4.2. director の設定パラメーター
以下の一覧で、undercloud.conf
ファイルを設定するパラメーターについて説明します。エラーを避けるために、パラメーターは決して該当するセクションから削除しないでください。
デフォルト
undercloud.conf
ファイルの [DEFAULT]
セクションで定義されているパラメーターを以下に示します。
- additional_architectures
オーバークラウドがサポートする追加の (カーネル) アーキテクチャーの一覧。現在、オーバークラウドは
ppc64le
アーキテクチャーをサポートしています。注記ppc64le のサポートを有効にする場合には、
ipxe_enabled
をFalse
に設定する必要もあります。- certificate_generation_ca
-
要求した証明書に署名する CA の
certmonger
のニックネーム。generate_service_certificate
パラメーターを設定した場合に限り、このオプションを使用します。local
CA を選択する場合は、certmonger はローカルの CA 証明書を/etc/pki/ca-trust/source/anchors/cm-local-ca.pem
に抽出し、証明書をトラストチェーンに追加します。 - clean_nodes
- デプロイメントを再実行する前とイントロスペクションの後にハードドライブを消去するかどうかを定義します。
- cleanup
-
一時ファイルをクリーンナップします。デプロイメントコマンドの実行後もデプロイメント時に使用した一時ファイルをそのまま残すには、このパラメーターを
False
に設定します。ファイルを残すと、生成されたファイルのデバッグを行う場合やエラーが発生した場合に役に立ちます。 - container_cli
-
コンテナー管理用の CLI ツール。このパラメーターは、
podman
に設定したままにしてください。Red Hat Enterprise Linux 8.1 は、podman
のみをサポートします。 - container_healthcheck_disabled
-
コンテナー化されたサービスのヘルスチェックを無効にします。Red Hat は、ヘルスチェックを有効にし、このオプションを
false
に設定したままにすることを推奨します。 - container_images_file
コンテナーイメージ情報が含まれる heat 環境ファイル。このファイルには、以下のエントリーを含めることができます。
- 必要なすべてのコンテナーイメージのパラメーター
-
必要なイメージの準備を実施する
ContainerImagePrepare
パラメーター。このパラメーターが含まれるファイルの名前は、通常containers-prepare-parameter.yaml
です。
- container_insecure_registries
-
podman
が使用するセキュアではないレジストリーの一覧。プライベートコンテナーレジストリー等の別のソースからイメージをプルする場合には、このパラメーターを使用します。多くの場合、podman
は Red Hat Container Catalog または Satellite サーバー (アンダークラウドが Satellite に登録されている場合) のいずれかからコンテナーイメージをプルするための証明書を持ちます。 - container_registry_mirror
-
設定により
podman
が使用するオプションのregistry-mirror
- custom_env_files
- アンダークラウドのインストールに追加する新たな環境ファイル
- deployment_user
-
アンダークラウドをインストールするユーザー。現在のデフォルトユーザー
stack
を使用する場合には、このパラメーターを未設定のままにします。 - discovery_default_driver
-
自動的に登録されたノードのデフォルトドライバーを設定します。
enable_node_discovery
パラメーターを有効にし、enabled_hardware_types
の一覧にドライバーを含める必要があります。 - enable_ironic、enable_ironic_inspector、enable_mistral、enable_nova、enable_tempest、enable_validations、enable_zaqar
-
director で有効にするコアサービスを定義します。これらのパラメーターは
true
に設定されたままにします。 - enable_node_discovery
-
introspection ramdisk を PXE ブートする不明なノードを自動的に登録します。新規ノードは、
fake_pxe
ドライバーをデフォルトとして使用しますが、discovery_default_driver
を設定して上書きすることもできます。また、イントロスペクションルールを使用して、新しく登録したノードにドライバーの情報を指定することもできます。 - enable_novajoin
-
アンダークラウドに
novajoin
メタデータサービスをインストールするかどうかを定義します。 - enable_routed_networks
- ルーティングされたコントロールプレーンネットワークのサポートを有効にするかどうかを定義します。
- enable_swift_encryption
- 保存データの Swift 暗号化を有効にするかどうかを定義します。
- enable_telemetry
-
アンダークラウドに OpenStack Telemetry サービス (gnocchi、aodh、panko) をインストールするかどうかを定義します。Telemetry サービスを自動的にインストール/設定するには、
enable_telemetry
パラメーターをtrue
に設定します。デフォルト値はfalse
で、アンダークラウド上の telemetry が無効になります。このパラメーターは、メトリックデータを消費する Red Hat CloudForms などの他の製品を使用する場合に必要です。 - enabled_hardware_types
- アンダークラウドで有効にするハードウェアタイプの一覧
- generate_service_certificate
-
アンダークラウドのインストール時に SSL/TLS 証明書を生成するかどうかを定義します。これは
undercloud_service_certificate
