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director のインストールと使用方法

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Red Hat OpenStack Platform 16.0

Red Hat OpenStack Platform director を使用した OpenStack クラウド作成のエンドツーエンドシナリオ

概要

エンタープライズ環境で Red Hat OpenStack Platform director を使用して Red Hat OpenStack Platform 16 をインストールします。これには、director のインストール、環境のプランニング、director を使用した OpenStack 環境の構築などが含まれます。

第1章 director の概要

Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) director は、完全な OpenStack 環境のインストールおよび管理を行うためのツールセットです。director は、主に OpenStack プロジェクト TripleO をベースとしています。director により、完全に機能するスリムで堅牢な RHOSP 環境をインストールすることができます。この環境を使用して、OpenStack ノードして使用するベアメタルシステムのプロビジョニングおよび制御を行うことができます。

director は、アンダークラウドとオーバークラウドという 2 つの主要な概念を採用しています。まずアンダークラウドをインストールし、続いてアンダークラウドをツールとして使用してオーバークラウドをインストールおよび設定します。

Basic Layout of undercloud and overcloud

1.1. アンダークラウド

アンダークラウドは、Red Hat OpenStack Platform director ツールセットが含まれる主要管理ノードです。OpenStack をインストールした単一システムで、OpenStack 環境 (オーバークラウド) を構成する OpenStack ノードをプロビジョニング/管理するためのコンポーネントが含まれます。アンダークラウドを構成するコンポーネントは、さまざまな機能を持ちます。

環境のプランニング
アンダークラウドには、特定のノードロールを作成して割り当てるのに使用できるプランニング機能が含まれます。アンダークラウドには、Compute、Controller、さまざまな Storage ロールなど、デフォルトのノードセットが含まれます。また、カスタムロールを設定することもできます。さらに、各ノードロールにどの OpenStack Platform サービスを含めるかを選択でき、新しいノード種別をモデル化するか、独自のホストで特定のコンポーネントを分離する方法を提供します。
ベアメタルシステムの制御
アンダークラウドは、各ノードの帯域外管理インターフェース (通常 Intelligent Platform Management Interface (IPMI)) を使用して電源管理機能を制御し、PXE ベースのサービスを使用してハードウェア属性を検出し、各ノードに OpenStack をインストールします。この機能を使用して、ベアメタルシステムを OpenStack ノードとしてプロビジョニングすることができます。電源管理ドライバーの全一覧については、「付録A 電源管理ドライバー」を参照してください。
オーケストレーション
アンダークラウドには、環境のプランのセットに対応する YAML テンプレートセットが含まれます。アンダークラウドは、これらのプランをインポートして、その指示に従い、目的の OpenStack 環境を作成します。このプランに含まれるフックを使用して、環境作成プロセスの特定のポイントとして、カスタマイズを組み込むこともできます。
アンダークラウドのコンポーネント

アンダークラウドは、OpenStack のコンポーネントをベースのツールセットとして使用します。各コンポーネントは、アンダークラウドの個別のコンテナー内で動作します。

  • OpenStack Identity (keystone): director コンポーネントの認証および認可
  • OpenStack Bare Metal (ironic) および OpenStack Compute (nova): ベアメタルノードの管理
  • OpenStack Networking (neutron) および Open vSwitch: ベアメタルノードのネットワークの制御
  • OpenStack Image サービス (glance): director がベアメタルマシンに書き込むイメージの格納
  • OpenStack Orchestation (heat) および Puppet: director がオーバークラウドイメージをディスクに書き込んだ後のノードのオーケストレーションおよび設定
  • OpenStack Telemetry (ceilometer): 監視とデータの収集。Telemetry には、以下のコンポーネントも含まれます。

    • OpenStack Telemetry Metrics (gnocchi): メトリック向けの時系列データベース
    • OpenStack Telemetry Alarming (aodh): モニタリング向けのアラームコンポーネント
    • OpenStack Telemetry Event Storage (panko): モニタリング向けのイベントストレージ
  • OpenStack Workflow サービス (mistral): プランのインポートやデプロイなど、特定の director 固有のアクションに対してワークフローセットを提供します。
  • OpenStack Messaging Service (zaqar): OpenStack Workflow サービスのメッセージサービスを提供します。
  • OpenStack Object Storage (swift): 以下のさまざまな OpenStack Platform のコンポーネントに対してオブジェクトストレージを提供します。

    • OpenStack Image サービスのイメージストレージ
    • OpenStack Bare Metal のイントロスペクションデータ
    • OpenStack Workflow サービスのデプロイメントプラン

1.2. オーバークラウドについて

オーバークラウドは、アンダークラウドが構築することで得られる Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) 環境です。オーバークラウドは、さまざまなロールを持つ複数のノードで構成されます。このノード構成は、希望する OpenStack Platform 環境をベースに定義されます。アンダークラウドには、以下に示すオーバークラウドのデフォルトノードロールセットが含まれます。

コントローラー

コントローラーノードは、OpenStack 環境に管理、ネットワーク、高可用性の機能を提供します。コントローラーノード 3 台で高可用性クラスターを構成する OpenStack 環境が推奨されます。

デフォルトのコントローラーノードロールは、以下のコンポーネントをサポートします。これらのサービスがすべてデフォルトで有効化されている訳ではありません。これらのコンポーネントの中には、有効にするのにカスタムの環境ファイルまたは事前にパッケージ化された環境ファイルを必要とするものがあります。

  • OpenStack Dashboard (horizon)
  • OpenStack Identity (keystone)
  • OpenStack Compute (nova) API
  • OpenStack Networking (neutron)
  • OpenStack Image サービス (glance)
  • OpenStack Block Storage (cinder)
  • OpenStack Object Storage (swift)
  • OpenStack Orchestration (heat)
  • OpenStack Telemetry Metrics (gnocchi)
  • OpenStack Telemetry Alarming (aodh)
  • OpenStack Telemetry Event Storage (panko)
  • OpenStack Shared File Systems (manila)
  • OpenStack Bare Metal (ironic)
  • MariaDB
  • Open vSwitch
  • 高可用性サービス向けの Pacemaker および Galera
コンピュート

コンピュートノードは OpenStack 環境にコンピュートリソースを提供します。コンピュートノードをさらに追加して、環境を徐々にスケールアウトすることができます。デフォルトのコンピュートノードには、以下のコンポーネントが含まれます。

  • OpenStack Compute (nova)
  • KVM/QEMU
  • OpenStack Telemetry (ceilometer) エージェント
  • Open vSwitch
ストレージ

ストレージノードは OpenStack 環境にストレージを提供します。以下の一覧で、RHOSP のさまざまなストレージノード種別について説明します。

  • Ceph Storage ノード: ストレージクラスターを構成するために使用します。それぞれのノードには、Ceph Object Storage Daemon (OSD) が含まれます。また、環境の一部として Ceph Storage ノードをデプロイする場合には、director により Ceph Monitor がコントローラーノードにインストールされます。
  • Block storage (cinder): 高可用性コントローラーノードの外部ブロックストレージとして使用します。このノードには、以下のコンポーネントが含まれます。

    • OpenStack Block Storage (cinder) ボリューム
    • OpenStack Telemetry エージェント
    • Open vSwitch
  • Object Storage (swift): これらのノードは、OpenStack Swift の外部ストレージ層を提供します。コントローラーノードは、Swift プロキシーを介してオブジェクトストレージノードにアクセスします。オブジェクトストレージノードには、以下のコンポーネントが含まれます。

    • OpenStack Object Storage (swift) のストレージ
    • OpenStack Telemetry エージェント
    • Open vSwitch

1.3. Red Hat OpenStack Platform での高可用性について

Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) director は、OpenStack Platform 環境に高可用性サービスを提供するためにコントローラーノードクラスターを使用します。それぞれのサービスについて、director はすべてのコントローラーノードに同じコンポーネントをインストールし、コントローラーノードをまとめて単一のサービスとして管理します。このタイプのクラスター構成では、1 つのコントローラーノードが機能しなくなった場合にフォールバックが可能です。これにより、OpenStack のユーザーには一定レベルの運用継続性が提供されます。

OpenStack Platform director は、複数の主要なソフトウェアを使用して、コントローラーノード上のコンポーネントを管理します。

  • Pacemaker: Pacemaker は、クラスターのリソースを管理します。Pacemaker は、クラスター内の全ノードにわたって OpenStack コンポーネントの可用性を管理および監視します。
  • HA Proxy: クラスターに負荷分散およびプロキシーサービスを提供します。
  • Galera: クラスター全体の RHOSP データベースを複製します。
  • Memcached: データベースのキャッシュを提供します。
注記
  • バージョン 13 から、director を使用してコンピュートインスタンスの高可用性 (インスタンス HA) をデプロイできるようになりました。インスタンス HA により、コンピュートノードで障害が発生した際にコンピュートノードからインスタンスを自動的に退避させることができます。

1.4. Red Hat OpenStack Platform でのコンテナー化について

アンダークラウドおよびオーバークラウド上の各 OpenStack Platform サービスは、対応するノード上の個別の Linux コンテナー内で実行されます。このコンテナー化により、サービスを分離し、環境を維持し、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) をアップグレードすることができます。

Red Hat OpenStack Platform 16.0 では、Red Hat Enterprise Linux 8.1 オペレーティングシステムへのインストールがサポートされます。Red Hat Enterprise Linux 8.1 には Docker が含まれなくなり、Docker エコシステムに代わる新たなツールセットが用意されています。したがって、OpenStack Platform 16.0 では、Docker に代わるこれらの新しいツールにより、OpenStack Platform のデプロイメントおよびアップグレードを行います。

Podman

Pod Manager (Podman) はコンテナー管理用のツールです。このツールには、ほとんどすべての Docker CLI コマンドが実装されています。ただし、Docker Swarm に関連するコマンドは含まれません。Podman は、ポッド、コンテナー、およびコンテナーイメージを管理します。Podman と Docker の主な違いの 1 つは、Podman がバックグラウンドでデーモンを実行せずにリソースを管理できることです。

Podman についての詳しい情報は、Podman の Web サイト を参照してください。

Buildah

Buildah は Open Containers Initiative (OCI) イメージのビルドに特化したツールで、Podman と共に使用します。Buildah コマンドは、Dockerfile の内容と等価です。Buildah は、コンテナーイメージをビルドするための低レベル coreutils インターフェースも提供します。したがって、コンテナーをビルドするのに Dockerfile は必要ありません。また、Buildah は他のスクリプト言語を使用してコンテナーイメージをビルドしますが、その際にデーモンは必要ありません。

Buildah についての詳しい情報は、Buildah の Web サイト を参照してください。

Skopeo
Skopeo により、運用者はリモートコンテナーイメージを検査することができます。これは、director がイメージをプルする際にデータを収集するのに役立ちます。この機能に加えて、コンテナーイメージをあるレジストリーから別のレジストリーにコピーしたり、イメージをレジストリーから削除したりすることもできます。

Red Hat では、オーバークラウド用コンテナーイメージの管理に関して、以下の方法をサポートしています。

  • コンテナーイメージを Red Hat Container Catalog からアンダークラウド上の image-serve レジストリーにプルし、続いてそのイメージを image-serve レジストリーからプルする。イメージをアンダークラウドにプルする際には、複数のオーバークラウドノードが外部接続を通じて同時にコンテナーイメージをプルする状況を避けてください。
  • Satellite 6 サーバーからコンテナーイメージをプルする。ネットワークトラフィックは内部になるため、これらのイメージを Satellite から直接プルすることができます。

本ガイドでは、コンテナーイメージレジストリー情報の設定および基本的なコンテナー操作の実施について説明します。

1.5. Red Hat OpenStack Platform での Ceph Storage の使用

通常、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) を使用する大規模な組織では、数千単位またはそれ以上のクライアントにサービスを提供します。ブロックストレージリソースの消費に関して、それぞれの OpenStack クライアントは固有のニーズを持つのが一般的です。glance (イメージ)、cinder (ボリューム)、および nova (コンピュート) を単一ノードにデプロイすると、数千単位のクライアントがある大規模なデプロイメントでの管理ができなくなる可能性があります。このような課題は、OpenStack をスケールアウトすることによって解決できます。

ただし、実際には、Red Hat Ceph Storage などのソリューションを活用して、ストレージ層を仮想化する必要もでてきます。ストレージ層の仮想化により、RHOSP のストレージ層を数十テラバイト規模からペタバイトさらにはエクサバイトのストレージにスケーリングすることが可能です。Red Hat Ceph Storage は、市販のハードウェアを使用しながらも、高可用性/高パフォーマンスのストレージ仮想化層を提供します。仮想化によってパフォーマンスが低下するというイメージがありますが、Ceph はブロックデバイスイメージをクラスター全体でオブジェクトとしてストライプ化するため、大きな Ceph のブロックデバイスイメージはスタンドアロンのディスクよりも優れたパフォーマンスを示します。Ceph ブロックデバイスでは、パフォーマンスを強化するために、キャッシュ、Copy On Write クローン、Copy On Read クローンもサポートされています。

Red Hat Ceph Storage についての詳細な情報は、「Red Hat Ceph Storage」を参照してください。

注記

マルチアーキテクチャークラウドでは、Red Hat は事前にインストール済みの Ceph 実装または外部の Ceph 実装のみをサポートします。詳しい情報は、『オーバークラウド の既存 Red Hat Ceph クラスターとの統合』 および「 付録B Red Hat OpenStack Platform for POWER 」を参照してください。

パート I. director のインストールと設定

第2章 アンダークラウドのプランニング

2.1. コンテナー化されたアンダークラウド

アンダークラウドは、最終的な Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) 環境 (オーバークラウドと呼ばれる) の設定、インストール、および管理をコントロールするノードです。アンダークラウド自体は、コンテナー化された OpenStack Platform コンポーネントを使用して、director と呼ばれるツールセットを作成します。この場合、アンダークラウドはレジストリーソースからコンテナーイメージのセットをプルし、コンテナーの設定を生成し、各 OpenStack Platform サービスをコンテナーとして実行します。その結果、アンダークラウドによりコンテナー化されたサービスのセットが提供され、このサービスをオーバークラウドの作成および管理用ツールセットとして使用することができます。

アンダークラウドおよびオーバークラウドの両方でコンテナーが使用されているので、どちらも同じアーキテクチャーを使用してコンテナーをプル、設定、および実行します。このアーキテクチャーは、OpenStack Orchestration サービス (heat) をベースにノードをプロビジョニングし、Ansible を使用してサービスおよびコンテナーを設定します。heat および Ansible に関する知識を習得していると、異常発生時のトラブルシューティングに役立ちます。

2.2. アンダークラウドネットワークの準備

アンダークラウドでは、2 つの主要ネットワークへのアクセスが必要です。

  • プロビジョニングまたはコントロールプレーンネットワーク: director は、このネットワークを使用してノードをプロビジョニングし、Ansible 設定の実行時に SSH 経由でこれらのノードにアクセスします。このネットワークでは、アンダークラウドからオーバークラウドノードへの SSH アクセスも可能です。アンダークラウドには、このネットワーク上の他のノードのイントロスペクションおよびプロビジョニング用 DHCP サービスが含まれます。つまり、このネットワーク上にその他の DHCP サービスは必要ありません。director がこのネットワークのインターフェースを設定します。
  • 外部ネットワーク: このネットワークにより、OpenStack Platform リポジトリー、コンテナーイメージソース、および DNS サーバーや NTP サーバー等の他のサーバーにアクセスすることができます。ご自分のワークステーションからアンダークラウドへの標準アクセスには、このネットワークを使用します。外部ネットワークにアクセスするためには、アンダークラウド上でインターフェースを手動で設定する必要があります。

アンダークラウドには、少なくとも 2 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカードが必要です。1 枚は プロビジョニングまたはコントロールプレーンネットワーク 用で、残りの 1 枚は 外部ネットワーク 用です。ただし、特にオーバークラウド環境で多数のノードをプロビジョニングする場合には、プロビジョニングネットワークのトラフィック用に 10 Gbps インターフェースを使用することを推奨します。

以下の点に注意してください。

  • ワークステーションから director マシンへのアクセスに使用する NIC を、プロビジョニングまたはコントロールプレーン NIC として使用しないでください。director のインストールでは、プロビジョニング NIC を使用してブリッジが作成され、リモート接続はドロップされます。director システムへリモート接続する場合には、外部 NIC を使用します。
  • プロビジョニングネットワークには、環境のサイズに適した IP 範囲が必要です。以下のガイドラインを使用して、この範囲に含めるべき IP アドレスの総数を決定してください。

    • イントロスペクション中は、プロビジョニングネットワークに接続されているノードごとに少なくとも 1 つの一時 IP アドレスを含めます。
    • デプロイメント中は、プロビジョニングネットワークに接続されているノードごとに少なくとも 1 つの永続的な IP アドレスを含めます。
    • プロビジョニングネットワーク上のオーバークラウド高可用性クラスターの仮想 IP 用に、追加の IP アドレスを含めます。
    • 環境のスケーリング用に、この範囲にさらに IP アドレスを追加します。

2.3. 環境規模の判断

アンダークラウドをインストールする前に、環境の規模を判断します。環境をプランニングする際には、以下の要素を考慮してください。

オーバークラウドにデプロイするノードの数
アンダークラウドは、オーバークラウド内の各ノードを管理します。オーバークラウドノードのプロビジョニングには、アンダークラウドのリソースが使用されます。アンダークラウドには、すべてのオーバークラウドノードを適切にプロビジョニングし管理するのに十分なリソースを提供する必要があります。
アンダークラウドで実行する同時操作の数
アンダークラウド上の OpenStack サービスの多くは、ワーカーのセットを使用します。それぞれのワーカーは、そのサービスに固有の操作を実行します。複数のワーカーを用いると、同時に操作を実行することができます。アンダークラウドのデフォルトのワーカー数は、アンダークラウドの合計 CPU スレッド数の半分です。 [1].たとえば、アンダークラウドの CPU スレッド数が 16 の場合には、デフォルトでは、director のサービス により 8 つのワーカーが提供されます。デフォルトでは、director のサービスに最小および最大のワーカー数も適用されます。
サービス最小値最大値

OpenStack Orchestration (heat)

4

24

その他すべてのサービス

2

12

アンダークラウドの CPU およびメモリーの最低要件を以下に示します。

  • Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする、8 スレッド 64 ビット x86 プロセッサー。これにより、各アンダークラウドサービスに 4 つのワーカーが提供されます。
  • 最小 24 GB の RAM

    • ceph-ansible Playbook は、アンダークラウドがデプロイするホスト 10 台につき 1 GB の常駐セットサイズ (RSS) を消費します。デプロイメントで新規または既存の Ceph クラスターを使用する場合は、それに応じてアンダークラウド用 RAM をプロビジョニングする必要があります。

多数のワーカーを使用するには、以下の推奨事項に従ってアンダークラウドの仮想 CPU 数およびメモリー容量を増やします。

  • 最小値: 1 スレッドあたり 1.5 GB のメモリーを使用します。たとえば、48 スレッドのマシンの場合、heat 用 24 ワーカーおよびその他のサービス用 12 ワーカーを最低限動作させるのに、72 GB の RAM が必要です。
  • 推奨値: 1 スレッドあたり 3 GB のメモリーを使用します。たとえば、48 スレッドのマシンの場合、heat 用 24 ワーカーおよびその他のサービス用 12 ワーカーを推奨される状態で動作させるのに、144 GB の RAM が必要です。


[1] ここでは、スレッド数とは CPU コア数にハイパースレッディングの値を掛けたものを指します

2.4. アンダークラウドのディスクサイズ

アンダークラウドのディスクサイズとして、ルートディスク上に少なくとも 100 GB の空きディスク領域があることが推奨されます。

  • コンテナーイメージ用に 20 GB
  • QCOW2 イメージの変換とノードのプロビジョニングプロセスのキャッシュ用に 10 GB
  • 一般用途、ログの記録、メトリック、および将来の拡張用に 70 GB 以上

2.5. 仮想化のサポート

Red Hat は、以下のプラットフォームでのみ仮想アンダークラウドをサポートします。

プラットフォーム説明

Kernel-based Virtual Machine (KVM)

認定済みのハイパーバイザーとしてリストされている Red Hat Enterprise Linux 8 でホストされていること

Red Hat Virtualization

認定済みのハイパーバイザーとしてリストされている Red Hat Virtualization 4.x でホストされていること

Microsoft Hyper-V

Red Hat Customer Portal Certification Catalogue に記載の Hyper-V のバージョンでホストされていること

VMware ESX および ESXi

Red Hat Customer Portal Certification Catalogue に記載の ESX および ESXi のバージョンでホストされていること

重要

Red Hat OpenStack Platform director には、ホストオペレーティングシステムとして、最新バージョンの Red Hat Enterprise Linux 8 がインストールされている必要があります。このため、仮想化プラットフォームは下層の Red Hat Enterprise Linux バージョンもサポートする必要があります。

仮想マシンの要件

仮想アンダークラウドのリソース要件は、ベアメタルのアンダークラウドの要件と似ています。ネットワークモデル、ゲスト CPU 機能、ストレージのバックエンド、ストレージのフォーマット、キャッシュモードなどプロビジョニングの際には、さまざまなチューニングオプションを考慮する必要があります。

ネットワークの考慮事項

仮想アンダークラウドの場合は、以下にあげるネットワークの考慮事項に注意してください。

電源管理
アンダークラウドの仮想マシンには、オーバークラウドのノードにある電源管理のデバイスへのアクセスが必要です。これには、ノードの登録の際に、pm_addr パラメーターに IP アドレスを設定してください。
プロビジョニングネットワーク
プロビジョニング (ctlplane) ネットワークに使用する NIC には、オーバークラウドのベアメタルノードの NIC に対する DHCP 要求をブロードキャストして、対応する機能が必要です。仮想マシンの NIC をベアメタルの NIC と同じネットワークに接続するブリッジを作成することを推奨します。
注記

一般的に、ハイパーバイザーのテクノロジーにより、アンダークラウドが不明なアドレスのトラフィックを伝送できない場合に問題が発生します。Red Hat Enterprise Virtualization を使用する場合には、anti-mac-spoofing を無効にしてこれを回避してください。VMware ESX または ESXi を使用している場合は、偽装転送を承諾してこれを回避します。これらの設定を適用したら、director 仮想マシンの電源を一旦オフにしてから再投入する必要があります。仮想マシンをリブートするだけでは不十分です。

2.6. 文字のエンコーディング設定

Red Hat OpenStack Platform には、ロケール設定の一部として特殊文字のエンコーディングに関する要件があります。

  • すべてのノードで UTF-8 エンコーディングを使用します。すべてのノードで LANG 環境変数を en_US.UTF-8 に設定するようにします。
  • Red Hat OpenStack Platform リソース作成の自動化に Red Hat Ansible Tower を使用している場合は、非 ASCII 文字を使用しないでください。

2.7. プロキシーを使用してアンダークラウドを実行する際の考慮事項

ご自分の環境でプロキシーを使用している場合は、以下の考慮事項を確認して、Red Hat OpenStack Platform の一部とプロキシーを統合する際のさまざまな設定手法、およびそれぞれの手法の制限事項を十分に理解するようにしてください。

システム全体のプロキシー設定

アンダークラウド上のすべてのネットワークトラフィックに対してプロキシー通信を設定するには、この手法を使用します。プロキシー設定を定義するには、/etc/environment ファイルを編集して以下の環境変数を設定します。

http_proxy
標準の HTTP リクエストに使用するプロキシー
https_proxy
HTTPs リクエストに使用するプロキシー
no_proxy
プロキシー通信から除外するドメインのコンマ区切りリスト

システム全体のプロキシー手法には、以下の制限事項があります。

dnf プロキシー設定

すべてのトラフィックがプロキシーを通過するように dnf を設定するには、この手法を使用します。プロキシー設定を定義するには、/etc/dnf/dnf.conf ファイルを編集して以下のパラメーターを設定します。

proxy
プロキシーサーバーの URL
proxy_username
プロキシーサーバーへの接続に使用するユーザー名
proxy_password
プロキシーサーバーへの接続に使用するパスワード
proxy_auth_method
プロキシーサーバーが使用する認証方法

これらのオプションの詳細については、man dnf.conf を実行してください。

dnf プロキシー手法には、以下の制限事項があります。

  • この手法では、dnf に対してのみプロキシーがサポートされます。
  • dnf プロキシー手法には、特定のホストをプロキシー通信から除外するオプションは含まれていません。

Red Hat Subscription Manager プロキシー

すべてのトラフィックがプロキシーを通過するように Red Hat Subscription Manager を設定するには、この手法を使用します。プロキシー設定を定義するには、/etc/rhsm/rhsm.conf ファイルを編集して以下のパラメーターを設定します。

proxy_hostname
プロキシーのホスト
proxy_scheme
プロキシーをリポジトリー定義に書き出す際のプロキシーのスキーム
proxy_port
プロキシーのポート
proxy_username
プロキシーサーバーへの接続に使用するユーザー名
proxy_password
プロキシーサーバーへの接続に使用するパスワード
no_proxy
プロキシー通信から除外する特定ホストのホスト名サフィックスのコンマ区切りリスト

これらのオプションの詳細については、man rhsm.conf を実行してください。

Red Hat Subscription Manager プロキシー手法には、以下の制限事項があります。

  • この手法では、Red Hat Subscription Manager に対してのみプロキシーがサポートされます。
  • Red Hat Subscription Manager プロキシー設定の値は、システム全体の環境変数に設定されたすべての値をオーバーライドします。

透過プロキシー

アプリケーション層のトラフィックを管理するのにネットワークで透過プロキシーが使用される場合は、プロキシー管理が自動的に行われるため、アンダークラウド自体をプロキシーと対話するように設定する必要はありません。透過プロキシーは、Red Hat OpenStack Platform のクライアントベースのプロキシー設定に関連する制限に対処するのに役立ちます。

2.8. アンダークラウドのリポジトリー

Red Hat OpenStack Platform 16.0 は、Red Hat Enterprise Linux 8.1 上で動作します。リポジトリーを有効にする前に、subscription-manager release コマンドで director を特定バージョンにロックします。

$ sudo subscription-manager release --set=8.1

アンダークラウドをインストールおよび設定するには、以下のリポジトリーを有効にします。

コアリポジトリー

以下の表には、アンダークラウドをインストールするためのコアリポジトリーをまとめています。

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - BaseOS (RPMs) Extended Update Support (EUS)

rhel-8-for-x86_64-baseos-eus-rpms

x86_64 システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - AppStream (RPMs) Extended Update Support (EUS)

rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms

Red Hat OpenStack Platform の依存関係が含まれます。

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - High Availability (RPMs) Extended Update Support (EUS)

rhel-8-for-x86_64-highavailability-eus-rpms

Red Hat Enterprise Linux の高可用性ツール。コントローラーノードの高可用性に使用します。

Red Hat Ansible Engine 2.8 for RHEL 8 x86_64 (RPMs)

ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms

Red Hat Enterprise Linux 用 Ansible エンジン。最新バージョンの Ansible を提供するために使用されます。

Red Hat Satellite Tools for RHEL 8 Server RPMs x86_64

satellite-tools-6.5-for-rhel-8-x86_64-rpms

Red Hat Satellite 6 でのホスト管理ツール

Red Hat OpenStack Platform 16.0 for RHEL 8 (RPMs)

openstack-16-for-rhel-8-x86_64-rpms

Red Hat OpenStack Platform のコアリポジトリー。Red Hat OpenStack Platform director のパッケージが含まれます。

Red Hat Fast Datapath for RHEL 8 (RPMS)

fast-datapath-for-rhel-8-x86_64-rpms

OpenStack Platform 用 Open vSwitch (OVS) パッケージを提供します。

IBM POWER 用リポジトリー

以下の表には、POWER PC アーキテクチャー上で Red Hat Openstack Platform を構築するためのリポジトリーを一覧にしてまとめています。コアリポジトリーの該当リポジトリーの代わりに、これらのリポジトリーを使用してください。

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Enterprise Linux for IBM Power, little endian - BaseOS (RPMs)

rhel-8-for-ppc64le-baseos-rpms

ppc64le システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー

Red Hat Enterprise Linux 8 for IBM Power, little endian - AppStream (RPMs)

rhel-8-for-ppc64le-appstream-rpms

Red Hat OpenStack Platform の依存関係が含まれます。

Red Hat Enterprise Linux 8 for IBM Power, little endian - High Availability (RPMs)

rhel-8-for-ppc64le-highavailability-rpms

Red Hat Enterprise Linux の高可用性ツール。コントローラーノードの高可用性に使用します。

Red Hat Ansible Engine 2.8 for RHEL 8 IBM Power, little endian (RPMs)

ansible-2.8-for-rhel-8-ppc64le-rpms

Red Hat Enterprise Linux 用 Ansible エンジン。最新バージョンの Ansible を提供します。

Red Hat OpenStack Platform 16.0 for RHEL 8 (RPMs)

openstack-16-for-rhel-8-ppc64le-rpms

ppc64le システム用 Red Hat OpenStack Platform のコアリポジトリー

第3章 director インストールの準備

3.1. アンダークラウドの準備

director をインストールする前に、ホストマシンでいくつかの基本設定を完了する必要があります。

  • コマンドを実行するための非 root ユーザー
  • イメージとテンプレートを管理するためのディレクトリー
  • 解決可能なホスト名
  • Red Hat サブスクリプション
  • イメージの準備および director のインストールを行うためのコマンドラインツール

手順

  1. お使いのアンダークラウドに root ユーザーとしてログインします。
  2. stack ユーザーを作成します。

    [root@director ~]# useradd stack
  3. ユーザーのパスワードを設定します。

    [root@director ~]# passwd stack
  4. sudo を使用する場合にパスワードを要求されないようにします。

    [root@director ~]# echo "stack ALL=(root) NOPASSWD:ALL" | tee -a /etc/sudoers.d/stack
    [root@director ~]# chmod 0440 /etc/sudoers.d/stack
  5. 新規作成した stack ユーザーに切り替えます。

    [root@director ~]# su - stack
    [stack@director ~]$
  6. システムイメージおよび heat テンプレート用のディレクトリーを作成します。

    [stack@director ~]$ mkdir ~/images
    [stack@director ~]$ mkdir ~/templates

    director はシステムのイメージと heat テンプレートを使用して、オーバークラウド環境を構築します。ローカルファイルシステムの管理を容易にするために、Red Hat ではこれらのディレクトリーを作成することを推奨します。

  7. アンダークラウドのベースおよび完全なホスト名を確認します。

    [stack@director ~]$ hostname
    [stack@director ~]$ hostname -f

    上記のコマンドのいずれかで正しい完全修飾ホスト名が出力されない、またはエラーが表示される場合には、hostnamectl でホスト名を設定します。

    [stack@director ~]$ sudo hostnamectl set-hostname manager.example.com
    [stack@director ~]$ sudo hostnamectl set-hostname --transient manager.example.com
  8. /etc/hosts を編集して、システムホスト名のエントリーを追加します。/etc/hosts の IP アドレスは、アンダークラウドのパブリック API に使用する予定のアドレスと一致する必要があります。たとえば、システムの名前が manager.example.com で、IP アドレスに 10.0.0.1 を使用する場合には、/etc/hosts ファイルに以下の行を追加します。

    10.0.0.1  manager.example.com manager
  9. Red Hat コンテンツ配信ネットワークまたは Red Hat Satellite のどちらかにシステムを登録します。たとえば、システムをコンテンツ配信ネットワークに登録するには、以下のコマンドを実行します。要求されたら、カスタマーポータルのユーザー名およびパスワードを入力します。

    [stack@director ~]$ sudo subscription-manager register
  10. Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) director のエンタイトルメントプール ID を検索します。

    [stack@director ~]$ sudo subscription-manager list --available --all --matches="Red Hat OpenStack"
    Subscription Name:   Name of SKU
    Provides:            Red Hat Single Sign-On
                         Red Hat Enterprise Linux Workstation
                         Red Hat CloudForms
                         Red Hat OpenStack
                         Red Hat Software Collections (for RHEL Workstation)
                         Red Hat Virtualization
    SKU:                 SKU-Number
    Contract:            Contract-Number
    Pool ID:             Valid-Pool-Number-123456
    Provides Management: Yes
    Available:           1
    Suggested:           1
    Service Level:       Support-level
    Service Type:        Service-Type
    Subscription Type:   Sub-type
    Ends:                End-date
    System Type:         Physical
  11. Pool ID の値を特定して、Red Hat OpenStack Platform 16.0 のエンタイトルメントをアタッチします。

    [stack@director ~]$ sudo subscription-manager attach --pool=Valid-Pool-Number-123456
  12. アンダークラウドを Red Hat Enterprise Linux 8.1 にロックします。

    $ sudo subscription-manager release --set=8.1
  13. デフォルトのリポジトリーをすべて無効にしてから、必要な Red Hat Enterprise Linux リポジトリーを有効にします。

    [stack@director ~]$ sudo subscription-manager repos --disable=*
    [stack@director ~]$ sudo subscription-manager repos --enable=rhel-8-for-x86_64-baseos-eus-rpms --enable=rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms --enable=rhel-8-for-x86_64-highavailability-eus-rpms --enable=ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=openstack-16-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=fast-datapath-for-rhel-8-x86_64-rpms

    これらのリポジトリーには、director のインストールに必要なパッケージが含まれます。

  14. システムで更新を実行して、ベースシステムパッケージを最新の状態にします。

    [stack@director ~]$ sudo dnf update -y
    [stack@director ~]$ sudo reboot
  15. director のインストールと設定を行うためのコマンドラインツールをインストールします。

    [stack@director ~]$ sudo dnf install -y python3-tripleoclient

3.2. ceph-ansible のインストール

Red Hat OpenStack Platform で Ceph Storage を使用する場合、ceph-ansible パッケージが必要です。

Red Hat Ceph Storage を使用する場合、またはデプロイメントで外部の Ceph Storage クラスターを使用する場合、ceph-ansible パッケージをインストールします。既存 の Ceph Storage クラスターとの統合についての詳しい情報は、『オーバークラウドの既存 Red Hat Ceph クラスターとの統合』を参照してください

手順

  1. Ceph Tools リポジトリーを有効にします。

    [stack@director ~]$ sudo subscription-manager repos --enable=rhceph-4-tools-for-rhel-8-x86_64-rpms
  2. ceph-ansible パッケージをインストールします。

    [stack@director ~]$ sudo dnf install -y ceph-ansible

3.3. コンテナーイメージの準備

アンダークラウドの設定には、イメージの取得先およびその保存方法を定義するための初期レジストリーの設定が必要です。コンテナーイメージを準備するのに使用することのできる環境ファイルを生成およびカスタマイズするには、以下の手順を実施します。

手順

  1. アンダークラウドホストに stack ユーザーとしてログインします。
  2. デフォルトのコンテナーイメージ準備ファイルを生成します。

    $ openstack tripleo container image prepare default \
      --local-push-destination \
      --output-env-file containers-prepare-parameter.yaml

    上記のコマンドでは、以下の追加オプションを使用しています。

    • --local-push-destination: コンテナーイメージの保管場所として、アンダークラウド上のレジストリーを設定します。つまり、director は必要なイメージを Red Hat Container Catalog からプルし、それをアンダークラウド上のレジストリーにプッシュします。director はこのレジストリーをコンテナーイメージのソースとして使用します。Red Hat Container Catalog から直接プルする場合には、このオプションを省略します。
    • --output-env-file: 環境ファイルの名前です。このファイルには、コンテナーイメージを準備するためのパラメーターが含まれます。ここでは、ファイル名は containers-prepare-parameter.yaml です。

      注記

      アンダークラウドとオーバークラウド両方のコンテナーイメージのソースを定義するのに、同じ containers-prepare-parameter.yaml ファイルを使用することができます。

  3. 要件に合わせて containers-prepare-parameter.yaml を変更します。

3.4. コンテナーイメージ準備のパラメーター

コンテナー準備用のデフォルトファイル (containers-prepare-parameter.yaml) には、ContainerImagePrepare heat パラメーターが含まれます。このパラメーターで、イメージのセットを準備するためのさまざまな設定を定義します。

parameter_defaults:
  ContainerImagePrepare:
  - (strategy one)
  - (strategy two)
  - (strategy three)
  ...

それぞれの設定では、サブパラメーターのセットにより使用するイメージやイメージの使用方法を定義することができます。以下の表には、ContainerImagePrepare の各設定で使用することのできるサブパラメーターの情報をまとめています。

パラメーター説明

excludes

設定からイメージ名を除外する正規表現の一覧

includes

設定に含める正規表現の一覧。少なくとも 1 つのイメージ名が既存のイメージと一致している必要があります。includes パラメーターを指定すると、excludes の設定はすべて無視されます。

modify_append_tag

対象となるイメージのタグに追加する文字列。たとえば、14.0-89 のタグが付けられたイメージをプルし、modify_append_tag-hotfix に設定すると、director は最終イメージを 14.0-89-hotfix とタグ付けします。

modify_only_with_labels

変更するイメージを絞り込むイメージラベルのディクショナリー。イメージが定義したラベルと一致する場合には、director はそのイメージを変更プロセスに含めます。

modify_role

イメージのアップロード中 (ただし目的のレジストリーにプッシュする前) に実行する Ansible ロール名の文字列

modify_vars

modify_role に渡す変数のディクショナリー

push_destination

アップロードプロセス中にイメージをプッシュするレジストリーの名前空間を定義します。

  • true に設定すると、push_destination はホスト名を使用してアンダークラウドレジストリーの名前空間に設定されます。これが推奨される方法です。
  • false に設定すると、ローカルレジストリーへのプッシュは実行されず、ノードはソースから直接イメージをプルします。
  • カスタムの値に設定すると、director はイメージを外部のローカルレジストリーにプッシュします。

コンテナーイメージを Red Hat Container Catalog から直接プルすることを選択した場合には、実稼働環境ではこのパラメーターを false に設定しないでください。そうしないと、すべてのオーバークラウドノードが同時に外部接続を通じて Red Hat Container Catalog からイメージをプルするため、帯域幅の問題が発生する可能性があります。push_destination パラメーターが false に設定されているか、または定義されておらずリモートレジストリーで認証が必要な場合は、ContainerImageRegistryLogin パラメーターを true に設定し、ContainerImageRegistryCredentials パラメーターで認証情報を追加します。

pull_source

元のコンテナーイメージをプルするソースレジストリー

set

初期イメージの取得場所を定義する、キー:値 定義のディクショナリー

tag_from_label

指定したコンテナーイメージラベルの値を使用して、全イメージのバージョン付きタグを検出してプルます。director は、タグに設定した値で タグ 付けされた各コンテナーイメージを検査し、コンテナーイメージラベルを使用して新規タグを構築し、director がレジストリーからプルします。たとえば、tag_from_label: {version}-{release} を設定すると、director は version および release ラベルを使用して新しいタグを作成します。あるコンテナーについて、version13.0 に設定し、release34 に設定した場合、タグは 13.0-34 となります。

set パラメーターには、複数の キー:値 定義を設定することができます。

キー説明

ceph_image

Ceph Storage コンテナーイメージの名前

ceph_namespace

Ceph Storage コンテナーイメージの名前空間

ceph_tag

Ceph Storage コンテナーイメージのタグ

name_prefix

各 OpenStack サービスイメージの接頭辞

name_suffix

各 OpenStack サービスイメージの接尾辞

namespace

各 OpenStack サービスイメージの名前空間

neutron_driver

使用する OpenStack Networking (neutron) コンテナーを定義するのに使用するドライバー。標準の neutron-server コンテナーに設定するには、null 値を使用します。OVN ベースのコンテナーを使用するには、ovn に設定します。

tag

ソースからの全イメージに特定のタグを設定します。tag_from_label の値を指定せずにこのオプションを使用する場合、director はこのタグを使用するすべてのコンテナーイメージをプルします。ただし、このオプションを tag_from_label の値と共に使用する場合、director はその タグ をソースイメージとして使用し、ラベルに基づいて特定のバージョンタグを識別します。このキーは Red Hat OpenStack Platform のバージョン番号であるデフォルト値に設定したままにします。

重要

Red Hat コンテナーレジストリーでは、すべての Red Hat OpenStack Platform コンテナーイメージをタグ付けするのに、特定のバージョン形式が使用されます。このバージョン形式は {version}-{release} で、各コンテナーイメージがコンテナーメタデータのラベルとして保存します。このバージョン形式は、ある {release} から次のリリースへの更新を容易にします。このため、ContainerImagePrepare heat パラメーターと共に tag_from_label: {version}-{release} パラメーターを常に使用する必要があります。コンテナーイメージをプルするのに タグ だけを単独で使用しないでください。たとえば、タグ 自体を使用すると、更新の実行時に問題が発生します。director は、コンテナーイメージを更新する際にタグの変更が必要なためです。

重要

コンテナーイメージでは、Red Hat OpenStack Platform のバージョンに基づいたマルチストリームタグが使用されます。したがって、今後 latest タグは使用されません。

ContainerImageRegistryCredentials パラメーターは、コンテナーレジストリーをそのレジストリーに対して認証を行うためのユーザー名とパスワードにマッピングします。

コンテナーレジストリーでユーザー名およびパスワードが必要な場合には、ContainerImageRegistryCredentials を使用して以下の構文で認証情報を設定することができます。

  ContainerImagePrepare:
  - push_destination: true
    set:
      namespace: registry.redhat.io/...
      ...
  ContainerImageRegistryCredentials:
    registry.redhat.io:
      my_username: my_password

上記の例の my_username および my_password を、実際の認証情報に置き換えてください。Red Hat では、個人のユーザー認証情報を使用する代わりに、レジストリーサービスアカウントを作成し、それらの認証情報を使用して registry.redhat.io コンテンツにアクセスすることを推奨します。詳しくは、「Red Hat コンテナーレジストリーの認証」を参照してください。

ContainerImageRegistryLogin パラメーターは、デプロイ中のシステムのレジストリーへのログインを制御するために使用されます。push_destination が false に設定されている、または使用されていない場合は、これを true に設定する必要があります。

  ContainerImagePrepare:
  - set:
      namespace: registry.redhat.io/...
      ...
  ContainerImageRegistryCredentials:
    registry.redhat.io:
      my_username: my_password
  ContainerImageRegistryLogin: true

3.5. イメージ準備エントリーの階層化

ContainerImagePrepare パラメーターの値は YAML リストです。したがって、複数のエントリーを指定することができます。以下の例で、2 つのエントリーを指定するケースを説明します。この場合、director はすべてのイメージの最新バージョンを使用しますが、nova-api イメージについてのみ、16.0-44 とタグ付けされたバージョンを使用します。

ContainerImagePrepare:
- tag_from_label: "{version}-{release}"
  push_destination: true
  excludes:
  - nova-api
  set:
    namespace: registry.redhat.io/rhosp-rhel8
    name_prefix: openstack-
    name_suffix: ''
    tag: 16.0
- push_destination: true
  includes:
  - nova-api
  set:
    namespace: registry.redhat.io/rhosp-rhel8
    tag: 16.0-44

includes および excludes のパラメーターでは、各エントリーのイメージの絞り込みをコントロールするのに正規表現が使用されます。includes 設定と一致するイメージが、excludes と一致するイメージに優先します。イメージが一致するとみなされるためには、名前に includes または excludes の正規表現の値が含まれている必要があります。

3.6. Ceph Storage コンテナーイメージの除外

デフォルトのオーバークラウドロール設定では、デフォルトの Controller ロール、Compute ロール、および Ceph Storage ロールが使用されます。ただし、デフォルトのロール設定を使用して Ceph Storage ノードを持たないオーバークラウドをデプロイする場合、director は引き続き Ceph Storage コンテナーイメージを Red Hat コンテナーレジストリーからプルします。イメージがデフォルト設定の一部として含まれているためです。

オーバークラウドで Ceph Storage コンテナーが必要ない場合は、Red Hat コンテナーレジストリーから Ceph Storage コンテナーイメージをプルしないように director を設定することができます。

手順

  1. containers-prepare-parameter.yaml ファイルを編集し、Ceph Storage コンテナーを除外します。

    parameter_defaults:
      ContainerImagePrepare:
      - push_destination: true
        excludes:
          - ceph
          - prometheus
        set:
          …​

    excludes パラメーターは正規表現を使用して、ceph または prometheus 文字列を含むコンテナーイメージを除外します。

  2. containers-prepare-parameter.yaml ファイルを保存します。

3.7. プライベートレジストリーからのコンテナーイメージの取得

一部のコンテナーイメージレジストリーでは、イメージにアクセスするのに認証が必要です。そのような場合には、containers-prepare-parameter.yaml 環境ファイルの ContainerImageRegistryCredentials パラメーターを使用します。

parameter_defaults:
  ContainerImagePrepare:
  - (strategy one)
  - (strategy two)
  - (strategy three)
  ContainerImageRegistryCredentials:
    registry.example.com:
      username: "p@55w0rd!"
重要

プライベートレジストリーでは、ContainerImagePrepare の該当する設定について、push_destinationtrue に設定する必要があります。

ContainerImageRegistryCredentials パラメーターは、プライベートレジストリーの URL に基づくキーのセットを使用します。それぞれのプライベートレジストリーの URL は、独自のキーと値のペアを使用して、ユーザー名 (キー) およびパスワード (値) を定義します。これにより、複数のプライベートレジストリーに対して認証情報を指定することができます。

parameter_defaults:
  ...
  ContainerImageRegistryCredentials:
    registry.redhat.io:
      myuser: 'p@55w0rd!'
    registry.internalsite.com:
      myuser2: '0th3rp@55w0rd!'
    '192.0.2.1:8787':
      myuser3: '@n0th3rp@55w0rd!'
重要

デフォルトの ContainerImagePrepare パラメーターは、認証が必要な registry.redhat.io からコンテナーイメージをプルします。

ContainerImageRegistryLogin パラメーターを使用して、コンテナーを取得するためにシステムがリモートレジストリーにログインする必要があるかどうかを制御します。

parameter_defaults:
  ...
  ContainerImageRegistryLogin: true
重要

特定の設定について push_destination が設定されていない場合は、この値を true に設定する必要があります。ContainerImagePrepare 設定で push_destination が設定され、ContainerImageRegistryCredentials パラメーターが設定されている場合、システムはログインしてコンテナーを取得し、それをリモートシステムにプッシュします。

3.8. 準備プロセスにおけるイメージの変更

イメージの準備中にイメージを変更し、変更したそのイメージで直ちにデプロイすることが可能です。イメージを変更するシナリオを以下に示します。

  • デプロイメント前にテスト中の修正でイメージが変更される、継続的インテグレーションのパイプラインの一部として。
  • ローカルの変更をテストおよび開発のためにデプロイしなければならない、開発ワークフローの一部として。
  • 変更をデプロイしなければならないが、イメージビルドパイプラインでは利用することができない場合。たとえば、プロプライエタリーアドオンの追加または緊急の修正など。

準備プロセス中にイメージを変更するには、変更する各イメージで Ansible ロールを呼び出します。ロールはソースイメージを取得して必要な変更を行い、その結果をタグ付けします。prepare コマンドでイメージを目的のレジストリーにプッシュし、変更したイメージを参照するように heat パラメーターを設定することができます。

Ansible ロール tripleo-modify-image は要求されたロールインターフェースに従い、変更のユースケースに必要な処理を行います。ContainerImagePrepare パラメーターの変更固有のキーを使用して、変更をコントロールします。

  • modify_role では、変更する各イメージについて呼び出す Ansible ロールを指定します。
  • modify_append_tag は、ソースイメージタグの最後に文字列を追加します。これにより、そのイメージが変更されていることが明確になります。すでに push_destination レジストリーに変更されたイメージが含まれている場合には、このパラメーターを使用して変更を省略します。イメージを変更する場合には、必ず modify_append_tag を変更します。
  • modify_vars は、ロールに渡す Ansible 変数のディクショナリーです。

tripleo-modify-image ロールが処理するユースケースを選択するには、tasks_from 変数をそのロールで必要なファイルに設定します。

イメージを変更する ContainerImagePrepare エントリーを開発およびテストする場合には、イメージが想定どおりに変更されることを確認するために、追加のオプションを指定せずにイメージの準備コマンドを実行します。

sudo openstack tripleo container image prepare \
  -e ~/containers-prepare-parameter.yaml

3.9. コンテナーイメージの既存パッケージの更新

以下の ContainerImagePrepare エントリーの例では、アンダークラウドホストで dnf リポジトリー設定を使用して、イメージのパッケージをすべて更新します。

ContainerImagePrepare:
- push_destination: true
  ...
  modify_role: tripleo-modify-image
  modify_append_tag: "-updated"
  modify_vars:
    tasks_from: yum_update.yml
    compare_host_packages: true
    yum_repos_dir_path: /etc/yum.repos.d
  ...

