクションに記載されている Web サーバーに、Ansible コントローラーから取得した new-private-key-to-an-externally-signed-certificate.pem ファイルを転送するセクションを Playbook に追加します。--- - name: Send data file to webservers become: true gather_facts: no hosts: webservers tasks: - name: Send data to webservers copy: src: new-private-key-to-an-externally-signed-certificate.pem dest: /etc/pki/tls/private/httpd.key mode: 0444
- ファイルを保存します。
Playbook を実行します。
$ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i inventory.file retrieve-data-asymmetric-vault-copy.yml