パラメーターに使用します。アンダークラウドのインストールで、作成された証明書/etc/pki/tls/certs/undercloud-[undercloud_public_vip].pem
を保存します。certificate_generation_ca
パラメーターで定義される CA はこの証明書に署名します。 - heat_container_image
- 使用する heat コンテナーイメージの URL。未設定のままにします。
- heat_native
-
heat-all
を使用してホストベースのアンダークラウド設定を実行します。true
のままにします。 - hieradata_override
-
director に Puppet hieradata を設定するための
hieradata
オーバーライドファイルへのパス。これにより、サービスに対してundercloud.conf
パラメーター以外のカスタム設定を行うことができます。設定すると、アンダークラウドのインストールでこのファイルが/etc/puppet/hieradata
ディレクトリーにコピーされ、階層の最初のファイルに設定されます。この機能の使用についての詳細は、「 アンダークラウドへの hieradata の設定」を参照し てください。 - inspection_extras
-
イントロスペクション時に追加のハードウェアコレクションを有効化するかどうかを定義します。このパラメーターを使用するには、イントロスペクションイメージに
python-hardware
またはpython-hardware-detect
パッケージが必要です。 - inspection_interface
-
ノードのイントロスペクションに director が使用するブリッジ。これは、director の設定により作成されるカスタムのブリッジです。
LOCAL_INTERFACE
でこのブリッジをアタッチします。これは、デフォルトのbr-ctlplane
のままにします。 - inspection_runbench
-
ノードイントロスペクション時に一連のベンチマークを実行します。ベンチマークを有効にするには、このパラメーターを
true
に設定します。このオプションは、登録ノードのハードウェアを検査する際にベンチマーク分析を実行する場合に必要です。 - ipa_otp
-
IPA サーバーにアンダークラウドノードを登録するためのワンタイムパスワードを定義します。これは、
enable_novajoin
が有効な場合に必要です。 - ipv6_address_mode
アンダークラウドのプロビジョニングネットワーク用の IPv6 アドレス設定モード。このパラメーターに設定できる値の一覧を以下に示します。
- dhcpv6-stateless: ルーター広告 (RA) を使用するアドレス設定と DHCPv6 を使用するオプションの情報
- dhcpv6-stateful: DHCPv6 を使用するアドレス設定とオプションの情報
- ipxe_enabled
-
iPXE か標準の PXE のいずれを使用するか定義します。デフォルトは
true
で iPXE を有効化します。標準の PXE を使用するには、このパラメーターをfalse
に設定します。 - local_interface
director のプロビジョニング NIC 用に選択するインターフェース。director は、DHCP および PXE ブートサービスにもこのデバイスを使用します。この値を選択したデバイスに変更します。接続されているデバイスを確認するには、
ip addr
コマンドを使用します。ip addr
コマンドの出力結果の例を、以下に示します。2: em0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast state UP qlen 1000 link/ether 52:54:00:75:24:09 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff inet 192.168.122.178/24 brd 192.168.122.255 scope global dynamic em0 valid_lft 3462sec preferred_lft 3462sec inet6 fe80::5054:ff:fe75:2409/64 scope link valid_lft forever preferred_lft forever 3: em1: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc noop state DOWN link/ether 42:0b:c2:a5:c1:26 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
この例では、外部 NIC は
em0
を使用し、プロビジョニング NIC は、現在設定されていないem1
を使用します。この場合は、local_interface
をem1
に設定します。この設定スクリプトにより、このインターフェースがinspection_interface
パラメーターで定義したカスタムのブリッジにアタッチされます。- local_ip
-
director のプロビジョニング NIC 用に定義する IP アドレス。director は、DHCP および PXE ブートサービスにもこの IP アドレスを使用します。この IP アドレスが環境内の既存の IP アドレスまたはサブネットと競合するなどの理由により、プロビジョニングネットワークに別のサブネットを使用する場合以外は、この値をデフォルトの
192.168.24.1/24
のままにします。 - local_mtu
-
local_interface
に使用する最大伝送単位 (MTU)。アンダークラウドでは 1500 以下にします。 - local_subnet
-
PXE ブートと DHCP インターフェースに使用するローカルサブネット。
local_ip
アドレスがこのサブネットに含まれている必要があります。デフォルトはctlplane-subnet
です。 - net_config_override
-
ネットワーク設定のオーバーライドテンプレートへのパス。このパラメーターを設定すると、アンダークラウドは JSON 形式のテンプレートを使用して
os-net-config
でネットワークを設定し、undercloud.conf
で設定したネットワークパラメーターを無視します。ボンディングを設定する場合、またはインターフェースにオプションを追加する場合に、このパラメーターを使用します。/usr/share/python-tripleoclient/undercloud.conf.sample