3.10. コンテナーイメージへの追加 RPM ファイルのインストール

RPM ファイルのディレクトリーをコンテナーイメージにインストールすることができます。この機能は、ホットフィックスやローカルパッケージビルドなど、パッケージリポジトリーからは入手できないパッケージのインストールに役立ちます。たとえば、以下の ContainerImagePrepare エントリーにより、nova-compute イメージだけにホットフィックスパッケージがインストールされます。

ContainerImagePrepare:
- push_destination: true
  ...
  includes:
  - nova-compute
  modify_role: tripleo-modify-image
  modify_append_tag: "-hotfix"
  modify_vars:
    tasks_from: rpm_install.yml
    rpms_path: /home/stack/nova-hotfix-pkgs
  ...

3.11. カスタム Dockerfile を使用したコンテナーイメージの変更

柔軟性を高めるために、Dockerfile を含むディレクトリーを指定して必要な変更を加えることが可能です。tripleo-modify-image ロールを呼び出すと、ロールは Dockerfile.modified ファイルを生成し、これにより FROM ディレクティブが変更され新たな LABEL ディレクティブが追加されます。以下の例では、nova-compute イメージでカスタム Dockerfile が実行されます。

ContainerImagePrepare:
- push_destination: true
  ...
  includes:
  - nova-compute
  modify_role: tripleo-modify-image
  modify_append_tag: "-hotfix"
  modify_vars:
    tasks_from: modify_image.yml
    modify_dir_path: /home/stack/nova-custom
  ...

/home/stack/nova-custom/Dockerfile ファイルの例を以下に示します。USER root ディレクティブを実行した後は、元のイメージのデフォルトユーザーに戻す必要があります。

FROM registry.redhat.io/rhosp-rhel8/openstack-nova-compute:latest

USER "root"

COPY customize.sh /tmp/
RUN /tmp/customize.sh

USER "nova"

3.12. コンテナーイメージ管理用 Satellite サーバーの準備

Red Hat Satellite 6 では、複数のイメージを Satellite Server にプルし、アプリケーションライフサイクルの一部として管理することができます。また、他のコンテナー対応システムも Satellite をレジストリーとして使うことができます。コンテナーイメージ管理の詳細は、『 Red Hat Satellite 6 コンテンツ 管理ガイド』の「 コンテナーイメージの管理 」を参照してください。

以下の手順は、Red Hat Satellite 6 の hammer コマンドラインツールを使用した例を示しています。組織には、例として ACME という名称を使用しています。この組織は、実際に使用する Satellite 6 の組織に置き換えてください。

注記

この手順では、registry.redhat.io のコンテナーイメージにアクセスするために認証情報が必要です。Red Hat では、個人のユーザー認証情報を使用する代わりに、レジストリーサービスアカウントを作成し、それらの認証情報を使用して registry.redhat.io コンテンツにアクセスすることを推奨します。詳しくは、「Red Hat コンテナーレジストリーの認証」を参照してください。

手順

  1. すべてのコンテナーイメージの一覧を作成します。

    $ sudo podman search --limit 1000 "registry.redhat.io/rhosp" | grep rhosp-rhel8 | awk '{ print $2 }' | grep -v beta | sed "s/registry.redhat.io\///g" | tail -n+2 > satellite_images
  2. Satellite 6 の hammer ツールがインストールされているシステムに satellite_images ファイルをコピーします。あるいは、『 Hammer CLI ガイド』 に記載の手順に従って、アンダークラウドに hammer ツールをインストールします。
  3. 以下の hammer コマンドを実行して、実際の Satellite 組織に新規製品 (OSP16 Containers) を作成します。

    $ hammer product create \
      --organization "ACME" \
      --name "OSP16 Containers"

    このカスタム製品に、イメージを保管します。

  4. 製品にベースコンテナーイメージを追加します。

    $ hammer repository create \
      --organization "ACME" \
      --product "OSP16 Containers" \
      --content-type docker \
      --url https://registry.redhat.io \
      --docker-upstream-name rhosp-rhel8/openstack-base \
      --upstream-username USERNAME \
      --upstream-password PASSWORD \
      --name base
  5. satellite_images ファイルからオーバークラウドのコンテナーイメージを追加します。

    $ while read IMAGE; do \
      IMAGENAME=$(echo $IMAGE | cut -d"/" -f2 | sed "s/openstack-//g" | sed "s/:.*//g") ; \
      hammer repository create \
      --organization "ACME" \
      --product "OSP16 Containers" \
      --content-type docker \
      --url https://registry.redhat.io \
      --docker-upstream-name $IMAGE \
      --upstream-username USERNAME \
      --upstream-password PASSWORD \
      --name $IMAGENAME ; done < satellite_images
  6. Ceph Storage 4 コンテナーイメージを追加します。

    $ hammer repository create \
      --organization "ACME" \
      --product "OSP16 Containers" \
      --content-type docker \
      --url https://registry.redhat.io \
      --docker-upstream-name rhceph-beta/rhceph-4-rhel8 \
      --upstream-username USERNAME \
      --upstream-password PASSWORD \
      --name rhceph-4-rhel8
  7. コンテナーイメージを同期します。

    $ hammer product synchronize \
      --organization "ACME" \
      --name "OSP16 Containers"

    Satellite Server が同期を完了するまで待ちます。

    注記

    設定によっては、hammer により Satellite サーバーのユーザー名とパスワードを求めるプロンプトが出される場合があります。設定ファイルを使用して自動的にログインするように hammer を設定できます。詳細は、『 Hammer CLI ガイド』「認証」 セクションを参照してください。

  8. お使いの Satellite 6 サーバーでコンテンツビューが使われている場合には、新たなバージョンのコンテンツビューを作成してイメージを反映し、アプリケーションライフサイクルの環境に従ってプロモートします。この作業は、アプリケーションライフサイクルをどのように構成するかに大きく依存します。たとえば、ライフサイクルに production という名称の環境があり、その環境でコンテナーイメージを利用可能にする場合には、コンテナーイメージを含むコンテンツビューを作成し、そのコンテンツビューを production 環境にプロモートします。詳細は、「 コンテンツビューの管理」 を参照してください。
  9. base イメージに使用可能なタグを確認します。

    $ hammer docker tag list --repository "base" \
      --organization "ACME" \
      --lifecycle-environment "production" \
      --content-view "myosp16" \
      --product "OSP16 Containers"

    このコマンドにより、特定環境のコンテンツビューでの OpenStack Platform コンテナーイメージのタグが表示されます。

  10. アンダークラウドに戻り、Satellite サーバーをソースとして使用して、イメージを準備するデフォルトの環境ファイルを生成します。以下のサンプルコマンドを実行して環境ファイルを生成します。

    $ openstack tripleo container image prepare default \
      --output-env-file containers-prepare-parameter.yaml
    • --output-env-file: 環境ファイルの名前です。このファイルには、アンダークラウド用コンテナーイメージを準備するためのパラメーターが含まれます。ここでは、ファイル名は containers-prepare-parameter.yaml です。
  11. containers-prepare-parameter.yaml ファイルを編集して以下のパラメーターを変更します。

    • push_destination: 選択したコンテナーイメージの管理手段に応じて、これを true または false に設定します。このパラメーターを false に設定すると、オーバークラウドノードはイメージを直接 Satellite からプルします。このパラメーターを true に設定すると、director はイメージを Satellite からアンダークラウドレジストリーにプルし、オーバークラウドはそのイメージをアンダークラウドレジストリーからプルします。
    • namespace: Satellite サーバー上のレジストリーの URL およびポート。Red Hat Satellite のデフォルトのレジストリーポートは 5000 です。
    • name_prefix: プレフィックスは Satellite 6 の命名規則に基づきます。これは、コンテンツビューを使用するかどうかによって異なります。

      • コンテンツビューを使用する場合、構成は [org]-[environment]-[content view]-[product]- です。たとえば、acme-production-myosp16-osp16_containers- のようになります。
      • コンテンツビューを使用しない場合、構成は [org]-[product]- です。たとえば、acme-osp16_containers- のようになります。
    • ceph_namespaceceph_imageceph_tag: Ceph Storage を使用する場合には、Ceph Storage コンテナーイメージの場所を定義するこれらの追加パラメーターを指定します。ceph_image に Satellite 固有のプレフィックスが追加された点に注意してください。このプレフィックスは、name_prefix オプションと同じ値です。

Satellite 固有のパラメーターが含まれる環境ファイルの例を、以下に示します。

parameter_defaults:
  ContainerImagePrepare:
  - push_destination: false
    set:
      ceph_image: acme-production-myosp16-osp16_containers-rhceph-4
      ceph_namespace: satellite.example.com:5000
      ceph_tag: latest
      name_prefix: acme-production-myosp16-osp16_containers-
      name_suffix: ''
      namespace: satellite.example.com:5000
      neutron_driver: null
      tag: 16.0
      ...
    tag_from_label: '{version}-{release}'

undercloud.conf 設定ファイルで containers-prepare-parameter.yaml 環境ファイルを定義する必要があります。定義しないと、アンダークラウドはデフォルト値を使用します。

container_images_file = /home/stack/containers-prepare-parameter.yaml

第4章 director のインストール

4.1. director の設定

director のインストールプロセスでは、director が stack ユーザーのホームディレクトリーから読み取る undercloud.conf 設定ファイルに、特定の設定が必要になります。設定のベースとするためにデフォルトのテンプレートをコピーするには、以下の手順を実施します。

手順

  1. デフォルトのテンプレートを stack ユーザーのホームディレクトリーにコピーします。

    [stack@director ~]$ cp \
      /usr/share/python-tripleoclient/undercloud.conf.sample \
      ~/undercloud.conf
  2. undercloud.conf ファイルを編集します。このファイルには、アンダークラウドを設定するための設定値が含まれています。パラメーターを省略したり、コメントアウトした場合には、アンダークラウドのインストールでデフォルト値が使用されます。

4.2. director の設定パラメーター

以下の一覧で、undercloud.conf ファイルを設定するパラメーターについて説明します。エラーを避けるために、パラメーターは決して該当するセクションから削除しないでください。

デフォルト

undercloud.conf ファイルの [DEFAULT] セクションで定義されているパラメーターを以下に示します。

additional_architectures

オーバークラウドがサポートする追加の (カーネル) アーキテクチャーの一覧。現在、オーバークラウドは ppc64le アーキテクチャーをサポートしています。

注記

ppc64le のサポートを有効にする場合には、ipxe_enabledFalse に設定する必要もあります。

certificate_generation_ca
要求した証明書に署名する CA の certmonger のニックネーム。generate_service_certificate パラメーターを設定した場合に限り、このオプションを使用します。local CA を選択する場合は、certmonger はローカルの CA 証明書を /etc/pki/ca-trust/source/anchors/cm-local-ca.pem に抽出し、証明書をトラストチェーンに追加します。
clean_nodes
デプロイメントを再実行する前とイントロスペクションの後にハードドライブを消去するかどうかを定義します。
cleanup
一時ファイルをクリーンナップします。デプロイメントコマンドの実行後もデプロイメント時に使用した一時ファイルをそのまま残すには、このパラメーターを False に設定します。ファイルを残すと、生成されたファイルのデバッグを行う場合やエラーが発生した場合に役に立ちます。
container_cli
コンテナー管理用の CLI ツール。このパラメーターは、podman に設定したままにしてください。Red Hat Enterprise Linux 8.1 は、podman のみをサポートします。
container_healthcheck_disabled
コンテナー化されたサービスのヘルスチェックを無効にします。Red Hat は、ヘルスチェックを有効にし、このオプションを false に設定したままにすることを推奨します。
container_images_file

コンテナーイメージ情報が含まれる heat 環境ファイル。このファイルには、以下のエントリーを含めることができます。

  • 必要なすべてのコンテナーイメージのパラメーター
  • 必要なイメージの準備を実施する ContainerImagePrepare パラメーター。このパラメーターが含まれるファイルの名前は、通常 containers-prepare-parameter.yaml です。
container_insecure_registries
podman が使用するセキュアではないレジストリーの一覧。プライベートコンテナーレジストリー等の別のソースからイメージをプルする場合には、このパラメーターを使用します。多くの場合、podman は Red Hat Container Catalog または Satellite サーバー (アンダークラウドが Satellite に登録されている場合) のいずれかからコンテナーイメージをプルするための証明書を持ちます。
container_registry_mirror
設定により podman が使用するオプションの registry-mirror
custom_env_files
アンダークラウドのインストールに追加する新たな環境ファイル
deployment_user
アンダークラウドをインストールするユーザー。現在のデフォルトユーザー stack を使用する場合には、このパラメーターを未設定のままにします。
discovery_default_driver
自動的に登録されたノードのデフォルトドライバーを設定します。enable_node_discovery パラメーターを有効にし、enabled_hardware_types の一覧にドライバーを含める必要があります。
enable_ironic、enable_ironic_inspector、enable_mistral、enable_nova、enable_tempest、enable_validations、enable_zaqar
director で有効にするコアサービスを定義します。これらのパラメーターは true に設定されたままにします。
enable_node_discovery
introspection ramdisk を PXE ブートする不明なノードを自動的に登録します。新規ノードは、fake_pxe ドライバーをデフォルトとして使用しますが、discovery_default_driver を設定して上書きすることもできます。また、イントロスペクションルールを使用して、新しく登録したノードにドライバーの情報を指定することもできます。
enable_novajoin
アンダークラウドに novajoin メタデータサービスをインストールするかどうかを定義します。
enable_routed_networks
ルーティングされたコントロールプレーンネットワークのサポートを有効にするかどうかを定義します。
enable_swift_encryption
保存データの Swift 暗号化を有効にするかどうかを定義します。
enable_telemetry
アンダークラウドに OpenStack Telemetry サービス (gnocchi、aodh、panko) をインストールするかどうかを定義します。Telemetry サービスを自動的にインストール/設定するには、enable_telemetry パラメーターを true に設定します。デフォルト値は false で、アンダークラウド上の telemetry が無効になります。このパラメーターは、メトリックデータを消費する Red Hat CloudForms などの他の製品を使用する場合に必要です。
enabled_hardware_types
アンダークラウドで有効にするハードウェアタイプの一覧
generate_service_certificate
アンダークラウドのインストール時に SSL/TLS 証明書を生成するかどうかを定義します。これは undercloud_service_certificate パラメーターに使用します。アンダークラウドのインストールで、作成された証明書 /etc/pki/tls/certs/undercloud-[undercloud_public_vip].pem を保存します。certificate_generation_ca パラメーターで定義される CA はこの証明書に署名します。
heat_container_image
使用する heat コンテナーイメージの URL。未設定のままにします。
heat_native
heat-all を使用してホストベースのアンダークラウド設定を実行します。true のままにします。
hieradata_override
director に Puppet hieradata を設定するための hieradata オーバーライドファイルへのパス。これにより、サービスに対して undercloud.conf パラメーター以外のカスタム設定を行うことができます。設定すると、アンダークラウドのインストールでこのファイルが /etc/puppet/hieradata ディレクトリーにコピーされ、階層の最初のファイルに設定されます。この機能の使用についての詳細は、「 アンダークラウドへの hieradata の設定」を参照し てください。
inspection_extras
イントロスペクション時に追加のハードウェアコレクションを有効化するかどうかを定義します。このパラメーターを使用するには、イントロスペクションイメージに python-hardware または python-hardware-detect パッケージが必要です。
inspection_interface
ノードのイントロスペクションに director が使用するブリッジ。これは、director の設定により作成されるカスタムのブリッジです。LOCAL_INTERFACE でこのブリッジをアタッチします。これは、デフォルトの br-ctlplane のままにします。
inspection_runbench
ノードイントロスペクション時に一連のベンチマークを実行します。ベンチマークを有効にするには、このパラメーターを true に設定します。このオプションは、登録ノードのハードウェアを検査する際にベンチマーク分析を実行する場合に必要です。
ipa_otp
IPA サーバーにアンダークラウドノードを登録するためのワンタイムパスワードを定義します。これは、enable_novajoin が有効な場合に必要です。
ipv6_address_mode

アンダークラウドのプロビジョニングネットワーク用の IPv6 アドレス設定モード。このパラメーターに設定できる値の一覧を以下に示します。

  • dhcpv6-stateless: ルーター広告 (RA) を使用するアドレス設定と DHCPv6 を使用するオプションの情報
  • dhcpv6-stateful: DHCPv6 を使用するアドレス設定とオプションの情報
ipxe_enabled
iPXE か標準の PXE のいずれを使用するか定義します。デフォルトは true で iPXE を有効化します。標準の PXE を使用するには、このパラメーターを false に設定します。
local_interface

director のプロビジョニング NIC 用に選択するインターフェース。director は、DHCP および PXE ブートサービスにもこのデバイスを使用します。この値を選択したデバイスに変更します。接続されているデバイスを確認するには、ip addr コマンドを使用します。ip addr コマンドの出力結果の例を、以下に示します。

2: em0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast state UP qlen 1000
    link/ether 52:54:00:75:24:09 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
    inet 192.168.122.178/24 brd 192.168.122.255 scope global dynamic em0
       valid_lft 3462sec preferred_lft 3462sec
    inet6 fe80::5054:ff:fe75:2409/64 scope link
       valid_lft forever preferred_lft forever
3: em1: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc noop state DOWN
    link/ether 42:0b:c2:a5:c1:26 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff

この例では、外部 NIC は em0 を使用し、プロビジョニング NIC は、現在設定されていない em1 を使用します。この場合は、local_interfaceem1 に設定します。この設定スクリプトにより、このインターフェースが inspection_interface パラメーターで定義したカスタムのブリッジにアタッチされます。

local_ip
director のプロビジョニング NIC 用に定義する IP アドレス。director は、DHCP および PXE ブートサービスにもこの IP アドレスを使用します。この IP アドレスが環境内の既存の IP アドレスまたはサブネットと競合するなどの理由により、プロビジョニングネットワークに別のサブネットを使用する場合以外は、この値をデフォルトの 192.168.24.1/24 のままにします。
local_mtu
local_interface に使用する最大伝送単位 (MTU)。アンダークラウドでは 1500 以下にします。
local_subnet
PXE ブートと DHCP インターフェースに使用するローカルサブネット。local_ip アドレスがこのサブネットに含まれている必要があります。デフォルトは ctlplane-subnet です。
net_config_override
ネットワーク設定のオーバーライドテンプレートへのパス。このパラメーターを設定すると、アンダークラウドは JSON 形式のテンプレートを使用して os-net-config でネットワークを設定し、undercloud.conf で設定したネットワークパラメーターを無視します。ボンディングを設定する場合、またはインターフェースにオプションを追加する場合に、このパラメーターを使用します。/usr/share/python-tripleoclient/undercloud.conf.sample の例を参照してください。
networks_file
heat をオーバーライドするネットワークファイル
output_dir
状態、処理された heat テンプレート、および Ansible デプロイメントファイルを出力するディレクトリー
overcloud_domain_name

オーバークラウドをデプロイする際に使用する DNS ドメイン名

注記

オーバークラウドを設定する際に、CloudDomain にこのパラメーターと同じ値を設定する必要があります。オーバークラウドを設定する際に、環境ファイルでこのパラメーターを設定します。

roles_file
アンダークラウドのインストールで、デフォルトロールファイルを上書きするのに使用するロールファイル。director のインストールにデフォルトのロールファイルが使用されるように、このパラメーターは未設定のままにすることを強く推奨します。
scheduler_max_attempts
スケジューラーがインスタンスのデプロイを試行する最大回数。スケジューリング時に競合状態にならないように、この値を 1 度にデプロイする予定のベアメタルノードの数以上に指定する必要があります。
service_principal
この証明書を使用するサービスの Kerberos プリンシパル。FreeIPA など CA で Kerberos プリンシパルが必要な場合に限り、このパラメーターを使用します。
subnets
プロビジョニングおよびイントロスペクション用のルーティングネットワークのサブネットの一覧。デフォルト値に含まれるのは、ctlplane-subnet サブネットのみです。詳細は、「サブネット」を参照してください。
templates
上書きする heat テンプレートファイル
undercloud_admin_host
SSL/TLS 経由の director の管理 API エンドポイントに定義する IP アドレスまたはホスト名。director の設定により、IP アドレスは /32 ネットマスクを使用するルーティングされた IP アドレスとして director のソフトウェアブリッジに接続されます。
undercloud_debug
アンダークラウドサービスのログレベルを DEBUG に設定します。DEBUG ログレベルを有効にするには、この値を true に設定します。
undercloud_enable_selinux
デプロイメント時に、SELinux を有効または無効にします。問題をデバッグする場合以外は、この値を true に設定したままにすることを強く推奨します。
undercloud_hostname
アンダークラウドの完全修飾ホスト名を定義します。本パラメータを指定すると、アンダークラウドのインストールでホスト名すべてに設定されます。指定しないと、アンダークラウドは現在のホスト名を使用しますが、システムのホスト名すべてを適切に設定しておく必要があります。
undercloud_log_file
アンダークラウドのインストールログおよびアップグレードログを保管するログファイルへのパス。デフォルトでは、ログファイルはホームディレクトリー内の install-undercloud.log です。たとえば、/home/stack/install-undercloud.log のようになります。
undercloud_nameservers
アンダークラウドのホスト名解決に使用する DNS ネームサーバーの一覧
undercloud_ntp_servers
アンダークラウドの日付と時刻を同期できるようにする Network Time Protocol サーバーの一覧
undercloud_public_host
SSL/TLS 経由の director のパブリック API エンドポイントに定義する IP アドレスまたはホスト名。director の設定により、IP アドレスは /32 ネットマスクを使用するルーティングされた IP アドレスとして director のソフトウェアブリッジに接続されます。
undercloud_service_certificate
OpenStack SSL/TLS 通信の証明書の場所とファイル名。理想的には、信頼できる認証局から、この証明書を取得します。それ以外の場合は、独自の自己署名の証明書を生成します。
undercloud_timezone
アンダークラウド用ホストのタイムゾーン。タイムゾーンを指定しなければ、director は既存のタイムゾーン設定を使用します。
undercloud_update_packages
アンダークラウドのインストール時にパッケージを更新するかどうかを定義します。

サブネット

undercloud.conf ファイルには、各プロビジョニングサブネットの名前が付いたセクションがあります。たとえば、ctlplane-subnet という名前のサブネットを作成するには、undercloud.conf ファイルで以下のような設定を使用します。

[ctlplane-subnet]
cidr = 192.168.24.0/24
dhcp_start = 192.168.24.5
dhcp_end = 192.168.24.24
inspection_iprange = 192.168.24.100,192.168.24.120
gateway = 192.168.24.1
masquerade = true

プロビジョニングネットワークは、環境に応じて、必要なだけ指定することができます。

cidr
オーバークラウドインスタンスの管理に director が使用するネットワーク。これは、アンダークラウドの neutron サービスが管理するプロビジョニングネットワークです。プロビジョニングネットワークに別のサブネットを使用しない限り、この値はデフォルト (192.168.24.0/24) のままにします。
masquerade

外部ネットワークへのアクセスのために、cidr で定義したネットワークをマスカレードするかどうかを定義します。このパラメーターにより、director 経由で外部ネットワークにアクセスすることができるように、プロビジョニングネットワークにネットワークアドレス変換 (NAT) の一部メカニズムが提供されます。

注記

director 設定は、適切な sysctl カーネルパラメーターを使用して IP フォワーディングも自動的に有効化します。

dhcp_start、dhcp_end
オーバークラウドノードの DHCP 割り当て範囲 (開始アドレスと終了アドレス)。ノードを割り当てるのに十分な IP アドレスがこの範囲に含まれるようにします。
dhcp_exclude
DHCP 割り当て範囲で除外する IP アドレス
dns_nameservers
サブネットに固有の DNS ネームサーバー。サブネットにネームサーバーが定義されていない場合には、サブネットは undercloud_nameservers パラメーターで定義されるネームサーバーを使用します。
gateway
オーバークラウドインスタンスのゲートウェイ。外部ネットワークにトラフィックを転送するアンダークラウドのホストです。director に別の IP アドレスを使用する場合または直接外部ゲートウェイを使用する場合以外は、この値はデフォルト (192.168.24.1) のままにします。
host_routes
このネットワーク上のオーバークラウドインスタンス用の neutron が管理するサブネットのホストルート。このパラメーターにより、アンダークラウド上の local_subnet のホストルートも設定されます。
inspection_iprange
検査プロセス中に使用するこのネットワーク上のノードの一時的な IP 範囲。この範囲は、dhcp_startdhcp_end で定義された範囲と重複することはできませんが、同じ IP サブネット内になければなりません。

実際の構成に応じて、これらのパラメーターの値を変更してください。完了したら、ファイルを保存します。

4.3. 環境ファイルを使用したアンダークラウドの設定

undercloud.conf ファイルを使用して、アンダークラウドの主要なパラメーターを設定します。heat パラメーターが含まれる環境ファイルを使用して、アンダークラウドの追加設定を行うこともできます。

手順

  1. /home/stack/templates/custom-undercloud-params.yaml という名前で環境ファイルを作成します。
  2. このファイルを編集して、必要な heat パラメーターを追加します。たとえば、特定の OpenStack Platform サービスのデバッグを有効にするには、custom-undercloud-params.yaml ファイルに以下のスニペットを追加します。

    parameter_defaults:
      Debug: True

    完了したら、このファイルを保存します。

  3. undercloud.conf ファイルを編集し、custom_env_files パラメーターまでスクロールします。作成した custom-undercloud-params.yaml 環境ファイルをポイントするようにパラメーターを編集します。

    custom_env_files = /home/stack/templates/custom-undercloud-params.yaml
    注記

    コンマ区切りリストを使用して、複数の環境ファイルを指定することができます。

アンダークラウドの次回インストールまたはアップグレード操作時に、この環境ファイルが director のインストールに追加されます。

4.4. アンダークラウド設定用の標準 heat パラメーター

以下の表には、アンダークラウド用のカスタム環境ファイルで設定する標準の heat パラメーターをまとめています。

パラメーター説明

AdminPassword

アンダークラウドの admin ユーザーのパスワードを設定します。

AdminEmail

アンダークラウドの admin ユーザーの電子メールアドレスを設定します。

Debug

デバッグモードを有効にします。

カスタム環境ファイルの parameter_defaults セクションで、これらのパラメーターを設定します。

parameter_defaults:
  Debug: True
  AdminPassword: "myp@ssw0rd!"
  AdminEmail: "admin@example.com"

4.5. アンダークラウドへの hieradata の設定

director に Puppet hieradata を設定して、サービスに対して利用可能な undercloud.conf パラメーター以外のカスタム設定を行うことができます。

手順

  1. hieradata オーバーライドファイルを作成します (例: /home/stack/hieradata.yaml)。
  2. カスタマイズした hieradata をファイルに追加します。たとえば、Compute (nova) サービスのパラメーター force_raw_images をデフォルト値の True から False に変更するには、以下のスニペットを追加します。

    nova::compute::force_raw_images: False

    設定するパラメーターに Puppet 実装がない場合には、以下の手段によりパラメーターを設定します。

    nova::config::nova_config:
      DEFAULT/<parameter_name>:
        value: <parameter_value>

    以下に例を示します。

    nova::config::nova_config:
      DEFAULT/network_allocate_retries:
        value: 20
      ironic/serial_console_state_timeout:
        value: 15
  3. undercloud.conf ファイルの hieradata_override パラメーターを、新しい /home/stack/hieradata.yaml ファイルのパスに設定します。

    hieradata_override = /home/stack/hieradata.yaml

4.6. IPv6 を使用してベアメタルをプロビジョニングするためのアンダークラウド設定

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

IPv6 ノードおよびインフラストラクチャーがある場合には、IPv4 ではなく IPv6 を使用するようにアンダークラウドおよびプロビジョニングネットワークを設定することができます。これにより、director は IPv6 ノードに Red Hat OpenStack Platform をプロビジョニングおよびデプロイすることができます。ただし、いくつかの考慮事項があります。

  • ステートフル DHCPv6 は、限られた UEFI ファームウェアセットでしか利用することができません。詳しい情報は、Bugzilla #1575026 を参照してください。
  • デュアルスタック IPv4/6 は利用できません。
  • tempest 検証が正しく動作しない可能性があります。
  • アップグレード時に IPv4 から IPv6 に移行することはできません。

undercloud.conf ファイルを変更して、Red Hat OpenStack Platform で IPv6 プロビジョニングを有効にします。

前提条件

手順

  1. サンプルの undercloud.conf ファイルをコピーするか、既存の undercloud.conf ファイルを変更します。
  2. undercloud.conf ファイルで以下のパラメーター値を設定します。

    1. NIC が Red Hat OpenStack Platform でステートフル DHCPv6 をサポートする場合は、ipv6_address_modedhcpv6-stateless または dhcpv6-stateful に設定します。ステートフルな DHCPv6 の可用性についての詳しい情報は、Bugzilla #1575026 を参照してください。
    2. アンダークラウドでプロビジョニングネットワークにルーターを作成する必要がない場合は、enable_routed_networkstrue に設定します。この場合、データセンタールーターはルーター広告を提供する必要があります。それ以外の場合は、この値を false に設定します。
    3. local_ip をアンダークラウドの IPv6 アドレスに設定します。
    4. アンダークラウドインターフェースのパラメーター undercloud_public_hostundercloud_admin_host に IPv6 アドレス設定を使用します。
    5. [ctlplane-subnet] セクションで、以下のパラメーターに IPv6 アドレス設定を使用します。

      • cidr
      • dhcp_start
      • dhcp_end
      • gateway
      • inspection_iprange
    6. [ctlplane-subnet] セクションで、dns_nameservers パラメーターにサブネットの IPv6 ネームサーバーを設定します。

      ipv6_address_mode = dhcpv6-stateless
      enable_routed_networks: false
      local_ip = <ipv6-address>
      undercloud_admin_host = <ipv6-address>
      undercloud_public_host = <ipv6-address>
      
      [ctlplane-subnet]
      cidr = <ipv6-address>::<ipv6-mask>
      dhcp_start = <ipv6-address>
      dhcp_end = <ipv6-address>
      dns_nameservers = <ipv6-dns>
      gateway = <ipv6-address>
      inspection_iprange = <ipv6-address>,<ipv6-address>

4.7. director のインストール

director をインストールして基本的なインストール後タスクを行うには、以下の手順を実施します。

手順

  1. 以下のコマンドを実行して、アンダークラウドに director をインストールします。

    [stack@director ~]$ openstack undercloud install

    このコマンドにより、director の設定スクリプトが起動します。director により追加のパッケージがインストールされ、undercloud.conf の設定に応じてサービスが設定されます。このスクリプトは、完了までに数分かかります。

    スクリプトにより、2 つのファイルが生成されます。

    • undercloud-passwords.conf: director サービスの全パスワード一覧
    • stackrc: director コマンドラインツールへアクセスできるようにする初期化変数セット
  2. このスクリプトは、全 OpenStack Platform サービスのコンテナーも自動的に起動します。以下のコマンドを使用して、有効になったコンテナーを確認することができます。

    [stack@director ~]$ sudo podman ps
  3. stack ユーザーを初期化してコマンドラインツールを使用するには、以下のコマンドを実行します。

    [stack@director ~]$ source ~/stackrc

    プロンプトには、OpenStack コマンドがアンダークラウドに対して認証および実行されることが表示されるようになります。

    (undercloud) [stack@director ~]$

director のインストールが完了しました。これで、director コマンドラインツールが使用できるようになりました。

4.8. オーバークラウドノードのイメージの取得

director では、オーバークラウドのノードをプロビジョニングするのに、複数のディスクイメージが必要です。

  • イントロスペクションカーネルおよび ramdisk: PXE ブートでのベアメタルシステムのイントロスペクション用
  • デプロイメントカーネルおよび ramdisk: システムのプロビジョニングおよびデプロイメント用
  • オーバークラウドカーネル、ramdisk、および完全なイメージ: ノードのハードディスクに書き込まれるベースのオーバークラウドシステムを形成

以下の手順は、これらのイメージの取得およびインストールの方法について説明します。

4.8.1. 単一 CPU アーキテクチャーのオーバークラウド

CPU アーキテクチャーがデフォルトの x86-64 の場合には、オーバークラウドのデプロイメントに以下のイメージおよび手順が必要です。

手順

  1. source コマンドで stackrc ファイルを読み込み、director コマンドラインツールを有効にします。

    [stack@director ~]$ source ~/stackrc
  2. rhosp-director-images および rhosp-director-images-ipa パッケージをインストールします。

    (undercloud) [stack@director ~]$ sudo dnf install rhosp-director-images rhosp-director-images-ipa
  3. イメージのアーカイブを、stack ユーザーのホームディレクトリー下の images ディレクトリー (/home/stack/images) に展開します。

    (undercloud) [stack@director ~]$ cd ~/images
    (undercloud) [stack@director images]$ for i in /usr/share/rhosp-director-images/overcloud-full-latest-16.0.tar /usr/share/rhosp-director-images/ironic-python-agent-latest-16.0.tar; do tar -xvf $i; done
  4. これらのイメージを director にインポートします。

    (undercloud) [stack@director images]$ openstack overcloud image upload --image-path /home/stack/images/

    このスクリプトにより、以下のイメージが director にアップロードされます。

    • overcloud-full
    • overcloud-full-initrd
    • overcloud-full-vmlinuz

    スクリプトにより、director PXE サーバー上にイントロスペクションイメージもインストールされます。

  5. イメージが正常にアップロードされたことを確認します。

    (undercloud) [stack@director images]$ openstack image list
    +--------------------------------------+------------------------+
    | ID                                   | Name                   |
    +--------------------------------------+------------------------+
    | ef793cd0-e65c-456a-a675-63cd57610bd5 | overcloud-full         |
    | 9a51a6cb-4670-40de-b64b-b70f4dd44152 | overcloud-full-initrd  |
    | 4f7e33f4-d617-47c1-b36f-cbe90f132e5d | overcloud-full-vmlinuz |
    +--------------------------------------+------------------------+

    この一覧には、イントロスペクションの PXE イメージは表示されません。director は、これらのファイルを /var/lib/ironic/httpboot にコピーします。

    (undercloud) [stack@director images]$ ls -l /var/lib/ironic/httpboot
    total 417296
    -rwxr-xr-x. 1 root  root    6639920 Jan 29 14:48 agent.kernel
    -rw-r--r--. 1 root  root  420656424 Jan 29 14:48 agent.ramdisk
    -rw-r--r--. 1 42422 42422       758 Jan 29 14:29 boot.ipxe
    -rw-r--r--. 1 42422 42422       488 Jan 29 14:16 inspector.ipxe

4.8.2. 複数 CPU アーキテクチャーのオーバークラウド

追加の CPU アーキテクチャーのサポートを有効にしてオーバークラウドをデプロイするには、以下のイメージおよび手順が必要です。

以下に示す手順の例では、ppc64le イメージを使用しています。

手順

  1. source コマンドで stackrc ファイルを読み込み、director コマンドラインツールを有効にします。

    [stack@director ~]$ source ~/stackrc
  2. rhosp-director-images-all パッケージをインストールします。

    (undercloud) [stack@director ~]$ sudo dnf install rhosp-director-images-all
  3. アーカイブをアーキテクチャー個別のディレクトリーに展開します。ここでは、stack ユーザーのホームディレクトリー下の images ディレクトリー (/home/stack/images) です。

    (undercloud) [stack@director ~]$ cd ~/images
    (undercloud) [stack@director images]$ for arch in x86_64 ppc64le ; do mkdir $arch ; done
    (undercloud) [stack@director images]$ for arch in x86_64 ppc64le ; do for i in /usr/share/rhosp-director-images/overcloud-full-latest-16.0-${arch}.tar /usr/share/rhosp-director-images/ironic-python-agent-latest-16.0-${arch}.tar ; do tar -C $arch -xf $i ; done ; done
  4. これらのイメージを director にインポートします。

    (undercloud) [stack@director ~]$ cd ~/images
    (undercloud) [stack@director images]$ openstack overcloud image upload --image-path ~/images/ppc64le --architecture ppc64le --whole-disk --http-boot /var/lib/ironic/tftpboot/ppc64le
    (undercloud) [stack@director images]$ openstack overcloud image upload --image-path ~/images/x86_64/ --http-boot /var/lib/ironic/tftpboot

    これらのコマンドにより、以下のイメージが director にアップロードされます。

    • overcloud-full
    • overcloud-full-initrd
    • overcloud-full-vmlinuz
    • ppc64le-bm-deploy-kernel
    • ppc64le-bm-deploy-ramdisk
    • ppc64le-overcloud-full

      スクリプトにより、director PXE サーバー上にイントロスペクションイメージもインストールされます。

  5. イメージが正常にアップロードされたことを確認します。

    (undercloud) [stack@director images]$ openstack image list
    +--------------------------------------+---------------------------+--------+
    | ID                                   | Name                      | Status |
    +--------------------------------------+---------------------------+--------+
    | 6a6096ba-8f79-4343-b77c-4349f7b94960 | overcloud-full            | active |
    | de2a1bde-9351-40d2-bbd7-7ce9d6eb50d8 | overcloud-full-initrd     | active |
    | 67073533-dd2a-4a95-8e8b-0f108f031092 | overcloud-full-vmlinuz    | active |
    | 69a9ffe5-06dc-4d81-a122-e5d56ed46c98 | ppc64le-bm-deploy-kernel  | active |
    | 464dd809-f130-4055-9a39-cf6b63c1944e | ppc64le-bm-deploy-ramdisk | active |
    | f0fedcd0-3f28-4b44-9c88-619419007a03 | ppc64le-overcloud-full    | active |
    +--------------------------------------+---------------------------+--------+

    この一覧には、イントロスペクションの PXE イメージは表示されません。director は、これらのファイルを /tftpboot にコピーします。

    (undercloud) [stack@director images]$ ls -l /var/lib/ironic/tftpboot /var/lib/ironic/tftpboot/ppc64le/
    /var/lib/ironic/tftpboot:
    total 422624
    -rwxr-xr-x. 1 root   root     6385968 Aug  8 19:35 agent.kernel
    -rw-r--r--. 1 root   root   425530268 Aug  8 19:35 agent.ramdisk
    -rwxr--r--. 1 ironic ironic     20832 Aug  8 02:08 chain.c32
    -rwxr--r--. 1 ironic ironic    715584 Aug  8 02:06 ipxe.efi
    -rw-r--r--. 1 root   root          22 Aug  8 02:06 map-file
    drwxr-xr-x. 2 ironic ironic        62 Aug  8 19:34 ppc64le
    -rwxr--r--. 1 ironic ironic     26826 Aug  8 02:08 pxelinux.0
    drwxr-xr-x. 2 ironic ironic        21 Aug  8 02:06 pxelinux.cfg
    -rwxr--r--. 1 ironic ironic     69631 Aug  8 02:06 undionly.kpxe
    
    /var/lib/ironic/tftpboot/ppc64le/:
    total 457204
    -rwxr-xr-x. 1 root             root              19858896 Aug  8 19:34 agent.kernel
    -rw-r--r--. 1 root             root             448311235 Aug  8 19:34 agent.ramdisk
    -rw-r--r--. 1 ironic-inspector ironic-inspector       336 Aug  8 02:06 default

4.8.3. 最小限のオーバークラウドイメージ

他の Red Hat OpenStack Platform サービスを実行したくない場合や、サブスクリプションエンタイトルメントの 1 つを消費したくない場合に、overcloud-minimal イメージを使用してベア OS をプロビジョニングすることができます。

手順

  1. source コマンドで stackrc ファイルを読み込み、director コマンドラインツールを有効にします。

    [stack@director ~]$ source ~/stackrc
  2. overcloud-minimal パッケージをインストールします。

    (undercloud) [stack@director ~]$ sudo dnf install rhosp-director-images-minimal
  3. イメージのアーカイブを、stack ユーザーのホームディレクトリー下の images ディレクトリー (/home/stack/images) に展開します。

    (undercloud) [stack@director ~]$ cd ~/images
    (undercloud) [stack@director images]$ tar xf /usr/share/rhosp-director-images/overcloud-minimal-latest-16.0.tar
  4. イメージを director にインポートします。

    (undercloud) [stack@director images]$ openstack overcloud image upload --image-path /home/stack/images/ --os-image-name overcloud-minimal.qcow2

    このスクリプトにより、以下のイメージが director にアップロードされます。

    • overcloud-minimal
    • overcloud-minimal-initrd
    • overcloud-minimal-vmlinuz
  5. イメージが正常にアップロードされたことを確認します。

    (undercloud) [stack@director images]$ openstack image list
    +--------------------------------------+---------------------------+
    | ID                                   | Name                      |
    +--------------------------------------+---------------------------+
    | ef793cd0-e65c-456a-a675-63cd57610bd5 | overcloud-full            |
    | 9a51a6cb-4670-40de-b64b-b70f4dd44152 | overcloud-full-initrd     |
    | 4f7e33f4-d617-47c1-b36f-cbe90f132e5d | overcloud-full-vmlinuz    |
    | 32cf6771-b5df-4498-8f02-c3bd8bb93fdd | overcloud-minimal         |
    | 600035af-dbbb-4985-8b24-a4e9da149ae5 | overcloud-minimal-initrd  |
    | d45b0071-8006-472b-bbcc-458899e0d801 | overcloud-minimal-vmlinuz |
    +--------------------------------------+---------------------------+
注記

デフォルトの overcloud-full.qcow2 イメージは、フラットなパーティションイメージです。ただし、完全なディスクイメージをインポートして使用することも可能です。詳細は、「22章完全なディスクイメージの作成」を参照してください。

4.9. コントロールプレーン用のネームサーバーの設定

オーバークラウドで cdn.redhat.com などの外部のホスト名を解決する予定の場合は、オーバークラウドノード上にネームサーバーを設定してください。ネットワークを分離していない標準のオーバークラウドの場合には、ネームサーバーはアンダークラウドのコントロールプレーンのサブネットを使用して定義されます。環境でネームサーバーを定義するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. source コマンドで stackrc ファイルを読み込み、director コマンドラインツールを有効にします。

    [stack@director ~]$ source ~/stackrc
  2. ctlplane-subnet サブネット用のネームサーバーを設定します。

    (undercloud) [stack@director images]$ openstack subnet set --dns-nameserver [nameserver1-ip] --dns-nameserver [nameserver2-ip] ctlplane-subnet

    各ネームサーバーに --dns-nameserver オプションを使用します。

  3. サブネットを表示してネームサーバーを確認します。

    (undercloud) [stack@director images]$ openstack subnet show ctlplane-subnet
    +-------------------+-----------------------------------------------+
    | Field             | Value                                         |
    +-------------------+-----------------------------------------------+
    | ...               |                                               |
    | dns_nameservers   | 8.8.8.8                                       |
    | ...               |                                               |
    +-------------------+-----------------------------------------------+
重要

サービストラフィックを別のネットワークに分離する場合は、オーバークラウドのノードはネットワーク環境ファイルの DnsServers パラメーターを使用します。

4.10. アンダークラウド設定の更新

新たな要件に合わせて、アンダークラウドの設定を変更する必要がある場合は、該当する設定ファイルを編集し、openstack undercloud install コマンドを再度実行して、インストール後のアンダークラウド設定に変更を加えることができます。

手順

  1. アンダークラウドの設定ファイルを変更します。以下の例では、undercloud.conf ファイルを編集して、有効なハードウェア種別の一覧に idrac ハードウェア種別を追加しています。

    enabled_hardware_types = ipmi,redfish,idrac
  2. openstack undercloud install コマンドを実行し、新たな変更を反映させてアンダークラウドを更新します。

    [stack@director ~]$ openstack undercloud install

    コマンドの実行が完了するまで待ちます。

  3. stack ユーザーを初期化し、コマンドラインツールを使用します。

    [stack@director ~]$ source ~/stackrc

    プロンプトには、OpenStack コマンドがアンダークラウドに対して認証および実行されることが表示されるようになります。

    (undercloud) [stack@director ~]$
  4. director が新しい設定を適用していることを確認します。この例では、有効なハードウェア種別の一覧を確認しています。

    (undercloud) [stack@director ~]$ openstack baremetal driver list
    +---------------------+----------------+
    | Supported driver(s) | Active host(s) |
    +---------------------+----------------+
    | idrac               | unused         |
    | ipmi                | unused         |
    | redfish             | unused         |
    +---------------------+----------------+

アンダークラウドの再設定が完了しました。

4.11. アンダークラウドのコンテナーレジストリー

Red Hat Enterprise Linux 8.1 には、Docker Registry v2 をインストールするための docker-distribution パッケージが含まれなくなりました。互換性および同じ機能レベルを維持するために、director のインストールでは Apache Web サーバーおよび image-serve という仮想ホストが作成され、これによりレジストリーが提供されます。このレジストリーでも、SSL を無効にしたポート 8787/TCP が使用されます。Apache ベースのレジストリーはコンテナー化されていません。したがって、以下のコマンドを実行してレジストリーを再起動する必要があります。

$ sudo systemctl restart httpd

コンテナーレジストリーのログは、以下の場所に保存されます。

  • /var/log/httpd/image_serve_access.log
  • /var/log/httpd/image_serve_error.log.

イメージのコンテンツは、/var/lib/image-serve から提供されます。この場所では、レジストリー REST API のプル機能を実装するために、特定のディレクトリーレイアウトおよび apache 設定が使用されています。

Apache ベースのレジストリーでは、podman push コマンドも buildah push コマンドもサポートされません。つまり、従来の方法を使用してコンテナーイメージをプッシュすることはできません。デプロイ中にイメージを変更するには、ContainerImagePrepare パラメーターなどのコンテナー準備ワークフローを使用します。コンテナーイメージを管理するには、コンテナー管理コマンドを使用します。

sudo openstack tripleo container image list
レジストリーに保存されているすべてのイメージを一覧表示します。
sudo openstack tripleo container image show
レジストリーの特定イメージのメタデータを表示します。
sudo openstack tripleo container image push
イメージをリモートレジストリーからアンダークラウドレジストリーにプッシュします。
sudo openstack tripleo container image delete
レジストリーからイメージを削除します。
注記

すべてのコンテナーイメージ管理コマンドを sudo レベルの権限で実行する必要があります。

4.12. 次のステップ

第5章 アンダークラウドミニオンのインストール

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

5.1. アンダークラウドミニオン

アンダークラウドミニオンにより、別のホスト上に heat-engine サービスおよび ironic-conductor サービスが追加されます。これらの追加サービスは、アンダークラウドのオーケストレーションおよびプロビジョニング操作をサポートします。アンダークラウドの操作を複数ホスト間に分散することにより、オーバークラウドのデプロイメントにより多くのリソースを割り当てることができ、結果として大規模なデプロイメントをより迅速に実施することができます。

5.2. アンダークラウドミニオンの要件

スケーリングされたアンダークラウドミニオン上の heat-engine サービスおよび ironic-conductor サービスは、ワーカーのセットを使用します。それぞれのワーカーは、そのサービスに固有の操作を実行します。複数のワーカーを用いると、同時に操作を実行することができます。ミニオンのデフォルトのワーカー数は、ミニオンホストの合計 CPU スレッド数の半分です。ここでは、合計スレッド数とは CPU コア数にハイパースレッディングの値を掛けたものを指します。たとえば、ミニオンの CPU スレッド数が 16 の場合には、デフォルトでは、ミニオンによりサービスごとに 8 つのワーカーが提供されます。デフォルトでは、ミニオンのサービスに最小および最大のワーカー数も適用されます。

サービス最小値最大値

heat-engine

4

24

ironic-conductor

2

12

アンダークラウドミニオンの CPU およびメモリーの最低要件を以下に示します。

  • Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする、8 スレッド 64 ビット x86 プロセッサー。このプロセッサーにより、各アンダークラウドサービスに 4 つのワーカーが提供されます。
  • 最小 16 GB の RAM

多数のワーカーを使用するには、CPU スレッドごとに 2 GB の RAM の比率で、アンダークラウド上の仮想 CPU 数およびメモリー容量を増やします。たとえば、48 スレッドのマシンには 96 GB の RAM が必要です。これにより、heat-engine 用 24 ワーカーおよび ironic-conductor 用 12 ワーカーが提供されます。

5.3. ミニオンの準備

ミニオンをインストールする前に、ホストマシンでいくつかの基本設定を完了する必要があります。

  • コマンドを実行するための非 root ユーザー
  • 解決可能なホスト名
  • Red Hat サブスクリプション
  • イメージの準備およびミニオンのインストールを行うためのコマンドラインツール

手順

  1. ミニオンホストに root ユーザーとしてログインします。
  2. stack ユーザーを作成します。

    [root@minion ~]# useradd stack
  3. stack ユーザーのパスワードを設定します。

    [root@minion ~]# passwd stack
  4. sudo を使用する場合にパスワードを要求されないようにします。

    [root@minion ~]# echo "stack ALL=(root) NOPASSWD:ALL" | tee -a /etc/sudoers.d/stack
    [root@minion ~]# chmod 0440 /etc/sudoers.d/stack
  5. 新規作成した stack ユーザーに切り替えます。

    [root@minion ~]# su - stack
    [stack@minion ~]$
  6. ミニオンのベースおよび完全なホスト名を確認します。

    [stack@minion ~]$ hostname
    [stack@minion ~]$ hostname -f

    上記のコマンドのいずれかで正しい完全修飾ホスト名が出力されない、またはエラーが表示される場合には、hostnamectl でホスト名を設定します。

    [stack@minion ~]$ sudo hostnamectl set-hostname minion.example.com
    [stack@minion ~]$ sudo hostnamectl set-hostname --transient minion.example.com
  7. /etc/hosts ファイルを編集して、システムホスト名のエントリーを追加します。たとえば、システムの名前が minion.example.com で、IP アドレスに 10.0.0.1 を使用する場合には、/etc/hosts ファイルに以下の行を追加します。

    10.0.0.1  minion.example.com manager
  8. Red Hat コンテンツ配信ネットワークまたは Red Hat Satellite のどちらかにシステムを登録します。たとえば、システムをコンテンツ配信ネットワークに登録するには、以下のコマンドを実行します。要求されたら、カスタマーポータルのユーザー名およびパスワードを入力します。

    [stack@minion ~]$ sudo subscription-manager register
  9. Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) director のエンタイトルメントプール ID を検索します。

    [stack@minion ~]$ sudo subscription-manager list --available --all --matches="Red Hat OpenStack"
    Subscription Name:   Name of SKU
    Provides:            Red Hat Single Sign-On
                         Red Hat Enterprise Linux Workstation
                         Red Hat CloudForms
                         Red Hat OpenStack
                         Red Hat Software Collections (for RHEL Workstation)
                         Red Hat Virtualization
    SKU:                 SKU-Number
    Contract:            Contract-Number
    Pool ID:             Valid-Pool-Number-123456
    Provides Management: Yes
    Available:           1
    Suggested:           1
    Service Level:       Support-level
    Service Type:        Service-Type
    Subscription Type:   Sub-type
    Ends:                End-date
    System Type:         Physical
  10. Pool ID の値を特定して、Red Hat OpenStack Platform 16.0 のエンタイトルメントをアタッチします。

    [stack@minion ~]$ sudo subscription-manager attach --pool=Valid-Pool-Number-123456
  11. デフォルトのリポジトリーをすべて無効にしてから、必要な Red Hat Enterprise Linux リポジトリーを有効にします。

    [stack@minion ~]$ sudo subscription-manager repos --disable=*
    [stack@minion ~]$ sudo subscription-manager repos --enable=rhel-8-for-x86_64-baseos-eus-rpms --enable=rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms --enable=rhel-8-for-x86_64-highavailability-eus-rpms --enable=ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=openstack-16-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=fast-datapath-for-rhel-8-x86_64-rpms

    これらのリポジトリーには、ミニオンのインストールに必要なパッケージが含まれます。

  12. システムで更新を実行して、ベースシステムパッケージを最新の状態にします。

    [stack@minion ~]$ sudo dnf update -y
    [stack@minion ~]$ sudo reboot
  13. ミニオンのインストールと設定を行うためのコマンドラインツールをインストールします。

    [stack@minion ~]$ sudo dnf install -y python3-tripleoclient

5.4. アンダークラウド設定ファイルのミニオンへのコピー

ミニオンには、アンダークラウドからの設定ファイルがいくつか必要です。これにより、ミニオンのインストールでミニオンサービスを設定し、それらを director に登録することができます。

  • tripleo-undercloud-outputs.yaml
  • tripleo-undercloud-passwords.yaml

手順

  1. アンダークラウドに stack ユーザーとしてログインします。
  2. ファイルをアンダークラウドからミニオンにコピーします。

    $ scp ~/tripleo-undercloud-outputs.yaml ~/tripleo-undercloud-passwords.yaml stack@<minion-host>:~/.

    <minion-host> は、ミニオンのホスト名または IP アドレスに置き換えます。

5.5. アンダークラウドの認証局のコピー

アンダークラウドがエンドポイントの暗号化に SSL/TLS を使用する場合は、ミニオンホストにアンダークラウドの SSL/TLS 証明書に署名した認証局が含まれている必要があります。アンダークラウドの設定により、この認証局は以下のいずれかになります。

  • ミニオンホストに事前に証明書を読み込む外部の認証局。対応の必要はありません。
  • director が /etc/pki/ca-trust/source/anchors/cm-local-ca.pem に生成する自己署名認証局。このファイルをミニオンホストにコピーし、ファイルをミニオンホストの信頼済み認証局の一部として追加します。この手順では、このファイルを例として使用します。
  • OpenSSL で作成するカスタムの自己署名認証局。本書の例では、このファイルを ca.crt.pem と呼びます。このファイルをミニオンホストにコピーし、ファイルをミニオンホストの信頼済み認証局の一部として追加します。

手順

  1. ミニオンホストに root ユーザーとしてログインします。
  2. 認証局ファイルをアンダークラウドからミニオンにコピーします。

    [root@minion ~]# scp \
        root@<undercloud-host>:/etc/pki/ca-trust/source/anchors/cm-local-ca.pem \
        /etc/pki/ca-trust/source/anchors/undercloud-ca.pem

    <undercloud-host> は、アンダークラウドのホスト名または IP アドレスに置き換えます。

  3. ミニオンホストの信頼済み認証局を更新します。

    [root@minion ~]# update-ca-trust enable
    [root@minion ~]# update-ca-trust extract

5.6. ミニオンの設定

ミニオンのインストールプロセスでは、ミニオンが stack ユーザーのホームディレクトリーから読み取る minion.conf 設定ファイルに、特定の設定が必要になります。デフォルトのテンプレートを設定のベースとして使用するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. ミニオンホストに stack ユーザーとしてログインします。
  2. デフォルトのテンプレートを stack ユーザーのホームディレクトリーにコピーします。

    [stack@minion ~]$ cp \
      /usr/share/python-tripleoclient/minion.conf.sample \
      ~/minion.conf
  3. minion.conf ファイルを編集します。このファイルには、ミニオンを設定するためのパラメーターが含まれています。パラメーターを省略したり、コメントアウトした場合には、ミニオンのインストールでデフォルト値が使用されます。以下の推奨パラメーターを確認してください。

    • minion_hostname: ミニオンのホスト名に設定します。
    • minion_local_interface: プロビジョニングネットワークを介してアンダーグラウンドに接続するインターフェースに設定します。
    • minion_local_ip: プロビジョニングネットワークのフリー IP アドレスに設定します。
    • minion_nameservers: ミニオンがホスト名を解決できるように DNS ネームサーバーに設定します。
    • enable_ironic_conductor: ironic-conductor サービスを有効にするかどうかを定義します。
    • enable_heat_engine: heat-engine サービスを有効にするかどうかを定義します。
注記

デフォルトの minion.conf ファイルでは、ミニオンの heat-engine サービスだけが有効になります。ironic-conductor サービスを有効にするには、enable_ironic_conductor パラメーターを true に設定します。

5.7. ミニオンの設定パラメーター

以下の一覧で、minion.conf ファイルを設定するパラメーターについて説明します。エラーを避けるために、パラメーターは決して該当するセクションから削除しないでください。

デフォルト

minion.conf ファイルの [DEFAULT] セクションで定義されているパラメーターを以下に示します。

cleanup
一時ファイルをクリーンナップします。コマンド実行後もデプロイメント時に使用した一時ファイルをそのまま残すには、このパラメーターを False に設定します。ファイルを残すと、生成されたファイルのデバッグを行う場合やエラーが発生した場合に役に立ちます。
container_cli
コンテナー管理用の CLI ツール。このパラメーターは、podman に設定したままにしてください。Red Hat Enterprise Linux 8.1 は、podman のみをサポートします。
container_healthcheck_disabled
コンテナー化されたサービスのヘルスチェックを無効にします。Red Hat は、ヘルスチェックを有効にし、このオプションを false に設定したままにすることを推奨します。
container_images_file

コンテナーイメージ情報が含まれる heat 環境ファイル。このファイルには、以下のエントリーを含めることができます。

  • 必要なすべてのコンテナーイメージのパラメーター
  • 必要なイメージの準備を実施する ContainerImagePrepare パラメーター。このパラメーターが含まれるファイルの名前は、通常 containers-prepare-parameter.yaml です。
container_insecure_registries
podman が使用するセキュアではないレジストリーの一覧。プライベートコンテナーレジストリー等の別のソースからイメージをプルする場合には、このパラメーターを使用します。多くの場合、podman は Red Hat Container Catalog または Satellite サーバー (ミニオンが Satellite に登録されている場合) のいずれかからコンテナーイメージをプルするための証明書を持ちます。
container_registry_mirror
設定により podman が使用するオプションの registry-mirror
custom_env_files
ミニオンのインストールに追加する新たな環境ファイル
deployment_user
ミニオンをインストールするユーザー。現在のデフォルトユーザー stack を使用する場合には、このパラメーターを未設定のままにします。
enable_heat_engine
ミニオンに heat engine サービスをインストールするかどうかを定義します。デフォルトは true です。
enable_ironic_conductor
ミニオンに ironic conductor サービスをインストールするかどうかを定義します。デフォルト値は false です。ironic conductor サービスを有効にするには、この値を true に設定します。
heat_container_image
使用する heat コンテナーイメージの URL。未設定のままにします。
heat_native
ネイティブの heat テンプレートを使用します。true のままにします。
hieradata_override
director に Puppet hieradata を設定するための hieradata オーバーライドファイルへのパス。これにより、サービスに対して minion.conf パラメーター以外のカスタム設定を行うことができます。設定すると、ミニオンのインストールでこのファイルが /etc/puppet/hieradata ディレクトリーにコピーされ、階層の最初のファイルに設定されます。
minion_debug
ミニオンサービスの DEBUG ログレベルを有効にするには、この値を true に設定します。
minion_enable_selinux
デプロイメント時に、SELinux を有効または無効にします。問題をデバッグする場合以外は、この値を true に設定したままにすることを強く推奨します。
minion_enable_validations
minion で検証サービスを有効にします。
minion_hostname
ミニオンの完全修飾ホスト名を定義します。設定すると、ミニオンのインストールで全システムのホスト名が設定されます。未設定のままにすると、ミニオンは現在のホスト名を使用しますが、システムのホスト名設定をすべて適切に定義する必要があります。
minion_local_interface

アンダークラウドのプロビジョニング NIC 用に選択するインターフェース。ミニオンは、DHCP および PXE ブートサービスにもこのデバイスを使用します。この値を選択したデバイスに変更します。接続されているデバイスを確認するには、ip addr コマンドを使用します。ip addr コマンドの出力結果の例を、以下に示します。

2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast state UP qlen 1000
    link/ether 52:54:00:75:24:09 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
    inet 192.168.122.178/24 brd 192.168.122.255 scope global dynamic eth0
       valid_lft 3462sec preferred_lft 3462sec
    inet6 fe80::5054:ff:fe75:2409/64 scope link
       valid_lft forever preferred_lft forever
3: eth1: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc noop state DOWN
    link/ether 42:0b:c2:a5:c1:26 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff

この例では、外部 NIC は eth0 を、プロビジョニング NIC は未設定の eth1 を使用します。今回は、local_interfaceeth1 に設定します。この設定スクリプトにより、このインターフェースが inspection_interface パラメーターで定義したカスタムのブリッジにアタッチされます。

minion_local_ip
アンダークラウドのプロビジョニング NIC 用に定義する IP アドレス。ミニオンは、DHCP および PXE ブートサービスにもこの IP アドレスを使用します。デフォルトの IP アドレスが環境内の既存の IP アドレスまたはサブネットと競合するなどの理由により、プロビジョニングネットワークに別のサブネットを使用する場合以外は、この値をデフォルトの 192.168.24.1/24 のままにします。
minion_local_mtu
local_interface に使用する最大伝送単位 (MTU)。ミニオンでは 1500 以下にします。
minion_log_file
ミニオンのインストールログおよびアップグレードログを保管するログファイルへのパス。デフォルトでは、ログファイルはホームディレクトリー内の install-minion.log です。たとえば、/home/stack/install-minion.log のようになります。
minion_nameservers
ミニオンのホスト名解決に使用する DNS ネームサーバーの一覧
minion_ntp_servers
ミニオンの日付と時刻を同期できるようにする Network Time Protocol サーバーの一覧
minion_password_file
ミニオンがアンダークラウドサービスに接続するためのパスワードが含まれるファイル。このパラメーターは、アンダークラウドからコピーした tripleo-undercloud-passwords.yaml ファイルに設定したままにしておきます。
minion_service_certificate
OpenStack SSL/TLS 通信の証明書の場所とファイル名。理想的には、信頼できる認証局から、この証明書を取得します。それ以外の場合は、独自の自己署名の証明書を生成します。
minion_timezone
ミニオン用ホストのタイムゾーン。タイムゾーンを指定しなければ、ミニオンは既存のタイムゾーン設定を使用します。
minion_undercloud_output_file
ミニオンがアンダークラウドサービスに接続するのに使用できるアンダークラウド設定情報が含まれるファイル。このパラメーターは、アンダークラウドからコピーした tripleo-undercloud-outputs.yaml ファイルに設定したままにします。
net_config_override
ネットワーク設定のオーバーライドテンプレートへのパス。このパラメーターを設定すると、ミニオンは JSON 形式のテンプレートを使用して os-net-config でネットワークを設定し、minion.conf で設定したネットワークパラメーターを無視します。/usr/share/python-tripleoclient/minion.conf.sample の例を参照してください。
networks_file
heat をオーバーライドするネットワークファイル
output_dir
状態、処理された heat テンプレート、および Ansible デプロイメントファイルを出力するディレクトリー
roles_file
ミニオンのインストールで、デフォルトロールファイルを上書きするのに使用するロールファイル。ミニオンのインストールにデフォルトのロールファイルが使用されるように、このパラメーターは未設定のままにすることを強く推奨します。
templates
上書きする heat テンプレートファイル

5.8. ミニオンのインストール

ミニオンをインストールするには、以下の手順を実施します。

手順

  1. ミニオンホストに stack ユーザーとしてログインします。
  2. 以下のコマンドを実行して、ミニオンをインストールします。

    [stack@minion ~]$ openstack undercloud minion install

    このコマンドによりミニオンの設定スクリプトが起動し、追加のパッケージがインストールされ、minion.conf ファイルの設定に応じてミニオンサービスが設定されます。このスクリプトは、完了までに数分かかります。

5.9. ミニオンのインストールの検証

ミニオンのインストールが正常に行われたことを確認するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. アンダークラウドに stack ユーザーとしてログインします。
  2. stackrc ファイルを取得します。

    [stack@director ~]$ source ~/stackrc
  3. ミニオンで heat engine サービスを有効にしている場合には、ミニオンからの heat-engine サービスがアンダークラウドサービスのリストに表示されることを確認します。

    [stack@director ~]$ $ openstack orchestration service list

    このコマンド出力には、アンダークラウドとミニオン両方の heat-engine ワーカーが記載された表が表示されます。

  4. ミニオンで ironic conductor サービスを有効にしている場合には、ミニオンからの ironic-conductor サービスがアンダークラウドサービスのリストに表示されることを確認します。

    [stack@director ~]$ $ openstack baremetal conductor list

    このコマンド出力には、アンダークラウドとミニオン両方の ironic-conductor ワーカーが記載された表が表示されます。

5.10. 次のステップ

パート II. 基本的なオーバークラウドのデプロイメント

第6章 オーバークラウドのプランニング

以下の項で、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) 環境のさまざまな要素をプランニングする際のガイドラインを説明します。これには、ノードロールの定義、ネットワークトポロジーのプランニング、ストレージなどが含まれます。

6.1. ノードロール

director には、オーバークラウドを作成するために、以下に示すデフォルトノード種別が含まれます。

コントローラー

環境を制御するための主要なサービスを提供します。これには、Dashboard (horizon)、認証 (keystone)、イメージストレージ (glance)、ネットワーク (neutron)、オーケストレーション (heat)、高可用性サービスが含まれます。高可用性に対応した実稼働レベルの環境の場合は、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) 環境にコントローラーノードが 3 台必要です。

注記

1 台のコントローラーノードで構成される環境は、実稼働用ではなくテスト目的にのみ使用してください。2 台のコントローラーノードまたは 4 台以上のコントローラーノードで構成される環境はサポートされません。

コンピュート
ハイパーバイザーとして機能し、環境内で仮想マシンを実行するのに必要な処理機能を持つ物理サーバー。基本的な RHOSP 環境には少なくとも 1 つのコンピュートノードが必要です。
Ceph Storage
Red Hat Ceph Storage を提供するホスト。Ceph Storage ホストはクラスターに追加され、クラスターをスケーリングします。このデプロイメントロールはオプションです。
Swift Storage
OpenStack Object Storage (swift) サービスに外部オブジェクトストレージを提供するホスト。このデプロイメントロールはオプションです。

以下の表には、オーバークラウドの構成例と各シナリオで使用するノード種別の定義をまとめています。

表6.1 各種シナリオに使用するノードデプロイメントロール
 

コントローラー

コンピュート

Ceph Storage

Swift Storage

合計

小規模のオーバークラウド

3

1

-

-

4

中規模のオーバークラウド

3

3

-

-

6

追加のオブジェクトストレージがある中規模のオーバークラウド

3

3

-

3

9

Ceph Storage クラスターがある中規模のオーバークラウド

3

3

3

-

9

さらに、個別のサービスをカスタムのロールに分割するかどうかを検討します。コンポーザブルロールのアーキテクチャーについての詳しい情報は、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』「コンポーザブルサービスとカスタムロール」を参照してください。

6.2. オーバークラウドネットワーク

ロールとサービスをマッピングして相互に正しく通信できるように、環境のネットワークトポロジーおよびサブネットのプランニングを行うことが重要です。Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) では、自律的に動作してソフトウェアベースのネットワーク、静的/Floating IP アドレス、DHCP を管理する Openstack Networking (neutron) サービスを使用します。

デフォルトでは、director は接続に プロビジョニング/コントロールプレーン を使用するようにノードを設定します。ただし、ネットワークトラフィックを一連のコンポーザブルネットワークに分離し、カスタマイズしてサービスを割り当てることができます。

一般的な RHOSP のシステム環境では通常、ネットワーク種別の数は物理ネットワークのリンク数を超えます。全ネットワークを正しいホストに接続するために、オーバークラウドは VLAN タグ付けを使用して、それぞれのインターフェースに複数のネットワークを提供します。ネットワークの多くは独立したサブネットですが、一部のネットワークには、インターネットアクセスまたはインフラストラクチャーにネットワーク接続ができるようにルーティングを提供するレイヤー 3 のゲートウェイが必要です。ネットワークトラフィックの種別を分離するのに VLAN を使用している場合には、802.1Q 標準をサポートするスイッチを使用してタグ付けされた VLAN を提供する必要があります。

注記

デプロイ時にトンネリングを無効にした neutron VLAN モードを使用する場合でも、プロジェクトネットワーク (GRE または VXLAN でトンネリング) をデプロイすることを推奨します。これには、デプロイ時にマイナーなカスタマイズを行う必要があり、将来ユーティリティーネットワークまたは仮想化ネットワークとしてトンネルネットワークを使用するためのオプションが利用可能な状態になります。VLAN を使用してテナントネットワークを作成することは変わりませんが、テナントの VLAN を消費せずに特別な用途のネットワーク用に VXLAN トンネルを作成することも可能です。また、テナント VLAN を使用するデプロイメントに VXLAN 機能を追加することは可能ですが、サービスを中断せずにテナント VLAN を既存のオーバークラウドに追加することはできません。

director には、NIC を分離コンポーザブルネットワークと連携させるのに使用できるテンプレートセットも含まれています。デフォルトの構成は以下のとおりです。

  • シングル NIC 構成: ネイティブ VLAN 上のプロビジョニングネットワークと、オーバークラウドネットワークの種別ごとのサブネットを使用するタグ付けされた VLAN 用に NIC を 1 つ。
  • ボンディングされた NIC 構成: ネイティブ VLAN 上のプロビジョニングネットワーク用に NIC を 1 つと、オーバークラウドネットワークの種別ごとのタグ付けされた VLAN 用にボンディング構成の 2 つの NIC。
  • 複数 NIC 構成: 各 NIC は、オーバークラウドネットワークの種別ごとのサブセットを使用します。

専用のテンプレートを作成して、特定の NIC 構成をマッピングすることもできます。

ネットワーク構成を検討する上で、以下の点を考慮することも重要です。

  • オーバークラウドの作成時には、全オーバークラウドマシンで 1 つの名前を使用して NIC を参照します。理想としては、混乱を避けるため、対象のネットワークごとに、各オーバークラウドノードで同じ NIC を使用してください。たとえば、プロビジョニングネットワークにはプライマリー NIC を使用して、OpenStack サービスにはセカンダリー NIC を使用します。
  • すべてのオーバークラウドシステムをプロビジョニング NIC から PXE ブートするように設定して、同システム上の外部 NIC およびその他の NIC の PXE ブートを無効にします。また、プロビジョニング NIC の PXE ブートは、ハードディスクや CD/DVD ドライブよりも優先されるように、ブート順序の最上位に指定するようにします。
  • director が各ノードの電源管理を制御できるように、すべてのオーバークラウドベアメタルシステムには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) などのサポート対象の電源管理インターフェースが必要です。
  • 各オーバークラウドシステムの詳細 (プロビジョニング NIC の MAC アドレス、IPMI NIC の IP アドレス、IPMI ユーザー名、IPMI パスワード) をメモしてください。この情報は、後でオーバークラウドノードを設定する際に役立ちます。
  • 外部のインターネットからインスタンスにアクセス可能でなければならない場合、パブリックネットワークから Floating IP アドレスを確保して、その Floating IP アドレスをインスタンスに割り当てることができます。インスタンスはプライベートの IP アドレスを確保しますが、ネットワークトラフィックは NAT を使用して、Floating IP アドレスに到達します。Floating IP アドレスは、複数のプライベート IP アドレスではなく、単一のインスタンスにのみ割り当て可能である点に注意してください。ただし、Floating IP アドレスは、単一のテナントでのみ使用するように確保されます。したがって、そのテナントは必要に応じて Floating IP アドレスを特定のインスタンスに割り当てまたは割り当てを解除することができます。この設定では、お使いのインフラストラクチャーが外部のインターネットに公開されるので、適切なセキュリティー確保手段に従う必要があります。
  • あるブリッジのメンバーを単一のインターフェースまたは単一のボンディングだけにすると、Open vSwitch でネットワークループが発生するリスクを緩和することができます。複数のボンディングまたはインターフェースが必要な場合には、複数のブリッジを設定することが可能です。
  • Red Hat では、オーバークラウドノードが Red Hat コンテンツ配信ネットワークやネットワークタイムサーバーなどの外部のサービスに接続できるように、DNS によるホスト名解決を使用することを推奨します。
注記

Red Hat Virtualization (RHV) を使用している場合には、オーバークラウドのコントロールプレーンを仮想化することができます。詳細は、「仮想コントロールプレーンの作成」 を参照してください。

6.3. オーバークラウドのストレージ

注記

任意のドライバーまたはバックエンド種別のバックエンド cinder ボリュームを使用するゲストインスタンスで LVM を使用すると、パフォーマンス、ボリュームの可視性/可用性、およびデータ破損の問題が生じます。このような問題を軽減するには、LVM フィルターを使用します。詳しい情報は、『Storage Guide』「Back Ends」および KCS アーティクル「Using LVM on a cinder volume exposes the data to the host」を参照してください。

director には、オーバークラウド環境用にさまざまなストレージオプションが含まれています。

Ceph Storage ノード

director は、Red Hat Ceph Storage を使用して拡張可能なストレージノードセットを作成します。オーバークラウドは、以下のストレージ種別にこのノードを使用します。

  • イメージ: Image サービス (glance) は仮想マシンのイメージを管理します。イメージを変更することはできません。OpenStack はイメージバイナリーブロブとして処理し、それに応じてイメージをダウンロードします。Image サービス (glance) を使用して、Ceph ブロックデバイスにイメージを保管することができます。
  • ボリューム: OpenStack は Block Storage サービス (cinder) を使用してボリュームを管理します。Block Storage サービス (cinder) ボリュームはブロックデバイスです。OpenStack では、ボリュームを使用して仮想マシンをブートしたり、ボリュームを実行中の仮想マシンにアタッチしたりします。Block Storage サービスを使用して、イメージの Copy-on-Write クローンで仮想マシンをブートすることができます。
  • ファイルシステム: OpenStack は Shared File Systems サービス (manila) を使用して共有ファイルシステムを管理します。ファイル共有は、ファイルシステムによりバッキングされます。manila を使用して、Ceph Storage ノードにデータを保管する CephFS ファイルシステムにバッキングされる共有を管理することができます。
  • ゲストディスク: ゲストディスクは、ゲストオペレーティングシステムのディスクです。デフォルトでは、Compute サービス (nova) で仮想マシンをブートすると、仮想マシンのディスクはハイパーバイザーのファイルシステム上のファイルとして表示されます (通常 /var/lib/nova/instances/<uuid>/ 内)。Ceph 内にあるすべての仮想マシンは、Block Storage サービス (cinder) を使用せずにブートすることができます。これにより、ライブマイグレーションのプロセスを使用して、簡単にメンテナンス操作を実施することができます。また、ハイパーバイザーに障害が発生した場合には、nova evacuate をトリガーして仮想マシンを別の場所で実行することもできるので便利です。

    重要

    サポートされるイメージフォーマットの情報については、『Instances and Images Guide』「Image Service」の章を参照してください。

    Ceph Storage についての詳しい情報は、『Red Hat Ceph Storage アーキテクチャーガイド』を参照してください。

Swift Storage ノード
director は、外部オブジェクトストレージノードを作成します。これは、オーバークラウド環境でコントローラーノードをスケーリングまたは置き換える必要があるが、高可用性クラスター外にオブジェクトストレージを保持する必要がある場合に便利です。

6.4. オーバークラウドのセキュリティー

OpenStack Platform の実装のセキュリティーレベルは、お使いの環境のセキュリティーレベルと同等でしかありません。ネットワーク環境内の適切なセキュリティー原則に従って、ネットワークアクセスを正しく制御するようにします。

  • ネットワークのセグメント化を使用して、ネットワークトラフィックを軽減し、機密データを分離します。フラットなネットワークは、セキュリティーレベルがはるかに低くなります。
  • サービスアクセスとポートを最小限に制限します。
  • 適切なファイアウォールルールおよびパスワードの使用を徹底してください。
  • 必ず SELinux を有効にします。

システムのセキュリティー保護についての詳細は、以下の Red Hat ガイドを参照してください。

6.5. オーバークラウドの高可用性

高可用性なオーバークラウドをデプロイするために、director は複数のコントローラー、コンピュート、およびストレージノードを単一のクラスターとして連携するように設定します。ノードで障害が発生すると、障害が発生したノードのタイプに応じて、自動フェンシングおよび再起動プロセスがトリガーされます。オーバークラウドの高可用性アーキテクチャーおよびサービスに関する情報は、『 High Availability Deployment and Usage 』を参照してください。

注記

STONITH を使用しない高可用性オーバークラウドのデプロイはサポートの対象外です。高可用性オーバークラウドの Pacemaker クラスターの一部である各ノードには、STONITH デバイスを設定する必要があります。STONITH および Pacemaker の詳細は、「Fencing in a Red Hat High Availability Cluster」および「Support Policies for RHEL High Availability Clusters - General Requirements for Fencing/STONITH」を参照してください。

director を使用して、コンピュートインスタンスの高可用性 (インスタンス HA) を設定することもできます。この高可用性のメカニズムにより、ノードで障害が発生するとコンピュートノード上のインスタンスが自動的に退避および再起動されます。インスタンス HA に対する要件は通常のオーバークラウドの要件と同じですが、環境をデプロイメント用に準備するために追加のステップを実施する必要があります。インスタンス HA およびそのインストール手順について の情報は、『コンピュートインスタンスの高可用性』を参照し てください。

6.6. コントローラーノードの要件

コントローラーノードは、Red Hat OpenStack Platform 環境の中核となるサービス (例: Dashboard (horizon)、バックエンドのデータベースサーバー、Identity サービス (keystone) の認証、および高可用性サービスなど) をホストします。

プロセッサー
Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする 64 ビット x86 プロセッサー。
メモリー

最小のメモリー容量は 32 GB です。ただし、推奨のメモリー容量は、仮想 CPU の数 (CPU コアの数をハイパースレッディングの値で乗算した数値に基づく) によって異なります。以下の計算により、RAM の要件を決定します。

  • コントローラーの最小メモリー容量の算出:

    • 各仮想 CPU ごとに 1.5 GB のメモリーを使用します。たとえば、仮想 CPU が 48 個あるマシンにはメモリーは 72 GB 必要です。
  • コントローラーの推奨メモリー容量の算出:

    • 各仮想 CPU ごとに 3 GB のメモリーを使用します。たとえば、仮想 CPU が 48 個あるマシンにはメモリーは 144 GB 必要です。

メモリーの要件に関する詳しい情報は、Red Hat カスタマーポータルで「Red Hat OpenStack Platform Hardware Requirements for Highly Available Controllers」を参照してください。

ディスクストレージとレイアウト

Object Storage サービス (swift) がコントローラーノード上で実行されていない場合には、最小で 40 GB のストレージが必要です。ただし、Telemetry および Object Storage サービスはいずれもコントローラーにインストールされ、ルートディスクを使用するように設定されます。これらのデフォルトは、市販のハードウェア上に構築される小型のオーバークラウドのデプロイに適しています。これらの環境は、概念検証およびテストの標準的な環境です。これらのデフォルトを使用すれば、最小限のプランニングでオーバークラウドをデプロイすることができますが、ワークロードキャパシティーとパフォーマンスの面ではあまり優れていません。

ただし、Telemetry が絶えずストレージにアクセスするため、エンタープライズ環境の場合、デフォルト設定では大きなボトルネックが生じる可能性があります。これにより、ディスク I/O が過度に使用されて、その他すべてのコントローラーサービスに深刻な影響をもたらします。このタイプの環境では、オーバークラウドのプランニングを行って、適切に設定する必要があります。

Red Hat は、Telemetry と Object Storage の両方の推奨設定をいくつか提供しています。詳しくは、『 Deployment Recommendations for Specific Red Hat OpenStack Platform Services 』を参照してください。

ネットワークインターフェースカード
最小 2 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカード。タグ付けされた VLAN トラフィックを委譲する場合や、ボンディングインターフェース向けには、追加のネットワークインターフェースを使用します。
電源管理
各コントローラーノードには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) 機能などのサポート対象の電源管理インターフェースがサーバーのマザーボードに搭載されている必要があります。
仮想化のサポート
Red Hat では、Red Hat Virtualization プラットフォーム上の仮想コントローラーノードのみをサポートします。詳細は、「仮想コントロールプレーンの作成」 を参照してください。

6.7. コンピュートノードの要件

コンピュートノードは、仮想マシンインスタンスが起動した後にそれらを稼働させる役割を果たします。コンピュートノードは、ハードウェアの仮想化をサポートしている必要があります。また、ホストする仮想マシンインスタンスの要件をサポートするのに十分なメモリーとディスク容量も必要です。

プロセッサー
  • Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする 64 ビット x86 プロセッサーで、Intel VT または AMD-V のハードウェア仮想化拡張機能が有効化されていること。このプロセッサーには最小でも 4 つのコアが搭載されていることを推奨しています。
  • IBM POWER 8 プロセッサー
メモリー
最小で 6 GB のメモリー。仮想マシンインスタンスに割り当てるメモリー容量に基づいて、この最低要求に追加の RAM を加算します。
ディスク領域
最小 40 GB の空きディスク領域
ネットワークインターフェースカード
最小 1 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカード (実稼働環境では最低でも NIC を 2 枚使用することを推奨)。タグ付けされた VLAN トラフィックを委譲する場合や、ボンディングインターフェース向けには、追加のネットワークインターフェースを使用します。
電源管理
各コンピュートノードには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) 機能などのサポート対象の電源管理インターフェースがサーバーのマザーボードに搭載されている必要があります。

6.8. Ceph Storage ノードの要件

Ceph Storage ノードは、Red Hat OpenStack Platform 環境でオブジェクトストレージを提供する役割を果たします。

配置グループ (PG)
デプロイメントの規模によらず、動的で効率的なオブジェクトの追跡を容易に実施するために、Ceph では配置グループが使用されています。OSD の障害やクラスターのリバランスの際には、Ceph は配置グループおよびその内容を移動または複製することができるので、Ceph クラスターは効率的にリバランスおよび復旧を行うことができます。director が作成するデフォルトの配置グループ数が常に最適とは限らないので、実際の要件に応じて正しい配置グループ数を計算することが重要です。配置グループの計算ツールを使用して、正しい配置グループ数を計算することができます (Placement Groups (PGs) per Pool Calculator を参照)。
プロセッサー
Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする 64 ビット x86 プロセッサー。
メモリー
一般的には、OSD ホスト毎に 16 GB の RAM をベースとし、さらに OSD デーモン毎に 2 GB の RAM を追加することを推奨します。
ディスクのレイアウト

サイズはストレージ要件によって異なります。Red Hat では、Ceph Storage ノードの構成には、以下のレイアウト例に示すように 3 つ以上のディスクを含めることを推奨します。

  • /dev/sda: ルートディスク。director は、主なオーバークラウドイメージをディスクにコピーします。ディスクに最小 40 GB の空きディスク領域があることを確認します。
  • /dev/sdb: ジャーナルディスク。このディスクは、Ceph OSD ジャーナル向けにパーティションに分割されます。たとえば、/dev/sdb1/dev/sdb2、および /dev/sdb3 のようになります。ジャーナルディスクは、通常システムパフォーマンスの向上に役立つソリッドステートドライブ (SSD) です。
  • /dev/sdc 以降: OSD ディスク。ストレージ要件で必要な数のディスクを使用します。

    注記

    Red Hat OpenStack Platform director は ceph-ansible を使用しますが、Ceph Storage ノードのルートディスクへの OSD インストールには対応しません。したがって、サポートされる Ceph Storage ノードには少なくとも 2 つのディスクが必要になります。

ネットワークインターフェースカード
最小 1 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカード (ただし、Red Hat では実稼働環境の場合には最低でも NIC を 2 枚使用することを推奨)。タグ付けされた VLAN トラフィックを委譲する場合や、ボンディングインターフェース向けには、追加のネットワークインターフェースを使用します。Red Hat では、特に大量のトラフィックを提供する OpenStack Platform 環境を構築する場合には、ストレージノードに 10 Gbps インターフェースを使用することを推奨しています。
電源管理
各コントローラーノードには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) 機能などのサポート対象の電源管理インターフェースがサーバーのマザーボードに搭載されている必要があります。

Ceph Storage クラスターを使用するオーバークラウドのインストールについての詳しい情報は、『 コンテナー化された Red Hat Ceph を持つオーバークラウドのデプロイ 』を参照してください。

6.9. オブジェクトストレージノードの要件

オブジェクトストレージノードは、オーバークラウドのオブジェクトストレージ層を提供します。オブジェクトストレージプロキシーは、コントローラーノードにインストールされます。ストレージ層には、ノードごとに複数のディスクを持つベアメタルノードが必要です。

プロセッサー
Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする 64 ビット x86 プロセッサー。
メモリー容量
メモリー要件はストレージ容量によって異なります。ハードディスク容量 1 TB あたり、最低でも 1 GB のメモリーを使用します。最適なパフォーマンスを得るには、ハードディスク容量 1 TB あたり 2 GB のメモリーを使用することを推奨します (特に、ワークロードが 100 GB に満たないファイルの場合)。
ディスク容量

ストレージ要件は、ワークロードに必要とされる容量により異なります。アカウントとコンテナーのデータを保存するには SSD ドライブを使用することを推奨します。アカウントおよびコンテナーデータとオブジェクトの容量比率は、約 1% です。たとえば、ハードドライブの容量 100 TB ごとに、アカウントおよびコンテナーデータの SSD 容量は 1 TB 用意するようにします。

ただし、これは保存したデータの種類により異なります。保存するオブジェクトの大半が小さい場合には、SSD の容量がさらに必要です。オブジェクトが大きい場合には (ビデオ、バックアップなど)、SSD の容量を減らします。

ディスクのレイアウト

推奨されるノード構成には、以下の例に示すようなディスクレイアウトが必要です。

  • /dev/sda: ルートディスク。director は、主なオーバークラウドイメージをディスクにコピーします。
  • /dev/sdb: アカウントデータに使用します。
  • /dev/sdc: コンテナーデータに使用します。
  • /dev/sdd 以降: オブジェクトサーバーディスク。ストレージ要件で必要な数のディスクを使用します。
ネットワークインターフェースカード
最小 2 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカード。タグ付けされた VLAN トラフィックを委譲する場合や、ボンディングインターフェース向けには、追加のネットワークインターフェースを使用します。
電源管理
各コントローラーノードには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) 機能などのサポート対象の電源管理インターフェースがサーバーのマザーボードに搭載されている必要があります。

6.10. オーバークラウドのリポジトリー

Red Hat OpenStack Platform 16.0 は、Red Hat Enterprise Linux 8.1 上で動作します。オーバークラウドのデプロイメント後に、subscription-manager release コマンドを使用して各ホストを特定バージョンにロックします。

$ sudo subscription-manager release --set=8.1

オーバークラウドをインストールおよび設定するには、以下のリポジトリーを有効にする必要があります。

コアリポジトリー

以下の表には、オーバークラウドをインストールするためのコアリポジトリーをまとめています。

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - BaseOS (RPMs) Extended Update Support (EUS)

rhel-8-for-x86_64-baseos-eus-rpms

x86_64 システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - AppStream (RPMs) Extended Update Support (EUS)

rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms

Red Hat OpenStack Platform の依存関係が含まれます。

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - High Availability (RPMs) Extended Update Support (EUS)

rhel-8-for-x86_64-highavailability-eus-rpms

Red Hat Enterprise Linux の高可用性ツール。コントローラーノードの高可用性に使用します。

Red Hat Ansible Engine 2.8 for RHEL 8 x86_64 (RPMs)

ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms

Red Hat Enterprise Linux 用 Ansible エンジン。最新バージョンの Ansible を提供するために使用されます。

Advanced Virtualization for RHEL 8 x86_64 (RPMs)

advanced-virt-for-rhel-8-x86_64-rpms

OpenStack Platform 用仮想化パッケージを提供します。

Red Hat Satellite Tools for RHEL 8 Server RPMs x86_64

satellite-tools-6.5-for-rhel-8-x86_64-rpms

Red Hat Satellite 6 でのホスト管理ツール

Red Hat OpenStack Platform 16.0 for RHEL 8 (RPMs)

openstack-16-for-rhel-8-x86_64-rpms

Red Hat OpenStack Platform のコアリポジトリー

Red Hat Fast Datapath for RHEL 8 (RPMS)

fast-datapath-for-rhel-8-x86_64-rpms

OpenStack Platform 用 Open vSwitch (OVS) パッケージを提供します。

Ceph リポジトリー

以下の表には、オーバークラウド用の Ceph Storage 関連のリポジトリーをまとめています。

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - BaseOS (RPMs)

rhel-8-for-x86_64-baseos-rpms

x86_64 システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - AppStream (RPMs)

rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms

Red Hat OpenStack Platform の依存関係が含まれます。

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - High Availability (RPMs)

rhel-8-for-x86_64-highavailability-rpms

Red Hat Enterprise Linux の高可用性ツール。

Red Hat Ansible Engine 2.8 for RHEL 8 x86_64 (RPMs)

ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms

Red Hat Enterprise Linux 用 Ansible エンジン。最新バージョンの Ansible を提供するために使用されます。

Red Hat OpenStack Platform 16.0 Director Deployment Tools for RHEL 8 x86_64(RPMs)

openstack-16-deployment-tools-for-rhel-8-x86_64-rpms

director が Ceph Storage ノードを設定するのに役立つパッケージ。

Red Hat Ceph Storage OSD 4 for RHEL 8 x86_64 (RPMs)

rhceph-4-osd-for-rhel-8-x86_64-rpms

(Ceph Storage ノード向け) Ceph Storage Object Storage デーモンのリポジトリー。Ceph Storage ノードにインストールします。

Red Hat Ceph Storage MON 4 for RHEL 8 x86_64 (RPMs)

rhceph-4-mon-for-rhel-8-x86_64-rpms

(Ceph Storage ノード向け) Ceph Storage Monitor デーモンのリポジトリー。Ceph Storage ノードを使用して OpenStack 環境にあるコントローラーノードにインストールします。

Red Hat Ceph Storage Tools 4 for RHEL 8 x86_64 (RPMs)

rhceph-4-tools-for-rhel-8-x86_64-rpms

Ceph Storage クラスターと通信するためのノード用のツールを提供します。Ceph Storage クラスターと共にオーバークラウドをデプロイする場合や、オーバークラウドを既存の Ceph Storage クラスターと統合する場合に、すべてのノードでこのリポジトリーを有効にします。

リアルタイムリポジトリー

以下の表には、リアルタイムコンピュート (RTC) 機能用リポジトリーをまとめています。

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - Real Time (RPMs)

rhel-8-for-x86_64-rt-rpms

リアルタイム KVM (RT-KVM) のリポジトリー。リアルタイムカーネルを有効化するためのパッケージが含まれています。RT-KVM 対象の全コンピュートノードで、このリポジトリーを有効にします。注記: このリポジトリーにアクセスするには、別途 Red Hat OpenStack Platform for Real Time SKU のサブスクリプションが必要です。

Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - Real Time for NFV (RPMs)

rhel-8-for-x86_64-nfv-rpms

NFV 向けのリアルタイム KVM (RT-KVM) のリポジトリー。リアルタイムカーネルを有効化するためのパッケージが含まれています。RT-KVM 対象の全 NFV コンピュートノードで、このリポジトリーを有効にします。注記: このリポジトリーにアクセスするには、別途 Red Hat OpenStack Platform for Real Time SKU のサブスクリプションが必要です。

IBM POWER 用リポジトリー

以下の表には、POWER PC アーキテクチャー上で OpenStack Platform を構築するためのリポジトリーをまとめています。コアリポジトリーの該当リポジトリーの代わりに、これらのリポジトリーを使用してください。

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Enterprise Linux for IBM Power, little endian - BaseOS (RPMs)

rhel-8-for-ppc64le-baseos-rpms

ppc64le システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー

Red Hat Enterprise Linux 8 for IBM Power, little endian - AppStream (RPMs)

rhel-8-for-ppc64le-appstream-rpms

Red Hat OpenStack Platform の依存関係が含まれます。

Red Hat Enterprise Linux 8 for IBM Power, little endian - High Availability (RPMs)

rhel-8-for-ppc64le-highavailability-rpms

Red Hat Enterprise Linux の高可用性ツール。コントローラーノードの高可用性に使用します。

Red Hat Ansible Engine 2.8 for RHEL 8 IBM Power, little endian (RPMs)

ansible-2.8-for-rhel-8-ppc64le-rpms

Red Hat Enterprise Linux 用 Ansible エンジン。最新バージョンの Ansible を提供するために使用されます。

Red Hat OpenStack Platform 16.0 for RHEL 8 (RPMs)

openstack-16-for-rhel-8-ppc64le-rpms

ppc64le システム用 Red Hat OpenStack Platform のコアリポジトリー

6.11. プロビジョニングの方法

Red Hat OpenStack Platform 環境にノードをプロビジョニングする場合、使用できる主な方法が 3 つあります。

director を使用したプロビジョニング
Red Hat OpenStack Platform director は、標準のプロビジョニング方法です。このシナリオでは、openstack overcloud deploy コマンドによって、デプロイメントのプロビジョニングと設定の両方を実行します。標準のプロビジョニングおよびデプロイメント方法についての詳しい情報は、「7章CLI ツールを使用した基本的なオーバークラウドの設定」を参照してください。
OpenStack Bare Metal (ironic) サービスを使用したプロビジョニング

このシナリオでは、標準の director デプロイメントのプロビジョニングステージと設定ステージを、2 つの別のプロセスに分割することができます。この方法は、標準の director デプロイメントに伴うリスクの一部を軽減し、より効率的に障害点を特定するのに役立ちます。このシナリオについての詳しい情報は、「8章オーバークラウドのデプロイ前に行うベアメタルノードのプロビジョニング」を参照してください。

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

外部ツールを使用したプロビジョニング

このシナリオでは、director は外部ツールを使用して事前にプロビジョニングされたノードでオーバークラウドの設定を制御します。この方法は、電源管理制御を設定せずにオーバークラウドを作成する場合や、DHCP/PXE ブートの制限があるネットワークを使用する場合、あるいは QCOW2 overcloud-full イメージに依存しないカスタムのパーティションレイアウトを持つノードを使用する場合に便利です。このシナリオでは、ノードの管理に OpenStack Compute (nova)、OpenStack Bare Metal (ironic)、または OpenStack Image (glance) サービスを使用しません。

このシナリオについての詳しい情報は、「9章事前にプロビジョニングされたノードを使用した基本的なオーバークラウドの設定」を参照してください。

重要

事前にプロビジョニングされたノードと director がプロビジョニングしたノードを組み合わせることはできません。

第7章 CLI ツールを使用した基本的なオーバークラウドの設定

本章では、CLI ツールを使用して OpenStack Platform 環境をデプロイするための基本的な設定手順を説明します。基本設定のオーバークラウドには、カスタム機能は含まれません。ただし、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』に記載の手順に従って、この基本的なオーバークラウドに高度な設定オプションを追加し、仕様に合わせてカスタマイズすることができます。

7.1. オーバークラウドノードの登録

director では、手動で作成したノード定義のテンプレートが必要です。このテンプレートは JSON または YAML 形式を使用し、ノードのハードウェアおよび電源管理の情報が含まれます。

手順

  1. ノードの一覧が含まれるテンプレートを作成します。以下の例に示す JSON および YAML テンプレートを使用して、ノード定義のテンプレートを構成する方法を説明します。

    JSON テンプレートの例

    {
        "nodes":[
            {
                "mac":[
                    "bb:bb:bb:bb:bb:bb"
                ],
                "name":"node01",
                "cpu":"4",
                "memory":"6144",
                "disk":"40",
                "arch":"x86_64",
                "pm_type":"ipmi",
                "pm_user":"admin",
                "pm_password":"p@55w0rd!",
                "pm_addr":"192.168.24.205"
            },
            {
                "mac":[
                    "cc:cc:cc:cc:cc:cc"
                ],
                "name":"node02",
                "cpu":"4",
                "memory":"6144",
                "disk":"40",
                "arch":"x86_64",
                "pm_type":"ipmi",
                "pm_user":"admin",
                "pm_password":"p@55w0rd!",
                "pm_addr":"192.168.24.206"
            }
        ]
    }

    YAML テンプレートの例

    nodes:
      - mac:
          - "bb:bb:bb:bb:bb:bb"
        name: "node01"
        cpu: 4
        memory: 6144
        disk: 40
        arch: "x86_64"
        pm_type: "ipmi"
        pm_user: "admin"
        pm_password: "p@55w0rd!"
        pm_addr: "192.168.24.205"
      - mac:
          - cc:cc:cc:cc:cc:cc
        name: "node02"
        cpu: 4
        memory: 6144
        disk: 40
        arch: "x86_64"
        pm_type: "ipmi"
        pm_user: "admin"
        pm_password: "p@55w0rd!"
        pm_addr: "192.168.24.206"

    このテンプレートには、以下の属性が含まれます。

    name
    ノードの論理名
    pm_type

    使用する電源管理ドライバー。この例では IPMI ドライバー (ipmi) を使用しています。

    注記

    IPMI が推奨されるサポート対象電源管理ドライバーです。サポート対象電源管理ドライバーの種別およびそのオプションに関する詳細は、「付録A 電源管理ドライバー」を参照してください。それらの電源管理ドライバーが想定どおりに機能しない場合には、電源管理に IPMI を使用してください。

    pm_user; pm_password
    IPMI のユーザー名およびパスワード
    pm_addr
    IPMI デバイスの IP アドレス
    pm_port (オプション)
    特定の IPMI デバイスにアクセスするためのポート
    mac
    (オプション) ノード上のネットワークインターフェースの MAC アドレス一覧。各システムのプロビジョニング NIC の MAC アドレスのみを使用します。
    cpu
    (オプション) ノード上の CPU 数
    memory
    (オプション) メモリーサイズ (MB 単位)
    disk
    (オプション) ハードディスクのサイズ (GB 単位)
    arch

    (オプション) システムアーキテクチャー

    重要

    マルチアーキテクチャークラウドをビルドする場合には、x86_64 アーキテクチャーを使用するノードと ppc64le アーキテクチャーを使用するノードを区別するために arch キーが必須です。

  2. テンプレートを作成したら、以下のコマンドを実行してフォーマットおよび構文を検証します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ openstack overcloud node import --validate-only ~/nodes.json
  3. stack ユーザーのホームディレクトリーにファイルを保存し (/home/stack/nodes.json)、続いて以下のコマンドを実行してテンプレートを director にインポートします。

    (undercloud) $ openstack overcloud node import ~/nodes.json

    このコマンドにより、それぞれのノードがテンプレートから director に登録されます。

  4. ノードの登録および設定が完了するまで待ちます。完了したら、ノードが director に正しく登録されていることを確認します。

    (undercloud) $ openstack baremetal node list

7.2. イントロスペクション要件の検証

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

pre-introspection 検証グループを実行して、イントロスペクションの要件を確認します。

手順

  1. source コマンドで stackrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/stackrc
  2. --group pre-introspection オプションを指定して openstack tripleo validator run コマンドを実行します。

    $ openstack tripleo validator run --group pre-introspection
  3. 検証レポートの結果を確認します。
重要

検証結果が FAILED であっても、Red Hat OpenStack Platform のデプロイや実行が妨げられることはありません。ただし、FAILED の検証結果は、実稼働環境で問題が発生する可能性があることを意味します。

7.3. ノードのハードウェアの検査

director は各ノードでイントロスペクションプロセスを実行することができます。以下の手順では、PXE を通じて各ノードでイントロスペクションエージェントをブートします。イントロスペクションエージェントは、ノードからハードウェアのデータを収集し、そのデータを director に送り返します。次に director は、director 上で実行中の OpenStack Object Storage (swift) サービスにこのイントロスペクションデータを保管します。director は、プロファイルのタグ付け、ベンチマーキング、ルートディスクの手動割り当てなど、さまざまな目的でハードウェア情報を使用します。

手順

  1. 以下のコマンドを実行して、各ノードのハードウェア属性を検証します。

    (undercloud) $ openstack overcloud node introspect --all-manageable --provide
    • --all-manageable オプションを使用して、管理状態にあるノードのみをイントロスペクションします。ここでは、すべてのノードが管理状態にあります。
    • --provide オプションを使用して、イントロスペクション後に全ノードを available の状態に再設定します。
  2. 別のターミナルウィンドウで、イントロスペクションの進捗ログを監視します。

    (undercloud) $ sudo tail -f /var/log/containers/ironic-inspector/ironic-inspector.log
    重要

    このプロセスを必ず完了させてください。ベアメタルノードの場合には、通常 15 分ほどかかります。

イントロスペクション完了後には、すべてのノードが available の状態に変わります。

7.4. プロファイルへのノードのタグ付け

各ノードのハードウェアを登録、検査した後には、特定のプロファイルにノードをタグ付けします。このプロファイルタグにより、ノードがフレーバーに照合され、そのフレーバーがデプロイメントロールに割り当てられます。以下の例は、コントローラーノードのロール、フレーバー、プロファイル、ノード間の関係を示しています。

タイプ説明

ロール

Controller ロールは、director がコントローラーノードをどのように設定するかを定義します。

フレーバー

control フレーバーは、ノードをコントローラーとして使用するためのハードウェアプロファイルを定義します。使用するノードを director が決定できるように、このフレーバーを Controller ロールに割り当てます。

プロファイル

control プロファイルは、control フレーバーに適用するタグです。これにより、フレーバーに属するノードが定義されます。

ノード

また、各ノードに control プロファイルタグを適用して、control フレーバーにグループ化します。これにより、director が Controller ロールを使用してノードを設定します。

アンダークラウドのインストール時に、デフォルトプロファイルのフレーバー computecontrolswift-storageceph-storageblock-storage が作成され、大半の環境で変更なしに使用することができます。

手順

  1. 特定のプロファイルにノードをタグ付けする場合には、各ノードの properties/capabilities パラメーターに profile オプションを追加します。たとえば、2 つのノードをタグ付けしてコントローラープロファイルとコンピュートプロファイルをそれぞれ使用するには、以下のコマンドを実行します。

    (undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:control,boot_option:local' 1a4e30da-b6dc-499d-ba87-0bd8a3819bc0
    (undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:compute,boot_option:local' 58c3d07e-24f2-48a7-bbb6-6843f0e8ee13

    profile:controlprofile:compute オプションを追加することで、この 2 つのノードがそれぞれのプロファイルにタグ付けされます。

    これらのコマンドは、各ノードのブート方法を定義する boot_option:local パラメーターも設定します。

  2. ノードのタグ付けが完了した後には、割り当てたプロファイルまたはプロファイルの候補を確認します。

    (undercloud) $ openstack overcloud profiles list

7.5. UEFI ブートモードの設定

デフォルトのブートモードは、レガシー BIOS モードです。新しいシステムでは、レガシー BIOS モードの代わりに UEFI ブートモードが必要な可能性があります。ブートモードを UEFI モードに変更するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. undercloud.conf ファイルで以下のパラメーターを設定します。

    ipxe_enabled = True
    inspection_enable_uefi = True
  2. undercloud.conf ファイルを保存して、アンダークラウドのインストールを実行します。

    $ openstack undercloud install

    インストールスクリプトが完了するまで待ちます。

  3. 登録済みの各ノードのブートモードを uefi に設定します。たとえば、capabilities プロパティーに boot_mode パラメーターを追加する場合や既存のパラメーターを置き換える場合には、以下のコマンドを実行します。

    $ NODE=<NODE NAME OR ID> ; openstack baremetal node set --property capabilities="boot_mode:uefi,$(openstack baremetal node show $NODE -f json -c properties | jq -r .properties.capabilities | sed "s/boot_mode:[^,]*,//g")" $NODE
    注記

    profile および boot_option のケイパビリティーが保持されていることを確認してください。

    $ openstack baremetal node show r530-12 -f json -c properties | jq -r .properties.capabilities
  4. 各フレーバーのブートモードを uefi に設定します。

    $ openstack flavor set --property capabilities:boot_mode='uefi' control

7.6. 仮想メディアブートの有効化

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

Redfish 仮想メディアブートを使用して、ノードの Baseboard Management Controller (BMC) にブートイメージを提供することができます。これにより、BMC はイメージを仮想ドライブのいずれかに挿入することができます。その後、ノードは仮想ドライブからイメージに存在するオペレーティングシステムにブートすることができます。

Redfish ハードウェア種別は、仮想メディアを通じたデプロイ、レスキュー、およびユーザーの各イメージのブートに対応しています。Bare Metal サービス (ironic) は、ノードのデプロイメント時に、ノードに関連付けられたカーネルイメージおよび ramdisk イメージを使用して、UEFI または BIOS ブートモード用のブート可能 ISO イメージをビルドします。仮想メディアブートの主な利点は、PXE の TFTP イメージ転送フェーズを排除し、HTTP GET 等の方法を使用することができる点です。

仮想メディアを通じて redfish ハードウェア種別のノードをブートするには、ブートインターフェースを redfish-virtual-media に設定し、UEFI ノードの場合は EFI システムパーティション (ESP) イメージを定義します。続いて、登録したノードが Redfish 仮想メディアブートを使用するように設定します。

前提条件

  • undercloud.conf ファイルの enabled_hardware_types パラメーターで、Redfish ドライバーが有効化されている。
  • ベアメタルノードが登録されている。
  • Image サービス (glance) に IPA およびインスタンスイメージがある。
  • UEFI ノードの場合、EFI システムパーティション (ESP) イメージも Image サービス (glance) で利用可能でなければなりません。
  • ベアメタルフレーバー
  • クリーニングおよびプロビジョニング用ネットワーク
  • Sushy ライブラリーがインストールされている。

    $ sudo yum install sushy

手順

  1. Bare Metal サービス (ironic) のブートインターフェースを redfish-virtual-media に設定します。

    $ openstack baremetal node set --boot-interface redfish-virtual-media $NODE_NAME

    $NODE_NAME はノード名に置き換えてください。

  2. UEFI ノードの場合は、ブートモードを uefi に設定します。

    NODE=<NODE NAME OR ID> ; openstack baremetal node set --property capabilities="boot_mode:uefi,$(openstack baremetal node show $NODE -f json -c properties | jq -r .properties.capabilities | sed "s/boot_mode:[^,]*,//g")" $NODE

    $NODE はノード名に置き換えてください。

    注記

    BIOS ノードの場合は、このステップを実施しないでください。

  3. UEFI ノードの場合は、EFI システムパーティション (ESP) イメージを定義します。

    $ openstack baremetal node set --driver-info bootloader=$ESP $NODE_NAME

    $ESP は glance イメージの UUID または ESP イメージの URL に、$NODE_NAME はノードの名前に、それぞれ置き換えてください。

    注記

    BIOS ノードの場合は、このステップを実施しないでください。

  4. ベアメタルノードにポートを作成し、そのポートをベアメタルノード上の NIC の MAC アドレスに関連付けます。

    $ openstack baremetal port create --pxe-enabled True --node $UUID $MAC_ADDRESS

    $UUID はベアメタルノードの UUID に、$MAC_ADDRESS はベアメタルノード上の NIC の MAC アドレスに、それぞれ置き換えてください。

7.7. マルチディスククラスターのルートディスクの定義

ノードで複数のディスクが使用されている場合には、director はプロビジョニング時にルートディスクを特定する必要があります。たとえば、ほとんどの Ceph Storage ノードでは、複数のディスクが使用されます。デフォルトのプロビジョニングプロセスでは、director はルートディスクにオーバークラウドイメージを書き込みます。

以下のプロパティーを定義すると、director がルートディスクを特定するのに役立ちます。

  • model (文字列): デバイスの ID
  • vendor (文字列): デバイスのベンダー
  • serial (文字列): ディスクのシリアル番号
  • hctl (文字列): SCSI のホスト、チャンネル、ターゲット、Lun
  • size (整数):デバイスのサイズ (GB 単位)
  • wwn (文字列): 一意のストレージ ID
  • wwn_with_extension (文字列): ベンダー拡張子を追加した一意のストレージ ID
  • wwn_vendor_extension (文字列): 一意のベンダーストレージ ID
  • rotational (ブール値): 回転式デバイス (HDD) には true、そうでない場合 (SSD) には false
  • name (文字列): デバイス名 (例: /dev/sdb1)
重要

name プロパティーは、永続デバイス名が付いたデバイスにのみ使用します。他のデバイスのルートディスクを設定する際に、name を使用しないでください。この値は、ノードのブート時に変更される可能性があります。

シリアル番号を使用してルートデバイスを指定するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. 各ノードのハードウェアイントロスペクションからのディスク情報を確認します。以下のコマンドを実行して、ノードのディスク情報を表示します。

    (undercloud) $ openstack baremetal introspection data save 1a4e30da-b6dc-499d-ba87-0bd8a3819bc0 | jq ".inventory.disks"

    たとえば、1 つのノードのデータで 3 つのディスクが表示される場合があります。

    [
      {
        "size": 299439751168,
        "rotational": true,
        "vendor": "DELL",
        "name": "/dev/sda",
        "wwn_vendor_extension": "0x1ea4dcc412a9632b",
        "wwn_with_extension": "0x61866da04f3807001ea4dcc412a9632b",
        "model": "PERC H330 Mini",
        "wwn": "0x61866da04f380700",
        "serial": "61866da04f3807001ea4dcc412a9632b"
      }
      {
        "size": 299439751168,
        "rotational": true,
        "vendor": "DELL",
        "name": "/dev/sdb",
        "wwn_vendor_extension": "0x1ea4e13c12e36ad6",
        "wwn_with_extension": "0x61866da04f380d001ea4e13c12e36ad6",
        "model": "PERC H330 Mini",
        "wwn": "0x61866da04f380d00",
        "serial": "61866da04f380d001ea4e13c12e36ad6"
      }
      {
        "size": 299439751168,
        "rotational": true,
        "vendor": "DELL",
        "name": "/dev/sdc",
        "wwn_vendor_extension": "0x1ea4e31e121cfb45",
        "wwn_with_extension": "0x61866da04f37fc001ea4e31e121cfb45",
        "model": "PERC H330 Mini",
        "wwn": "0x61866da04f37fc00",
        "serial": "61866da04f37fc001ea4e31e121cfb45"
      }
    ]
  2. openstack baremetal node set --property root_device= コマンドを実行して、ノードのルートディスクを設定します。ルートディスクを定義するのに最も適切なハードウェア属性値を指定します。

    (undercloud) $ openstack baremetal node set --property root_device=’{“serial”:”<serial_number>”}' <node-uuid>

    たとえば、ルートデバイスをシリアル番号が 61866da04f380d001ea4e13c12e36ad6 の disk 2 に設定するには、以下のコマンドを実行します。

(undercloud) $ openstack baremetal node set --property root_device='{"serial": "61866da04f380d001ea4e13c12e36ad6"}' 1a4e30da-b6dc-499d-ba87-0bd8a3819bc0

+

注記

各ノードの BIOS を設定して、選択したルートディスクからのブートを含めるようにします。最初にネットワークからのブートを試み、次にルートディスクからのブートを試みるように、ブート順序を設定します。

director は、ルートディスクとして使用する特定のディスクを把握します。openstack overcloud deploy コマンドを実行すると、director はオーバークラウドをプロビジョニングし、ルートディスクにオーバークラウドのイメージを書き込みます。

7.8. overcloud-minimal イメージの使用による Red Hat サブスクリプションエンタイトルメントの使用回避

デフォルトでは、プロビジョニングプロセス中 director はルートディスクに QCOW2 overcloud-full イメージを書き込みます。overcloud-full イメージには、有効な Red Hat サブスクリプションが使用されます。ただし、overcloud-minimal イメージを使用して、たとえばベア OS をプロビジョニングすることもできます。この場合、他の OpenStack サービスは使用されないので、サブスクリプションエンタイトルメントは消費されません。

この典型的なユースケースは、Ceph デーモンのみを持つノードをプロビジョニングする場合です。この場合や類似のユースケースでは、overcloud-minimal イメージのオプションを使用して、有償の Red Hat サブスクリプションが限度に達するのを避けることができます。overcloud-minimal イメージの取得方法についての情報は、「オーバークラウド ノードのイメージの取得 」を参照してください。

注記

Red Hat OpenStack Platform のサブスクリプションには Open vSwitch (OVS) が含まれますが、overcloud-minimal イメージを使用する場合には、OVS 等のコアサービスは利用できません。Ceph Storage ノードをデプロイするのに OVS は必要ありません。ovs_bond を使用してボンディングを定義する代わりに、linux_bond を使用します。linux_bond の詳細は、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』の「 Linux ボンディングのオプション 」を参照してください。

手順

  1. overcloud-minimal イメージを使用するように director を設定するには、以下のイメージ定義を含む環境ファイルを作成します。

    parameter_defaults:
      <roleName>Image: overcloud-minimal
  2. <roleName> をロール名に置き換え、ロール名に Image を追加します。Ceph Storage ノードの overcloud-minimal イメージの例を以下に示します。

    parameter_defaults:
      CephStorageImage: overcloud-minimal
  3. この環境ファイルを openstack overcloud deploy コマンドに渡します。
注記

overcloud-minimal イメージでは、標準の Linux ブリッジしかサポートされません。OVS は Red Hat OpenStack Platform のサブスクリプションエンタイトルメントが必要な OpenStack サービスなので、このイメージでは OVS はサポートされません。

7.9. アーキテクチャーに固有なロールの作成

マルチアーキテクチャークラウドを構築する場合には、roles_data.yaml ファイルにアーキテクチャー固有のロールを追加する必要があります。以下に示す例では、デフォルトのロールに加えて ComputePPC64LE ロールを追加しています。

openstack overcloud roles generate \
    --roles-path /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/roles -o ~/templates/roles_data.yaml \
    Controller Compute ComputePPC64LE BlockStorage ObjectStorage CephStorage

『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』の「roles_data ファイルの作成」セクションには、ロールについての情報が記載されています。

7.10. 環境ファイル

アンダークラウドには、オーバークラウドの作成プランを形作るさまざまな heat テンプレートが含まれます。YAML フォーマットの環境ファイルを使って、オーバークラウドの特性をカスタマイズすることができます。このファイルで、コア heat テンプレートコレクションのパラメーターおよびリソースを上書きします。必要に応じていくつでも環境ファイルを追加することができます。ただし、後で指定する環境ファイルで定義されるパラメーターとリソースが優先されることになるため、環境ファイルの順番は重要です。以下の一覧は、環境ファイルの順序の例です。

  • 各ロールのノード数およびフレーバー。オーバークラウドを作成するには、この情報の追加は不可欠です。
  • コンテナー化された OpenStack サービスのコンテナーイメージの場所
  • 任意のネットワーク分離ファイル。heat テンプレートコレクションの初期化ファイル (environments/network-isolation.yaml) から開始して、次にカスタムの NIC 設定ファイル、最後に追加のネットワーク設定の順番です。詳しい情報は、『Advanced Overcloud Customization』の以下の章を参照してください。

  • 外部のロードバランサーを使用している場合には、外部の負荷分散機能の環境ファイル。詳しい情報は、『 External Load Balancing for the Overcloud 』を参照してください。
  • Ceph Storage、NFS、または iSCSI 等のストレージ環境ファイル
  • Red Hat CDN または Satellite 登録用の環境ファイル
  • その他のカスタム環境ファイル

Red Hat では、カスタム環境ファイルを別のディレクトリーで管理することを推奨します (たとえば、templates ディレクトリー)。

オーバークラウドの高度な機能のカスタマイズについての詳しい情報は、『オーバークラウドの 高度なカスタマイズ』 を参照してください。

重要

基本的なオーバークラウドでは、ブロックストレージにローカルの LVM ストレージを使用しますが、この設定はサポートされません。ブロックストレージには、外部ストレージソリューション (Red Hat Ceph Storage 等) を使用することを推奨します。

注記

環境ファイルの拡張子は、.yaml または.template にする必要があります。そうでないと、カスタムテンプレートリソースとして処理されません。

これ以降の数セクションで、オーバークラウドに必要な環境ファイルの作成について説明します。

7.11. ノード数とフレーバーを定義する環境ファイルの作成

デフォルトでは、director は baremetal フレーバーを使用して 1 つのコントローラーノードと 1 つのコンピュートノードを持つオーバークラウドをデプロイします。ただし、この設定は概念検証のためのデプロイメントにしか適しません。異なるノード数およびフレーバーを指定して、デフォルトの設定をオーバーライドすることができます。小規模な実稼働環境では、少なくとも 3 つのコントローラーノードと 3 つのコンピュートノードをデプロイし、特定のフレーバーを割り当ててノードが適切なリソース仕様を持つようにします。ノード数およびフレーバーの割り当てを定義する環境ファイル node-info.yaml を作成するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. /home/stack/templates/ ディレクトリーに node-info.yaml ファイルを作成します。

    (undercloud) $ touch /home/stack/templates/node-info.yaml
  2. ファイルを編集し、必要なノード数およびフレーバーを設定します。以下の例には、3 台のコントローラーノードおよび 3 台のコンピュートノードが含まれます。

    parameter_defaults:
      OvercloudControllerFlavor: control
      OvercloudComputeFlavor: compute
      ControllerCount: 3
      ComputeCount: 3

7.12. アンダークラウド CA を信頼するための環境ファイルの作成

アンダークラウドで TLS を使用され認証局 (CA) が一般に信頼できない場合には、SSL エンドポイント暗号化にアンダークラウドが運用する CA を使用することができます。デプロイメントの他の要素からアンダークラウドのエンドポイントにアクセスできるようにするには、アンダークラウドの CA を信頼するようにオーバークラウドノードを設定します。

注記

この手法が機能するためには、オーバークラウドノードにアンダークラウドの公開エンドポイントへのネットワークルートが必要です。スパイン/リーフ型ネットワークに依存するデプロイメントでは、この設定を適用する必要があります。

アンダークラウドで使用することのできるカスタム証明書には、2 つのタイプがあります。

  • ユーザーの提供する証明書: 自己の証明書を提供している場合がこれに該当します。自己の CA からの証明書、または自己署名の証明書がその例です。この証明書は undercloud_service_certificate オプションを使用して渡されます。この場合、自己署名の証明書または CA のどちらかを信頼する必要があります (デプロイメントによります)。
  • 自動生成される証明書: certmonger により自己のローカル CA を使用して証明書を生成する場合がこれに該当します。undercloud.conf ファイルの generate_service_certificate オプションを使用して、証明書の自動生成を有効にします。この場合、director は CA 証明書 /etc/pki/ca-trust/source/anchors/cm-local-ca.pem を生成し、アンダークラウドの HAProxy インスタンスがサーバー証明書を使用するように設定します。この CA 証明書を OpenStack Platform に提示するには、証明書を inject-trust-anchor-hiera.yaml ファイルに追加します。

以下の例では、/home/stack/ca.crt.pem に保存された自己署名の証明書が使われています。自動生成される証明書を使用する場合には、代わりに /etc/pki/ca-trust/source/anchors/cm-local-ca.pem を使用してください。

手順

  1. 証明書ファイルを開き、証明書部分だけをコピーします。鍵を含めないでください。

    $ vi /home/stack/ca.crt.pem

    必要となる証明書部分の例を、以下に示します。

    -----BEGIN CERTIFICATE-----
    MIIDlTCCAn2gAwIBAgIJAOnPtx2hHEhrMA0GCSqGSIb3DQEBCwUAMGExCzAJBgNV
    BAYTAlVTMQswCQYDVQQIDAJOQzEQMA4GA1UEBwwHUmFsZWlnaDEQMA4GA1UECgwH
    UmVkIEhhdDELMAkGA1UECwwCUUUxFDASBgNVBAMMCzE5Mi4xNjguMC4yMB4XDTE3
    -----END CERTIFICATE-----
  2. 以下に示す内容で /home/stack/inject-trust-anchor-hiera.yaml という名称の新たな YAML ファイルを作成し、PEM ファイルからコピーした証明書を追加します。

    parameter_defaults:
      CAMap:
        undercloud-ca:
          content: |
            -----BEGIN CERTIFICATE-----
            MIIDlTCCAn2gAwIBAgIJAOnPtx2hHEhrMA0GCSqGSIb3DQEBCwUAMGExCzAJBgNV
            BAYTAlVTMQswCQYDVQQIDAJOQzEQMA4GA1UEBwwHUmFsZWlnaDEQMA4GA1UECgwH
            UmVkIEhhdDELMAkGA1UECwwCUUUxFDASBgNVBAMMCzE5Mi4xNjguMC4yMB4XDTE3
            -----END CERTIFICATE-----
注記

証明書の文字列は、PEM の形式に従う必要があります。

注記

CAMap パラメーターには、SSL/TLS 設定に関連する他の証明書が含まれる場合があります。

director は、オーバークラウドのデプロイメント時に CA 証明書をそれぞれのオーバークラウドノードにコピーします。これにより、それぞれのノードはアンダークラウドの SSL エンドポイントが提示する暗号化を信頼するようになります。環境ファイルに関する詳しい情報は、「オーバークラウドデプロイメントへの環境ファイルの追加」を参照してください。

7.13. デプロイメントコマンド

OpenStack 環境作成における最後の段階では、openstack overcloud deploy コマンドを実行してオーバークラウドを作成します。このコマンドを実行する前に、キーオプションやカスタムの環境ファイルの追加方法を十分に理解しておいてください。

警告

バックグラウンドプロセスとして openstack overcloud deploy を実行しないでください。オーバークラウドの作成をバックグラウンドプロセスとして実行した場合、デプロイメントの途中で停止してしまう可能性があります。

7.14. デプロイメントコマンドのオプション

以下の表には、openstack overcloud deploy コマンドの追加パラメーターをまとめています。

表7.1 デプロイメントコマンドのオプション
パラメーター説明

--templates [TEMPLATES]

デプロイする heat テンプレートが含まれるディレクトリー。空欄にした場合には、デプロイメントコマンドはデフォルトのテンプレートの場所である /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/ を使用します。

--stack STACK

作成または更新するスタックの名前

-t [TIMEOUT]--timeout [TIMEOUT]

デプロイメントのタイムアウト時間(分単位)

--libvirt-type [LIBVIRT_TYPE]

ハイパーバイザーに使用する仮想化タイプ

--ntp-server [NTP_SERVER]

時刻の同期に使用する Network Time Protocol (NTP) サーバー。コンマ区切りリストで複数の NTP サーバーを指定することも可能です (例: --ntp-server 0.centos.pool.org,1.centos.pool.org)。高可用性クラスターのデプロイメントの場合には、コントローラーノードが一貫して同じ時刻ソースを参照することが重要です。標準的な環境には、確立された慣行によって、NTP タイムソースがすでに指定されている可能性がある点に注意してください。

--no-proxy [NO_PROXY]

環境変数 no_proxy のカスタム値を定義します。これにより、プロキシー通信から特定のホスト名は除外されます。

--overcloud-ssh-user OVERCLOUD_SSH_USER

オーバークラウドノードにアクセスする SSH ユーザーを定義します。通常、SSH アクセスは heat-admin ユーザーで実行されます。

--overcloud-ssh-key OVERCLOUD_SSH_KEY

オーバークラウドノードへの SSH アクセスに使用する鍵のパスを定義します。

--overcloud-ssh-network OVERCLOUD_SSH_NETWORK

オーバークラウドノードへの SSH アクセスに使用するネットワーク名を定義します。

-e [EXTRA HEAT TEMPLATE]--extra-template [EXTRA HEAT TEMPLATE]

オーバークラウドのデプロイメントに渡す追加の環境ファイル。このオプションは複数回指定することができます。openstack overcloud deploy コマンドに渡す環境ファイルの順序が重要である点に注意してください。たとえば、逐次的に渡される各環境ファイルは、前の環境ファイルのパラメーターを上書きします。

--environment-directory

デプロイメントに追加する環境ファイルが含まれるディレクトリー。デプロイメントコマンドでは、これらの環境ファイルは最初に番号順、その後にアルファベット順で処理されます。

-r ROLES_FILE

ロールファイルを定義し、--templates ディレクトリーのデフォルトの roles_data.yaml を上書きします。ファイルの場所は、絶対パスまたは --templates に対する相対パスになります。

-n NETWORKS_FILE

ネットワークファイルを定義し、--templates ディレクトリーのデフォルトの network_data.yaml を上書きします。ファイルの場所は、絶対パスまたは --templates に対する相対パスになります。

-p PLAN_ENVIRONMENT_FILE

プラン環境ファイルを定義し、--templates ディレクトリーのデフォルトの plan-environment.yaml を上書きします。ファイルの場所は、絶対パスまたは --templates に対する相対パスになります。

--no-cleanup

デプロイメント後に一時ファイルを削除せず、それらの場所をログに記録するには、このオプションを使用します。

--update-plan-only

実際のデプロイメントを実行せずにプランを更新するには、このオプションを使用します。

--validation-errors-nonfatal

オーバークラウドの作成プロセスでは、デプロイメントの前に一連のチェックが行われます。このオプションは、デプロイメント前のチェックで何らかの致命的でないエラーが発生した場合に終了します。どのようなエラーが発生してもデプロイメントが失敗するので、このオプションを使用することを推奨します。

--validation-warnings-fatal

オーバークラウドの作成プロセスでは、デプロイメントの前に一連のチェックが行われます。このオプションは、デプロイメント前のチェックで何らかのクリティカルではない警告が発生した場合に終了します。

--dry-run

オーバークラウドを作成せずにオーバークラウドで検証チェックを実行するには、このオプションを使用します。

--run-validations

openstack-tripleo-validations パッケージで提供される外部検証を実行するには、このオプションを使用します。

--skip-postconfig

オーバークラウドデプロイ後の設定を省略するには、このオプションを使用します。

--force-postconfig

オーバークラウドデプロイ後の設定を強制的に行うには、このオプションを使用します。

--skip-deploy-identifier

デプロイメントコマンドで DeployIdentifier パラメーターの一意の ID を生成するのを希望しない場合は、このオプションを使用します。ソフトウェア設定のデプロイメントステップは、実際に設定が変更された場合にしか実行されません。このオプションの使用には注意が必要です。特定のロールをスケールアウトする時など、ソフトウェア設定の実行が明らかに不要な場合にしか使用しないでください。

--answers-file ANSWERS_FILE

引数とパラメーターが記載された YAML ファイルへのパス

--disable-password-generation

オーバークラウドサービスのパスワード生成を無効にする場合は、このオプションを使用します。

--deployed-server

事前にプロビジョニングされたオーバークラウドノードをデプロイする場合は、このオプションを使用します。--disable-validations と併用されます。

--no-config-download, --stack-only

config-download ワークフローを無効にして、スタックおよび関連する OpenStack リソースだけを作成する場合は、このオプションを使用します。このコマンドによってオーバークラウドにソフトウェア設定が適用されることはありません。

--config-download-only

オーバークラウドスタックの作成を無効にして、ソフトウェア設定を適用する config-download ワークフローだけを実行する場合は、このオプションを使用します。

--output-dir OUTPUT_DIR

保存した config-download の出力に使用するディレクトリー。ディレクトリーは mistral ユーザーが書き込み可能でなければなりません。指定しない場合、director はデフォルトの /var/lib/mistral/overcloud を使用します。

--override-ansible-cfg OVERRIDE_ANSIBLE_CFG

Ansible 設定ファイルへのパス。このファイルの設定は、config-download がデフォルトで生成する設定を上書きします。

--config-download-timeout CONFIG_DOWNLOAD_TIMEOUT

config-download のステップに使用するタイムアウト時間 (分単位)。設定しなければ、スタックデプロイメント操作後の --timeout パラメーターの残り時間にかかわらず、director はデフォルトをその時間に設定します。

オプションの全一覧を表示するには、以下のコマンドを実行します。

(undercloud) $ openstack help overcloud deploy

環境ファイルの parameter_defaults セクションに追加する heat テンプレートのパラメーターの使用が優先されるため、一部のコマンドラインパラメーターは古いか非推奨となっています。以下の表では、非推奨となったパラメーターと、それに相当する heat テンプレートのパラメーターを対比しています。

表7.2 非推奨の CLI パラメーターと heat テンプレートのパラメーターの対照表
パラメーター説明heat テンプレートのパラメーター

--control-scale

スケールアウトするコントローラーノード数

ControllerCount

--compute-scale

スケールアウトするコンピュートノード数

ComputeCount

--ceph-storage-scale

スケールアウトする Ceph Storage ノードの数

CephStorageCount

--block-storage-scale

スケールアウトする Block Storage (cinder) ノード数

BlockStorageCount

--swift-storage-scale

スケールアウトする Object Storage (swift) ノード数

ObjectStorageCount

--control-flavor

コントローラーノードに使用するフレーバー

OvercloudControllerFlavor

--compute-flavor

コンピュートノードに使用するフレーバー

OvercloudComputeFlavor

--ceph-storage-flavor

Ceph Storage ノードに使用するフレーバー

OvercloudCephStorageFlavor

--block-storage-flavor

Block Storage (cinder) ノードに使用するフレーバー

OvercloudBlockStorageFlavor

--swift-storage-flavor

Object Storage (swift) ノードに使用するフレーバー

OvercloudSwiftStorageFlavor

--validation-errors-fatal

オーバークラウドの作成プロセスでは、デプロイメントの前に一連のチェックが行われます。このオプションは、デプロイメント前のチェックで何らかの致命的なエラーが発生した場合に終了します。どのようなエラーが発生してもデプロイメントが失敗するので、このオプションを使用することを推奨します。

パラメーターのマッピングなし

--disable-validations

デプロイメント前の検証を完全に無効にします。これらの検証は、デプロイメント前の検証として組み込まれていましたが、openstack-tripleo-validations パッケージで提供される外部検証に置き換えられています。

パラメーターのマッピングなし

--config-download

config-download のメカニズムを使用してデプロイメントを実行します。これは現在のデフォルトであり、この CLI のオプションは今後廃止される可能性があります。

パラメーターのマッピングなし

--rhel-reg

カスタマーポータルまたは Satellite 6 にオーバークラウドノードを登録する場合は、このオプションを使用します。

RhsmVars

--reg-method

このオプションを使用して、オーバークラウドノードの登録方法を定義します。Red Hat Satellite 6 または Red Hat Satellite 5 の場合は satellite、カスタマーポータルの場合は portal に設定します。

RhsmVars

--reg-org [REG_ORG]

登録に使用する組織。

RhsmVars

--reg-force

すでに登録済みでもシステムを登録する場合は、このオプションを使用します。

RhsmVars

--reg-sat-url [REG_SAT_URL]

オーバークラウドノードを登録する Satellite サーバーのベース URL。このパラメーターには、HTTPS URL ではなく、Satellite の HTTP URL を使用します。たとえば、https://satellite.example.com ではなく http://satellite.example.com を使用します。オーバークラウドの作成プロセスではこの URL を使用して、どのサーバーが Red Hat Satellite 5 または Red Hat Satellite 6 サーバーであるかを判断します。サーバーが Red Hat Satellite 6 サーバーの場合は、オーバークラウドは katello-ca-consumer-latest.noarch.rpm ファイルを取得して subscription-manager に登録し、katello-agent をインストールします。サーバーが Red Hat Satellite 5 サーバーの場合にはオーバークラウドは RHN-ORG-TRUSTED-SSL-CERT ファイルを取得して rhnreg_ks に登録します。

RhsmVars

--reg-activation-key [REG_ACTIVATION_KEY]

登録に使用するアクティベーションキーを定義する場合は、このオプションを使用します。

RhsmVars

これらのパラメーターは、Red Hat OpenStack Platform の今後のリリースで廃止される予定です。

7.15. オーバークラウドデプロイメントへの環境ファイルの追加

オーバークラウドをカスタマイズするための環境ファイルを追加するには、-e オプションを使用します。必要に応じていくつでも環境ファイルを追加することができます。ただし、後で指定する環境ファイルで定義されるパラメーターとリソースが優先されることになるため、環境ファイルの順番は重要です。以下の一覧は、環境ファイルの順序の例です。

  • 各ロールのノード数およびフレーバー。オーバークラウドを作成するには、この情報の追加は不可欠です。
  • コンテナー化された OpenStack サービスのコンテナーイメージの場所
  • 任意のネットワーク分離ファイル。heat テンプレートコレクションの初期化ファイル (environments/network-isolation.yaml) から開始して、次にカスタムの NIC 設定ファイル、最後に追加のネットワーク設定の順番です。詳しい情報は、『Advanced Overcloud Customization』の以下の章を参照してください。

  • 外部のロードバランサーを使用している場合には、外部の負荷分散機能の環境ファイル。詳しい情報は、『 External Load Balancing for the Overcloud 』を参照してください。
  • Ceph Storage、NFS、または iSCSI 等のストレージ環境ファイル
  • Red Hat CDN または Satellite 登録用の環境ファイル
  • その他のカスタム環境ファイル

-e オプションを使用してオーバークラウドに追加した環境ファイルはいずれも、オーバークラウドのスタック定義の一部となります。

以下のコマンドは、本シナリオの初期に定義した環境ファイルを使用してオーバークラウドの作成を開始する方法の一例です。

(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \
  -e /home/stack/templates/node-info.yaml\
  -e /home/stack/containers-prepare-parameter.yaml \
  -e /home/stack/inject-trust-anchor-hiera.yaml
  -r /home/stack/templates/roles_data.yaml \

上記のコマンドでは、以下の追加オプションも使用できます。

--templates
/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates の heat テンプレートコレクションをベースとして使用し、オーバークラウドを作成します。
-e /home/stack/templates/node-info.yaml
各ロールに使用するノード数とフレーバーを定義する環境ファイルを追加します。
-e /home/stack/containers-prepare-parameter.yaml
コンテナーイメージ準備の環境ファイルを追加します。このファイルはアンダークラウドのインストール時に生成したもので、オーバークラウドの作成に同じファイルを使用することができます。
-e /home/stack/inject-trust-anchor-hiera.yaml
アンダークラウドにカスタム証明書をインストールする環境ファイルを追加します。
-r /home/stack/templates/roles_data.yaml
(オプション) カスタムロールを使用する、またはマルチアーキテクチャークラウドを有効にする場合に生成されるロールデータ。詳細は、「アーキテクチャーに固有なロールの作成」 を参照してください。

director は、再デプロイおよびデプロイ後の機能にこれらの環境ファイルを必要とします。これらのファイルが含まれていない場合には、オーバークラウドが破損する可能性があります。

これ以降の段階でオーバークラウド設定を変更するには、以下の操作を実施します。

  1. カスタムの環境ファイルおよび heat テンプレートのパラメーターを変更します。
  2. 同じ環境ファイルを指定して openstack overcloud deploy コマンドを再度実行します。

オーバークラウドの設定は直接編集しないでください。手動で設定しても、オーバークラウドスタックの更新時に、director が設定を上書きするためです。

7.16. デプロイメント要件の検証

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

pre-deployment 検証グループを実行して、デプロイメント要件を確認します。

手順

  1. source コマンドで stackrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/stackrc
  2. この検証には、オーバークラウドプランのコピーが必要です。必要なすべての環境ファイルと共に、オーバークラウドプランをアップロードします。プランのみをアップロードするには、--update-plan-only オプションを指定して openstack overcloud deploy コマンドを実行します。

    $ openstack overcloud deploy --templates \
        -e environment-file1.yaml \
        -e environment-file2.yaml \
        ...
        --update-plan-only
  3. --group pre-deployment オプションを指定して、openstack tripleo validator run コマンドを実行します。

    $ openstack tripleo validator run --group pre-deployment
  4. オーバークラウドにデフォルトのプラン名 overcloud 以外の名前を使用する場合は、--plan オプションでプラン名を設定します。

    $ openstack tripleo validator run --group pre-deployment \
        --plan myovercloud
  5. 検証レポートの結果を確認します。
重要

検証結果が FAILED であっても、Red Hat OpenStack Platform のデプロイや実行が妨げられることはありません。ただし、FAILED の検証結果は、実稼働環境で問題が発生する可能性があることを意味します。

7.17. オーバークラウドデプロイメントの出力

オーバークラウドの作成が完了すると、オーバークラウドを設定するために実施された Ansible のプレイの概要が director により提示されます。

PLAY RECAP *************************************************************
overcloud-compute-0     : ok=160  changed=67   unreachable=0    failed=0
overcloud-controller-0  : ok=210  changed=93   unreachable=0    failed=0
undercloud              : ok=10   changed=7    unreachable=0    failed=0

Tuesday 15 October 2018  18:30:57 +1000 (0:00:00.107) 1:06:37.514 ******
========================================================================

director により、オーバークラウドへのアクセス情報も提供されます。

Ansible passed.
Overcloud configuration completed.
Overcloud Endpoint: http://192.168.24.113:5000
Overcloud Horizon Dashboard URL: http://192.168.24.113:80/dashboard
Overcloud rc file: /home/stack/overcloudrc
Overcloud Deployed

7.18. オーバークラウドへのアクセス

director は、アンダークラウドからオーバークラウドと対話するための設定を行い、認証をサポートするスクリプトを作成します。director は、このファイル overcloudrcstack ユーザーのホームディレクトリーに保存します。このファイルを使用するには、以下のコマンドを実行します。

(undercloud) $ source ~/overcloudrc

このコマンドにより、アンダークラウド CLI からオーバークラウドと対話するのに必要な環境変数が読み込まれます。コマンドプロンプトが変わり、オーバークラウドと対話していることが示されます。

(overcloud) $

アンダークラウドとの対話に戻るには、以下のコマンドを実行します。

(overcloud) $ source ~/stackrc
(undercloud) $

オーバークラウドの各ノードには、heat-admin ユーザーも含まれます。stack ユーザーには、各ノードに存在するこのユーザーに SSH 経由でアクセスすることができます。SSH 経由でノードにアクセスするには、アクセスするノードの IP アドレスを検索します。

(undercloud) $ openstack server list

次に、heat-admin ユーザーとノードの IP アドレスを使用して、ノードに接続します。

(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.24.23

7.19. デプロイメント後の状態の検証

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

post-deployment 検証グループを実行し、デプロイメント後の状態を確認します。

手順

  1. source コマンドで stackrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/stackrc
  2. --group post-deployment オプションを指定して、openstack tripleo validator run コマンドを実行します。

    $ openstack tripleo validator run --group post-deployment
  3. オーバークラウドにデフォルトのプラン名 overcloud 以外の名前を使用する場合は、--plan オプションでプラン名を設定します。

    $ openstack tripleo validator run --group post-deployment \
        --plan myovercloud
  4. 検証レポートの結果を確認します。
重要

検証結果が FAILED であっても、Red Hat OpenStack Platform のデプロイや実行が妨げられることはありません。ただし、FAILED の検証結果は、実稼働環境で問題が発生する可能性があることを意味します。

7.20. 次のステップ

これで、コマンドラインツールを使用したオーバークラウドの作成が完了しました。作成後の機能の詳細については、「11章オーバークラウドのインストール後タスクの実施」を参照してください。

第8章 オーバークラウドのデプロイ前に行うベアメタルノードのプロビジョニング

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

オーバークラウドのデプロイメントプロセスには、2 つの主要な操作があります。

  • ノードのプロビジョニング
  • オーバークラウドのデプロイ

これらの操作を別個のプロセスに分割すると、このプロセスに伴うリスクの一部を軽減し、より効率的に障害点を特定することができます。

  1. ベアメタルノードをプロビジョニングする。

    1. ノード定義ファイルを yaml 形式で作成します。
    2. ノード定義ファイルを指定して、プロビジョニングコマンドを実行します。
  2. オーバークラウドをデプロイする。

    1. プロビジョニングコマンドにより生成される heat 環境ファイルを指定して、デプロイメントコマンドを実行します。

プロビジョニングプロセスにより、ノードがプロビジョニングされ、ノード数、予測可能なノード配置、カスタムイメージ、カスタム NIC 等のさまざまなノード仕様が含まれる heat 環境ファイルが生成されます。オーバークラウドをデプロイする際に、このファイルをデプロイメントコマンドに追加します。

重要

事前にプロビジョニングされたノードと director がプロビジョニングしたノードを組み合わせることはできません。

8.1. オーバークラウドノードの登録

director では、手動で作成したノード定義のテンプレートが必要です。このテンプレートは JSON または YAML 形式を使用し、ノードのハードウェアおよび電源管理の情報が含まれます。

手順

  1. ノードの一覧が含まれるテンプレートを作成します。以下の例に示す JSON および YAML テンプレートを使用して、ノード定義のテンプレートを構成する方法を説明します。

    JSON テンプレートの例

    {
        "nodes":[
            {
                "mac":[
                    "bb:bb:bb:bb:bb:bb"
                ],
                "name":"node01",
                "cpu":"4",
                "memory":"6144",
                "disk":"40",
                "arch":"x86_64",
                "pm_type":"ipmi",
                "pm_user":"admin",
                "pm_password":"p@55w0rd!",
                "pm_addr":"192.168.24.205"
            },
            {
                "mac":[
                    "cc:cc:cc:cc:cc:cc"
                ],
                "name":"node02",
                "cpu":"4",
                "memory":"6144",
                "disk":"40",
                "arch":"x86_64",
                "pm_type":"ipmi",
                "pm_user":"admin",
                "pm_password":"p@55w0rd!",
                "pm_addr":"192.168.24.206"
            }
        ]
    }

    YAML テンプレートの例

    nodes:
      - mac:
          - "bb:bb:bb:bb:bb:bb"
        name: "node01"
        cpu: 4
        memory: 6144
        disk: 40
        arch: "x86_64"
        pm_type: "ipmi"
        pm_user: "admin"
        pm_password: "p@55w0rd!"
        pm_addr: "192.168.24.205"
      - mac:
          - cc:cc:cc:cc:cc:cc
        name: "node02"
        cpu: 4
        memory: 6144
        disk: 40
        arch: "x86_64"
        pm_type: "ipmi"
        pm_user: "admin"
        pm_password: "p@55w0rd!"
        pm_addr: "192.168.24.206"

    このテンプレートには、以下の属性が含まれます。

    name
    ノードの論理名
    pm_type

    使用する電源管理ドライバー。この例では IPMI ドライバー (ipmi) を使用しています。

    注記

    IPMI が推奨されるサポート対象電源管理ドライバーです。サポート対象電源管理ドライバーの種別およびそのオプションに関する詳細は、「付録A 電源管理ドライバー」を参照してください。それらの電源管理ドライバーが想定どおりに機能しない場合には、電源管理に IPMI を使用してください。

    pm_user; pm_password
    IPMI のユーザー名およびパスワード
    pm_addr
    IPMI デバイスの IP アドレス
    pm_port (オプション)
    特定の IPMI デバイスにアクセスするためのポート
    mac
    (オプション) ノード上のネットワークインターフェースの MAC アドレス一覧。各システムのプロビジョニング NIC の MAC アドレスのみを使用します。
    cpu
    (オプション) ノード上の CPU 数
    memory
    (オプション) メモリーサイズ (MB 単位)
    disk
    (オプション) ハードディスクのサイズ (GB 単位)
    arch

    (オプション) システムアーキテクチャー

    重要

    マルチアーキテクチャークラウドをビルドする場合には、x86_64 アーキテクチャーを使用するノードと ppc64le アーキテクチャーを使用するノードを区別するために arch キーが必須です。

  2. テンプレートを作成したら、以下のコマンドを実行してフォーマットおよび構文を検証します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ openstack overcloud node import --validate-only ~/nodes.json
  3. stack ユーザーのホームディレクトリーにファイルを保存し (/home/stack/nodes.json)、続いて以下のコマンドを実行してテンプレートを director にインポートします。

    (undercloud) $ openstack overcloud node import ~/nodes.json

    このコマンドにより、それぞれのノードがテンプレートから director に登録されます。

  4. ノードの登録および設定が完了するまで待ちます。完了したら、ノードが director に正しく登録されていることを確認します。

    (undercloud) $ openstack baremetal node list

8.2. ノードのハードウェアの検査

director は各ノードでイントロスペクションプロセスを実行することができます。以下の手順では、PXE を通じて各ノードでイントロスペクションエージェントをブートします。イントロスペクションエージェントは、ノードからハードウェアのデータを収集し、そのデータを director に送り返します。次に director は、director 上で実行中の OpenStack Object Storage (swift) サービスにこのイントロスペクションデータを保管します。director は、プロファイルのタグ付け、ベンチマーキング、ルートディスクの手動割り当てなど、さまざまな目的でハードウェア情報を使用します。

手順

  1. 以下のコマンドを実行して、各ノードのハードウェア属性を検証します。

    (undercloud) $ openstack overcloud node introspect --all-manageable --provide
    • --all-manageable オプションを使用して、管理状態にあるノードのみをイントロスペクションします。ここでは、すべてのノードが管理状態にあります。
    • --provide オプションを使用して、イントロスペクション後に全ノードを available の状態に再設定します。
  2. 別のターミナルウィンドウで、イントロスペクションの進捗ログを監視します。

    (undercloud) $ sudo tail -f /var/log/containers/ironic-inspector/ironic-inspector.log
    重要

    このプロセスを必ず完了させてください。ベアメタルノードの場合には、通常 15 分ほどかかります。

イントロスペクション完了後には、すべてのノードが available の状態に変わります。

8.3. ベアメタルノードのプロビジョニング

新しい YAML ファイル ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml を作成し、デプロイするベアメタルノードの数と属性を定義して、これらのノードにオーバークラウドロールを割り当てます。プロビジョニングプロセスにより heat 環境ファイルが作成され、そのファイルを openstack overcloud deploy コマンドに追加することができます。

前提条件

手順

  1. source コマンドで stackrc アンダークラウド認証情報ファイルを読み込みます。

    $ source ~/stackrc
  2. 新しい ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルを作成し、プロビジョニングする各ロールのノード数を定義します。たとえば、コントローラーノード 3 つとコンピュートノード 3 つをプロビジョニングするには、以下の構文を使用します。

    - name: Controller
      count: 3
    - name: Compute
      count: 3
  3. ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルで、予測可能なノード配置、カスタムイメージ、カスタム NIC、またはノードに割り当てるその他の属性を定義します。たとえば、以下の例の構文を使用すると、3 つのコントローラーノードがノード node00node01、および node02 に、3 つのコンピュートノードがノード node04node05、および node06 に、それぞれプロビジョニングされます。

    - name: Controller
      count: 3
      instances:
      - hostname: overcloud-controller-0
        name: node00
      - hostname: overcloud-controller-1
        name: node01
      - hostname: overcloud-controller-2
        name: node02
    - name: Compute
      count: 3
      instances:
      - hostname: overcloud-novacompute-0
        name: node04
      - hostname: overcloud-novacompute-1
        name: node05
      - hostname: overcloud-novacompute-2
        name: node06

    デフォルトでは、プロビジョニングプロセスには overcloud-full イメージが使用されます。instances パラメーターで image 属性を使用して、カスタムイメージを定義することができます。

    - name: Controller
      count: 3
      instances:
      - hostname: overcloud-controller-0
        name: node00
        image:
          href: overcloud-custom

    ノードエントリーごとに手動でノードを定義するのを避けるために、defaults パラメーターでデフォルトのパラメーター値を上書きすることもできます。

    - name: Controller
      count: 3
      defaults:
        image:
          href: overcloud-custom
      instances:
      - hostname :overcloud-controller-0
        name: node00
      - hostname: overcloud-controller-1
        name: node01
      - hostname: overcloud-controller-2
        name: node02

    ノード定義ファイルで使用できるパラメーター、属性、および値についての詳しい情報は、「ベアメタルノードプロビジョニングの属性」を参照してください。

  4. ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルを指定し、--output オプションで出力ファイルを定義して、プロビジョニングコマンドを実行します。

    (undercloud) $ sudo openstack overcloud node provision \
    --stack stack \
    --output ~/overcloud-baremetal-deployed.yaml \
    ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml

    プロビジョニングプロセスにより、--output オプションで指定する名前の heat 環境ファイルが生成されます。このファイルには、ノード定義が含まれます。オーバークラウドをデプロイする際に、このファイルをデプロイメントコマンドに追加します。

  5. 別のターミナルでノードをモニタリングし、プロビジョニングが正常に行われていることを確認します。プロビジョニングプロセスでは、ノードの状態が available から active に変わります。

    (undercloud) $ watch openstack baremetal node list

    metalsmith ツールを使用して、割り当てや neutron ポートなどを含むノードの統合ビューを取得します。

    (undercloud) $ metalsmith list

    また、openstack baremetal allocation コマンドを使用して、ノードのホスト名への関連付けを確認し、プロビジョニングしたノードの IP アドレスを取得することもできます。

    (undercloud) $ openstack baremetal allocation list

ノードが正常にプロビジョニングされると、オーバークラウドをデプロイすることができます。詳細は、9章事前にプロビジョニングされたノードを使用した基本的なオーバークラウドの設定 を参照してください。

8.4. ベアメタルノードのスケールアップ

既存オーバークラウドのベアメタルノード数を増やすには、~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルのノード数を増やして、オーバークラウドを再デプロイします。

前提条件

手順

  1. source コマンドで stackrc アンダークラウド認証情報ファイルを読み込みます。

    $ source ~/stackrc
  2. ベアメタルノードのプロビジョニングに使用した ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルを編集し、スケールアップするロールの count パラメーターを増やします。たとえば、オーバークラウドにコンピュートノードが 3 つある場合に、以下のスニペットを使用してコンピュートノード数を 10 に増やします。

    - name: Controller
      count: 3
    - name: Compute
      count: 10

    instances パラメーターを使用して、予測可能なノード配置を追加することもできます。利用可能なパラメーターおよび属性についての詳しい情報は、「ベアメタルノードプロビジョニングの属性」を参照してください。

  3. ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルを指定し、--output オプションで出力ファイルを定義して、プロビジョニングコマンドを実行します。

    (undercloud) $ sudo openstack overcloud node provision \
    --stack stack \
    --output ~/overcloud-baremetal-deployed.yaml \
    ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml
  4. openstack baremetal node list コマンドを使用して、プロビジョニングの進捗をモニタリングします。
  5. デプロイメントに該当するその他の環境ファイルと共に、プロビジョニングコマンドによって生成される ~/overcloud-baremetal-deployed.yaml ファイルを指定して、オーバークラウドをデプロイします。

    (undercloud) $ openstack overcloud deploy \
      ...
      -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-environment.yaml \
      -e ~/overcloud-baremetal-deployed.yaml \
      --deployed-server \
      --disable-validations \
      ...

8.5. ベアメタルノードのスケールダウン

スタックから削除するノードを ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルでタグ付けし、オーバークラウドを再デプロイしてから、--baremetal-deployment オプションを指定して openstack overcloud node delete コマンドにこのファイルを追加します。

前提条件

手順

  1. source コマンドで stackrc アンダークラウド認証情報ファイルを読み込みます。

    $ source ~/stackrc
  2. ベアメタルノードのプロビジョニングに使用した ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルを編集し、スケールダウンするロールの count パラメーターを減らします。また、スタックから削除するノードごとに以下の属性を定義する必要もあります。

    • ノードの名前
    • ノードに関連付けられたホスト名
    • provisioned: false 属性

      たとえば、スタックからノード overcloud-controller-1 を削除するには、~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルに以下のスニペットを追加します。

      - name: Controller
        count: 2
        instances:
        - hostname: overcloud-controller-0
          name: node00
        - hostname: overcloud-controller-1
          name: node01
          # Removed from cluster due to disk failure
          provisioned: false
        - hostname: overcloud-controller-2
          name: node02
  3. ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルを指定し、--output オプションで出力ファイルを定義して、プロビジョニングコマンドを実行します。

    (undercloud) $ sudo openstack overcloud node provision \
    --stack stack \
    --output ~/overcloud-baremetal-deployed.yaml \
    ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml
  4. デプロイメントに該当するその他の環境ファイルと共に、プロビジョニングコマンドによって生成される ~/overcloud-baremetal-deployed.yaml ファイルを指定して、オーバークラウドを再デプロイします。

    (undercloud) $ openstack overcloud deploy \
      ...
      -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-environment.yaml \
      -e ~/overcloud-baremetal-deployed.yaml \
      --deployed-server \
      --disable-validations \
      ...

    オーバークラウドの再デプロイ後、provisioned: false 属性で定義したノードがスタックには存在しなくなります。ただし、これらのノードは provisioned の状態で稼働したままです。

    注記

    スタックから一時的にノードを削除する場合は、オーバークラウドを属性 provisioned: false でデプロイしてから属性 provisioned: true で再デプロイすることで、ノードをスタックに戻すことができます。

  5. --baremetal-deployment オプションで ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml ファイルを指定して、openstack overcloud node delete コマンドを実行します。

    (undercloud) $ sudo openstack overcloud node delete \
    --stack stack \
    --baremetal-deployment ~/overcloud-baremetal-deploy.yaml
    注記

    スタックから削除するノードを、openstack overcloud node delete コマンドのコマンド引数に含めないでください。

8.6. ベアメタルノードプロビジョニングの属性

以下の表で、openstack baremetal node provision コマンドでベアメタルノードをプロビジョニングする際に使用できるパラメーター、属性、および値について説明します。

表8.1 ロールパラメーター
パラメーター

name

ロール名 (必須)

count

このロール用にプロビジョニングするノード数。デフォルト値は 1 です。

defaults

instances エントリープロパティーのデフォルト値のディクショナリー。instances エントリーのプロパティーは、defaults パラメーターで指定したデフォルトを上書きします。

instances

特定のノードの属性を指定するために使用可能な値のディクショナリー。instances パラメーターでサポートされるプロパティーについての詳しい情報は、 表8.2「instances および defaults パラメーター」 を参照してください。このリストの長さは、count パラメーターの値よりも大きくすることはできません。

hostname_format

このロールのデフォルトのホスト名形式を上書きします。デフォルトの形式では、小文字のロール名を使用します。たとえば、Controller ロールのデフォルト形式は、%stackname%-controller-%index% です。Compute ロールだけは、ロール名のルールに従いません。Compute のデフォルトの形式は、%stackname%-novacompute-%index% です。

構文の例

以下の例では、name はノードの論理名を指し、hostname は、オーバークラウドスタック名、ロール、および増分インデックスから派生して生成されたホスト名を指します。すべてのコントローラーサーバーは、デフォルトのカスタムイメージ overcloud-full-custom を使用し、予測可能なノード上にあります。コンピュートサーバーの 1 つは、カスタムホスト名 overcloud-compute-specialnode04 上に予測的に配置され、残りの 99 のコンピュートサーバーは、使用可能なノードのプールから自動的に割り当てられるノード上にあります。

- name: Controller
  count: 3
  defaults:
    image:
      href: file:///var/lib/ironic/images/overcloud-full-custom.qcow2
  instances:
  - hostname: overcloud-controller-0
    name: node00
  - hostname: overcloud-controller-1
    name: node01
  - hostname: overcloud-controller-2
    name: node02
- name: Compute
  count: 100
  instances:
  - hostname: overcloud-compute-special
    name: node04
表8.2 instances および defaults パラメーター
パラメーター

hostname

ホスト名が hostname_format のパターンに適合する場合、他のプロパティーがこのホスト名に割り当てられたノードに適用されます。そうでない場合は、このノードにカスタムのホスト名を使用できます。

name

プロビジョニングするノードの名前

image

ノードにプロビジョニングするイメージの詳細。image パラメーターでサポートされるプロパティーについての詳しい情報は、表8.3「image パラメーター」 を参照してください。

capabilities

ノードのケイパビリティーを照合する際の選択基準

nics

要求された NIC を表すディクショナリーの一覧。nics パラメーターでサポートされるプロパティーについての詳しい情報は、表8.4「nic パラメーター」 を参照してください。

profile

高度なプロファイルマッチングを使用する際の選択基準

provisioned

このノードがプロビジョニングされているかどうかを判断するブール値。デフォルト値は true です。プロビジョニングされていないノードには false を使用します。詳細は、「「ベアメタルノードのスケールダウン」」を参照してください。

resource_class

ノードのリソースクラスを照合する際の選択基準。デフォルト値は baremetal です。

root_size_gb

ルートパーティションのサイズ (GiB 単位)。デフォルト値は 49 です。

swap_size_mb

スワップパーティションのサイズ (MiB 単位)

traits

ノード特性を照合する際の選択基準としての特性の一覧

構文の例

以下の例では、すべてのコントローラーサーバーでカスタムのデフォルトオーバークラウドイメージ overcloud-full-custom が使用されます。コントローラーサーバー overcloud-controller-0node00 上に予測的に配置され、カスタム設定のルートパーティションおよびスワップパーティションサイズを持ちます。他の 2 つのコントローラーサーバーは、利用可能なノードのプールから自動的に割り当てられるノード上にあり、デフォルト設定のルートパーティションおよびスワップパーティションサイズを持ちます。

- name: Controller
  count: 3
  defaults:
    image:
      href: file:///var/lib/ironic/images/overcloud-full-custom.qcow2
  instances:
  - hostname: overcloud-controller-0
    name: node00
    root_size_gb: 140
    swap_size_mb: 600
表8.3 image パラメーター
パラメーター

href

glance イメージの参照、またはルートパーティションもしくは完全なディスクイメージの URL。サポートされる URL スキームは、file://http://、および https:// です。値が有効な URL ではない場合、この値は有効な glance イメージの参照でなければなりません。

checksum

href が URL の場合、この値はルートパーティションまたは完全なディスクイメージの SHA512 チェックサムでなければなりません。

kernel

glance イメージの参照またはカーネルイメージの URL。パーティションイメージに対してのみ、この属性を使用します。

ramdisk

glance イメージの参照または ramdisk イメージの URL。パーティションイメージに対してのみ、この属性を使用します。

構文の例

以下の例では、3 つのコントローラーサーバーは、すべて利用可能なノードのプールから自動的に割り当てられるノード上にあります。この環境の全コントローラーサーバーは、デフォルトのカスタムイメージ overcloud-full-custom を使用します。

- name: Controller
  count: 3
  defaults:
    image:
      href: file:///var/lib/ironic/images/overcloud-full-custom.qcow2
      checksum: 1582054665
      kernel: file:///var/lib/ironic/images/overcloud-full-custom.vmlinuz
      ramdisk: file:///var/lib/ironic/images/overcloud-full-custom.initrd
表8.4 nic パラメーター
パラメーター

fixed_ip

この NIC に使用する特定の IP アドレス

network

この NIC のポートを作成する neutron ネットワーク

subnet

この NIC のポートを作成する neutron サブネット

port

新しいポートを作成する代わりに使用する既存の neutron ポート

構文の例

以下の例では、3 つのコントローラーサーバーは、すべて利用可能なノードのプールから自動的に割り当てられるノード上にあります。この環境の全コントローラーサーバーは、デフォルトのカスタムイメージ overcloud-full-custom を使用します。また、特定のネットワーク要件を持ちます。

- name: Controller
  count: 3
  defaults:
    image:
      href: file:///var/lib/ironic/images/overcloud-full-custom.qcow2
      nics:
        network: custom-network
        subnet: custom-subnet

第9章 事前にプロビジョニングされたノードを使用した基本的なオーバークラウドの設定

本章では、事前にプロビジョニングされたノードを使用して Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) 環境を設定するのに使用できる基本的な設定手順を説明します。以下のシナリオは、標準のオーバークラウド作成のシナリオとはさまざまな点で異なります。

  • 外部ツールを使用してノードをプロビジョニングしてから、director でオーバークラウドの設定のみを制御することができます。
  • director のプロビジョニングの方法に依存せずにノードを使用することができます。これは、電源管理制御を設定せずにオーバークラウドを作成する場合や、DHCP/PXE ブートの制限があるネットワークを使用する場合に便利です。
  • director では、ノードを管理するのに OpenStack Compute (nova)、OpenStack Bare Metal (ironic)、または OpenStack Image (glance) を使用しません。
  • 事前にプロビジョニングされたノードでは、QCOW2 overcloud-full イメージに依存しないカスタムパーティションレイアウトを使用することができます。

このシナリオには、カスタム機能を持たない基本的な設定のみが含まれています。ただし、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』 に記載の手順に従って、この基本的なオーバークラウドに高度な設定オプションを追加し、仕様に合わせてカスタマイズすることができます。

重要

事前にプロビジョニングされたノードと director がプロビジョニングしたノードを組み合わせることはできません。

9.1. 事前にプロビジョニングされたノードの要件

事前にプロビジョニングされたノードを使用してオーバークラウドのデプロイメントを開始する前に、以下の項目が環境に存在していること確認してください。

  • 4章director のインストール」で作成した director ノード
  • ノードに使用するベアメタルマシンのセット。必要なノード数は、作成予定のオーバークラウドのタイプにより異なります。これらのマシンは、各ノード種別に設定された要件に従う必要があります。これらのノードには、ホストオペレーティングシステムとして Red Hat Enterprise Linux 8.1 以降をインストールする必要があります。Red Hat では、利用可能な最新バージョンの使用を推奨します。
  • 事前にプロビジョニングされたノードを管理するためのネットワーク接続 1 つ。このシナリオでは、オーケストレーションエージェントの設定のために、ノードへの SSH アクセスが中断されないようにする必要があります。
  • コントロールプレーンネットワーク用のネットワーク接続 1 つ。このネットワークには、主に 2 つのシナリオがあります。

    • プロビジョニングネットワークをコントロールプレーンとして使用するデフォルトのシナリオ:このネットワークは通常、事前にプロビジョニングされたノードから director へのレイヤー 3 (L3) を使用したルーティング可能なネットワーク接続です。このシナリオの例では、以下の IP アドレスの割り当てを使用します。

      表9.1 プロビジョニングネットワークの IP 割り当て
      ノード名IP アドレス

      director

      192.168.24.1

      Controller 0

      192.168.24.2

      Compute 0

      192.168.24.3

    • 別のネットワークを使用するシナリオ:director のプロビジョニングネットワークがプライベートのルーティング不可能なネットワークの場合には、サブネットからノードの IP アドレスを定義して、パブリック API エンドポイント経由で director と通信することができます。このシナリオの要件についての詳細は、「事前にプロビジョニングされたノードへの別ネットワークの使用」を参照してください。
  • この例で使用するその他すべてのネットワーク種別も、OpenStack サービス用のコントロールプレーンネットワークを使用します。ただし、ネットワークトラフィックの他のタイプに追加でネットワークを作成することができます。
  • いずれかのノードで Pacemaker リソースが使用される場合、サービスユーザー hacluster およびサービスグループ haclient の UID/GID は、189 でなければなりません。これは CVE-2018-16877 に対応するためです。オペレーティングシステムと共に Pacemaker をインストールした場合、インストールによりこれらの ID が自動的に作成されます。ID の値が正しく設定されていない場合は、アーティクル「OpenStack minor update / fast-forward upgrade can fail on the controller nodes at pacemaker step with "Could not evaluate: backup_cib"」の手順に従って ID の値を変更します。
  • 一部のサービスが誤った IP アドレスにバインドされてデプロイメントに失敗するのを防ぐために、/etc/hosts ファイルに node-name=127.0.0.1 のマッピングが含まれないようにします。

9.2. 事前にプロビジョニングされたノードでのユーザーの作成

事前にプロビジョニングされたノードを使用してオーバークラウドを設定するには、director がオーバークラウドノードに stack ユーザーとして SSH アクセスする必要があります。stack ユーザーを作成するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. 各オーバークラウドノードで、stack ユーザーを作成して、それぞれにパスワードを設定します。コントローラーノードで、以下の例に示すコマンドを実行します。

    [root@controller-0 ~]# useradd stack
    [root@controller-0 ~]# passwd stack  # specify a password
  2. sudo を使用する際に、このユーザーがパスワードを要求されないようにします。

    [root@controller-0 ~]# echo "stack ALL=(root) NOPASSWD:ALL" | tee -a /etc/sudoers.d/stack
    [root@controller-0 ~]# chmod 0440 /etc/sudoers.d/stack
  3. 事前にプロビジョニングされた全ノードで stack ユーザーの作成と設定を行った後に、director ノードから各オーバークラウドノードに stack ユーザーの公開 SSH 鍵をコピーします。director の公開 SSH 鍵をコントローラーノードにコピーするには、以下の例に示すコマンドを実行します。

    [stack@director ~]$ ssh-copy-id stack@192.168.24.2

9.3. 事前にプロビジョニングされたノードのオペレーティングシステムの登録

それぞれのノードには、Red Hat サブスクリプションへのアクセスが必要です。ノードを Red Hat コンテンツ配信ネットワークに登録するには、各ノードで以下の手順を実施します。

手順

  1. 登録コマンドを実行して、プロンプトが表示されたらカスタマーポータルのユーザー名とパスワードを入力します。

    [root@controller-0 ~]# sudo subscription-manager register
  2. Red Hat OpenStack Platform 16 のエンタイトルメントプールを検索します。

    [root@controller-0 ~]# sudo subscription-manager list --available --all --matches="Red Hat OpenStack"
  3. 上記のステップで特定したプール ID を使用して、Red Hat OpenStack Platform 16 のエンタイトルメントをアタッチします。

    [root@controller-0 ~]# sudo subscription-manager attach --pool=pool_id
  4. デフォルトのリポジトリーをすべて無効にします。

    [root@controller-0 ~]# sudo subscription-manager repos --disable=*
  5. 必要な Red Hat Enterprise Linux リポジトリーを有効にします。

    1. x86_64 システムの場合には、以下のコマンドを実行します。

      [root@controller-0 ~]# sudo subscription-manager repos --enable=rhel-8-for-x86_64-baseos-eus-rpms --enable=rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms --enable=rhel-8-for-x86_64-highavailability-eus-rpms --enable=ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=openstack-16-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=rhceph-4-osd-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=rhceph-4-mon-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=rhceph-4-tools-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=advanced-virt-for-rhel-8-x86_64-rpms --enable=fast-datapath-for-rhel-8-x86_64-rpms
    2. POWER システムの場合には、以下のコマンドを実行します。

      [root@controller-0 ~]# sudo subscription-manager repos --enable=rhel-8-for-ppc64le-baseos-rpms --enable=rhel-8-for-ppc64le-appstream-rpms --enable=rhel-8-for-ppc64le-highavailability-rpms --enable=ansible-2.8-for-rhel-8-ppc64le-rpms --enable=openstack-16-for-rhel-8-ppc64le-rpms --enable=advanced-virt-for-rhel-8-ppc64le-rpms
    重要

    記載されたリポジトリーのみを有効にします。追加のリポジトリーを使用すると、パッケージとソフトウェアの競合が発生する場合があります。他のリポジトリーは有効にしないでください。

  6. システムを更新して、ベースシステムパッケージが最新の状態になるようにします。

    [root@controller-0 ~]# sudo dnf update -y
    [root@controller-0 ~]# sudo reboot

このノードをオーバークラウドに使用する準備ができました。

9.4. director への SSL/TLS アクセスの設定

director が SSL/TLS を使用する場合は、事前にプロビジョニングされたノードには、director の SSL/TLS 証明書の署名に使用する認証局ファイルが必要です。独自の認証局を使用する場合には、各オーバークラウドノード上で以下の操作を実施します。

手順

  1. 事前にプロビジョニングされた各ノードの /etc/pki/ca-trust/source/anchors/ ディレクトリーに認証局ファイルをコピーします。
  2. 各オーバークラウドノード上で以下のコマンドを実行します。

    [root@controller-0 ~]#  sudo update-ca-trust extract

この手順により、オーバークラウドノードが director のパブリック API に SSL/TLS 経由でアクセスできるようになります。

9.5. コントロールプレーンのネットワークの設定

事前にプロビジョニングされたオーバークラウドノードは、標準の HTTP 要求を使用して director からメタデータを取得します。これは、オーバークラウドノードでは以下のいずれかに対して L3 アクセスが必要であることを意味します。

  • director のコントロールプレーンネットワーク。これは、undercloud.conf ファイルの network_cidr パラメーターで定義するサブネットです。オーバークラウドノードには、このサブネットへの直接アクセスまたはルーティング可能なアクセスのいずれかが必要です。
  • undercloud.conf ファイルの undercloud_public_host パラメーターで指定する director のパブリック API エンドポイント。コントロールプレーンへの L3 ルートがない場合や、SSL/TLS 通信を使用する場合に、このオプションを利用することができます。パブリック API エンドポイントを使用するオーバークラウドノードの設定についての詳細は、「事前にプロビジョニングされたノードへの別ネットワークの使用」を参照してください。

director は、コントロールプレーンネットワークを使用して標準のオーバークラウドを管理、設定します。事前にプロビジョニングされたノードを使用したオーバークラウドの場合には、director と事前にプロビジョニングされたノード間の通信に対応するために、ネットワーク設定を変更しなければならない場合があります。

ネットワーク分離の使用

ネットワーク分離を使用することで、サービスをグループ化してコントロールプレーンなど特定のネットワークを使用することができます。『オーバークラウドの 高度なカスタマイズ』 には、ネットワーク分離の設定が複数記載されています。コントロールプレーン上のノードに特定の IP アドレスを定義することも可能です。ネットワーク分離や予測可能なノード配置方法の策定に関する詳しい情報は、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』の以下のセクションを参照してください。

注記

ネットワーク分離を使用する場合には、NIC テンプレートに、アンダークラウドのアクセスに使用する NIC を含めないようにしてください。これらのテンプレートにより NIC が再構成され、デプロイメント時に接続性や設定の問題が発生する可能性があります。

IP アドレスの割り当て

ネットワーク分離を使用しない場合には、単一のコントロールプレーンを使用して全サービスを管理することができます。これには、各ノード上のコントロールプレーンの NIC を手動で設定して、コントロールプレーンネットワークの範囲内の IP アドレスを使用するようにする必要があります。director のプロビジョニングネットワークをコントロールプレーンとして使用する場合には、選択したオーバークラウドの IP アドレスが、プロビジョニング (dhcp_start および dhcp_end) とイントロスペクション (inspection_iprange) 両方の DHCP 範囲外になるようにしてください。

標準のオーバークラウド作成中には、director は OpenStack Networking (neutron) ポートを作成し、プロビジョニング/コントロールプレーンネットワークのオーバークラウドノードに IP アドレスを自動的に割り当てます。ただし、これにより、各ノードに手動で設定する IP アドレスとは異なるアドレスを director が割り当ててしまう可能性があります。このような場合には、予測可能な IP アドレス割り当て方法を使用して、director がコントロールプレーン上で事前にプロビジョニングされた IP の割り当てを強制的に使用するようにしてください。

たとえば、予測可能な IP アドレス設定を実装するために、以下の IP アドレスを割り当てた環境ファイル ctlplane-assignments.yaml を使用することができます。

resource_registry:
  OS::TripleO::DeployedServer::ControlPlanePort: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/deployed-neutron-port.yaml

parameter_defaults:
  DeployedServerPortMap:
    controller-0-ctlplane:
      fixed_ips:
        - ip_address: 192.168.24.2
      subnets:
        - cidr: 192.168.24.0/24
      network:
        tags:
          192.168.24.0/24
    compute-0-ctlplane:
      fixed_ips:
        - ip_address: 192.168.24.3
      subnets:
        - cidr: 192.168.24.0/24
      network:
        tags:
          - 192.168.24.0/24

この例では、OS::TripleO::DeployedServer::ControlPlanePort リソースはパラメーターセットを director に渡して、事前にプロビジョニングされたノードの IP 割り当てを定義します。DeployedServerPortMap パラメーターを使用して、各オーバークラウドノードに対応する IP アドレスおよびサブネット CIDR を定義します。マッピングにより、以下の属性が定義されます。

  1. 割り当ての名前。形式は <node_hostname>-<network> です。ここで、<node_hostname> の値はノードの短縮ホスト名で、<network> はネットワークの小文字を使った名前です。たとえば、controller-0.example.com であれば controller-0-ctlplane となり、compute-0.example.com の場合は compute-0-ctlplane となります。
  2. 以下のパラメーターパターンを使用する IP 割り当て

    • fixed_ips/ip_address: コントロールプレーンの固定 IP アドレスを定義します。複数の IP アドレスを定義する場合には、複数の ip_address パラメーターを一覧で指定してください。
    • subnets/cidr: サブネットの CIDR 値を定義します。

本章のこの後のセクションで、作成された環境ファイル (ctlplane-assignments.yaml) を openstack overcloud deploy コマンドの一部として使用します。

9.6. 事前にプロビジョニングされたノードへの別ネットワークの使用

デフォルトでは、director はオーバークラウドのコントロールプレーンとしてプロビジョニングネットワークを使用します。ただし、このネットワークが分離されてルーティング不可能な場合には、ノードは設定中に director の内部 API と通信することができません。このような状況では、ノードに別のネットワークを定義して、パブリック API 経由で director と通信するように設定しなければならない場合があります。

このシナリオには、いくつかの要件があります。

  • オーバークラウドノードは、「コントロールプレーンのネットワークの設定」からの基本的なネットワーク設定に対応する必要があります。
  • パブリック API エンドポイントを使用できるように director 上で SSL/TLS を有効化する必要があります。詳しい情報は、「director の設定パラメーター」および「18章カスタム SSL/TLS 証明書の設定」を参照してください。
  • director 向けにアクセス可能な完全修飾ドメイン名 (FQDN) を定義する必要があります。この FQDN は、director にルーティング可能な IP アドレスを解決する必要があります。undercloud.conf ファイルの undercloud_public_host パラメーターを使用して、この FQDN を設定します。

本項に記載する例では、主要なシナリオとは異なる IP アドレスの割り当てを使用します。

表9.2 プロビジョニングネットワークの IP 割り当て
ノード名IP アドレスまたは FQDN

director (内部 API)

192.168.24.1 (プロビジョニングネットワークおよびコントロールプレーン)

director (パブリック API)

10.1.1.1 / director.example.com

オーバークラウドの仮想 IP

192.168.100.1

Controller 0

192.168.100.2

Compute 0

192.168.100.3

以下の項では、オーバークラウドノードに別のネットワークが必要な場合の追加の設定について説明します。

IP アドレスの割り当て

IP の割り当て方法は、「コントロールプレーンのネットワークの設定」に記載の手順と類似しています。ただし、コントロールプレーンはデプロイしたサーバーからルーティング可能ではないので、DeployedServerPortMap パラメーターを使用して、コントロールプレーンにアクセスする仮想 IP アドレスを含め、選択したオーバークラウドノードのサブネットから IP アドレスを割り当てる必要があります。以下の例は、「コントロールプレーンのネットワークの設定」 からの ctlplane-assignments.yaml 環境ファイルを修正したバージョンで、このネットワークアーキテクチャーに対応します。

resource_registry:
  OS::TripleO::DeployedServer::ControlPlanePort: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/deployed-neutron-port.yaml
  OS::TripleO::Network::Ports::ControlPlaneVipPort: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/deployed-neutron-port.yaml
  OS::TripleO::Network::Ports::RedisVipPort: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/network/ports/noop.yaml 1

parameter_defaults:
  NeutronPublicInterface: eth1
  EC2MetadataIp: 192.168.100.1 2
  ControlPlaneDefaultRoute: 192.168.100.1
  DeployedServerPortMap:
    control_virtual_ip:
      fixed_ips:
        - ip_address: 192.168.100.1
      subnets:
        - cidr: 24
    controller-0-ctlplane:
      fixed_ips:
        - ip_address: 192.168.100.2
      subnets:
        - cidr: 24
    compute-0-ctlplane:
      fixed_ips:
        - ip_address: 192.168.100.3
      subnets:
        - cidr: 24
1
RedisVipPort リソースは、network/ports/noop.yaml にマッピングされます。デフォルトの Redis 仮想 IP アドレスがコントロールプレーンから割り当てられているので、このマッピングが必要です。このような場合には、noop を使用して、このコントロールプレーンマッピングを無効化します。
2
EC2MetadataIpControlPlaneDefaultRoute パラメーターは、コントロールプレーンの仮想 IP アドレスの値に設定されます。デフォルトの NIC 設定テンプレートでは、これらのパラメーターが必須で、デプロイメント中に実行される検証に合格するには、ping 可能な IP アドレスを使用するように設定する必要があります。または、これらのパラメーターが必要ないように NIC 設定をカスタマイズします。

9.7. 事前にプロビジョニングされたノードのホスト名のマッピング

事前にプロビジョニングされたノードを設定する場合には、heat ベースのホスト名をそれらの実際のホスト名にマッピングして、ansible-playbook が解決されたホストに到達できるようにする必要があります。それらの値は、HostnameMap を使用してマッピングします。

手順

  1. 環境ファイル (たとえば hostname-map.yaml) を作成して、HostnameMap パラメーターとホスト名のマッピングを指定します。以下の構文を使用してください。

    parameter_defaults:
      HostnameMap:
        [HEAT HOSTNAME]: [ACTUAL HOSTNAME]
        [HEAT HOSTNAME]: [ACTUAL HOSTNAME]

    [HEAT HOSTNAME] は通常 [STACK NAME]-[ROLE]-[INDEX] の表記法に従います。

    parameter_defaults:
      HostnameMap:
        overcloud-controller-0: controller-00-rack01
        overcloud-controller-1: controller-01-rack02
        overcloud-controller-2: controller-02-rack03
        overcloud-novacompute-0: compute-00-rack01
        overcloud-novacompute-1: compute-01-rack01
        overcloud-novacompute-2: compute-02-rack01
  2. hostname-map.yaml ファイルを保存します。

9.8. 事前にプロビジョニングされたノード向けの Ceph Storage の設定

すでにデプロイされているノードに ceph-ansible を設定するには、アンダークラウドホストで以下の手順を実施します。

手順

  1. アンダークラウドホストで環境変数 OVERCLOUD_HOSTS を作成し、変数に Ceph クライアントとして使用するオーバークラウドホストの IP アドレスのスペース区切りリストを設定します。

    export OVERCLOUD_HOSTS="192.168.1.8 192.168.1.42"
  2. enable-ssh-admin.sh スクリプトを実行して、Ansible が Ceph クライアントの設定に使用することのできるオーバークラウドノードのユーザーを設定します。

    bash /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/scripts/enable-ssh-admin.sh

openstack overcloud deploy コマンドを実行すると、Ansible は OVERCLOUD_HOSTS 変数で Ceph クライアントとして定義したホストを設定します。

9.9. 事前にプロビジョニングされたノードを使用したオーバークラウドの作成

オーバークラウドのデプロイメントには、「デプロイメントコマンド」に記載された標準の CLI の方法を使用します。事前にプロビジョニングされたノードの場合は、デプロイメントコマンドに追加のオプションと、コア heat テンプレートコレクションからの環境ファイルが必要です。

  • --disable-validations: このオプションを使用して、事前にプロビジョニングされたインフラストラクチャーで使用しないサービスに対する基本的な CLI 検証を無効にします。これらの検証を無効にしないと、デプロイメントに失敗します。
  • environments/deployed-server-environment.yaml: 事前にプロビジョニングされたインフラストラクチャーを作成、設定するには、この環境ファイルを追加します。この環境ファイルは、OS::Nova::Server リソースを OS::Heat::DeployedServer リソースに置き換えます。

以下のコマンドは、事前にプロビジョニングされたアーキテクチャー固有の環境ファイルを使用したオーバークラウドデプロイメントコマンドの例です。

$ source ~/stackrc
(undercloud) $ openstack overcloud deploy \
  [other arguments] \
  --disable-validations \
  -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-environment.yaml \
  -e /home/stack/templates/hostname-map.yaml \
  --overcloud-ssh-user stack \
  --overcloud-ssh-key ~/.ssh/id_rsa \
  [OTHER OPTIONS]

--overcloud-ssh-user および --overcloud-ssh-key オプションは、設定ステージ中に各オーバークラウドノードに SSH 接続して、初期 tripleo-admin ユーザーを作成し、SSH キーを /home/tripleo-admin/.ssh/authorized_keys に挿入するのに使用します。SSH キーを挿入するには、--overcloud-ssh-user および --overcloud-ssh-key (~/.ssh/id_rsa がデフォルト) を使用して、初回 SSH 接続用の認証情報を指定します。--overcloud-ssh-key オプションで指定する秘密鍵の公開を制限するために、director は heat や Workflow サービス (mistral) などのどの API サービスにもこの鍵を渡さず、director の openstack overcloud deploy コマンドだけがこの鍵を使用して tripleo-admin ユーザーのアクセスを有効化します。

9.10. オーバークラウドデプロイメントの出力

オーバークラウドの作成が完了すると、オーバークラウドを設定するために実施された Ansible のプレイの概要が director により提示されます。

PLAY RECAP *************************************************************
overcloud-compute-0     : ok=160  changed=67   unreachable=0    failed=0
overcloud-controller-0  : ok=210  changed=93   unreachable=0    failed=0
undercloud              : ok=10   changed=7    unreachable=0    failed=0

Tuesday 15 October 2018  18:30:57 +1000 (0:00:00.107) 1:06:37.514 ******
========================================================================

director により、オーバークラウドへのアクセス情報も提供されます。

Ansible passed.
Overcloud configuration completed.
Overcloud Endpoint: http://192.168.24.113:5000
Overcloud Horizon Dashboard URL: http://192.168.24.113:80/dashboard
Overcloud rc file: /home/stack/overcloudrc
Overcloud Deployed

9.11. オーバークラウドへのアクセス

director は、アンダークラウドからオーバークラウドと対話するための設定を行い、認証をサポートするスクリプトを作成します。director は、このファイル overcloudrcstack ユーザーのホームディレクトリーに保存します。このファイルを使用するには、以下のコマンドを実行します。

(undercloud) $ source ~/overcloudrc

このコマンドにより、アンダークラウド CLI からオーバークラウドと対話するのに必要な環境変数が読み込まれます。コマンドプロンプトが変わり、オーバークラウドと対話していることが示されます。

(overcloud) $

アンダークラウドとの対話に戻るには、以下のコマンドを実行します。

(overcloud) $ source ~/stackrc
(undercloud) $

オーバークラウドの各ノードには、heat-admin ユーザーも含まれます。stack ユーザーには、各ノードに存在するこのユーザーに SSH 経由でアクセスすることができます。SSH 経由でノードにアクセスするには、アクセスするノードの IP アドレスを検索します。

(undercloud) $ openstack server list

次に、heat-admin ユーザーとノードの IP アドレスを使用して、ノードに接続します。

(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.24.23

9.12. 事前にプロビジョニングされたノードのスケーリング

事前にプロビジョニングされたノードをスケーリングするプロセスは、「15章オーバークラウドノードのスケーリング」に記載する標準のスケーリング手順と類似しています。ただし、事前にプロビジョニングされたノードを新たに追加するプロセスは異なります。これは、事前にプロビジョニングされたノードが OpenStack Bare Metal (ironic) および OpenStack Compute (nova) からの標準の登録および管理プロセスを使用しないためです。

事前にプロビジョニングされたノードのスケールアップ

事前にプロビジョニングされたノードでオーバークラウドをスケールアップする際には、各ノードで director のノード数に対応するようにオーケストレーションエージェントを設定する必要があります。

オーバークラウドノードをスケールアップするには、以下の操作を実施します。

  1. 「事前にプロビジョニングされたノードの要件」の説明に従って、事前にプロビジョニングされたノードを新たに準備します。
  2. ノードをスケールアップします。詳細は、「15章オーバークラウドノードのスケーリング」を参照してください。
  3. デプロイメントコマンドを実行した後に、director が新しいノードリソースを作成して設定を開始するまで待ちます。

事前にプロビジョニングされたノードのスケールダウン

事前にプロビジョニングされたノードを持つオーバークラウドをスケールダウンするには、「15章オーバークラウドノードのスケーリング」に記載するスケールダウン手順に従います。

ほとんどのスケーリング操作では、削除するノードの UUID 値を取得し、その値を openstack overcloud node delete コマンドに渡す必要があります。この UUID を取得するには、ロールを指定してリソースの一覧を表示します。

$ openstack stack resource list overcloud -c physical_resource_id -c stack_name -n5 --filter type=OS::TripleO::<RoleName>Server

<RoleName> を、スケールダウンするロールの名前に置き換えます。たとえば、ComputeDeployedServer ロールの場合には、以下のコマンドを実行します。

$ openstack stack resource list overcloud -c physical_resource_id -c stack_name -n5 --filter type=OS::TripleO::ComputeDeployedServerServer

コマンド出力の stack_name 列から、各ノードに関連付けられた UUID を確認します。stack_name には、heat リソースグループ内のノードインデックスの整数値が含まれます。

+------------------------------------+----------------------------------+
| physical_resource_id               | stack_name                       |
+------------------------------------+----------------------------------+
| 294d4e4d-66a6-4e4e-9a8b-           | overcloud-ComputeDeployedServer- |
| 03ec80beda41                       | no7yfgnh3z7e-1-ytfqdeclwvcg      |
| d8de016d-                          | overcloud-ComputeDeployedServer- |
| 8ff9-4f29-bc63-21884619abe5        | no7yfgnh3z7e-0-p4vb3meacxwn      |
| 8c59f7b1-2675-42a9-ae2c-           | overcloud-ComputeDeployedServer- |
| 2de4a066f2a9                       | no7yfgnh3z7e-2-mmmaayxqnf3o      |
+------------------------------------+----------------------------------+

stack_name 列のインデックス 0、1、または 2 は、heat リソースグループ内のノード順に対応します。physical_resource_id 列の該当する UUID 値を、openstack overcloud node delete コマンドに渡します。

スタックからオーバークラウドノードを削除したら、それらのノードの電源をオフにします。標準のデプロイメントでは、director のベアメタルサービスがこの機能を制御します。ただし、事前にプロビジョニングされたノードでは、これらのノードを手動でシャットダウンするか、物理システムごとに電源管理制御を使用する必要があります。スタックからノードを削除した後にノードの電源をオフにしないと、稼動状態が続き、オーバークラウド環境の一部として再接続されてしまう可能性があります。

削除したノードの電源をオフにした後に、それらのノードをベースオペレーティングシステムの構成に再プロビジョニングし、意図せずにオーバークラウドに加わらないようにします。

注記

オーバークラウドから以前に削除したノードは、再プロビジョニングしてベースオペレーティングシステムを新規インストールするまでは、再利用しないようにしてください。スケールダウンのプロセスでは、オーバークラウドスタックからノードを削除するだけで、パッケージはアンインストールされません。

9.13. 事前にプロビジョニングされたオーバークラウドの削除

事前にプロビジョニングされたノードを使用するオーバークラウド全体を削除するには、「オーバークラウドの削除」で標準のオーバークラウド削除手順を参照してください。オーバークラウドを削除した後に、全ノードの電源をオフにしてからベースオペレーティングシステムの構成に再プロビジョニングします。

注記

オーバークラウドから以前に削除したノードは、再プロビジョニングしてベースオペレーティングシステムを新規インストールするまでは、再利用しないようにしてください。削除のプロセスでは、オーバークラウドスタックを削除するだけで、パッケージはアンインストールされません。

9.14. 次のステップ

これで、事前にプロビジョニングされたノードを使用したオーバークラウドの作成が完了しました。作成後の機能については、「11章オーバークラウドのインストール後タスクの実施」を参照してください。

第10章 複数のオーバークラウドのデプロイ

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

1 つのアンダークラウドノードを使用して、複数のオーバークラウドをデプロイおよび管理することができます。それぞれのオーバークラウドは、スタックリソースを共有しない個別の heat スタックです。この構成は、アンダークラウドとオーバークラウドの比率が 1 : 1 の環境で、無視できない程度のオーバーヘッドが発生する場合に有用です。たとえば、エッジサイト、複数サイト、および複数製品にまたがる環境などです。

複数オーバークラウドのシナリオにおけるオーバークラウド環境は完全に独立し、source コマンドを使用して環境間の切り替えを行うことができます。ベアメタルのプロビジョニングに ironic を使用する場合には、すべてのオーバークラウドが同じプロビジョニングネットワーク上に存在している必要があります。同じプロビジョニングネットワークを使用することができない場合には、デプロイされたサーバー法を使用して、ルーティングされたネットワークで複数のオーバークラウドをデプロイすることができます。このシナリオでは、HostnameMap パラメーターの値が各オーバークラウドのスタック名と一致している必要があります。

以下のワークフローを使用して、基本的なプロセスについて説明します。

アンダークラウドのデプロイ
通常どおりにアンダークラウドをデプロイします。詳細は、??? を参照してください。
最初のオーバークラウドのデプロイ
通常どおりに最初のアンダークラウドをデプロイします。詳細は、???を参照してください。
追加のオーバークラウドのデプロイ
新しいオーバークラウド用に新たな環境ファイルのセットを作成します。デプロイメントコマンドを実行し、コアの heat テンプレートと共に新たな設定ファイルおよび新しい stack 名を指定します。

10.1. 追加のオーバークラウドのデプロイ

以下の例では、既存のオーバークラウドを overcloud-one としています。新たなオーバークラウド overcloud-two をデプロイするには、以下の手順を実施します。

前提条件

追加のオーバークラウドのデプロイを開始する前に、ご自分の環境に以下の構成が含まれるようにします。

  • 正常にデプロイされたアンダークラウドおよびオーバークラウド
  • 追加のオーバークラウドで利用可能なノード
  • それぞれのオーバークラウドが作成されるスタックで固有のネットワークを持つように、追加のオーバークラウド用のカスタムネットワーク

手順

  1. デプロイする追加のオーバークラウド用に、新たなディレクトリーを作成します。

    $ mkdir ~/overcloud-two
  2. 新しいディレクトリーにおいて、追加のオーバークラウドの要件に固有な新しい環境ファイルを作成し、該当するすべての環境ファイルを既存のオーバークラウドからコピーします。

    $ cp network-data.yaml ~/overcloud-two/network-data.yaml
    $ cp network-environment.yaml ~/overcloud-two/network-environment.yaml
  3. 新たなオーバークラウドの仕様に従って、環境ファイルを変更します。たとえば、既存のオーバークラウドの名前が overcloud-one で、network-data.yaml 環境ファイルで定義する VLAN を使用する場合、環境ファイルは以下のようになります。

    - name: InternalApi
      name_lower: internal_api_cloud_1
      service_net_map_replace: internal_api
      vip: true
      vlan: 20
      ip_subnet: '172.17.0.0/24'
      allocation_pools: [{'start': '172.17.0.4', 'end': '172.17.0.250'}]
      ipv6_subnet: 'fd00:fd00:fd00:2000::/64'
      ipv6_allocation_pools: [{'start': 'fd00:fd00:fd00:2000::10', 'end': 'fd00:fd00:fd00:2000:ffff:ffff:ffff:fffe'}]
      mtu: 1500
    - name: Storage
      ...

    新たなオーバークラウドは overcloud-two という名前で、異なる VLAN を使用します。~/overcloud-two/network-data.yaml 環境ファイルを編集し、各サブネット用の新たな VLAN ID を追加します。また、固有の name_lower 値を定義し、service_net_map_replace 属性を、置き換えるネットワークの名前に設定する必要があります。

    - name: InternalApi
      name_lower: internal_api_cloud_2
      service_net_map_replace: internal_api
      vip: true
      vlan: 21
      ip_subnet: '172.21.0.0/24'
      allocation_pools: [{'start': '172.21.0.4', 'end': '172.21.0.250'}]
      ipv6_subnet: 'fd00:fd00:fd00:2001::/64'
      ipv6_allocation_pools: [{'start': 'fd00:fd00:fd00:2001::10', 'end': 'fd00:fd00:fd00:2001:ffff:ffff:ffff:fffe'}]
      mtu: 1500
    - name: Storage
      ...
  4. ~/overcloud-two/network-environment.yaml ファイルの以下のパラメーターを変更します。

    • overcloud-two に固有の外部ネットワークが設定されるように、ExternalNetValueSpecs パラメーターの {'provider:physical_network'} 属性に固有の値を入力し、'provider:network_type' 属性でネットワーク種別を定義します。
    • オーバークラウドの外部アクセスが可能になるように、ExternalInterfaceDefaultRoute パラメーターを外部ネットワークのゲートウェイの IP アドレスに設定します。
    • オーバークラウドが DNS サーバーにアクセスできるように、DnsServers パラメーターを DNS サーバーの IP アドレスに設定します。

      parameter_defaults:
        ...
        ExternalNetValueSpecs: {'provider:physical_network': 'external_2', 'provider:network_type': 'flat'}
        ExternalInterfaceDefaultRoute: 10.0.10.1
        DnsServers:
          - 10.0.10.2
        ...
  5. openstack overcloud deploy コマンドを実行します。--templates オプションおよび --stack オプションを使用して、それぞれコアの heat テンプレートコレクションおよび新たな stack 名を指定します。また、~/overcloud-two ディレクトリーからの新規環境ファイルをすべて指定します。

    $ openstack overcloud deploy --templates \
        --stack overcloud-two \
        ...
        -n ~/overcloud-two/network-data.yaml \
        -e ~/overcloud-two/network-environment.yaml \
        -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \
        -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/net-single-nic-with-vlans.yaml \
        ...

それぞれのオーバークラウドには、固有の認証情報ファイルが設定されます。ここでの例では、デプロイメントプロセスにより overcloud-one 用に overcloud-onerc が、overcloud-two 用に overcloud-tworc が、それぞれ作成されます。いずれかのオーバークラウドに関する操作を行うには、source コマンドで適切な認証情報ファイルを読み込む必要があります。たとえば、source コマンドを使用して最初のオーバークラウドの認証情報を読み込むには、以下のコマンドを実行します。

$ source overcloud-onerc

10.2. 複数のオーバークラウドの管理

デプロイするそれぞれのオーバークラウドでは、同じコア heat テンプレートセット /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates が使用されます。非標準のコアテンプレートセットを使用すると、更新およびアップグレード時に問題が発生する可能性があるので、Red Hat では、これらのテンプレートを変更したり複製したりしないことを推奨します。

その代わりに、複数のオーバークラウドをデプロイまたは維持する際の管理を容易にするため、各クラウドに固有の環境ファイル用ディレクトリーを個別に作成します。各クラウドのデプロイコマンドを実行する際に、コア heat テンプレートと共に個別に作成したクラウド固有の環境ファイルを含めます。たとえば、アンダークラウドおよび 2 つのオーバークラウド用に以下のディレクトリーを作成します。

~stack/undercloud
アンダークラウドに固有の環境ファイルを保管します。
~stack/overcloud-one
最初のオーバークラウドに固有の環境ファイルを保管します。
~stack/overcloud-two
2 番目のオーバークラウドに固有の環境ファイルを保管します。

overcloud-one または overcloud-two をデプロイまたは再デプロイする場合には、--templates オプションでデプロイコマンドにコア heat テンプレートを追加し、続いてクラウド固有の環境ファイルディレクトリーからの追加環境ファイルをすべて指定します。

あるいは、バージョン管理システムにリポジトリーを作成し、デプロイメントごとにブランチを使用します。詳しい情報は、『 オーバークラウドの高度な カスタマイズ』の「カスタムのコア Heat テンプレート の使用」セクションを参照 してください。

利用可能なオーバークラウドプランの一覧を表示するには、以下のコマンドを使用します。

$ openstack overcloud plan list

現在デプロイされているオーバークラウドの一覧を表示するには、以下のコマンドを使用します。

$ openstack stack list

パート III. デプロイメント後操作

第11章 オーバークラウドのインストール後タスクの実施

本章では、オーバークラウドを作成したすぐ後に実施するタスクについて説明します。これらのタスクにより、オーバークラウドを使用可能な状態にすることができます。

11.1. オーバークラウドデプロイメントステータスの確認

オーバークラウドのデプロイメントステータスを確認するには、openstack overcloud status コマンドを使用します。このコマンドにより、すべてのデプロイメントステップの結果が返されます。

手順

  1. stackrc ファイルを取得します。

    $ source ~/stackrc
  2. デプロイメントステータスの確認コマンドを実行します。

    $ openstack overcloud status

    このコマンドの出力に、オーバークラウドのステータスが表示されます。

    +-----------+---------------------+---------------------+-------------------+
    | Plan Name |       Created       |       Updated       | Deployment Status |
    +-----------+---------------------+---------------------+-------------------+
    | overcloud | 2018-05-03 21:24:50 | 2018-05-03 21:27:59 |   DEPLOY_SUCCESS  |
    +-----------+---------------------+---------------------+-------------------+

    実際のオーバークラウドに別の名前が使用されている場合には、--plan 引数を使用してその名前のオーバークラウドを選択します。

    $ openstack overcloud status --plan my-deployment

11.2. 基本的なオーバークラウドフレーバーの作成

本ガイドの検証ステップは、インストール環境にフレーバーが含まれていることを前提としてます。まだ 1 つのフレーバーも作成していない場合には、以下の手順を実施して、さまざまなストレージおよび処理能力に対応する基本的なデフォルトフレーバーセットを作成してください。

手順

  1. source コマンドで overcloudrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  2. openstack flavor create コマンドを実行してフレーバーを作成します。以下のオプションを使用して、各フレーバーのハードウェア要件を指定します。

    --disk
    仮想マシンのボリュームのハードディスク容量を定義します。
    --ram
    仮想マシンに必要な RAM を定義します。
    --vcpus
    仮想マシンの仮想 CPU 数を定義します。
  3. デフォルトのオーバークラウドフレーバー作成の例を以下に示します。

    $ openstack flavor create m1.tiny --ram 512 --disk 0 --vcpus 1
    $ openstack flavor create m1.smaller --ram 1024 --disk 0 --vcpus 1
    $ openstack flavor create m1.small --ram 2048 --disk 10 --vcpus 1
    $ openstack flavor create m1.medium --ram 3072 --disk 10 --vcpus 2
    $ openstack flavor create m1.large --ram 8192 --disk 10 --vcpus 4
    $ openstack flavor create m1.xlarge --ram 8192 --disk 10 --vcpus 8
注記

openstack flavor create コマンドについての詳しい情報は、$ openstack flavor create --help で確認してください。

11.3. デフォルトのテナントネットワークの作成

仮想マシンが内部で通信できるように、オーバークラウドにはデフォルトのテナントネットワークが必要です。

手順

  1. source コマンドで overcloudrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  2. デフォルトのテナントネットワークを作成します。

    (overcloud) $ openstack network create default
  3. ネットワーク上にサブネットを作成します。

    (overcloud) $ openstack subnet create default --network default --gateway 172.20.1.1 --subnet-range 172.20.0.0/16
  4. 作成したネットワークを確認します。

    (overcloud) $ openstack network list
    +-----------------------+-------------+--------------------------------------+
    | id                    | name        | subnets                              |
    +-----------------------+-------------+--------------------------------------+
    | 95fadaa1-5dda-4777... | default     | 7e060813-35c5-462c-a56a-1c6f8f4f332f |
    +-----------------------+-------------+--------------------------------------+

これらのコマンドにより、default という名前の基本的な Networking サービス (neutron) ネットワークが作成されます。オーバークラウドは内部 DHCP メカニズムを使用して、このネットワークから仮想マシンに IP アドレスを自動的に割り当てます。

11.4. デフォルトの Floating IP ネットワークの作成

オーバークラウドの外部から仮想マシンにアクセスするためには、仮想マシンに Floating IP アドレスを提供する外部ネットワークを設定する必要があります。

ここでは、2 つの手順例を示します。実際の環境に最も適した例を使用してください。

  • ネイティブ VLAN (フラットネットワーク)
  • 非ネイティブ VLAN (VLAN ネットワーク)

これらの例の両方で、public という名前のネットワークを作成します。オーバークラウドでは、デフォルトの Floating IP プールにこの特定の名前が必要です。この名前は、「オーバークラウドの検証」の検証テストでも重要となります。

デフォルトでは、OpenStack Networking (neutron) は、datacentre という物理ネットワーク名をホストノード上の br-ex ブリッジにマッピングします。public オーバークラウドネットワークを物理ネットワーク datacentre に接続し、これにより br-ex ブリッジを通じてゲートウェイが提供されます。

前提条件

  • Floating IP ネットワーク向けの専用インターフェースまたはネイティブ VLAN

手順

  1. source コマンドで overcloudrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  2. public ネットワークを作成します。

    • ネイティブ VLAN 接続用に flat ネットワークを作成します。

      (overcloud) $ openstack network create public --external --provider-network-type flat --provider-physical-network datacentre
    • 非ネイティブ VLAN 接続用に vlan ネットワークを作成します。

      (overcloud) $ openstack network create public --external --provider-network-type vlan --provider-physical-network datacentre --provider-segment 201

      --provider-segment オプションを使用して、使用する VLAN を定義します。この例では、VLAN は 201 です。

  3. Floating IP アドレスの割り当てプールを使用してサブネットを作成します。以下の例では、IP 範囲は 10.1.1.51 から 10.1.1.250 までです。

    (overcloud) $ openstack subnet create public --network public --dhcp --allocation-pool start=10.1.1.51,end=10.1.1.250 --gateway 10.1.1.1 --subnet-range 10.1.1.0/24

    この範囲が、外部ネットワークの他の IP アドレスと競合しないようにしてください。

11.5. デフォルトのプロバイダーネットワークの作成

プロバイダーネットワークは別の種別の外部ネットワーク接続で、トラフィックをプライベートテナントネットワークから外部インフラストラクチャーネットワークにルーティングします。プロバイダーネットワークは Floating IP ネットワークと類似していますが、プライベートネットワークをプロバイダーネットワークに接続するのに、論理ルーターが使用されます。

ここでは、2 つの手順例を示します。実際の環境に最も適した例を使用してください。

  • ネイティブ VLAN (フラットネットワーク)
  • 非ネイティブ VLAN (VLAN ネットワーク)

デフォルトでは、OpenStack Networking (neutron) は、datacentre という物理ネットワーク名をホストノード上の br-ex ブリッジにマッピングします。public オーバークラウドネットワークを物理ネットワーク datacentre に接続し、これにより br-ex ブリッジを通じてゲートウェイが提供されます。

手順

  1. source コマンドで overcloudrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  2. provider ネットワークを作成します。

    • ネイティブ VLAN 接続用に flat ネットワークを作成します。

      (overcloud) $ openstack network create provider --external --provider-network-type flat --provider-physical-network datacentre --share
    • 非ネイティブ VLAN 接続用に vlan ネットワークを作成します。

      (overcloud) $ openstack network create provider --external --provider-network-type vlan --provider-physical-network datacentre --provider-segment 201 --share

      --provider-segment オプションを使用して、使用する VLAN を定義します。この例では、VLAN は 201 です。

    例に示すこれらのコマンドにより、共有ネットワークが作成されます。テナントだけが新しいネットワークにアクセスするように、--share を指定する代わりにテナントを指定することも可能です。

    プロバイダーネットワークを外部としてマークした場合には、そのネットワークでポートを作成できるのはオペレーターのみとなります。

  3. provider ネットワークにサブネットを追加して、DHCP サービスを提供します。

    (overcloud) $ openstack subnet create provider-subnet --network  provider --dhcp --allocation-pool start=10.9.101.50,end=10.9.101.100 --gateway 10.9.101.254 --subnet-range 10.9.101.0/24
  4. 他のネットワークがプロバイダーネットワークを通じてトラフィックをルーティングできるように、ルーターを作成します。

    (overcloud) $ openstack router create external
  5. ルーターの外部ゲートウェイを provider ネットワークに設定します。

    (overcloud) $ openstack router set --external-gateway provider external
  6. このルーターに他のネットワークを接続します。たとえば、以下のコマンドを実行してサブネット subnet1 をルーターに割り当てます。

    (overcloud) $ openstack router add subnet external subnet1

    このコマンドにより、subnet1 がルーティングテーブルに追加され、subnet1 を使用する仮想マシンからのトラフィックをプロバイダーネットワークにルーティングできるようになります。

11.6. 新たなブリッジマッピングの作成

Floating IP ネットワークは、以下の前提条件アクションを完了していれば、br-ex だけでなく任意のブリッジを使用することができます。

  • ネットワーク環境ファイルで、NeutronExternalNetworkBridge パラメーターを "''" に設定する。
  • デプロイ時に追加のブリッジをマッピングする。たとえば、br-floating という新規ブリッジを floating という物理ネットワークにマッピングするには、環境ファイルに NeutronBridgeMappings パラメーターを追加します。

    parameter_defaults:
      NeutronBridgeMappings: "datacentre:br-ex,floating:br-floating"

この手法により、オーバークラウドの作成後に独立した外部ネットワークを作成することができます。たとえば、floating 物理ネットワークにマッピングする Floating IP ネットワークを作成するには、以下のコマンドを実行します。

$ source ~/overcloudrc
(overcloud) $ openstack network create public --external --provider-physical-network floating --provider-network-type vlan --provider-segment 105
(overcloud) $ openstack subnet create public --network public --dhcp --allocation-pool start=10.1.2.51,end=10.1.2.250 --gateway 10.1.2.1 --subnet-range 10.1.2.0/24

11.7. オーバークラウドの検証

オーバークラウドは、OpenStack Integration Test Suite (tempest) ツールセットを使用して、一連の統合テストを行います。本項では、統合テストを実施するための準備について説明します。OpenStack Integration Test Suite の使用方法に関する詳細は、『 OpenStack Integration Test Suite Guide 』を参照してください。

Integration Test Suite では、テストを成功させるために、いくつかのインストール後手順が必要になります。

手順

  1. アンダークラウドからこのテストを実行する場合は、アンダークラウドのホストがオーバークラウドの内部 API ネットワークにアクセスできるようにします。たとえば、172.16.0.201/24 のアドレスを使用して内部 API ネットワーク (ID: 201) にアクセスするにはアンダークラウドホストに一時的な VLAN を追加します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ sudo ovs-vsctl add-port br-ctlplane vlan201 tag=201 -- set interface vlan201 type=internal
    (undercloud) $ sudo ip l set dev vlan201 up; sudo ip addr add 172.16.0.201/24 dev vlan201
  2. OpenStack Integration Test Suite を実行する前に、heat_stack_owner ロールがオーバークラウドに存在するようにします。

    $ source ~/overcloudrc
    (overcloud) $ openstack role list
    +----------------------------------+------------------+
    | ID                               | Name             |
    +----------------------------------+------------------+
    | 6226a517204846d1a26d15aae1af208f | swiftoperator    |
    | 7c7eb03955e545dd86bbfeb73692738b | heat_stack_owner |
    +----------------------------------+------------------+
  3. このロールが存在しない場合は、作成します。

    (overcloud) $ openstack role create heat_stack_owner
  4. 『OpenStack Integration Test Suite Guide』の説明に従って、統合テストを実施します。
  5. 検証が完了したら、オーバークラウドの内部 API への一時接続を削除します。この例では、以下のコマンドを使用して、以前にアンダークラウドで作成した VLAN を削除します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ sudo ovs-vsctl del-port vlan201

11.8. オーバークラウドの削除防止

heat に含まれるコードベースのデフォルトポリシーセットは、/var/lib/config-data/puppet-generated/heat/etc/heat/policy.json ファイルを作成してカスタムルールを追加することでオーバーライドすることができます。オーバークラウドを削除するのに必要な権限をすべてのユーザーについて無効にするには、以下のポリシーを追加します。

{"stacks:delete": "rule:deny_everybody"}

これにより heat クライアントによるオーバークラウドの削除が阻止されます。オーバークラウドを削除できるように設定するには、カスタムポリシーを削除して /var/lib/config-data/puppet-generated/heat/etc/heat/policy.json を保存します。

第12章 基本的なオーバークラウド管理タスクの実施

本章では、オーバークラウドのライフサイクル期間中に実行しなければならない可能性がある、基本的なタスクについて説明します。

12.1. コンテナー化されたサービスの管理

Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) では、アンダークラウドおよびオーバークラウドノード上のコンテナー内でサービスが実行されます。特定の状況では、1 つのホスト上で個別のサービスを制御する必要がある場合があります。本項では、コンテナー化されたサービスを管理するためにノード上で実行することのできる、一般的なコマンドについて説明します。

コンテナーとイメージの一覧表示

実行中のコンテナーを一覧表示するには、以下のコマンドを実行します。

$ sudo podman ps

コマンド出力に停止中またはエラーの発生したコンテナーを含めるには、コマンドに --all オプションを追加します。

$ sudo podman ps --all

コンテナーイメージを一覧表示するには、以下のコマンドを実行します。

$ sudo podman images

コンテナーの属性の確認

コンテナーまたはコンテナーイメージのプロパティーを表示するには、podman inspect コマンドを使用します。たとえば、keystone コンテナーを検査するには、以下のコマンドを実行します。

$ sudo podman inspect keystone

Systemd サービスを使用したコンテナーの管理

以前のバージョンの OpenStack Platform では、コンテナーは Docker およびそのデーモンで管理されていました。OpenStack Platform 15 では、Systemd サービスインターフェースでコンテナーのライフサイクルが管理されます。それぞれのコンテナーはサービスであり、Systemd コマンドを実行して各コンテナーに関する特定の操作を実施します。

注記

Systemd は再起動ポリシーを適用するため、Podman CLI を使用してコンテナーを停止、起動、および再起動することは推奨されません。その代わりに、Systemd サービスコマンドを使用してください。

コンテナーのステータスを確認するには、systemctl status コマンドを実行します。

$ sudo systemctl status tripleo_keystone
● tripleo_keystone.service - keystone container
   Loaded: loaded (/etc/systemd/system/tripleo_keystone.service; enabled; vendor preset: disabled)
   Active: active (running) since Fri 2019-02-15 23:53:18 UTC; 2 days ago
 Main PID: 29012 (podman)
   CGroup: /system.slice/tripleo_keystone.service
           └─29012 /usr/bin/podman start -a keystone

コンテナーを停止するには、systemctl stop コマンドを実行します。

$ sudo systemctl stop tripleo_keystone

コンテナーを起動するには、systemctl start コマンドを実行します。

$ sudo systemctl start tripleo_keystone

コンテナーを再起動するには、systemctl restart コマンドを実行します。

$ sudo systemctl restart tripleo_keystone

コンテナーステータスを監視するデーモンはないので、以下の状況では Systemd はほとんどのコンテナーを自動的に再起動します。

  • podman stop コマンドの実行など、明瞭な終了コードまたはシグナル
  • 起動後に podman コンテナーがクラッシュするなど、不明瞭な終了コード
  • 不明瞭なシグナル
  • コンテナーの起動に 1 分 30 秒以上かかった場合のタイムアウト

Systemd サービスに関する詳しい情報は、systemd.service のドキュメント を参照してください。

注記

コンテナー内のサービス設定ファイルに加えた変更は、コンテナーの再起動後には元に戻ります。これは、コンテナーがノードのローカルファイルシステム上の /var/lib/config-data/puppet-generated/ にあるファイルに基づいてサービス設定を再生成するためです。たとえば、keystone コンテナー内の /etc/keystone/keystone.conf を編集してコンテナーを再起動すると、そのコンテナーはノードのローカルシステム上にある /var/lib/config-data/puppet-generated/keystone/etc/keystone/keystone.conf を使用して設定を再生成します。再起動前にコンテナー内で加えられた変更は、この設定によって上書きされます。

Systemd タイマーを使用した podman コンテナーの監視

Systemd タイマーインターフェースは、コンテナーのヘルスチェックを管理します。各コンテナーのタイマーがサービスユニットを実行し、そのユニットがヘルスチェックスクリプトを実行します。

すべての OpenStack Platform コンテナーのタイマーを一覧表示するには、systemctl list-timers コマンドを実行し、出力を tripleo が含まれる行に限定します。

$ sudo systemctl list-timers | grep tripleo
Mon 2019-02-18 20:18:30 UTC  1s left       Mon 2019-02-18 20:17:26 UTC  1min 2s ago  tripleo_nova_metadata_healthcheck.timer            tripleo_nova_metadata_healthcheck.service
Mon 2019-02-18 20:18:33 UTC  4s left       Mon 2019-02-18 20:17:03 UTC  1min 25s ago tripleo_mistral_engine_healthcheck.timer           tripleo_mistral_engine_healthcheck.service
Mon 2019-02-18 20:18:34 UTC  5s left       Mon 2019-02-18 20:17:23 UTC  1min 5s ago  tripleo_keystone_healthcheck.timer                 tripleo_keystone_healthcheck.service
Mon 2019-02-18 20:18:35 UTC  6s left       Mon 2019-02-18 20:17:13 UTC  1min 15s ago tripleo_memcached_healthcheck.timer                tripleo_memcached_healthcheck.service
(...)

特定のコンテナータイマーのステータスを確認するには、healthcheck サービスに対して systemctl status コマンドを実行します。

$ sudo systemctl status tripleo_keystone_healthcheck.service
● tripleo_keystone_healthcheck.service - keystone healthcheck
   Loaded: loaded (/etc/systemd/system/tripleo_keystone_healthcheck.service; disabled; vendor preset: disabled)
   Active: inactive (dead) since Mon 2019-02-18 20:22:46 UTC; 22s ago
  Process: 115581 ExecStart=/usr/bin/podman exec keystone /openstack/healthcheck (code=exited, status=0/SUCCESS)
 Main PID: 115581 (code=exited, status=0/SUCCESS)

Feb 18 20:22:46 undercloud.localdomain systemd[1]: Starting keystone healthcheck...
Feb 18 20:22:46 undercloud.localdomain podman[115581]: {"versions": {"values": [{"status": "stable", "updated": "2019-01-22T00:00:00Z", "..."}]}]}}
Feb 18 20:22:46 undercloud.localdomain podman[115581]: 300 192.168.24.1:35357 0.012 seconds
Feb 18 20:22:46 undercloud.localdomain systemd[1]: Started keystone healthcheck.

コンテナータイマーを停止、起動、再起動、およびコンテナータイマーのステータスを表示するには、.timer Systemd リソースに対して該当する systemctl コマンドを実行します。たとえば、tripleo_keystone_healthcheck.timer リソースのステータスを確認するには、以下のコマンドを実行します。

$ sudo systemctl status tripleo_keystone_healthcheck.timer
● tripleo_keystone_healthcheck.timer - keystone container healthcheck
   Loaded: loaded (/etc/systemd/system/tripleo_keystone_healthcheck.timer; enabled; vendor preset: disabled)
   Active: active (waiting) since Fri 2019-02-15 23:53:18 UTC; 2 days ago

healthcheck サービスは無効だが、そのサービスのタイマーが存在し有効になっている場合には、チェックは現在タイムアウトしているが、タイマーに従って実行されることを意味します。チェックを手動で開始することもできます。

注記

podman ps コマンドは、コンテナーのヘルスステータスを表示しません。

コンテナーログの確認

OpenStack Platform 16 では、新たなロギングディレクトリー /var/log/containers/stdout が導入されています。ここには、すべてのコンテナーの標準出力 (stdout) と標準エラー (stderr) が、コンテナーごとに 1 つのファイルに統合されて保存されます。

paunch および container-puppet.py スクリプトは、出力を /var/log/containers/stdout ディレクトリーにプッシュするように podman コンテナーを設定します。これにより、container-puppet-* コンテナー等の削除されたコンテナーを含め、すべてのログのコレクションが作成されます。

また、ホストはこのディレクトリーにログローテーションを適用し、大きな容量のファイルがディスク容量を消費する問題を防ぎます。

コンテナーが置き換えられた場合には、新しいコンテナーは同じログファイルにログを出力します。podman はコンテナー ID ではなくコンテナー名を使用するためです。

podman logs コマンドを使用して、コンテナー化されたサービスのログを確認することもできます。たとえば、keystone コンテナーのログを確認するには、以下のコマンドを実行します。

$ sudo podman logs keystone

コンテナーへのアクセス

コンテナー化されたサービスのシェルに入るには、podman exec コマンドを使用して /bin/bash を起動します。たとえば、keystone コンテナーのシェルに入るには、以下のコマンドを実行します。

$ sudo podman exec -it keystone /bin/bash

root ユーザーとして keystone コンテナーのシェルに入るには、以下のコマンドを実行します。

$ sudo podman exec --user 0 -it <NAME OR ID> /bin/bash

コンテナーから出るには、以下のコマンドを実行します。

# exit

12.2. オーバークラウド環境の変更

オーバークラウドを変更して、新たな機能を追加したり、既存の操作を変更したりすることができます。オーバークラウドを変更するには、カスタムの環境ファイルと heat テンプレートに変更を加えて、最初に作成したオーバークラウドから openstack overcloud deploy コマンドをもう 1 度実行します。たとえば、「デプロイメントコマンド」に記載の手順を使用してオーバークラウドを作成した場合には、以下のコマンドを再度実行します。

$ source ~/stackrc
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \
  -e ~/templates/node-info.yaml \
  -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \
  -e ~/templates/network-environment.yaml \
  -e ~/templates/storage-environment.yaml \
  --ntp-server pool.ntp.org

director は heat 内の overcloud スタックを確認してから、環境ファイルと heat テンプレートのあるスタックで各アイテムを更新します。director はオーバークラウドを再度作成せずに、既存のオーバークラウドに変更を加えます。

重要

カスタム環境ファイルからパラメーターを削除しても、パラメーター値はデフォルト設定に戻りません。/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates のコア heat テンプレートコレクションからデフォルト値を特定し、カスタム環境ファイルでその値を手動で設定する必要があります。

新規環境ファイルを追加する場合には、`-e` オプションを使用して openstack overcloud deploy コマンドにそのファイルを追加します。以下に例を示します。

$ source ~/stackrc
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \
  -e ~/templates/new-environment.yaml \
  -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \
  -e ~/templates/network-environment.yaml \
  -e ~/templates/storage-environment.yaml \
  -e ~/templates/node-info.yaml \
  --ntp-server pool.ntp.org

このコマンドにより、環境ファイルからの新規パラメーターやリソースがスタックに追加されます。

重要

オーバークラウドの設定に手動で変更を加えることは推奨されません。director によりこれらの変更が後で上書きされてしまう可能性があるためです。

12.3. オーバークラウドへの仮想マシンのインポート

既存の OpenStack 環境からご自分の Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) 環境に仮想マシンを移行することができます。

手順

  1. 既存の OpenStack 環境において、実行中のサーバーのスナップショットを作成して新規イメージを作成し、そのイメージをダウンロードします。

    $ openstack server image create instance_name --name image_name
    $ openstack image save image_name --file exported_vm.qcow2
  2. エクスポートしたイメージをアンダークラウドノードにコピーします。

    $ scp exported_vm.qcow2 stack@192.168.0.2:~/.
  3. アンダークラウドに stack ユーザーとしてログインします。
  4. source コマンドで overcloudrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  5. エクスポートしたイメージをオーバークラウドにアップロードします。

    (overcloud) $ openstack image create imported_image --file exported_vm.qcow2 --disk-format qcow2 --container-format bare
  6. 新規インスタンスを起動します。

    (overcloud) $ openstack server create  imported_instance --key-name default --flavor m1.demo --image imported_image --nic net-id=net_id
重要

これらのコマンドにより、各仮想マシンのディスクが既存の OpenStack 環境から新たな Red Hat OpenStack Platform にコピーされます。QCOW スナップショットでは、元の階層化システムが失われます。

このプロファイルにより、コンピュートノードからすべてのインスタンスが移行されます。インスタンスのダウンタイムなしにノードでメンテナンスを実行できるようになります。コンピュートノードを有効な状態に戻すには、以下のコマンドを実行します。

$ source ~/overcloudrc
(overcloud) $ openstack compute service set [hostname] nova-compute --enable

12.4. 動的インベントリースクリプトの実行

director を使用すると、Ansible ベースの自動化をご自分の Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) 環境で実行することができます。director は、tripleo-ansible-inventory コマンドを使用して、環境内にノードの動的インベントリーを生成します。

手順

  1. ノードの動的インベントリーを表示するには、stackrc を読み込んだ後に tripleo-ansible-inventory コマンドを実行します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ tripleo-ansible-inventory --list

    --list オプションを使用すると、全ホストの詳細が返されます。このコマンドにより、動的インベントリーが JSON 形式で出力されます。

    {"overcloud": {"children": ["controller", "compute"], "vars": {"ansible_ssh_user": "heat-admin"}}, "controller": ["192.168.24.2"], "undercloud": {"hosts": ["localhost"], "vars": {"overcloud_horizon_url": "http://192.168.24.4:80/dashboard", "overcloud_admin_password": "abcdefghijklm12345678", "ansible_connection": "local"}}, "compute": ["192.168.24.3"]}
  2. お使いの環境で Ansible のプレイブックを実行するには、ansible コマンドを実行し、-i オプションを使用して動的インベントリーツールの完全パスを追加します。以下に例を示します。

    (undercloud) $ ansible [HOSTS] -i /bin/tripleo-ansible-inventory [OTHER OPTIONS]
    • [HOSTS] を使用するホストの種別に置き換えてください。

      • 全コントローラーノードの場合には controller
      • 全コンピュートノードの場合には compute
      • オーバークラウドの全子ノードの場合には overcloud(たとえば、コントローラー ノードおよび コンピュート ノードの場合)
      • アンダークラウドの場合には undercloud
      • 全ノードの場合には "*"
    • [OTHER OPTIONS] を追加の Ansible オプションに置き換えてください。

      • ホストキーの確認を省略するには、--ssh-extra-args='-o StrictHostKeyChecking=no' オプションを使用します。
      • Ansible の自動化を実行する SSH ユーザーを変更するには、-u [USER] オプションを使用します。オーバークラウドのデフォルトの SSH ユーザーは、動的インベントリーの ansible_ssh_user パラメーターで自動的に定義されます。-u オプションは、このパラメーターより優先されます。
      • 特定の Ansible モジュールを使用するには、-m [MODULE] オプションを使用します。デフォルトは command で Linux コマンドを実行します。
      • 選択したモジュールの引数を定義するには、-a [MODULE_ARGS] オプションを使用します。
重要

オーバークラウドのカスタム Ansible 自動化は、標準のオーバークラウドスタックの一部ではありません。この後に openstack overcloud deploy コマンドを実行すると、オーバークラウドノード上の OpenStack Platform サービスに対する Ansible ベースの設定を上書きする可能性があります。

12.5. オーバークラウドの削除

オーバークラウドを削除するには、以下の手順を実施します。

  1. 既存のオーバークラウドを削除します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ openstack overcloud delete overcloud
  2. openstack stack list コマンドの出力にオーバークラウドが表示されなくなったことを確認します。

    (undercloud) $ openstack stack list

    削除には、数分かかります。

  3. 削除が完了したら、デプロイメントシナリオの標準ステップに従って、オーバークラウドを再度作成します。

第13章 Ansible を使用したオーバークラウドの設定

Ansible は、オーバークラウドの設定を適用する主要な方法です。本章では、オーバークラウドの Ansible 設定を操作する方法について説明します。

director は Ansible Playbook を自動生成しますが、Ansible の構文を十分に理解しておくと役立ちます。Ansible の使用についての詳細は、Ansible のドキュメント を参照してください。

注記

Ansible でもロールの概念を使用します。これは、OpenStack Platform director のロールとは異なります。Ansible のロール は再利用可能な Playbook のコンポーネントを形成しますが、director のロールには OpenStack サービスのノード種別へのマッピングが含まれます。

13.1. Ansible ベースのオーバークラウド設定 (config-download)

director は、config-download 機能を使用してオーバークラウドを設定します。director は、OpenStack Orchestration サービス (heat) および OpenStack Workflow サービス (mistral) と共に config-download を使用してソフトウェア設定を生成し、その設定を各オーバークラウドノードに適用します。heat は SoftwareDeployment リソースから全デプロイメントデータを作成して、オーバークラウドのインストールと設定を行いますが、設定の適用は一切行いません。heat は、heat API から設定データの提供のみを行います。director がスタックを作成する場合には、mistral ワークフローが heat API に対して設定データ取得のクエリーを実行し、Ansible Playbook のセットを生成してオーバークラウドに適用します。

結果として、openstack overcloud deploy コマンドを実行すると、以下のプロセスが実行されます。

  • director は openstack-tripleo-heat-templates を元に新たなデプロイメントプランを作成し、プランをカスタマイズするための環境ファイルおよびパラメーターをすべて追加します。
  • director は heat を使用してデプロイメントプランを翻訳し、オーバークラウドスタックとすべての子リソースを作成します。これには、OpenStack Bare Metal サービス (ironic) を使用したノードのプロビジョニングも含まれます。
  • heat はデプロイメントプランからソフトウェア設定も作成します。director はこのソフトウェア設定から Ansible Playbook をコンパイルします。
  • director は、特に Ansible SSH アクセス用としてオーバークラウドノードに一時ユーザー (tripleo-admin) を生成します。
  • director は heat ソフトウェア設定をダウンロードし、heat の出力を使用して Ansible Playbook のセットを生成します。
  • director は、ansible-playbook を使用してオーバークラウドノードに Ansible Playbook を適用します。

13.2. config-download の作業ディレクトリー

director により、config-download プロセス用に Ansible Playbook のセットが生成されます。これらの Playbook は /var/lib/mistral/ 内の作業ディレクトリーに保管されます。このディレクトリーには、オーバークラウドの名前が付けられます。したがって、デフォルトでは overcloud です。

作業ディレクトリーには、各オーバークラウドロールの名前が付けられた複数のサブディレクトリーが存在します。これらのサブディレクトリーには、オーバークラウドロールのノードの設定に関連するすべてのタスクが含まれます。さらに、これらのサブディレクトリーには、特定のノードの名前が付けられたサブディレクトリーが存在します。これらのサブディレクトリーには、オーバークラウドロールのタスクに適用するノード固有の変数が含まれます。したがって、作業ディレクトリー内のオーバークラウドロールは、以下のような構成になります。

─ /var/lib/mistral/overcloud
  |
  ├── Controller
  │   ├── overcloud-controller-0
  |   ├── overcloud-controller-1
  │   └── overcloud-controller-2
  ├── Compute
  │   ├── overcloud-compute-0
  |   ├── overcloud-compute-1
  │   └── overcloud-compute-2
  ...

それぞれの作業ディレクトリーは、各デプロイメント操作後の変更を記録するローカルの Git リポジトリーです。ローカル Git リポジトリーを使用して、各デプロイメント間の設定変更を追跡します。

13.3. config-download の作業ディレクトリーへのアクセスの有効化

/var/lib/mistral/ にある作業ディレクトリー内の全ファイルの所有者は、OpenStack Workflow サービス (mistral) コンテナーの mistral ユーザーです。アンダークラウドの stack ユーザーに、このディレクトリー内の全ファイルへのアクセス権限を付与することができます。この設定は、ディレクトリー内の特定操作を実施するのに役立ちます。

手順

  1. アンダークラウドの stack ユーザーに /var/lib/mistral ディレクトリーのファイルへのアクセス権限を付与するには、setfacl コマンドを使用します。

    $ sudo setfacl -R -m u:stack:rwx /var/lib/mistral

    このコマンドを実行しても、mistral ユーザーのディレクトリーへのアクセス権限は維持されます。

13.4. config-download ログの確認

config-download プロセス中、Ansible によりアンダークラウド内の config-download の作業ディレクトリーにログファイルが作成されます。

手順

  1. less コマンドを使用して、config-download の作業ディレクトリー内のログを表示します。以下の例では、overcloud 作業ディレクトリーが使われています。

    $ less /var/lib/mistral/overcloud/ansible.log

13.5. プロビジョニングプロセスと設定プロセスの分離

openstack overcloud deploy コマンドは、heat ベースのプロビジョニングプロセスの後に、config-download 設定プロセスを実行します。各プロセスを個別に実行するコマンドを実行することもできます。

手順

  1. stackrc ファイルを取得します。

    $ source ~/stackrc
  2. --stack-only オプションを指定してデプロイメントコマンドを実行します。オーバークラウドに必要なすべての環境ファイルを追加します。

    $ openstack overcloud deploy \
      --templates \
      -e environment-file1.yaml \
      -e environment-file2.yaml \
      ...
      --stack-only
  3. プロビジョニングプロセスが完了するまで待ちます。
  4. tripleo-admin ユーザーによるアンダークラウドからオーバークラウドへの SSH アクセスを有効にします。config-download プロセスでは、tripleo-admin ユーザーを使用して Ansible ベースの設定を実施します。

    $ openstack overcloud admin authorize
  5. --config-download-only オプションを指定してデプロイメントコマンドを実行します。オーバークラウドに必要なすべての環境ファイルを追加します。

    $ openstack overcloud deploy \
      --templates \
      -e environment-file1.yaml \
      -e environment-file2.yaml \
      ...
      --config-download-only
  6. 設定プロセスが完了するまで待ちます。

13.6. 手動での config-download の実行

/var/lib/mistral/overcloud 内の作業ディレクトリーには、ansible-playbook と直接対話するために必要な Playbook とスクリプトが含まれています。以下の手順では、これらのファイルとの対話方法について説明します。

手順

  1. Ansible Playbook のディレクトリーに移動します。

    $ cd /var/lib/mistral/overcloud/
  2. ansible-playbook-command.sh コマンドを実行して、デプロイメントを再現します。

    $ ./ansible-playbook-command.sh

    このスクリプトには追加の Ansible 引数を渡すことができ、それらの引数は、そのまま ansible-playbook コマンドに渡されます。つまり、チェックモード (--check)、ホストの限定 (--limit)、変数のオーバーライド (-e) など、他の Ansible 機能を使用することができます。以下に例を示します。

    $ ./ansible-playbook-command.sh --limit Controller
  3. 作業ディレクトリーには、オーバークラウドの設定を実行する deploy_steps_playbook.yaml という名前の Playbook が含まれています。この Playbook を表示するには、以下のコマンドを実行します。

    $ less deploy_steps_playbook.yaml

    Playbook は、作業ディレクトリーに含まれているさまざまなタスクファイルを使用します。タスクファイルには、OpenStack Platform の全ロールに共通するものと、特定の OpenStack Platform ロールおよびサーバー固有のものがあります。

  4. 作業ディレクトリーには、オーバークラウドの roles_data ファイルで定義する各ロールに対応するサブディレクトリーも含まれます。以下に例を示します。

    $ ls Controller/

    各 OpenStack Platform ロールにディレクトリーには、そのロール種別の個々のサーバー用のサブディレクトリーも含まれます。これらのディレクトリーには、コンポーザブルロールのホスト名の形式を使用します。

    $ ls Controller/overcloud-controller-0
  5. Ansible のタスクはタグ付けされます。タグの全一覧を確認するには、ansible-playbook で CLI の引数 --list-tags を使用します。

    $ ansible-playbook -i tripleo-ansible-inventory.yaml --list-tags deploy_steps_playbook.yaml

    次に、ansible-playbook-command.sh スクリプトで --tags--skip-tags--start-at-task のいずれかを使用して、タグ付けした設定を適用します。

    $ ./ansible-playbook-command.sh --tags overcloud
  6. config-download を使用して Ceph を設定する際に、Ansible は config-download external_deploy_steps_tasks Playbook 内から ceph-ansible を実行します。config-download を手動で実行する場合、2 回目の Ansible の実行では ssh_args 引数は継承されません。この実行に Ansible 環境変数を渡すには、heat 環境ファイルを使用します。以下に例を示します。

    parameter_defaults:
      CephAnsibleEnvironmentVariables:
        ANSIBLE_HOST_KEY_CHECKING: 'False'
        ANSIBLE_PRIVATE_KEY_FILE: '/home/stack/.ssh/id_rsa'
警告

--tags--skip-tags--start-at-task などの ansible-playbook CLI 引数を使用する場合には、デプロイメントの設定は、間違った順序で実行したり適用したりしないでください。これらの CLI 引数は、以前に失敗したタスクを再度実行する場合や、初回のデプロイメントを繰り返す場合に便利な方法です。ただし、デプロイメントの一貫性を保証するには、deploy_steps_playbook.yaml の全タスクを順番どおりに実行する必要があります。

13.7. 作業ディレクトリーでの Git 操作の実施

config-download の作業ディレクトリーは、ローカルの Git リポジトリーです。デプロイメント操作を実行するたびに、director は該当する変更に関する Git コミットを作業ディレクトリーに追加します。Git 操作を実施して、さまざまなステージでのデプロイメント設定を表示したり、異なるデプロイメント間で設定を比較したりすることができます。

作業ディレクトリーには制限がある点に注意してください。たとえば、Git を使用して config-download の作業ディレクトリーを前のバージョンに戻しても、この操作は作業ディレクトリー内の設定にしか影響を及ぼしません。したがって、以下の設定は影響を受けません。

  • オーバークラウドデータスキーマ: 作業ディレクトリーのソフトウェア設定の前のバージョンを適用しても、データ移行およびスキーマ変更は取り消されません。
  • オーバークラウドのハードウェアレイアウト: 以前のソフトウェア設定に戻しても、スケールアップ/ダウン等のオーバークラウドハードウェアに関する変更は取り消されません。
  • heat スタック: 作業ディレクトリーを前のバージョンに戻しても、heat スタックに保管された設定は影響を受けません。heat スタックは新たなバージョンのソフトウェア設定を作成し、それがオーバークラウドに適用されます。オーバークラウドに永続的な変更を加えるには、openstack overcloud deploy コマンドを再度実行する前に、オーバークラウドスタックに適用する環境ファイルを変更します。

config-download の作業ディレクトリー内の異なるコミットを比較するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. オーバークラウドに関する config-download の作業ディレクトリーに移動します。この例の作業ディレクトリーは、overcloud という名前のオーバークラウド用です。

    $ cd /var/lib/mistral/overcloud
  2. git log コマンドを実行して、作業ディレクトリー内のコミットの一覧を表示します。ログの出力に日付が表示されるようにフォーマットを設定することもできます。

    $ git log --format=format:"%h%x09%cd%x09"
    a7e9063 Mon Oct 8 21:17:52 2018 +1000
    dfb9d12 Fri Oct 5 20:23:44 2018 +1000
    d0a910b Wed Oct 3 19:30:16 2018 +1000
    ...

    デフォルトでは、最新のコミットから順に表示されます。

  3. 2 つのコミットのハッシュに対して git diff コマンドを実行し、デプロイメント間の違いをすべて表示します。

    $ git diff a7e9063 dfb9d12

13.8. 手動での config-download ファイルの作成

標準のワークフローとは別に、専用の config-download ファイルを生成することができます。たとえば、個別に設定を適用できるように、openstack overcloud deploy コマンドに --stack-only オプションを設定して、オーバークラウド heat スタックを生成することができます。専用の config-download ファイルを手動で作成するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. config-download ファイルを生成します。

    $ openstack overcloud config download \
      --name overcloud \
      --config-dir ~/config-download
    • --name は、Ansible ファイルのエクスポートに使用するオーバークラウドの名前です。
    • --config-dir は、config-download ファイルを保存する場所です。
  2. config-download ファイルが含まれるディレクトリーに移動します。

    $ cd ~/config-download
  3. 静的なインベントリーファイルを生成します。

    $ tripleo-ansible-inventory \
      --ansible_ssh_user heat-admin \
      --static-yaml-inventory inventory.yaml

config-download ファイルおよび静的なインベントリーファイルを使用して、設定を実施します。デプロイメント用の Playbook を実行するには、ansible-playbook コマンドを実行します。

$ ansible-playbook \
  -i inventory.yaml \
  --private-key ~/.ssh/id_rsa \
  --become \
  ~/config-download/deploy_steps_playbook.yaml

この設定から手動で overcloudrc ファイルを生成するには、以下のコマンドを実行します。

$ openstack action execution run \
  --save-result \
  --run-sync \
  tripleo.deployment.overcloudrc \
  '{"container":"overcloud"}' \
  | jq -r '.["result"]["overcloudrc.v3"]' > overcloudrc.v3

13.9. config-download の主要ファイル

config-download の作業ディレクトリー内の主要なファイルを以下に示します。

Ansible の設定および実行

config-download の作業ディレクトリー内の以下のファイルは、Ansible を設定/実行するための専用ファイルです。

ansible.cfg
ansible-playbook 実行時に使用する設定ファイル
ansible.log
最後に実行した ansible-playbook に関するログファイル
ansible-errors.json
デプロイメントエラーが含まれる JSON 構造のファイル
ansible-playbook-command.sh
最後のデプロイメント操作の ansible-playbook コマンドを再実行するための実行可能スクリプト
ssh_private_key
Ansible がオーバークラウドノードにアクセスする際に使用する SSH 秘密鍵
tripleo-ansible-inventory.yaml
すべてのオーバークラウドノードのホストおよび変数が含まれる Ansible インベントリーファイル
overcloud-config.tar.gz
作業ディレクトリーのアーカイブ

Playbook

以下のファイルは、config-download の作業ディレクトリー内の Playbook です。

deploy_steps_playbook.yaml
デプロイメントのメインステップ。この Playbook により、オーバークラウド設定の主要な操作が実施されます。
pre_upgrade_rolling_steps_playbook.yaml
メジャーアップグレードのための事前アップグレードステップ
upgrade_steps_playbook.yaml
メジャーアップグレードのステップ
post_upgrade_steps_playbook.yaml
メジャーアップグレードに関するアップグレード後ステップ
update_steps_playbook.yaml
マイナーアップデートのステップ
fast_forward_upgrade_playbook.yaml
Fast Forward Upgrade のタスク。Red Hat OpenStack Platform のロングライフバージョンから次のロングライフバージョンにアップグレードする場合にのみ、この Playbook 使用します。

13.10. config-download のタグ

Playbook では、オーバークラウドに適用されるタスクを管理するのにタグ付けされたタスクを使用します。ansible-playbook CLI の引数 --tags または --skip-tags でタグを使用して、実行するタスクを管理します。デフォルトで有効なタグに関する情報を、以下の一覧に示します。

facts
ファクト収集操作
common_roles
すべてのノードに共通な Ansible ロール
overcloud
オーバークラウドデプロイメント用のすべてのプレイ
pre_deploy_steps
deploy_steps の操作の前に実施されるデプロイメント
host_prep_steps
ホスト準備のステップ
deploy_steps
デプロイメントのステップ
post_deploy_steps
deploy_steps の操作の後に実施される手順
external
すべての外部デプロイメントタスク
external_deploy_steps
アンダークラウドでのみ実行される外部デプロイメントタスク

13.11. config-download のデプロイメントステップ

deploy_steps_playbook.yaml Playbook により、オーバークラウドが設定されます。この Playbook により、オーバークラウドデプロイメントプランに基づき完全なオーバークラウドをデプロイするのに必要なすべてのソフトウェア設定が適用されます。

本項では、この Playbook で使用されるさまざまな Ansible プレイの概要について説明します。本項のプレイと同じ名前が、Playbook 内で使用され ansible-playbook の出力にも表示されます。本項では、それぞれのプレイに設定される Ansible タグについても説明します。

Gather facts from undercloud

アンダークラウドノードからファクトを収集します。

タグ: facts

Gather facts from overcloud

オーバークラウドノードからファクトを収集します。

タグ: facts

Load global variables

global_vars.yaml からすべての変数を読み込みます。

タグ: always

Common roles for TripleO servers

共通の Ansible ロールをすべてのオーバークラウドノードに適用します。これには、ブートストラップパッケージをインストールする tripleo-bootstrap および ssh の既知のホストを設定する tripleo-ssh-known-hosts が含まれます。

タグ: common_roles

Overcloud deploy step tasks for step 0

deploy_steps_tasks テンプレートインターフェースからのタスクを適用します。

タグ: overclouddeploy_steps

Server deployments

ネットワーク設定や hieradata 等の設定に、サーバー固有の heat デプロイメントを適用します。これには、NetworkDeployment、<Role>Deployment、<Role>AllNodesDeployment 等が含まれます。

タグ: overcloudpre_deploy_steps

Host prep steps

host_prep_steps テンプレートインターフェースからのタスクを適用します。

タグ: overcloudhost_prep_steps

External deployment step [1,2,3,4,5]

external_deploy_steps_tasks テンプレートインターフェースからのタスクを適用します。Ansible は、アンダークラウドノードに対してのみこれらのタスクを実行します。

タグ: externalexternal_deploy_steps

Overcloud deploy step tasks for [1,2,3,4,5]

deploy_steps_tasks テンプレートインターフェースからのタスクを適用します。

タグ: overclouddeploy_steps

Overcloud common deploy step tasks [1,2,3,4,5]

各ステップで実施される共通タスクを適用します。これには、puppet ホストの設定、container-puppet.py、および paunch (コンテナー設定) が含まれます。

タグ: overclouddeploy_steps

Server Post Deployments

5 ステップのデプロイメントプロセス後に実施される設定に、サーバー固有の heat デプロイメントを適用します。

タグ: overcloudpost_deploy_steps

External deployment Post Deploy tasks

external_post_deploy_steps_tasks テンプレートインターフェースからのタスクを適用します。Ansible は、アンダークラウドノードに対してのみこれらのタスクを実行します。

タグ: externalexternal_deploy_steps

13.12. 次のステップ

これで、通常のオーバークラウドの操作を続行できるようになりました。

第14章 検証フレームワークの使用

重要

この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト用途にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

Red Hat OpenStack Platform には検証フレームワークが含まれており、アンダークラウドおよびオーバークラウドの要件と機能の検証に使用することができます。フレームワークには、以下に示す 2 つの検証種別が含まれます。

  • Ansible ベースの手動検証: openstack tripleo validator コマンドセットを使用して実行します。
  • インフライトの自動検証: デプロイメントプロセス中に実行されます。

14.1. Ansible ベースの検証

Red Hat OpenStack Platform director のインストール時に、director は openstack-tripleo-validations パッケージから Playbook のセットもインストールします。それぞれの Playbook には、特定のシステム要件のテストおよびグループが含まれます。このグループを使用して、OpenStack Platform のライフサイクル中の特定のステージにタグ付けされた一連のテストを実施することができます。

no-op
no-op (操作なし) タスクを実行してワークフローが正しく機能していることを確かめる検証。これらの検証は、アンダークラウドとオーバークラウドの両方で実行されます。
prep
アンダークラウドノードのハードウェア設定を確認する検証。openstack undercloud install コマンドを実行する前に、これらの検証を実行します。
openshift-on-openstack
環境が要件を満たし OpenShift on OpenStack をデプロイできることを確認する検証
pre-introspection
Ironic Inspector を使用するノードのイントロスペクション前に実行する検証
pre-deployment
openstack overcloud deploy コマンドの前に実行する検証
post-deployment
オーバークラウドのデプロイメントが完了した後に実行する検証
pre-upgrade
アップグレード前の OpenStack デプロイメントに対する検証
post-upgrade
アップグレード後の OpenStack デプロイメントに対する検証

14.2. 検証の一覧表示

利用可能なさまざまな種別の検証を一覧表示するには、openstack tripleo validator list コマンドを実行します。

手順

  1. source コマンドで stackrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/stackrc
  2. openstack tripleo validator list コマンドを実行します。

    • すべての検証を一覧表示するには、オプションを設定せずにコマンドを実行します。

      $ openstack tripleo validator list
    • グループの検証を一覧表示するには、--group オプションを指定してコマンドを実行します。

      $ openstack tripleo validator list --group prep
注記

オプションの全一覧については、openstack tripleo validator list --help を実行してください。

14.3. 検証の実行

検証または検証グループを実行するには、openstack tripleo validator run コマンドを使用します。オプションの全一覧を表示するには、openstack tripleo validator run --help コマンドを使用します。

手順

  1. stackrc ファイルを取得します。

    $ source ~/stackrc
  2. openstack tripleo validator run コマンドを入力します。

    • 単一の検証を実行するには、--validation オプションで検証の名前を指定してコマンドを入力します。たとえば、アンダークラウドのメモリー要件を確認するには、--validation undercloud-ram を入力します。

      $ openstack tripleo validator run --validation undercloud-ram
    • グループのすべての検証を実行するには、--group オプションを指定してコマンドを入力します。

      $ openstack tripleo validator run --group prep

14.4. インフライト検証

Red Hat OpenStack Platform では、コンポーザブルサービスのテンプレートに、インフライト検証が含まれています。インフライト検証により、オーバークラウドのデプロイメントプロセスの主要ステップにおけるサービスの動作ステータスを確認します。

インフライト検証は、デプロイメントプロセスの一部として自動的に実行されます。一部のインフライト検証は、openstack-tripleo-validations パッケージからのロールも使用します。

第15章 オーバークラウドノードのスケーリング

警告

オーバークラウドからノードを削除する場合は、openstack server delete を使用しないでください。本項の手順にしたがって、適切にノードの削除/置き換えを行ってください。

オーバークラウドの作成後にノードを追加または削除する場合は、オーバークラウドを更新する必要があります。

以下の表を使用して、各ノード種別のスケーリングに対するサポートを判断してください。

表15.1 各ノード種別のスケーリングサポート

ノード種別

スケールアップ

スケールダウン

備考

コントローラー

非対応

非対応

16章コントローラーノードの置き換え」に記載の手順を使用して、コントローラーノードを置き換えることができます。

コンピュート

対応

対応

 

Ceph Storage ノード

対応

非対応

オーバークラウドを最初に作成する際に Ceph Storage ノードを 1 つ以上設定する必要があります。

オブジェクトストレージノード

対応

対応

 
重要

オーバークラウドをスケーリングする前に、空き領域が少なくとも 10 GB あることを確認してください。この空き領域は、イメージの変換やノードのプロビジョニングプロセスのキャッシュに使用されます。

15.1. オーバークラウドへのノード追加

director のノードプールにさらにノードを追加するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. 登録する新規ノードの詳細を記載した新しい JSON ファイル (newnodes.json) を作成します。

    {
      "nodes":[
        {
            "mac":[
                "dd:dd:dd:dd:dd:dd"
            ],
            "cpu":"4",
            "memory":"6144",
            "disk":"40",
            "arch":"x86_64",
            "pm_type":"ipmi",
            "pm_user":"admin",
            "pm_password":"p@55w0rd!",
            "pm_addr":"192.168.24.207"
        },
        {
            "mac":[
                "ee:ee:ee:ee:ee:ee"
            ],
            "cpu":"4",
            "memory":"6144",
            "disk":"40",
            "arch":"x86_64",
            "pm_type":"ipmi",
            "pm_user":"admin",
            "pm_password":"p@55w0rd!",
            "pm_addr":"192.168.24.208"
        }
      ]
    }
  2. 以下のコマンドを実行して、新規ノードを登録します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ openstack overcloud node import newnodes.json
  3. 新規ノードを追加したら、各新規ノードごとに以下のコマンドを実行してイントロスペクションプロセスを起動します。

    (undercloud) $ openstack baremetal node manage [NODE UUID]
    (undercloud) $ openstack overcloud node introspect [NODE UUID] --provide

    このプロセスにより、ノードのハードウェアプロパティーの検出とベンチマークが実行されます。

  4. ノードのイメージプロパティーを設定します。

    (undercloud) $ openstack overcloud node configure [NODE UUID]

15.2. ロールのノード数の追加

特定ロールのオーバークラウドノード (たとえばコンピュートノード) をスケーリングするには、以下の手順を実施します。

手順

  1. それぞれの新規ノードを希望するロールにタグ付けします。たとえば、ノードをコンピュートロールにタグ付けするには、以下のコマンドを実行します。

    (undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:compute,boot_option:local' [NODE UUID]
  2. オーバークラウドをスケーリングするには、ノード数が含まれる環境ファイルを編集してオーバークラウドを再デプロイする必要があります。たとえば、オーバークラウドをコンピュートノード 5 台にスケーリングするには、ComputeCount パラメーターを編集します。

    parameter_defaults:
      ...
      ComputeCount: 5
      ...
  3. 更新したファイルを使用して、デプロイメントコマンドを再度実行します。以下の例では、このファイルは node-info.yaml という名前です。

    (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates -e /home/stack/templates/node-info.yaml [OTHER_OPTIONS]

    最初に作成したオーバークラウドからの環境ファイルおよびオプションをすべて追加するようにしてください。これには、コンピュート以外のノードに対する同様のスケジューリングパラメーターが含まれます。

  4. デプロイメント操作が完了するまで待ちます。

15.3. コンピュートノードの削除

オーバークラウドからコンピュートノードを削除する必要がある状況が出てくる可能性があります。たとえば、問題のあるコンピュートノードを置き換える必要がある場合などです。

重要

オーバークラウドからコンピュートノードを削除する前に、負荷をそのノードから別のコンピュートノードに移行してください。詳しくは、「 コンピュートノード間の仮想マシンインスタンスの移行 」を参照してください。

前提条件

  • Placement サービスパッケージ python3-osc-placement がアンダークラウドにインストールされていること。

手順

  1. source コマンドでオーバークラウド設定を読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  2. オーバークラウド上で削除するノードの Compute サービスを無効にし、ノードで新規インスタンスがスケジューリングされないようにします。

    (overcloud) $ openstack compute service list
    (overcloud) $ openstack compute service set <hostname> nova-compute --disable
    ヒント

    --disable-reason オプションを使用して、サービスを無効にする理由についての簡単な説明を追加します。これは、Compute サービスを後で再デプロイする場合に役立ちます。

  3. source コマンドでアンダークラウド設定を読み込みます。

    (overcloud) $ source ~/stackrc
  4. オーバークラウドスタックの UUID を特定します。

    (undercloud) $ openstack stack list
  5. 削除するノードの UUID またはホスト名を特定します。

    (undercloud) $ openstack server list
  6. デプロイメントに該当するすべての環境ファイルを含め、--update-plan-only オプションを指定してオーバークラウドを再デプロイします。

    $ openstack overcloud deploy --update-plan-only \
      --templates  \
      -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \
      -e /home/stack/templates/network-environment.yaml \
      -e /home/stack/templates/storage-environment.yaml \
      -e /home/stack/templates/rhel-registration/environment-rhel-registration.yaml \
      [-e |...]
  7. スタックからノードを削除します。

    $ openstack overcloud node delete --stack [STACK_UUID] --templates -e [ENVIRONMENT_FILE] [NODE1_UUID] [NODE2_UUID] [NODE3_UUID]

    [node] をノードの UUID またはホスト名に置き換えてください。

    重要

    UUID とホスト名を混在させて使用しないでください。UUID だけ、またはホスト名だけを使用します。

  8. openstack overcloud node delete コマンドが完全に終了したことを確認します。

    (undercloud) $ openstack stack list

    削除の操作が完了すると、オーバークラウド スタックのステータスは UPDATE_COMPLETE と表示されます。

    重要

    同じホスト名を使用して Compute サービスを再デプロイする場合は、再デプロイするノードに既存のサービスレコードを使用する必要があります。その場合は、この手順の残りのステップを省略して、「同じホスト名を使用した Compute サービスの再デプロイ」の手順に進んでください。

  9. ノードから Compute サービスを削除します。

    (undercloud) $ source ~/overcloudrc
    (overcloud) $ openstack compute service list
    (overcloud) $ openstack compute service delete <service-id>
  10. ノードから Open vSwitch エージェントを削除します。

    (overcloud) $ openstack network agent list
    (overcloud) $ openstack network agent delete <openvswitch-agent-id>
  11. 削除した Compute サービスを、Placement サービスのリソースプロバイダーから除外します。

    (overcloud) $ openstack resource provider list
    (overcloud) $ openstack resource provider delete <uuid>
  12. ノード数が含まれる環境ファイルの ComputeCount パラメーターを減らします。このファイルは、通常 node-info.yaml という名前です。たとえば、ノードを 2 つ削除する場合、ノード数を 5 から 3 に減らします。

    parameter_defaults:
      ...
      ComputeCount: 3
      ...

    ノード数を減らすと、openstack overcloud deploy を実行しても director は新規ノードをプロビジョニングしません。

オーバークラウドからノードを削除して、別の目的でそのノードを再度プロビジョニングすることができます。

同じホスト名を使用した Compute サービスの再デプロイ

無効にした Compute サービスを再デプロイするには、同じホスト名を持つコンピュートノードを再デプロイした後に、Compute サービスを再度有効にします。

手順

  1. 削除した Compute サービスを、Placement サービスのリソースプロバイダーから除外します。

    (undercloud) $ source ~/overcloudrc
    (overcloud) $ openstack resource provider list
    (overcloud) $ openstack resource provider delete <uuid>
  2. Compute サービスのステータスを確認します。

    (overcloud) $ openstack compute service list --long
    ...
    | ID | Binary       | Host                  | Zone  | Status   | State | Updated At                 | Disabled Reason      |
    | 80 | nova-compute | compute-1.localdomain | nova  | disabled | up    | 2018-07-13T14:35:04.000000 | gets re-provisioned |
    ...
  3. 再デプロイしたコンピュートノードのサービスの状態が up に変わったら、サービスを再度有効にします。

    (overcloud) $ openstack compute service set compute-1.localdomain nova-compute --enable

15.4. Ceph Storage ノードの置き換え

director を使用して、director で作成したクラスター内の Ceph Storage ノードを置き換えることができます。詳しい情報は、『 コンテナー化された Red Hat Ceph を持つオーバークラウドのデプロイ 』を参照してください。

15.5. オブジェクトストレージノードの置き換え

本項の手順で、クラスターの整合性に影響を与えずにオブジェクトストレージノードを置き換える方法を説明します。以下の例では、3 台のノードで構成されるオブジェクトストレージクラスターで、overcloud-objectstorage-1 ノードを置き換えます。この手順の目的は、ノードを 1 台追加し、その後 overcloud-objectstorage-1 ノードを削除することです。overcloud-objectstorage-1 ノードが新しいノードに置き換えられます。

手順

  1. ObjectStorageCount パラメーターを使用してオブジェクトストレージ数を増やします。このパラメーターは、通常ノード数を指定する環境ファイルの node-info.yaml に含まれています。

    parameter_defaults:
      ObjectStorageCount: 4

    ObjectStorageCount パラメーターで、環境内のオブジェクトストレージノードの数を定義します。今回の例では、オブジェクトストレージノードの数を 3 から 4 にスケーリングします。

  2. 更新した ObjectStorageCount パラメーターを使用して、デプロイメントコマンドを実行します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates -e node-info.yaml ENVIRONMENT_FILES
  3. デプロイメントコマンドの実行が完了すると、オーバークラウドには追加のオブジェクトストレージノードが含まれるようになります。
  4. 新しいノードにデータを複製します。ノードを削除する前に (ここでは overcloud-objectstorage-1)、複製のパスが新規ノードで完了するのを待ちます。/var/log/swift/swift.log ファイルで複製パスの進捗を確認することができます。パスが完了すると、Object Storage サービスは以下の例のようなエントリーをログに残します。

    Mar 29 08:49:05 localhost object-server: Object replication complete.
    Mar 29 08:49:11 localhost container-server: Replication run OVER
    Mar 29 08:49:13 localhost account-server: Replication run OVER
  5. リングから不要になったノードを削除するには、ObjectStorageCount パラメーターの数を減らして不要になったノードを削除します。この例では、ObjectStorageCount パラメーターを 3 に減らします。

    parameter_defaults:
      ObjectStorageCount: 3
  6. 新規環境ファイル (remove-object-node.yaml) を作成します。このファイルでオブジェクトストレージノードを特定し、そのノードを削除します。以下の内容では overcloud-objectstorage-1 の削除を指定します。

    parameter_defaults:
      ObjectStorageRemovalPolicies:
        [{'resource_list': ['1']}]
  7. デプロイメントコマンドに node-info.yaml ファイルと remove-object-node.yaml ファイルの両方を含めます。

    (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates -e node-info.yaml ENVIRONMENT_FILES -e remove-object-node.yaml

director は、オーバークラウドからオブジェクトストレージノードを削除して、オーバークラウド上の残りのノードを更新し、ノードの削除に対応します。

重要

オーバークラウドの初回作成時に使用した環境ファイルおよびオプションをすべて含めます。これには、コンピュート以外のノードに対する同様のスケジューリングパラメーターが含まれます。

15.6. ノードのブラックリスト登録

オーバークラウドノードがデプロイメントの更新を受け取らないように除外することができます。これは、新規ノードをスケーリングする場合に、既存のノードがコア heat テンプレートコレクションから更新されたパラメーターセットやリソースを受け取らないように除外するのに役立ちます。つまり、ブラックリストに登録されているノードは、スタック操作の影響を受けなくなります。

ブラックリストを作成するには、環境ファイルの DeploymentServerBlacklist パラメーターを使います。

ブラックリストの設定

DeploymentServerBlacklist パラメーターは、サーバー名のリストです。新たな環境ファイルを作成するか、既存のカスタム環境ファイルにパラメーター値を追加して、ファイルをデプロイメントコマンドに渡します。

parameter_defaults:
  DeploymentServerBlacklist:
    - overcloud-compute-0
    - overcloud-compute-1
    - overcloud-compute-2
注記

パラメーター値のサーバー名には、実際のサーバーホスト名ではなく、OpenStack Orchestation (heat) で定義されている名前を使用します。

openstack overcloud deploy コマンドで、この環境ファイルを指定します。

$ source ~/stackrc
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \
  -e server-blacklist.yaml \
  [OTHER OPTIONS]

heat はリスト内のサーバーをすべてブラックリストし、heat デプロイメントの更新を受け取らないようにします。スタック操作が完了した後には、ブラックリストに登録されたサーバーは以前の状態のままとなります。操作中に os-collect-config エージェントの電源をオフにしたり、停止したりすることもできます。

警告
  • ノードをブラックリストに登録する場合には、注意が必要です。ブラックリストを有効にした状態で要求された変更を適用する方法を十分に理解していない限り、ブラックリストは使用しないでください。ブラックリスト機能を使用すると、スタックがハングアップしたり、オーバークラウドが誤って設定されたりする場合があります。たとえば、クラスター設定の変更が Pacemaker クラスターの全メンバーに適用される場合、この変更の間に Pacemaker クラスターのメンバーをブラックリストに登録すると、クラスターが機能しなくなることがあります。
  • サーバーをブラックリストに追加すると、そのサーバーをブラックリストから削除するまでは、それらのノードにはさらなる変更は適用されません。これには、更新、アップグレード、スケールアップ、スケールダウン、およびノードの置き換えが含まれます。たとえば、新規コンピュートノードを使用してオーバークラウドをスケールアウトする際に既存のコンピュートノードをブラックリストに登録すると、ブラックリストに登録したノードには /etc/hosts および /etc/ssh/ssh_known_hosts に加えられた情報が反映されません。これにより、移行先ホストによっては、ライブマイグレーションが失敗する可能性があります。コンピュートノードのブラックリスト登録が解除される次回のオーバークラウドデプロイメント時に、これらのノードは /etc/hosts および /etc/ssh/ssh_known_hosts に加えられた情報で更新されます。

ブラックリストのクリア

その後のスタック操作のためにブラックリストをクリアするには、DeploymentServerBlacklist を編集して空の配列を使用します。

parameter_defaults:
  DeploymentServerBlacklist: []
警告

DeploymentServerBlacklist パラメーターを削除しないでください。パラメーターを削除すると、オーバークラウドのデプロイメントには、前回保存された値が使用されます。

第16章 コントローラーノードの置き換え

特定の状況では、高可用性クラスター内のコントローラーノードに障害が発生することがあります。その場合は、そのコントローラーノードをクラスターから削除して新しいコントローラーノードに置き換える必要があります。

以下のシナリオの手順を実施して、コントローラーノードを置き換えます。コントローラーノードを置き換えるプロセスでは、openstack overcloud deploy コマンドを実行し、コントローラーノードを置き換えるリクエストでオーバークラウドを更新します。

重要

以下の手順は、高可用性環境にのみ適用されます。コントローラーノード 1 台の場合には、この手順は使用しないでください。

16.1. コントローラー置き換えの準備

オーバークラウドのコントローラーノードを置き換える前に、Red Hat OpenStack Platform 環境の現在の状態をチェックしておくことが重要です。このチェックをしておくと、コントローラーの置き換えプロセス中に複雑な事態が発生するのを防ぐことができます。以下の事前チェックリストを使用して、コントローラーノードの置き換えを実行しても安全かどうかを確認してください。チェックのためのコマンドはすべてアンダークラウドで実行します。

手順

  1. アンダークラウドで、overcloud スタックの現在の状態をチェックします。

    $ source stackrc
    (undercloud) $ openstack stack list --nested

    overcloud スタックと後続の子スタックは、CREATE_COMPLETE または UPDATE_COMPLETE のステータスである必要があります。

  2. データベースクライアントツールをインストールします。

    (undercloud) $ sudo dnf -y install mariadb
  3. root ユーザーのデータベースへのアクセス権限を設定します。

    (undercloud) $ sudo cp /var/lib/config-data/puppet-generated/mysql/root/.my.cnf /root/.
  4. アンダークラウドデータベースのバックアップを実行します。

    (undercloud) $ mkdir /home/stack/backup
    (undercloud) $ sudo mysqldump --all-databases --quick --single-transaction | gzip > /home/stack/backup/dump_db_undercloud.sql.gz
  5. アンダークラウドに、新規ノードプロビジョニング時のイメージのキャッシュと変換に対応できる 10 GB の空きストレージ領域があることを確認します。

    (undercloud) $ df -h
  6. コントローラーノードで実行中の Pacemaker の状態をチェックします。たとえば、実行中のコントローラーノードの IP アドレスが 192.168.0.47 の場合には、以下のコマンドで Pacemaker のステータスを表示します。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 'sudo pcs status'

    この出力には、既存のノードで動作中のサービスおよび障害の発生しているノードで停止しているサービスがすべて表示されます。

  7. オーバークラウド MariaDB クラスターの各ノードで以下のパラメーターをチェックします。

    • wsrep_local_state_comment: Synced
    • wsrep_cluster_size: 2

      実行中のコントローラーノードで以下のコマンドを使用して、パラメーターをチェックします。以下の例では、コントローラーノードの IP アドレスは、それぞれ 192.168.0.47 と 192.168.0.46 です。

      (undercloud) $ for i in 192.168.24.6 192.168.24.7 ; do echo "*** $i ***" ; ssh heat-admin@$i "sudo podman exec \$(sudo podman ps --filter name=galera-bundle -q) mysql -e \"SHOW STATUS LIKE 'wsrep_local_state_comment'; SHOW STATUS LIKE 'wsrep_cluster_size';\""; done
  8. RabbitMQ のステータスをチェックします。たとえば、実行中のコントローラーノードの IP アドレスが 192.168.0.47 の場合には、以下のコマンドで RabbitMQ のステータスを表示します。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo podman exec \$(sudo podman ps -f name=rabbitmq-bundle -q) rabbitmqctl cluster_status"

    running_nodes キーには、障害が発生しているノードは表示されず、稼働中のノード 2 台のみが表示されるはずです。

  9. フェンシングが有効な場合は、無効にします。たとえば、実行中のコントローラーノードの IP アドレスが 192.168.0.47 の場合には、以下のコマンドを実行してフェンシングのステータスを確認します。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs property show stonith-enabled"

    フェンシングを無効にするには、以下のコマンドを実行します。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs property set stonith-enabled=false"
  10. director ノードで Compute サービスがアクティブであることを確認します。

    (undercloud) $ openstack hypervisor list

    出力では、メンテナンスモードに入っていないすべてのノードが up のステータスで表示されるはずです。

  11. アンダークラウドコンテナーがすべて実行中であることを確認します。

    (undercloud) $ sudo podman ps

16.2. Ceph monitor デーモンの削除

コントローラーノードが Ceph monitor サービスを実行している場合には、以下のステップを完了して、ceph-mon デーモンを削除してください。

注記

クラスターに新しいコントローラーノードを追加すると、新しい Ceph monitor デーモンも自動的に追加されます。

手順

  1. 置き換えるコントローラーノードに接続して、root ユーザーになります。

    # ssh heat-admin@192.168.0.47
    # sudo su -
    注記

    コントローラーノードにアクセスすることができない場合、ステップ 1 と 2 をスキップして、稼働している任意のコントローラーノードでステップ 3 から手順を続行してください。

  2. monitor を停止します。

    # systemctl stop ceph-mon@<monitor_hostname>

    以下に例を示します。

    # systemctl stop ceph-mon@overcloud-controller-1
  3. 置き換えるコントローラーノードとの接続を終了します。
  4. 既存のコントローラーノードのいずれかに接続します。

    # ssh heat-admin@192.168.0.46
    # sudo su -
  5. クラスターから monitor を削除します。

    # sudo podman exec -it ceph-mon-controller-0 ceph mon remove overcloud-controller-1
  6. すべてのコントローラーノード上で、/etc/ceph/ceph.conf から v1 および v2 monitor のエントリーを削除します。たとえば、controller-1 を削除する場合には、controller-1 の IP アドレスとホスト名を削除します。

    編集前:

    mon host = [v2:172.18.0.21:3300,v1:172.18.0.21:6789],[v2:172.18.0.22:3300,v1:172.18.0.22:6789],[v2:172.18.0.24:3300,v1:172.18.0.24:6789]
    mon initial members = overcloud-controller-2,overcloud-controller-1,overcloud-controller-0

    変更後:

    mon host = [v2:172.18.0.21:3300,v1:172.18.0.21:6789],[v2:172.18.0.24:3300,v1:172.18.0.24:6789]
    mon initial members = overcloud-controller-2,overcloud-controller-0
    注記

    置き換え用のコントローラーノードを追加すると、director によって該当するオーバークラウドノード上の ceph.conf ファイルが更新されます。通常は、director がこの設定ファイルを管理するだけで、手動でファイルを編集する必要はありません。ただし、新規ノードが追加する前に他のノードが再起動してしまった場合に一貫性を保つために、手動でファイルを編集することができます。

  7. (オプション) monitor データをアーカイブし、アーカイブを別のサーバーに保存します。

    # mv /var/lib/ceph/mon/<cluster>-<daemon_id> /var/lib/ceph/mon/removed-<cluster>-<daemon_id>

16.3. コントローラーノードを置き換えるためのクラスター準備

古いノードを置き換える前に、Pacemaker がノード上で実行されていないことを確認してからそのノードを Pacemaker クラスターから削除する必要があります。

手順

  1. コントローラーノードの IP アドレス一覧を表示するには、以下のコマンドを実行します。

    (undercloud) $ openstack server list -c Name -c Networks
    +------------------------+-----------------------+
    | Name                   | Networks              |
    +------------------------+-----------------------+
    | overcloud-compute-0    | ctlplane=192.168.0.44 |
    | overcloud-controller-0 | ctlplane=192.168.0.47 |
    | overcloud-controller-1 | ctlplane=192.168.0.45 |
    | overcloud-controller-2 | ctlplane=192.168.0.46 |
    +------------------------+-----------------------+
  2. まだ古いノードにアクセスできる場合は、残りのノードのいずれかにログインし、古いノード上の Pacemaker を停止します。以下の例では、overcloud-controller-1 上の Pacemaker を停止しています。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs status | grep -w Online | grep -w overcloud-controller-1"
    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs cluster stop overcloud-controller-1"
    注記

    古いノードが物理的に利用できない、または停止している場合には、そのノードでは Pacemaker はすでに停止しているので、この操作を実施する必要はありません。

  3. 古いノード上の Pacemaker を停止したら、Pacemaker クラスターから古いノードを削除します。以下に示すコマンドの例では、overcloud-controller-0 にログインし、overcloud-controller-1 を削除しています。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs cluster node remove overcloud-controller-1"

    置き換えるノードにアクセスすることができない場合には (ハードウェア障害などの理由により)、pcs コマンドを実行する際にさらに --skip-offline および --force オプションを指定して、ノードをクラスターから強制的に削除します。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs cluster node remove overcloud-controller-1 --skip-offline --force"
  4. Pacemaker クラスターから古いノードを削除したら、Pacemaker の既知のホスト一覧からノードを削除します。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs host deauth overcloud-controller-1"

    ノードにアクセス可能かどうかにかかわらず、このコマンドを実行することができます。

  5. オーバークラウドデータベースは、置き換え手順の実行中に稼働し続ける必要があります。この手順の実行中に Pacemaker が Galera を停止しないようにするには、実行中のコントローラーノードを選択して、そのコントローラーノードの IP アドレスを使用して、アンダークラウドで以下のコマンドを実行します。

    (undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs resource unmanage galera-bundle"

16.4. コントローラーノードの置き換え

コントローラーノードを置き換えるには、置き換えるノードのインデックスを特定します。

  • ノードが仮想ノードの場合には、障害の発生したディスクが含まれるノードを特定し、バックアップからそのディスクをリストアします。障害の発生したサーバー上での PXE ブートに使用する NIC の MAC アドレスは、ディスク置き換え後も同じアドレスにしてください。
  • ノードがベアメタルノードの場合には、ディスクを置き換え、オーバークラウド設定で新しいディスクを準備し、新しいハードウェア上でノードのイントロスペクションを実施します。
  • ノードがフェンシングの設定された高可用性クラスタの一部である場合、Galera ノードを個別に復元しなければならない場合があります。詳しくは、アーティクル「How Galera works and how to rescue Galera clusters in the context of Red Hat OpenStack Platform」を参照してください。

overcloud-controller-1 ノードを overcloud-controller-3 ノードに置き換えるには、以下の手順例を実施します。overcloud-controller-3 ノードの ID は 75b25e9a-948d-424a-9b3b-f0ef70a6eacf です。

重要

ノードを既存のベアメタルノードに置き換えるには、director がノードを自動的に再プロビジョニングしないように、削除するノードをメンテナンスモードに切り替えます。

重要

オーバークラウドのコントローラーノードを置き換えると、ノード間で swift リングの一貫性が失われる可能性があります。これにより、Object Storage サービスの可用性が低下する場合があります。これは既知の問題です。その場合には、SSH を使用してそれまで存在していたコントローラーノードにログインして更新されたリングをデプロイし、Object Storage コンテナーを再起動します。

(undercloud) [stack@undercloud-0 ~]$ source stackrc
(undercloud) [stack@undercloud-0 ~]$ nova list
...
| 3fab687e-99c2-4e66-805f-3106fb41d868 | controller-1 | ACTIVE | -          | Running     | ctlplane=192.168.24.17 |
| a87276ea-8682-4f27-9426-6b272955b486 | controller-2 | ACTIVE | -          | Running     | ctlplane=192.168.24.38 |
| a000b156-9adc-4d37-8169-c1af7800788b | controller-3 | ACTIVE | -          | Running     | ctlplane=192.168.24.35 |
...

(undercloud) [stack@undercloud-0 ~]$ for ip in 192.168.24.17 192.168.24.38 192.168.24.35; do ssh $ip 'sudo podman restart swift_copy_rings ; sudo podman restart $(sudo podman ps -a --format="{{.Names}}" --filter="name=swift_*")'; done

手順

  1. stackrc ファイルを取得します。

    $ source ~/stackrc
  2. overcloud-controller-1 ノードのインデックスを特定します。

    $ INSTANCE=$(openstack server list --name overcloud-controller-1 -f value -c ID)
  3. インスタンスに関連付けられたベアメタルノードを特定します。

    $ NODE=$(openstack baremetal node list -f csv --quote minimal | grep $INSTANCE | cut -f1 -d,)
  4. ノードをメンテナンスモードに切り替えます。

    $ openstack baremetal node maintenance set $NODE
  5. コントローラーノードが仮想ノードの場合には、コントローラーホストで以下のコマンドを実行し、障害の発生した仮想ディスクをバックアップからの仮想ディスクに置き換えます。

    $ cp <VIRTUAL_DISK_BACKUP> /var/lib/libvirt/images/<VIRTUAL_DISK>

    <VIRTUAL_DISK_BACKUP> を障害の発生した仮想ディスクのバックアップへのパスに、<VIRTUAL_DISK> を置き換える仮想ディスクの名前にそれぞれ置き換えます。

    削除するノードのバックアップがない場合には、新しい仮想ノードを使用する必要があります。

    コントローラーノードがベアメタルノードの場合には、以下の手順を実施してディスクを新しいベアメタルディスクに置き換えます。

    1. 物理ハードドライブまたはソリッドステートドライブを置き換えます。
    2. 障害が発生したノードと同じ設定のノードを準備します。
  6. 関連付けられていないノードの一覧を表示し、新規ノードの ID を特定します。

    $ openstack baremetal node list --unassociated
  7. 新規ノードを control プロファイルにタグ付けします。

    (undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:control,boot_option:local' 75b25e9a-948d-424a-9b3b-f0ef70a6eacf

16.5. コントローラーノード置き換えのトリガー

古いコントローラーノードを削除して新規コントローラーノードに置き換えるには、以下の手順を実施します。

手順

  1. 削除するノードの UUID を把握し、それを NODEID 変数に保管します。NODE_NAME は、削除するノードの名前に置き換えてください。

    $ NODEID=$(openstack server list -f value -c ID --name NODE_NAME)
  2. Heat リソース ID を特定するには、以下のコマンドを入力します。

    $ openstack stack resource show overcloud ControllerServers -f json -c attributes | jq --arg NODEID "$NODEID" -c '.attributes.value | keys[] as $k | if .[$k] == $NODEID then "Node index \($k) for \(.[$k])" else empty end'
  3. 以下の内容で環境ファイル ~/templates/remove-controller.yaml を作成し、削除するコントローラーノードのノードインデックスを含めます。

    parameters:
      ControllerRemovalPolicies:
        [{'resource_list': ['NODE_INDEX']}]
  4. ご自分の環境に該当するその他の環境ファイルと共に remove-controller.yaml 環境ファイルを指定して、オーバークラウドデプロイメントコマンドを入力します。

    (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \
        -e /home/stack/templates/remove-controller.yaml \
        -e /home/stack/templates/node-info.yaml \
        [OTHER OPTIONS]
    注記

    -e ~/templates/remove-controller.yaml は、デプロイメントコマンドのこのインスタンスに対してのみ指定します。これ以降のデプロイメント操作からは、この環境ファイルを削除してください。

  5. director は古いノードを削除して、新しいノードを作成してから、オーバークラウドスタックを更新します。以下のコマンドを使用すると、オーバークラウドスタックのステータスをチェックすることができます。

    (undercloud) $ openstack stack list --nested
  6. デプロイメントコマンドの実行が完了すると、director の出力には古いノードが新規ノードに置き換えられたことが表示されます。

    (undercloud) $ openstack server list -c Name -c Networks
    +------------------------+-----------------------+
    | Name                   | Networks              |
    +------------------------+-----------------------+
    | overcloud-compute-0    | ctlplane=192.168.0.44 |
    | overcloud-controller-0 | ctlplane=192.168.0.47 |
    | overcloud-controller-2 | ctlplane=192.168.0.46 |
    | overcloud-controller-3 | ctlplane=192.168.0.48 |
    +------------------------+-----------------------+

    これで、新規ノードが稼動状態のコントロールプレーンサービスをホストするようになります。

16.6. コントローラーノード置き換え後のクリーンアップ

ノードの置き換えが完了したら、以下の手順を実施してコントローラークラスターの最終処理を行います。

手順

  1. コントローラーノードにログインします。
  2. Galera クラスターの Pacemaker 管理を有効にし、新規ノード上で Galera を起動します。

    [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs resource refresh galera-bundle
    [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs resource manage galera-bundle
  3. 最終のステータスチェックを実行して、サービスが正しく実行されていることを確認します。

    [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs status
    注記

    エラーが発生したサービスがある場合には、pcs resource refresh コマンドを使用して問題を解決し、そのサービスを再起動します。

  4. director を終了します。

    [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ exit
  5. オーバークラウドと対話できるようにするために、source コマンドで overcloudrc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  6. オーバークラウド環境のネットワークエージェントを確認します。

    (overcloud) $ openstack network agent list
  7. 古いノードにエージェントが表示される場合には、そのエージェントを削除します。

    (overcloud) $ for AGENT in $(openstack network agent list --host overcloud-controller-1.localdomain -c ID -f value) ; do openstack network agent delete $AGENT ; done
  8. 必要に応じて、新規ノード上の L3 エージェントホストにルーターを追加します。以下のコマンド例では、UUID に 2d1c1dc1-d9d4-4fa9-b2c8-f29cd1a649d4 を使用して L3 エージェントに r1 という名称のルーターを追加しています。

    (overcloud) $ openstack network agent add router --l3 2d1c1dc1-d9d4-4fa9-b2c8-f29cd1a649d4 r1
  9. 削除されたノードの Compute サービスはオーバークラウドにまだ存在しているので、それを削除する必要があります。まず、削除したノードの Compute サービスを確認します。

    [stack@director ~]$ source ~/overcloudrc
    (overcloud) $ openstack compute service list --host overcloud-controller-1.localdomain
  10. 削除したノードのコンピュートサービスを削除します。

    (overcloud) $ for SERVICE in $(openstack compute service list --host overcloud-controller-1.localdomain -c ID -f value ) ; do openstack compute service delete $SERVICE ; done

第17章 ノードのリブート

アンダークラウドおよびオーバークラウドで、ノードをリブートしなければならない場合があります。以下の手順を使用して、さまざまなノード種別をリブートする方法を説明します。

  • 1 つのロールで全ノードをリブートする場合には、各ノードを個別にリブートすることを推奨しています。ロールの全ノードを同時にリブートすると、リブート操作中サービスにダウンタイムが生じる場合があります。
  • OpenStack Platform 環境の全ノードをリブートする場合には、以下の順序でノードをリブートします。

推奨されるノードリブート順

  1. アンダークラウドノードのリブート
  2. コントローラーノードおよびその他のコンポーザブルノードのリブート
  3. スタンドアロンの Ceph MON ノードのリブート
  4. Ceph Storage ノードのリブート
  5. コンピュートノードのリブート

17.1. アンダークラウドノードのリブート

アンダークラウドノードをリブートするには、以下の手順を実施します。

手順

  1. アンダークラウドに stack ユーザーとしてログインします。
  2. アンダークラウドをリブートします。

    $ sudo reboot
  3. ノードがブートするまで待ちます。

17.2. コントローラーノードおよびコンポーザブルノードのリブート

コントローラーノードおよびコンポーザブルロールに基づくスタンドアロンのノードをリブートするには、以下の手順を実施します。ただし、これにはコンピュートノードおよび Ceph Storage ノードは含まれません。

手順

  1. リブートするノードにログインします。
  2. オプション: ノードが Pacemaker リソースを使用している場合は、クラスターを停止します。

    [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs cluster stop
  3. ノードをリブートします。

    [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo reboot
  4. ノードがブートするまで待ちます。
  5. サービスを確認します。以下に例を示します。

    1. ノードが Pacemaker サービスを使用している場合には、ノードがクラスターに再度加わったかどうかを確認します。

      [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs status
    2. ノードが Systemd サービスを使用している場合には、すべてのサービスが有効化されていることを確認します。

      [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo systemctl status
    3. ノードがコンテナー化されたサービスを使用している場合には、ノード上の全コンテナーがアクティブであることを確認します。

      [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo podman ps

17.3. スタンドアロンの Ceph MON ノードのリブート

スタンドアロンの Ceph MON ノードをリブートするには、以下の手順を実施します。

手順

  1. Ceph MON ノードにログインします。
  2. ノードをリブートします。

    $ sudo reboot
  3. ノードがブートして MON クラスターに再度加わるまで待ちます。

クラスター内の各 MON ノードで、この手順を繰り返します。

17.4. Ceph Storage (OSD) クラスターのリブート

Ceph Storage (OSD) ノードのクラスターをリブートするには、以下の手順を実施します。

手順

  1. Ceph MON またはコントローラーノードにログインして、Ceph Storage Cluster のリバランスを一時的に無効にします。

    $ sudo podman exec -it ceph-mon-controller-0 ceph osd set noout
    $ sudo podman exec -it ceph-mon-controller-0 ceph osd set norebalance
  2. リブートする最初の Ceph Storage ノードを選択し、そのノードにログインします。
  3. ノードをリブートします。

    $ sudo reboot
  4. ノードがブートするまで待ちます。
  5. ノードにログインして、クラスターのステータスを確認します。

    $ sudo podman exec -it ceph-mon-controller-0 ceph status

    pgmap により、すべての pgs が正常な状態 (active+clean) として報告されることを確認します。

  6. ノードからログアウトして、次のノードをリブートし、ステータスを確認します。全 Ceph Storage ノードがリブートされるまで、このプロセスを繰り返します。
  7. 完了したら、Ceph MON またはコントローラーノードにログインして、クラスターのリバランスを再度有効にします。

    $ sudo podman exec -it ceph-mon-controller-0 ceph osd unset noout
    $ sudo podman exec -it ceph-mon-controller-0 ceph osd unset norebalance
  8. 最終のステータスチェックを実行して、クラスターが HEALTH_OK を報告していることを確認します。

    $ sudo podman exec -it ceph-mon-controller-0 ceph status

17.5. コンピュートノードのリブート

コンピュートノードをリブートするには、以下の手順を実施します。Red Hat OpenStack Platform 環境内のインスタンスのダウンタイムを最小限に抑えるために、この手順には、リブートするコンピュートノードからインスタンスを移行するステップも含まれています。これは、以下のワークフローを伴います。

  • コンピュートノードをリブートする前に、インスタンスを別のノードに移行するかどうかを決定する。
  • リブートするコンピュートノードを選択して無効にし、新規インスタンスをプロビジョニングしないようにする。
  • インスタンスを別のコンピュートノードに移行する。
  • 空のコンピュートノードをリブートする。
  • 空のコンピュートノードを有効にする。

前提条件

コンピュートノードをリブートする前に、ノードをリブートする間インスタンスを別のコンピュートノードに移行するかどうかを決定する必要があります。

何らかの理由でインスタンスを移行することができない、または移行を希望しない場合には、以下のコアテンプレートパラメーターを設定して、コンピュートノードリブート後のインスタンスの状態を制御することができます。

NovaResumeGuestsStateOnHostBoot
リブート後のコンピュートノードで、インスタンスを同じ状態に戻すかどうかを定義します。False に設定すると、インスタンスは停止した状態を維持し、手動で起動する必要があります。デフォルト値は False です。
NovaResumeGuestsShutdownTimeout
リブートする前に、インスタンスのシャットダウンを待つ秒数。この値を 0 に設定することは推奨されません。デフォルト値は 300 です。
NovaResumeGuestsShutdownTimeout
リブートする前に、インスタンスのシャットダウンを待つ秒数。この値を 0 に設定することは推奨されません。デフォルト値は 300 です。

オーバークラウドパラメーターおよびその使用方法についての詳細は、『オーバークラウドのパラメーター 』を参照して ください。

手順

  1. アンダークラウドに stack ユーザーとしてログインします。
  2. 全コンピュートノードとその UUID を一覧表示します。

    $ source ~/stackrc
    (undercloud) $ openstack server list --name compute

    リブートするコンピュートノードの UUID を特定します。

  3. アンダークラウドから、コンピュートノードを選択します。そのノードを無効にします。

    $ source ~/overcloudrc
    (overcloud) $ openstack compute service list
    (overcloud) $ openstack compute service set [hostname] nova-compute --disable
  4. コンピュートノード上の全インスタンスを一覧表示します。

    (overcloud) $ openstack server list --host [hostname] --all-projects
  5. インスタンスを移行しない場合は、このステップ に進みます。
  6. インスタンスを別のコンピュートノードに移行する場合には、以下のコマンドのいずれかを使用します。

    • インスタンスを別のホストに移行する。

      (overcloud) $ openstack server migrate [instance-id] --live [target-host]--wait
    • nova-scheduler により対象のホストが自動的に選択されるようにする。

      (overcloud) $ nova live-migration [instance-id]
    • 一度にすべてのインスタンスのライブマイグレーションを行う。

      $ nova host-evacuate-live [hostname]
      注記

      nova コマンドで非推奨の警告が表示される可能性がありますが、無視して問題ありません。

  7. 移行が完了するまで待ちます。
  8. 移行が正常に完了したことを確認します。

    (overcloud) $ openstack server list --host [hostname] --all-projects
  9. 選択したコンピュートノードのインスタンスがなくなるまで、移行を続けます。
  10. コンピュートノードにログインして、ノードをリブートします。

    [heat-admin@overcloud-compute-0 ~]$ sudo reboot
  11. ノードがブートするまで待ちます。
  12. コンピュートノードを再度有効にします。

    $ source ~/overcloudrc
    (overcloud) $ openstack compute service set [hostname] nova-compute --enable
  13. コンピュートノードが有効であることを確認します。

    (overcloud) $ openstack compute service list

パート IV. director に関するその他の操作および設定

第18章 カスタム SSL/TLS 証明書の設定

アンダークラウドがパブリックエンドポイントの通信に SSL/TLS を使用するように設定できます。ただし、独自の認証局で発行した SSL 証明書を使用する場合には、以下の設定手順を実施する必要があります。

18.1. 署名ホストの初期化

署名ホストとは、認証局を使用して新規証明書を生成し署名するホストです。選択した署名ホスト上で SSL 証明書を作成したことがない場合には、ホストを初期化して新規証明書に署名できるようにする必要がある可能性があります。

手順

  1. すべての署名済み証明書の記録は、/etc/pki/CA/index.txt ファイルに含まれます。このファイルが存在しているかどうかを確認してください。存在していない場合には、空のファイルを作成します。

    $ sudo touch /etc/pki/CA/index.txt
  2. /etc/pki/CA/serial ファイルは、次に署名する証明書に使用する次のシリアル番号を特定します。このファイルが存在しているかどうかを確認してください。ファイルが存在しない場合には、新規ファイルを作成して新しい開始値を指定します。

    $ echo '1000' | sudo tee /etc/pki/CA/serial

18.2. 認証局の作成

通常、SSL/TLS 証明書の署名には、外部の認証局を使用します。場合によっては、独自の認証局を使用する場合もあります。たとえば、内部のみの認証局を使用するように設定する場合などです。

手順

  1. 鍵と証明書のペアを生成して、認証局として機能するようにします。
$ openssl genrsa -out ca.key.pem 4096
$ openssl req  -key ca.key.pem -new -x509 -days 7300 -extensions v3_ca -out ca.crt.pem
  1. openssl req コマンドは、認証局に関する特定の情報を要求します。要求されたら、それらの情報を入力してください。

これらのコマンドにより、ca.crt.pem という名前の認証局ファイルが作成されます。

18.3. クライアントへの認証局の追加

SSL/TLS を使用して通信する外部クライアントについては、Red Hat OpenStack Platform 環境にアクセスする必要のある各クライアントに認証局ファイルをコピーします。

手順

  1. 認証局をクライアントシステムにコピーします。

    $ sudo cp ca.crt.pem /etc/pki/ca-trust/source/anchors/
  2. 各クライアントに認証局ファイルをコピーしたら、それぞれのクライアントで以下のコマンドを実行し、証明書を認証局のトラストバンドルに追加します。

    $ sudo update-ca-trust extract

18.4. SSL/TLS 鍵の作成

OpenStack 環境で SSL/TLS を有効にするには、証明書を生成するための SSL/TLS 鍵が必要です。

手順

  1. 以下のコマンドを実行し、SSL/TLS 鍵 (server.key.pem) を生成します。

    $ openssl genrsa -out server.key.pem 2048

18.5. SSL/TLS 証明書署名要求の作成

証明書署名要求を作成するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. デフォルトの OpenSSL 設定ファイルをコピーします。

    $ cp /etc/pki/tls/openssl.cnf .
  2. 新しい openssl.cnf ファイルを編集して、director に使用する SSL パラメーターを設定します。変更するパラメーターの種別には以下のような例が含まれます。

    [req]
    distinguished_name = req_distinguished_name
    req_extensions = v3_req
    
    [req_distinguished_name]
    countryName = Country Name (2 letter code)
    countryName_default = AU
    stateOrProvinceName = State or Province Name (full name)
    stateOrProvinceName_default = Queensland
    localityName = Locality Name (eg, city)
    localityName_default = Brisbane
    organizationalUnitName = Organizational Unit Name (eg, section)
    organizationalUnitName_default = Red Hat
    commonName = Common Name
    commonName_default = 192.168.0.1
    commonName_max = 64
    
    [ v3_req ]
    # Extensions to add to a certificate request
    basicConstraints = CA:FALSE
    keyUsage = nonRepudiation, digitalSignature, keyEncipherment
    subjectAltName = @alt_names
    
    [alt_names]
    IP.1 = 192.168.0.1
    DNS.1 = instack.localdomain
    DNS.2 = vip.localdomain
    DNS.3 = 192.168.0.1

    commonName_default を、以下のエントリーのいずれかに設定します。

    • IP アドレスを使用して SSL/TLS 経由で director にアクセスする場合には、undercloud.conf ファイルの undercloud_public_host パラメーターを使用します。
    • 完全修飾ドメイン名を使用して SSL/TLS 経由で director にアクセスする場合には、ドメイン名を使用します。

      v3_req セクションに subjectAltName = @alt_names を追加します。

      alt_names セクションを編集して、以下のエントリーを追加します。

    • IP: SSL 経由で director にアクセスするためにクライアントが使用する IP アドレス一覧
    • DNS: SSL 経由で director にアクセスするためにクライアントが使用するドメイン名一覧。alt_names セクションの最後に DNS エントリーとしてパブリック API の IP アドレスも追加します。
    注記

    openssl.cnf に関する詳しい情報については、man openssl.cnf コマンドを実行してください。

  3. 以下のコマンドを実行し、証明書署名要求 (server.csr.pem) を生成します。

    $ openssl req -config openssl.cnf -key server.key.pem -new -out server.csr.pem

    -key オプションを使用して、OpenStack SSL/TLS 鍵を指定するようにしてください。

このコマンドにより、証明書署名要求として server.csr.pem ファイルが生成されます。このファイルを使用して OpenStack SSL/TLS 証明書を作成します。

18.6. SSL/TLS 証明書の作成

OpenStack 環境の SSL/TLS 証明書を生成するには、以下のファイルが必要です。

openssl.cnf
v3 拡張機能を指定するカスタム設定ファイル
server.csr.pem
証明書を生成して認証局を使用して署名するための証明書署名要求
ca.crt.pem
証明書への署名を行う認証局
ca.key.pem
認証局の秘密鍵

手順

  1. 以下のコマンドを実行し、アンダークラウドまたはオーバークラウドの証明書を作成します。

    $ sudo openssl ca -config openssl.cnf -extensions v3_req -days 3650 -in server.csr.pem -out server.crt.pem -cert ca.crt.pem -keyfile ca.key.pem

    コマンドは、以下のオプションを使用します。

    -config
    カスタム設定ファイルを使用します (ここでは、v3 拡張機能を指定した openssl.cnf ファイル)。
    -extensions v3_req
    v3 拡張機能を有効にします。
    -days
    証明書の有効期限が切れるまでの日数を定義します。
    -in
    証明書署名要求
    -out
    作成される署名済み証明書
    -cert
    認証局ファイル
    -keyfile
    認証局の秘密鍵

上記のコマンドにより、server.crt.pem という名前の新規証明書が作成されます。OpenStack SSL/TLS 鍵と共にこの証明書を使用します。

18.7. アンダークラウドへの証明書の追加

OpenStack SSL/TLS 証明書をアンダークラウドのトラストバンドルに追加するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. 以下のコマンドを実行して、証明書と鍵を統合します。

    $ cat server.crt.pem server.key.pem > undercloud.pem

    このコマンドにより、undercloud.pem ファイルが作成されます。

  2. undercloud.pem ファイルを /etc/pki ディレクトリー内の場所にコピーし、HAProxy が読み取ることができるように必要な SELinux コンテキストを設定します。

    $ sudo mkdir /etc/pki/undercloud-certs
    $ sudo cp ~/undercloud.pem /etc/pki/undercloud-certs/.
    $ sudo semanage fcontext -a -t etc_t "/etc/pki/undercloud-certs(/.*)?"
    $ sudo restorecon -R /etc/pki/undercloud-certs
  3. undercloud.conf ファイルの undercloud_service_certificate オプションに undercloud.pem ファイルの場所を追加します。

    undercloud_service_certificate = /etc/pki/undercloud-certs/undercloud.pem
  4. アンダークラウド内の別のサービスが認証局にアクセスできるように、証明書に署名した認証局をアンダークラウドの信頼済み認証局の一覧に追加します。

    $ sudo cp ca.crt.pem /etc/pki/ca-trust/source/anchors/
    $ sudo update-ca-trust extract

第19章 その他のイントロスペクション操作

19.1. ノードイントロスペクションの個別実行

available の状態にあるノードで個別にイントロスペクションを実施するには、以下のコマンドを実行してノードを管理モードに設定し、イントロスペクションを実施します。

(undercloud) $ openstack baremetal node manage [NODE UUID]
(undercloud) $ openstack overcloud node introspect [NODE UUID] --provide

イントロスペクションが完了すると、ノードの状態が available に変わります。

19.2. 初回のイントロスペクション後のノードイントロスペクションの実行

--provide オプションを指定したので、初回のイントロスペクションの後には、全ノードが available の状態になります。初回のイントロスペクション後に全ノードにイントロスペクションを実行するには、すべてのノードを manageable の状態にして、一括のイントロスペクションコマンドを実行します。

(undercloud) $ for node in $(openstack baremetal node list --fields uuid -f value) ; do openstack baremetal node manage $node ; done
(undercloud) $ openstack overcloud node introspect --all-manageable --provide

イントロスペクション完了後には、すべてのノードが available の状態に変わります。

19.3. ネットワークイントロスペクションの実行によるインターフェース情報の取得

ネットワークイントロスペクションにより、Link Layer Discovery Protocol (LLDP) データがネットワークスイッチから取得されます。以下のコマンドにより、ノード上の全インターフェースに関する LLDP 情報のサブセット、または特定のノードおよびインターフェースに関するすべての情報が表示されます。この情報は、トラブルシューティングに役立ちます。director では、デフォルトで LLDP データ収集が有効になっています。

ノード上のインターフェースを一覧表示するには、以下のコマンドを実行します。

(undercloud) $ openstack baremetal introspection interface list [NODE UUID]

以下に例を示します。

(undercloud) $ openstack baremetal introspection interface list c89397b7-a326-41a0-907d-79f8b86c7cd9
+-----------+-------------------+------------------------+-------------------+----------------+
| Interface | MAC Address       | Switch Port VLAN IDs   | Switch Chassis ID | Switch Port ID |
+-----------+-------------------+------------------------+-------------------+----------------+
| p2p2      | 00:0a:f7:79:93:19 | [103, 102, 18, 20, 42] | 64:64:9b:31:12:00 | 510            |
| p2p1      | 00:0a:f7:79:93:18 | [101]                  | 64:64:9b:31:12:00 | 507            |
| em1       | c8:1f:66:c7:e8:2f | [162]                  | 08:81:f4:a6:b3:80 | 515            |
| em2       | c8:1f:66:c7:e8:30 | [182, 183]             | 08:81:f4:a6:b3:80 | 559            |
+-----------+-------------------+------------------------+-------------------+----------------+

インターフェースのデータおよびスイッチポートの情報を表示するには、以下のコマンドを実行します。

(undercloud) $ openstack baremetal introspection interface show [NODE UUID] [INTERFACE]

以下に例を示します。

(undercloud) $ openstack baremetal introspection interface show c89397b7-a326-41a0-907d-79f8b86c7cd9 p2p1
+--------------------------------------+------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------+
| Field                                | Value                                                                                                                  |
+--------------------------------------+------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------+
| interface                            | p2p1                                                                                                                   |
| mac                                  | 00:0a:f7:79:93:18                                                                                                      |
| node_ident                           | c89397b7-a326-41a0-907d-79f8b86c7cd9                                                                                   |
| switch_capabilities_enabled          | [u'Bridge', u'Router']                                                                                                 |
| switch_capabilities_support          | [u'Bridge', u'Router']                                                                                                 |
| switch_chassis_id                    | 64:64:9b:31:12:00                                                                                                      |
| switch_port_autonegotiation_enabled  | True                                                                                                                   |
| switch_port_autonegotiation_support  | True                                                                                                                   |
| switch_port_description              | ge-0/0/2.0                                                                                                             |
| switch_port_id                       | 507                                                                                                                    |
| switch_port_link_aggregation_enabled | False                                                                                                                  |
| switch_port_link_aggregation_id      | 0                                                                                                                      |
| switch_port_link_aggregation_support | True                                                                                                                   |
| switch_port_management_vlan_id       | None                                                                                                                   |
| switch_port_mau_type                 | Unknown                                                                                                                |
| switch_port_mtu                      | 1514                                                                                                                   |
| switch_port_physical_capabilities    | [u'1000BASE-T fdx', u'100BASE-TX fdx', u'100BASE-TX hdx', u'10BASE-T fdx', u'10BASE-T hdx', u'Asym and Sym PAUSE fdx'] |
| switch_port_protocol_vlan_enabled    | None                                                                                                                   |
| switch_port_protocol_vlan_ids        | None                                                                                                                   |
| switch_port_protocol_vlan_support    | None                                                                                                                   |
| switch_port_untagged_vlan_id         | 101                                                                                                                    |
| switch_port_vlan_ids                 | [101]                                                                                                                  |
| switch_port_vlans                    | [{u'name': u'RHOS13-PXE', u'id': 101}]                                                                                 |
| switch_protocol_identities           | None                                                                                                                   |
| switch_system_name                   | rhos-compute-node-sw1                                                                                                  |
+--------------------------------------+------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------+

ハードウェアイントロスペクション情報の取得

Bare Metal サービスでは、オーバークラウド設定の追加ハードウェア情報を取得する機能がデフォルトで有効です。undercloud.conf ファイル inspection_extras パラメーターについての詳しい情報は、『director のインストールと使用方法』の「director の設定」を参照し てください。

たとえば、numa_topology コレクターは、追加ハードウェアイントロスペクションの一部で、各 NUMA ノードに関する以下の情報が含まれます。

  • RAM (キロバイト単位)
  • 物理 CPU コアおよびそのシブリングスレッド
  • NUMA ノードに関連付けられた NIC

上記の情報を取得するには、<UUID> をベアメタルノードの UUID に置き換えて、以下のコマンドを実行します。

# openstack baremetal introspection data save <UUID> | jq .numa_topology

取得されるベアメタルノードの NUMA 情報の例を以下に示します。

{
  "cpus": [
    {
      "cpu": 1,
      "thread_siblings": [
        1,
        17
      ],
      "numa_node": 0
    },
    {
      "cpu": 2,
      "thread_siblings": [
        10,
        26
      ],
      "numa_node": 1
    },
    {
      "cpu": 0,
      "thread_siblings": [
        0,
        16
      ],
      "numa_node": 0
    },
    {
      "cpu": 5,
      "thread_siblings": [
        13,
        29
      ],
      "numa_node": 1
    },
    {
      "cpu": 7,
      "thread_siblings": [
        15,
        31
      ],
      "numa_node": 1
    },
    {
      "cpu": 7,
      "thread_siblings": [
        7,
        23
      ],
      "numa_node": 0
    },
    {
      "cpu": 1,
      "thread_siblings": [
        9,
        25
      ],
      "numa_node": 1
    },
    {
      "cpu": 6,
      "thread_siblings": [
        6,
        22
      ],
      "numa_node": 0
    },
    {
      "cpu": 3,
      "thread_siblings": [
        11,
        27
      ],
      "numa_node": 1
    },
    {
      "cpu": 5,
      "thread_siblings": [
        5,
        21
      ],
      "numa_node": 0
    },
    {
      "cpu": 4,
      "thread_siblings": [
        12,
        28
      ],
      "numa_node": 1
    },
    {
      "cpu": 4,
      "thread_siblings": [
        4,
        20
      ],
      "numa_node": 0
    },
    {
      "cpu": 0,
      "thread_siblings": [
        8,
        24
      ],
      "numa_node": 1
    },
    {
      "cpu": 6,
      "thread_siblings": [
        14,
        30
      ],
      "numa_node": 1
    },
    {
      "cpu": 3,
      "thread_siblings": [
        3,
        19
      ],
      "numa_node": 0
    },
    {
      "cpu": 2,
      "thread_siblings": [
        2,
        18
      ],
      "numa_node": 0
    }
  ],
  "ram": [
    {
      "size_kb": 66980172,
      "numa_node": 0
    },
    {
      "size_kb": 67108864,
      "numa_node": 1
    }
  ],
  "nics": [
    {
      "name": "ens3f1",
      "numa_node": 1
    },
    {
      "name": "ens3f0",
      "numa_node": 1
    },
    {
      "name": "ens2f0",
      "numa_node": 0
    },
    {
      "name": "ens2f1",
      "numa_node": 0
    },
    {
      "name": "ens1f1",
      "numa_node": 0
    },
    {
      "name": "ens1f0",
      "numa_node": 0
    },
    {
      "name": "eno4",
      "numa_node": 0
    },
    {
      "name": "eno1",
      "numa_node": 0
    },
    {
      "name": "eno3",
      "numa_node": 0
    },
    {
      "name": "eno2",
      "numa_node": 0
    }
  ]
}

第20章 ベアメタルノードの自動検出

自動検出を使用すると、オーバークラウドノードを登録してそのメタデータを生成するのに、instackenv.json ファイルを作成する必要がありません。この改善は、ノードに関する情報を取得するのに費す時間を短縮するのに役立ちます。たとえば、自動検出を使用する場合、IPMI IP アドレスを照合し、その後に instackenv.json を作成する必要がありません。

20.1. 前提条件

  • IPMI を通じて director がアクセスできるように、すべてのオーバークラウドノードの BMC を設定していること。
  • アンダークラウドのコントロールプレーンネットワークに接続された NIC から PXE ブートするように、すべてのオーバークラウドノードを設定していること。

20.2. 自動検出の有効化

  1. undercloud.conf ファイルで、ベアメタルの自動検出を有効にします。

    enable_node_discovery = True
    discovery_default_driver = ipmi
    • enable_node_discovery: 有効にすると、PXE を使用して introspection ramdisk をブートするすべてのノードが、自動的に Bare Metal サービス (ironic) に登録されます。
    • discovery_default_driver: 検出されたノードに使用するドライバーを設定します。例: ipmi
  2. IPMI の認証情報を ironic に追加します。

    1. IPMI の認証情報を ipmi-credentials.json という名前のファイルに追加します。この例の SampleUsernameRedactedSecurePassword、および bmc_address の値を、実際の環境に応じて置き換えてください。

      [
          {
              "description": "Set default IPMI credentials",
              "conditions": [
                  {"op": "eq", "field": "data://auto_discovered", "value": true}
              ],
              "actions": [
                  {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_username",
                   "value": "SampleUsername"},
                  {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_password",
                   "value": "RedactedSecurePassword"},
                  {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_address",
                   "value": "{data[inventory][bmc_address]}"}
              ]
          }
      ]
  3. IPMI の認証情報ファイルを ironic にインポートします。

    $ openstack baremetal introspection rule import ipmi-credentials.json

20.3. 自動検出のテスト

  1. 必要なノードの電源をオンにします。
  2. openstack baremetal node list コマンドを実行します。新しいノードが enroll の状態でリストに表示されるはずです。

    $ openstack baremetal node list
    +--------------------------------------+------+---------------+-------------+--------------------+-------------+
    | UUID                                 | Name | Instance UUID | Power State | Provisioning State | Maintenance |
    +--------------------------------------+------+---------------+-------------+--------------------+-------------+
    | c6e63aec-e5ba-4d63-8d37-bd57628258e8 | None | None          | power off   | enroll             | False       |
    | 0362b7b2-5b9c-4113-92e1-0b34a2535d9b | None | None          | power off   | enroll             | False       |
    +--------------------------------------+------+---------------+-------------+--------------------+-------------+
  3. 各ノードにリソースクラスを設定します。

    $ for NODE in `openstack baremetal node list -c UUID -f value` ; do openstack baremetal node set $NODE --resource-class baremetal ; done
  4. 各ノードにカーネルと ramdisk を設定します。

    $ for NODE in `openstack baremetal node list -c UUID -f value` ; do openstack baremetal node manage $NODE ; done
    $ openstack overcloud node configure --all-manageable
  5. 全ノードを利用可能な状態に設定します。

    $ for NODE in `openstack baremetal node list -c UUID -f value` ; do openstack baremetal node provide $NODE ; done

20.4. ルールを使用した異なるベンダーハードウェアの検出

異種のハードウェアが混在する環境では、イントロスペクションルールを使って、認証情報の割り当てやリモート管理を行うことができます。たとえば、DRAC を使用する Dell ノードを処理するには、別の検出ルールが必要になる場合があります。

  1. 以下の内容で、dell-drac-rules.json という名前のファイルを作成します。

    [
        {
            "description": "Set default IPMI credentials",
            "conditions": [
                {"op": "eq", "field": "data://auto_discovered", "value": true},
                {"op": "ne", "field": "data://inventory.system_vendor.manufacturer",
                 "value": "Dell Inc."}
            ],
            "actions": [
                {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_username",
                 "value": "SampleUsername"},
                {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_password",
                 "value": "RedactedSecurePassword"},
                {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_address",
                 "value": "{data[inventory][bmc_address]}"}
            ]
        },
        {
            "description": "Set the vendor driver for Dell hardware",
            "conditions": [
                {"op": "eq", "field": "data://auto_discovered", "value": true},
                {"op": "eq", "field": "data://inventory.system_vendor.manufacturer",
                 "value": "Dell Inc."}
            ],
            "actions": [
                {"action": "set-attribute", "path": "driver", "value": "idrac"},
                {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/drac_username",
                 "value": "SampleUsername"},
                {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/drac_password",
                 "value": "RedactedSecurePassword"},
                {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/drac_address",
                 "value": "{data[inventory][bmc_address]}"}
            ]
        }
    ]

    この例のユーザー名およびパスワードの値を、実際の環境に応じて置き換えてください。

  2. ルールを ironic にインポートします。

    $ openstack baremetal introspection rule import dell-drac-rules.json

第21章 プロファイルの自動タグ付けの設定

イントロスペクションプロセスでは、一連のベンチマークテストを実行します。director は、これらのテストからデータを保存します。このデータをさまざまな方法で使用するポリシーセットを作成することができます。

  • ポリシーにより、パフォーマンスの低いノードまたは不安定なノードを特定して、これらのノードがオーバークラウドで使用されないように隔離することができます。
  • ポリシーにより、ノードを自動的に特定のプロファイルにタグ付けするかどうかを定義することができます。

21.1. ポリシーファイルの構文

ポリシーファイルは JSON 形式で、ルールセットが記載されます。各ルールでは、説明、条件、およびアクションが定義されます。説明 はプレーンテキストで記述されたルールの説明で、条件 はキー/値のパターンを使用して評価を定義し、アクション は条件のパフォーマンスを表します。 description

これは、プレーンテキストで記述されたルールの説明です。

例:

"description": "A new rule for my node tagging policy"

conditions

ここでは、以下のキー/値のパターンを使用して評価を定義します。

field

評価するフィールドを定義します。

  • memory_mb: ノードのメモリーサイズ (MB 単位)
  • cpus: ノードの CPU の合計スレッド数
  • cpu_arch: ノードの CPU のアーキテクチャー
  • local_gb: ノードのルートディスクの合計ストレージ容量
op

評価に使用する演算を定義します。これには、以下の属性が含まれます。

  • eq: 等しい
  • ne: 等しくない
  • lt: より小さい
  • gt: より大きい
  • le: より小さいか等しい
  • ge: より大きいか等しい
  • in-net: IP アドレスが指定のネットワーク内にあることを確認します。
  • matches: 指定の正規表現と完全に一致する必要があります。
  • contains: 値には、指定の正規表現が含まれる必要があります。
  • is-empty: field が空欄であることを確認します。
invert
評価の結果をインバージョン (反転) するかどうかを定義するブール値
multiple

複数の結果が存在する場合に、使用する評価を定義します。このパラメーターには以下の属性が含まれます。

  • any: いずれかの結果が一致する必要があります。
  • all: すべての結果が一致する必要があります。
  • first: 最初の結果が一致する必要があります。
value
評価する値を定義します。フィールド、演算および値の条件が満たされる場合には、true の結果を返します。そうでない場合には、条件は false の結果を返します。

例:

"conditions": [
  {
    "field": "local_gb",
    "op": "ge",
    "value": 1024
  }
],

アクション

条件が true の場合には、ポリシーはアクションを実行します。アクションでは、action キーおよび action の値に応じて追加のキーが使用されます。

  • fail: イントロスペクションが失敗します。失敗のメッセージには、message パラメーターが必要です。
  • set-attribute: ironic ノードの属性を設定します。ironic の属性へのパス (例: /driver_info/ipmi_address) を指定する path フィールドおよび設定する value が必要です。
  • set-capability: ironic ノードのケイパビリティーを設定します。新しいケイパビリティーの名前と値を指定する name および value フィールドが必要です。これにより、このケイパビリティーの既存の値が置き換えられます。たとえば、これを使用してノードのプロファイルを定義します。
  • extend-attribute: set-attribute と同じですが、既存の値を一覧として扱い、その一覧に値を追記します。オプションの unique パラメーターを True に設定すると、対象の値がすでに一覧に含まれている場合には何も追加しません。

以下に例を示します。

"actions": [
  {
    "action": "set-capability",
    "name": "profile",
    "value": "swift-storage"
  }
]

21.2. ポリシーファイルの例

イントロスペクションルールを記載した JSON ファイル (rules.json) の例を以下に示します。

[
  {
    "description": "Fail introspection for unexpected nodes",
    "conditions": [
      {
        "op": "lt",
        "field": "memory_mb",
        "value": 4096
      }
    ],
    "actions": [
      {
        "action": "fail",
        "message": "Memory too low, expected at least 4 GiB"
      }
    ]
  },
  {
    "description": "Assign profile for object storage",
    "conditions": [
      {
        "op": "ge",
        "field": "local_gb",
        "value": 1024
      }
    ],
    "actions": [
      {
        "action": "set-capability",
        "name": "profile",
        "value": "swift-storage"
      }
    ]
  },
  {
    "description": "Assign possible profiles for compute and controller",
    "conditions": [
      {
        "op": "lt",
        "field": "local_gb",
        "value": 1024
      },
      {
        "op": "ge",
        "field": "local_gb",
        "value": 40
      }
    ],
    "actions": [
      {
        "action": "set-capability",
        "name": "compute_profile",
        "value": "1"
      },
      {
        "action": "set-capability",
        "name": "control_profile",
        "value": "1"
      },
      {
        "action": "set-capability",
        "name": "profile",
        "value": null
      }
    ]
  }
]

上記の例は、3 つのルールで構成されています。

  • メモリーが 4096 MiB 未満の場合には、イントロスペクションが失敗します。クラウドから特定のノードを除外する場合は、このルール種別を適用することができます。
  • ハードドライブのサイズが 1 TiB 以上のノードの場合は swift-storage プロファイルが無条件で割り当てられます。
  • ハードドライブが 1 TiB 未満だが 40 GiB を超えているノードは、コンピュートノードまたはコントローラーノードのいずれかに割り当てることができます。openstack overcloud profiles match コマンドを使用して後で最終選択できるように、2 つのケイパビリティー (compute_profile および control_profile) を割り当てています。このプロセスが機能するためには、既存のプロファイルケイパビリティーを削除する必要があります。削除しないと、既存のプロファイルケイパビリティーが優先されます。

プロファイルマッチングルールは、他のノードを変更しません。

注記

イントロスペクションルールを使用して profile 機能を割り当てる場合は常に、既存の値よりこの割り当てた値が優先されます。ただし、すでにプロファイルケイパビリティーを持つノードについては、[PROFILE]_profile ケイパビリティーは無視されます。

21.3. ポリシーファイルのインポート

ポリシーファイルを director にインポートするには、以下の手順を実施します。

手順

  1. ポリシーファイルを director にインポートします。

    $ openstack baremetal introspection rule import rules.json
  2. イントロスペクションのプロセスを実行します。

    $ openstack overcloud node introspect --all-manageable
  3. イントロスペクションが完了したら、ノードとノードに割り当てられたプロファイルを確認します。

    $ openstack overcloud profiles list
  4. イントロスペクションルールに間違いがあった場合には、以下のコマンドを実行してすべてのルールを削除します。

    $ openstack baremetal introspection rule purge

第22章 完全なディスクイメージの作成

メインのオーバークラウドイメージは、パーティション情報またはブートローダーが含まれないフラットパーティションイメージです。director は、ノードをブートする時には別のカーネルおよび ramdisk を使用し、オーバークラウドイメージをディスクに書き込む時に基本的なパーティションレイアウトを作成します。ただし、パーティションレイアウト、ブートローダー、および強化されたセキュリティー機能が含まれる完全なディスクイメージを作成することができます。

重要

以下のプロセスでは、director のイメージビルド機能を使用します。Red Hat では、本項に記載の指針に従うイメージのみをサポートしています。これらとは異なる仕様でビルドされたカスタムイメージはサポートされていません。

22.1. セキュリティー強化手段

完全なディスクイメージには、セキュリティーが重要な機能となる Red Hat OpenStack Platform のデプロイメントに必要な、追加のセキュリティー強化手段が含まれます。

イメージを作成する際のセキュリティーに関する推奨事項

  • /tmp ディレクトリーを別のボリュームまたはパーティションにマウントし、rwnosuidnodevnoexec、および relatime のフラグを付ける。
  • /var/var/log、および /var/log/audit ディレクトリーを別のボリュームまたはパーティションにマウントし、rw および relatime のフラグを付ける。
  • /home ディレクトリーを別のパーティションまたはボリュームにマウントし、rwnodev、および relatime のフラグを付ける。
  • GRUB_CMDLINE_LINUX の設定に以下の変更を加える。

    • 監査を有効にするには、audit=1 カーネルブートフラグを追加します。
    • ブートローダー設定を使用した USB のカーネルサポートを無効にするには、nousb を追加します
    • セキュアでないブートフラグを削除するには、crashkernel=auto を設定します。
  • セキュアでないモジュール (usb-storagecramfsfreevxfsjffs2hfshfsplussquashfsudfvfat) をブラックリストに登録して、読み込まれないようにする。
  • セキュアでないパッケージ (kexec-tools によりインストールされた kdump および telnet) がデフォルトでインストールされるので、それらをイメージから削除する。

22.2. 完全なディスクイメージに関するワークフロー

完全なディスクイメージをビルドするには、以下のワークフローに従います。

  1. ベースの Red Hat Enterprise Linux 8 イメージをダウンロードする。
  2. 登録固有の環境変数を設定する。
  3. パーティションスキーマとサイズを変更してイメージをカスタマイズする。
  4. イメージを作成する。
  5. イメージを director にアップロードする。

22.3. ベースのクラウドイメージのダウンロード

完全なディスクイメージをビルドする前に、ベースとして使用する Red Hat Enterprise Linux の既存のクラウドイメージをダウンロードする必要があります。

手順

  1. Red Hat カスタマーポータルにアクセスします。

  2. トップメニューの ダウンロード をクリックします。
  3. Red Hat Enterprise Linux 8 をクリックします。

    注記

    要求されたら、カスタマーポータルのログイン情報を入力します。

  4. ダウンロードする KVM ゲストイメージを選択します。たとえば、最新の Red Hat Enterprise Linux の KVM ゲストイメージは以下のページにあります。

22.4. ディスクイメージの環境変数

ディスクイメージのビルドプロセスとして、director にはベースイメージと、新規オーバークラウドイメージのパッケージを取得するための登録情報が必要です。これらの属性は、以下に示す Linux の環境変数を使用して定義します。

注記

イメージのビルドプロセスにより、イメージは一時的に Red Hat サブスクリプションに登録され、イメージのビルドプロセスが完了するとシステムの登録が解除されます。

ディスクイメージをビルドするには、Linux の環境変数をお使いの環境と要件に応じて設定します。

DIB_LOCAL_IMAGE
完全なディスクイメージのベースに使用するローカルイメージを設定します。
REG_ACTIVATION_KEY
登録プロセスにおいて、ログイン情報の代わりにアクティベーションキーを使用します。
REG_AUTO_ATTACH
最も互換性のあるサブスクリプションを自動的にアタッチするかどうかを定義します。
REG_BASE_URL
イメージのパッケージが含まれるコンテンツ配信サーバーのベース URL。カスタマーポータル Subscription Management のデフォルトプロセスでは https://cdn.redhat.com を使用します。Red Hat Satellite 6 サーバーを使用している場合は、このパラメーターをお使いの Satellite サーバーのベース URL に設定します。
REG_ENVIRONMENT
組織内の環境に登録します。
REG_METHOD
登録の方法を設定します。Red Hat カスタマーポータルに登録するには portal を使用します。Red Hat Satellite 6 で登録するには、satellite を使用します。
REG_ORG
イメージを登録する組織
REG_POOL_ID
製品のサブスクリプション情報のプール ID
REG_PASSWORD
イメージを登録するユーザーアカウントのパスワードを設定します。
REG_REPOS

リポジトリー名のコンマ区切り文字列。この文字列の各リポジトリーは subscription-manager で有効化されます。

以下に示すセキュリティーが強化された完全なディスクイメージのリポジトリーを使用します。

  • rhel-8-for-x86_64-baseos-eus-rpms
  • rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms
  • rhel-8-for-x86_64-highavailability-eus-rpms
  • ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms
  • openstack-16-for-rhel-8-x86_64-rpms
REG_SAT_URL
オーバークラウドノードを登録する Satellite サーバーのベース URL。このパラメーターには、HTTPS URL ではなく、Satellite の HTTP URL を使用します。たとえば、https://satellite.example.com ではなく http://satellite.example.com を使用します。
REG_SERVER_URL
使用するサブスクリプションサービスのホスト名を設定します。Red Hat カスタマーポータルの場合、デフォルトホスト名は subscription.rhn.redhat.com です。Red Hat Satellite 6 サーバーを使用している場合は、このパラメーターをお使いの Satellite サーバーのホスト名に設定します。
REG_USER
イメージを登録するアカウントのユーザー名を設定します。

環境変数のセットをエクスポートし、ローカルの QCOW2 イメージを一時的に Red Hat カスタマーポータルに登録するには、以下の例に示すコマンドのセットを使用します。

$ export DIB_LOCAL_IMAGE=./rhel-8.0-x86_64-kvm.qcow2
$ export REG_METHOD=portal
$ export REG_USER="[your username]"
$ export REG_PASSWORD="[your password]"
$ export REG_REPOS="rhel-8-for-x86_64-baseos-eus-rpms \
    rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms \
    rhel-8-for-x86_64-highavailability-eus-rpms \
    ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms \
    openstack-16-for-rhel-8-x86_64-rpms"

22.5. ディスクレイアウトのカスタマイズ

デフォルトでは、セキュリティーが強化されたイメージのサイズは 20 GB で、事前定義されたパーティショニングサイズを使用します。ただし、オーバークラウドのコンテナーイメージを収容するには、パーティションレイアウトを変更する必要があります。以降のセクションで説明する手順を実施して、イメージのサイズを 40 GB に増やします。より厳密にご自分のニーズに合わせるために、パーティションレイアウトやディスクのサイズを変更することができます。

パーティションレイアウトとディスクサイズを変更するには、以下の手順に従ってください。

  • DIB_BLOCK_DEVICE_CONFIG 環境変数を使用してパーティショニングスキーマを変更する。
  • DIB_IMAGE_SIZE 環境変数を更新して、イメージのグローバルサイズを変更する。

22.6. パーティショニングスキーマの変更

パーティショニングスキーマを編集して、パーティショニングサイズを変更したり、新規パーティションの作成や既存パーティションの削除を行うことができます。新規パーティショニングスキーマを定義するには、以下の環境変数を使用します。

$ export DIB_BLOCK_DEVICE_CONFIG='<yaml_schema_with_partitions>'

以下の YAML 構成は、オーバークラウドのコンテナーイメージをプルするのに十分なスペースを提供する、論理ボリュームの変更後のパーティションレイアウトを示しています。

export DIB_BLOCK_DEVICE_CONFIG='''
- local_loop:
    name: image0
- partitioning:
    base: image0
    label: mbr
    partitions:
      - name: root
        flags: [ boot,primary ]
        size: 40G
- lvm:
    name: lvm
    base: [ root ]
    pvs:
        - name: pv
          base: root
          options: [ "--force" ]
    vgs:
        - name: vg
          base: [ "pv" ]
          options: [ "--force" ]
    lvs:
        - name: lv_root
          base: vg
          extents: 23%VG
        - name: lv_tmp
          base: vg
          extents: 4%VG
        - name: lv_var
          base: vg
          extents: 45%VG
        - name: lv_log
          base: vg
          extents: 23%VG
        - name: lv_audit
          base: vg
          extents: 4%VG
        - name: lv_home
          base: vg
          extents: 1%VG
- mkfs:
    name: fs_root
    base: lv_root
    type: xfs
    label: "img-rootfs"
    mount:
        mount_point: /
        fstab:
            options: "rw,relatime"
            fsck-passno: 1
- mkfs:
    name: fs_tmp
    base: lv_tmp
    type: xfs
    mount:
        mount_point: /tmp
        fstab:
            options: "rw,nosuid,nodev,noexec,relatime"
            fsck-passno: 2
- mkfs:
    name: fs_var
    base: lv_var
    type: xfs
    mount:
        mount_point: /var
        fstab:
            options: "rw,relatime"
            fsck-passno: 2
- mkfs:
    name: fs_log
    base: lv_log
    type: xfs
    mount:
        mount_point: /var/log
        fstab:
            options: "rw,relatime"
            fsck-passno: 3
- mkfs:
    name: fs_audit
    base: lv_audit
    type: xfs
    mount:
        mount_point: /var/log/audit
        fstab:
            options: "rw,relatime"
            fsck-passno: 4
- mkfs:
    name: fs_home
    base: lv_home
    type: xfs
    mount:
        mount_point: /home
        fstab:
            options: "rw,nodev,relatime"
            fsck-passno: 2
'''

このサンプル YAML コンテンツをイメージのパーティションスキーマのベースとして使用します。パーティションサイズとレイアウトを必要に応じて変更します。

注記

デプロイメント後にパーティションサイズを変更することはできないので、イメージ用に正しいパーティションサイズを定義する必要があります。

22.7. イメージサイズの変更

変更後のパーティショニングスキーマの合計は、デフォルトのディスクサイズ (20 GB) を超える可能性があります。そのような場合には、イメージサイズを変更しなければならない場合があります。イメージサイズを変更するには、イメージを作成する設定ファイルを編集します。

手順

  1. /usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images-python3.yaml のコピーを作成します。

    # cp /usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images-python3.yaml \
    /home/stack/overcloud-hardened-images-python3-custom.yaml
    注記

    UEFI の完全なディスクイメージの場合は、/usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images-uefi-python3.yaml を使用します。

  2. 設定ファイルで DIB_IMAGE_SIZE を編集して、必要な値に調整します。

    ...
    
    environment:
    DIB_PYTHON_VERSION: '3'
    DIB_MODPROBE_BLACKLIST: 'usb-storage cramfs freevxfs jffs2 hfs hfsplus squashfs udf vfat bluetooth'
    DIB_BOOTLOADER_DEFAULT_CMDLINE: 'nofb nomodeset vga=normal console=tty0 console=ttyS0,115200 audit=1 nousb'
    DIB_IMAGE_SIZE: '40' 1
    COMPRESS_IMAGE: '1'
    1
    この値は、新しいディスクサイズの合計に応じて調整してください。
  3. ファイルを保存します。
重要

オーバークラウドをデプロイする際に、director はオーバークラウドイメージの RAW バージョンを作成します。これは、アンダークラウドに、その RAW イメージを収容するのに十分な空き容量がなければならないことを意味します。たとえば、セキュリティーが強化されたイメージのサイズを 40 GB に設定した場合には、アンダークラウドのハードディスクに 40 GB の空き容量が必要となります。

重要

director が物理ディスクにイメージを書き込む際に、ディスクの最後に 64 MB のコンフィグドライブ一次パーティションが作成されます。完全なディスクイメージを作成する場合には、物理ディスクをこの追加パーティションを収容することのできるサイズにしてください。

22.8. 完全なディスクイメージのビルド

環境変数を設定してイメージをカスタマイズしたら、openstack overcloud image build コマンドを使用してイメージを作成します。

手順

  1. 必要なすべての設定ファイルを指定して、openstack overcloud image build コマンドを実行します。

    # openstack overcloud image build \
    --image-name overcloud-hardened-full \
    --config-file /home/stack/overcloud-hardened-images-python3-custom.yaml \ 1
    --config-file /usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images-rhel8.yaml 2
    1
    これが、新しいディスクサイズを指定したカスタムの設定ファイルです。異なるカスタムディスクサイズを使用していない場合は、代わりに元の /usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images-python3.yaml ファイルを使用してください。標準の UEFI の完全なディスクイメージの場合は、overcloud-hardened-images-uefi-python3.yaml を使用します。
    2
    UEFI の完全なディスクイメージの場合は、overcloud-hardened-images-uefi-rhel8.yaml を使用します。

    このコマンドにより、必要なセキュリティー機能がすべて含まれた、overcloud-hardened-full.qcow2 という名前のイメージが作成されます。

22.9. 完全なディスクイメージのアップロード

OpenStack Image (glance) サービスにイメージをアップロードして、Red Hat OpenStack Platform director から使用を開始します。セキュリティーが強化されたイメージをアップロードするには、以下の手順を実施してください。

  1. 新たに生成したイメージの名前を変更し、images ディレクトリーに移動します。

    # mv overcloud-hardened-full.qcow2 ~/images/overcloud-full.qcow2
  2. オーバークラウドの古いイメージをすべて削除します。

    # openstack image delete overcloud-full
    # openstack image delete overcloud-full-initrd
    # openstack image delete overcloud-full-vmlinuz
  3. 新規オーバークラウドイメージをアップロードします。

    # openstack overcloud image upload --image-path /home/stack/images --whole-disk

既存のイメージをセキュリティーが強化されたイメージに置き換える場合は、--update-existing フラグを使用します。このフラグを使用することで、元の overcloud-full イメージがセキュリティーの強化された新しいイメージに書き換えられます。

第23章 直接デプロイの設定

ノードをプロビジョニングする場合、director は iSCSI マウントにオーバークラウドのベースオペレーティングシステムのイメージをマウントし、そのイメージを各ノードのディスクにコピーします。直接デプロイとは、ディスクイメージを HTTP の場所から直接ベアメタルノード上のディスクに書き込む代替方法です。

23.1. アンダークラウドへの直接デプロイインターフェースの設定

iSCSI デプロイインターフェースがデフォルトのデプロイインターフェースです。ただし、直接デプロイインターフェースを有効にして、イメージを HTTP の保管場所からターゲットディスクにダウンロードすることができます。

注記

オーバークラウドノードのメモリー tmpfs には、少なくとも 8 GB の RAM が必要です。

手順
  1. カスタム環境ファイル /home/stack/undercloud_custom_env.yaml を作成または変更して、IronicDefaultDeployInterface を指定します。

    parameter_defaults:
      IronicDefaultDeployInterface: direct
  2. デフォルトでは、各ノードの Bare Metal サービス (ironic) エージェントは、HTTP リンクを通じて Object Storage サービス (swift) に保管されているイメージを取得します。あるいは、ironic は、ironic-conductor HTTP サーバーを通じて、このイメージを直接ノードにストリーミングすることもできます。イメージを提供するサービスを変更するには、/home/stack/undercloud_custom_env.yaml ファイルの IronicImageDownloadSourcehttp に設定します。

    parameter_defaults:
      IronicDefaultDeployInterface: direct
      IronicImageDownloadSource: http
  3. カスタム環境ファイルを undercloud.conf ファイルの DEFAULT セクションに追加します。

    custom_env_files = /home/stack/undercloud_custom_env.yaml
  4. アンダークラウドのインストールを実施します。

    $ openstack undercloud install

第24章 仮想コントロールプレーンの作成

仮想コントロールプレーンは、ベアメタルではなく仮想マシン (VM) 上にあるコントロールプレーンです。仮想コントロールプレーンを使用することで、コントロールプレーンに必要なベアメタルマシンの数を減らすことができます。

本章では、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) および Red Hat Virtualization を使用して、オーバークラウドの RHOSP コントロールプレーンを仮想化する方法について説明します。

24.1. 仮想コントロールプレーンのアーキテクチャー

director を使用して、Red Hat Virtualization クラスターにデプロイされたコントローラーノードを使用するオーバークラウドをプロビジョニングします。その後、これらの仮想コントローラーを仮想コントロールプレーンノードとしてデプロイできます。

注記

仮想コントローラーノードは、Red Hat Virtualization 上でのみサポートされます。

以下のアーキテクチャー図は、仮想コントロールプレーンのデプロイ方法を示しています。オーバークラウドを Red Hat Virtualization の仮想マシン上で実行中のコントローラーノードに分散し、コンピュートノードおよびストレージノードをベアメタル上で実行します。

注記

OpenStack 仮想アンダークラウドは、Red Hat Virtualization 上で実行されます。

仮想コントロールプレーンのアーキテクチャー

Virtualized control plane architecture

OpenStack Bare Metal Provisioning サービス(ironic)には、Red Hat Virtualization の仮想マシン用ドライバー staging-ovirt が含まれています。このドライバーを使用して、Red Hat Virtualization 環境内の仮想ノードを管理できます。このドライバーを使用して、Red Hat Virtualization 環境内の仮想マシンとしてオーバークラウドのコントローラーをデプロイすることもできます。

24.2. RHOSP オーバークラウドのコントロールプレーンを仮想化する際の利点と制限

RHOSP オーバークラウドのコントロールプレーンを仮想化する利点は数多くありますが、すべての設定に適用できる訳ではありません。

利点

オーバークラウドのコントロールプレーンを仮想化することには、ダウンタイムを回避し、パフォーマンスを向上させる数多くの利点があります。

  • ホットプラグおよびホットアンプラグを使用して CPU およびメモリーを必要に応じてスケーリングし、リソースを仮想コントローラーに動的に割り当てることができます。これにより、ダウンタイムを防ぎ、プラットフォームの拡張に合わせて増大した能力を活用できます。
  • 同じ Red Hat Virtualization クラスターに追加のインフラストラクチャー仮想マシンをデプロイすることができます。これにより、データセンターのサーバーフットプリントが最小限に抑えられ、物理ノードの効率が最大化されます。
  • コンポーザブルロールを使用すると、より複雑な RHOSP コントロールプレーンを定義することができ、リソースをコントロールプレーンの特定のコンポーネントに割り当てることができます。
  • 仮想マシンのライブマイグレーション機能により、サービスを中断せずにシステムをメンテナンスすることができます。
  • Red Hat Virtualization がサポートするサードパーティーまたはカスタムツールを統合することができます。

制限

仮想コントロールプレーンには、使用できる構成の種類に制限があります。

  • 仮想 Ceph Storage ノードおよびコンピュートノードはサポートされません。
  • ファイバーチャネルを使用するバックエンドについては、Block Storage (cinder) のイメージからボリュームへの転送はサポートされません。Red Hat Virtualization は N_Port ID Virtualization (NPIV) をサポートしていません。したがって、ストレージのバックエンドからコントローラー (デフォルトで cinder-volume を実行) に LUN をマッピングする必要のある Block Storage (cinder) ドライバーは機能しません。cinder-volume のロールは、仮想コントローラーに含めるのではなく、専用のロールとして作成する必要があります。詳しい情報は、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』の「コンポーザブルサービスとカスタムロール」を参照してください。

24.3. Red Hat Virtualization ドライバーを使用した仮想コントローラーのプロビジョニング

RHOSP および Red Hat Virtualization を使用してオーバークラウドの仮想 RHOSP コントロールプレーンをプロビジョニングするには、以下の手順を実施します。

前提条件

  • Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする、64 ビット x86 プロセッサーが必要です。
  • 以下のソフトウェアがすでにインストールされ、設定されている必要があります。

  • 事前に仮想コントローラーノードを準備しておく必要があります。これらの要件は、ベアメタルのコントローラーノードの要件と同じです。詳しい情報は、「コントローラーノードの要件」を参照してください。
  • オーバークラウドのコンピュートノードおよびストレージノードとして使用するベアメタルノードを、事前に準備しておく必要があります。ハードウェアの仕様については、「コンピュートノードの要件」および「Ceph Storage ノードの要件」を参照してください。POWER (ppc64le) ハードウェアにオーバークラウドのコンピュートノードをデプロイするには、「Red Hat OpenStack Platform for POWER」を参照してください。
  • 論理ネットワークが作成され、ホストネットワークのクラスターで複数ネットワークによるネットワーク分離を使用する用意ができている必要があります。詳しい情報は、『Red Hat Virtualization Administration Guide』の「Logical Networks」を参照してください。
  • 各ノードの内部 BIOS クロックを UTC に設定する必要があります。これにより、タイムゾーンオフセットを適用する前に hwclock が BIOS クロックを同期するとファイルのタイムスタンプに未来の日時が設定される問題を防ぐことができます。
ヒント

パフォーマンスのボトルネックを防ぐために、コンポーザブルロールを使用しデータプレーンサービスをベアメタルのコントローラーノード上に維持します。

手順

  1. director で staging-ovirt ドライバーを有効にするには、undercloud.conf 設定ファイルの enabled_hardware_types パラメーターにこのドライバーを追加します。

    enabled_hardware_types = ipmi,redfish,ilo,idrac,staging-ovirt
  2. アンダークラウドに staging-ovirt ドライバーが含まれることを確認します。

    (undercloud) [stack@undercloud ~]$ openstack baremetal driver list

    アンダークラウドを正しく設定していれば、コマンドにより以下の結果が返されます。

     +---------------------+-----------------------+
     | Supported driver(s) | Active host(s)        |
     +---------------------+-----------------------+
     | idrac               | localhost.localdomain |
     | ilo                 | localhost.localdomain |
     | ipmi                | localhost.localdomain |
     | pxe_drac            | localhost.localdomain |
     | pxe_ilo             | localhost.localdomain |
     | pxe_ipmitool        | localhost.localdomain |
     | redfish             | localhost.localdomain |
     | staging-ovirt       | localhost.localdomain |
  3. オーバークラウドノードの定義テンプレート (例: nodes.json) を更新し、Red Hat Virtualization がホストする仮想マシンを director に登録します。詳しい情報は、「オーバークラウドノードの登録」を参照してください。以下のキー/値のペアを使用して、オーバークラウドでデプロイする仮想マシンの特性を定義します。

    表24.1 オーバークラウド用仮想マシンの設定
    キーこの値に設定します

    pm_type

    oVirt/RHV 仮想マシン用の OpenStack Bare Metal Provisioning (ironic) サービスドライバー staging-ovirt

    pm_user

    Red Hat Virtualization Manager のユーザー名

    pm_password

    Red Hat Virtualization Manager のパスワード

    pm_addr

    Red Hat Virtualization Manager サーバーのホスト名または IP

    pm_vm_name

    コントローラーが作成される Red Hat Virtualization Manager の仮想マシンの名前

    以下に例を示します。

    {
          "nodes": [
              {
                  "name":"osp13-controller-0",
                  "pm_type":"staging-ovirt",
                  "mac":[
                      "00:1a:4a:16:01:56"
                  ],
                  "cpu":"2",
                  "memory":"4096",
                  "disk":"40",
                  "arch":"x86_64",
                  "pm_user":"admin@internal",
                  "pm_password":"password",
                  "pm_addr":"rhvm.example.com",
                  "pm_vm_name":"{vernum}-controller-0",
                  "capabilities": "profile:control,boot_option:local"
              },
              ...
      }

    Red Hat Virtualization Host ごとに 1 つのコントローラーを設定します。

  4. Red Hat Virtualization でアフィニティーグループを「ソフトネガティブアフィニティー」に設定し、コントローラー用仮想マシンの高可用性を確保します。詳しい情報は、『Red Hat Virtualization Virtual Machine Management Guide』の「Affinity Groups」を参照してください。
  5. Red Hat Virtualization Manager のインターフェースにアクセスし、これを使用してそれぞれの VLAN をコントローラー用仮想マシンの個別の論理仮想 NIC にマッピングします。詳しい情報は、『Red Hat Virtualization Administration Guide』の「Logical Networks」を参照してください。
  6. director とコントローラー用仮想マシンの仮想 NIC で no_filter を設定し、仮想マシンを再起動します。これにより、コントローラー用仮想マシンにアタッチされたネットワークで MAC スプーフィングフィルターが無効化されます。詳しい情報は、『Red Hat Virtualization Administration Guide』の「Virtual Network Interface Cards」を参照してください。
  7. オーバークラウドをデプロイして、新しい仮想コントローラーノードを環境に追加します。

    (undercloud) [stack@undercloud ~]$ openstack overcloud deploy --templates

パート V. トラブルシューティングとヒント

第25章 director のエラーに関するトラブルシューティング

director プロセスの特定の段階で、エラーが発生する可能性があります。本項では、典型的な問題の診断について説明します。

25.1. ノードの登録に関するトラブルシューティング

ノード登録における問題は、通常ノードの情報が間違っていることが原因で発生します。このような場合には、ノードの情報が含まれるテンプレートファイルを検証して、インポートされたノードの情報を修正します。

手順

  1. stackrc ファイルを取得します。

    $ source ~/stackrc
  2. --validate-only オプションを指定して、ノードのインポートコマンドを実行します。このオプションを指定した場合には、インポートを実施せずにノードのテンプレートを検証します。

    (undercloud) $ openstack overcloud node import --validate-only ~/nodes.json
    Waiting for messages on queue 'tripleo' with no timeout.
    
    Successfully validated environment file
  3. インポートしたノードの誤った情報を修正するには、openstack baremetal コマンドを実行してノードの情報を更新します。ネットワーク設定の詳細を変更する方法を、以下の例に示します。

    1. インポートしたノードに割り当てられたポートの UUID を特定します。

      $ source ~/stackrc
      (undercloud) $ openstack baremetal port list --node [NODE UUID]
    2. MAC アドレスを更新します。

      (undercloud) $ openstack baremetal port set --address=[NEW MAC] [PORT UUID]
    3. ノードの新しい IPMI アドレスを設定します。

      (undercloud) $ openstack baremetal node set --driver-info ipmi_address=[NEW IPMI ADDRESS] [NODE UUID]

25.2. ハードウェアのイントロスペクションに関するトラブルシューティング

イントロスペクションのプロセスは最後まで実行する必要があります。ただし、イントロスペクション ramdisk が応答しない場合には、ironic-inspector がデフォルトの 1 時間が経過した後にタイムアウトします。イントロスペクション ramdisk にバグがあることを示している可能性もありますが、通常は環境の設定ミス (特に、BIOS のブート設定) によりこのタイムアウトが発生します。

典型的な環境の誤設定の問題を診断して解決するには、以下の手順を実施します。

手順

  1. stackrc ファイルを取得します。

    $ source ~/stackrc
  2. director は OpenStack Object Storage (swift) を使用して、イントロスペクションプロセス中に取得するハードウェアデータを保存します。このサービスが稼働していない場合には、イントロスペクションは失敗する場合があります。以下のコマンドを実行して、OpenStack Object Storage に関連