の例を参照してください。 - networks_file
-
heat
をオーバーライドするネットワークファイル - output_dir
- 状態、処理された heat テンプレート、および Ansible デプロイメントファイルを出力するディレクトリー
- overcloud_domain_name
オーバークラウドをデプロイする際に使用する DNS ドメイン名
注記オーバークラウドを設定する際に、
CloudDomain
にこのパラメーターと同じ値を設定する必要があります。オーバークラウドを設定する際に、環境ファイルでこのパラメーターを設定します。- roles_file
- アンダークラウドのインストールで、デフォルトロールファイルを上書きするのに使用するロールファイル。director のインストールにデフォルトのロールファイルが使用されるように、このパラメーターは未設定のままにすることを強く推奨します。
- scheduler_max_attempts
- スケジューラーがインスタンスのデプロイを試行する最大回数。スケジューリング時に競合状態にならないように、この値を 1 度にデプロイする予定のベアメタルノードの数以上に指定する必要があります。
- service_principal
- この証明書を使用するサービスの Kerberos プリンシパル。FreeIPA など CA で Kerberos プリンシパルが必要な場合に限り、このパラメーターを使用します。
- subnets
-
プロビジョニングおよびイントロスペクション用のルーティングネットワークのサブネットの一覧。デフォルト値に含まれるのは、
ctlplane-subnet
サブネットのみです。詳細は、「サブネット」を参照してください。 - templates
- 上書きする heat テンプレートファイル
- undercloud_admin_host
-
SSL/TLS 経由の director の管理 API エンドポイントに定義する IP アドレスまたはホスト名。director の設定により、IP アドレスは
/32
ネットマスクを使用するルーティングされた IP アドレスとして director のソフトウェアブリッジに接続されます。 - undercloud_debug
-
アンダークラウドサービスのログレベルを
DEBUG
に設定します。DEBUG
ログレベルを有効にするには、この値をtrue
に設定します。 - undercloud_enable_selinux
-
デプロイメント時に、SELinux を有効または無効にします。問題をデバッグする場合以外は、この値を
true
に設定したままにすることを強く推奨します。 - undercloud_hostname
- アンダークラウドの完全修飾ホスト名を定義します。本パラメータを指定すると、アンダークラウドのインストールでホスト名すべてに設定されます。指定しないと、アンダークラウドは現在のホスト名を使用しますが、システムのホスト名すべてを適切に設定しておく必要があります。
- undercloud_log_file
-
アンダークラウドのインストールログおよびアップグレードログを保管するログファイルへのパス。デフォルトでは、ログファイルはホームディレクトリー内の
install-undercloud.log
です。たとえば、/home/stack/install-undercloud.log
のようになります。 - undercloud_nameservers
- アンダークラウドのホスト名解決に使用する DNS ネームサーバーの一覧
- undercloud_ntp_servers
- アンダークラウドの日付と時刻を同期できるようにする Network Time Protocol サーバーの一覧
- undercloud_public_host
-
SSL/TLS 経由の director のパブリック API エンドポイントに定義する IP アドレスまたはホスト名。director の設定により、IP アドレスは
/32
ネットマスクを使用するルーティングされた IP アドレスとして director のソフトウェアブリッジに接続されます。 - undercloud_service_certificate
- OpenStack SSL/TLS 通信の証明書の場所とファイル名。理想的には、信頼できる認証局から、この証明書を取得します。それ以外の場合は、独自の自己署名の証明書を生成します。
- undercloud_timezone
- アンダークラウド用ホストのタイムゾーン。タイムゾーンを指定しなければ、director は既存のタイムゾーン設定を使用します。
- undercloud_update_packages
- アンダークラウドのインストール時にパッケージを更新するかどうかを定義します。
サブネット
undercloud.conf
ファイルには、各プロビジョニングサブネットの名前が付いたセクションがあります。たとえば、ctlplane-subnet
という名前のサブネットを作成するには、undercloud.conf
ファイルで以下のような設定を使用します。
[ctlplane-subnet] cidr = 192.168.24.0/24 dhcp_start = 192.168.24.5 dhcp_end = 192.168.24.24 inspection_iprange = 192.168.24.100,192.168.24.120 gateway = 192.168.24.1 masquerade = true
プロビジョニングネットワークは、環境に応じて、必要なだけ指定することができます。
- cidr
-
オーバークラウドインスタンスの管理に director が使用するネットワーク。これは、アンダークラウドの
neutron
サービスが管理するプロビジョニングネットワークです。プロビジョニングネットワークに別のサブネットを使用しない限り、この値はデフォルト (192.168.24.0/24
) のままにします。 - masquerade
外部ネットワークへのアクセスのために、
cidr
で定義したネットワークをマスカレードするかどうかを定義します。このパラメーターにより、director 経由で外部ネットワークにアクセスすることができるように、プロビジョニングネットワークにネットワークアドレス変換 (NAT) の一部メカニズムが提供されます。注記director 設定は、適切な
sysctl
カーネルパラメーターを使用して IP フォワーディングも自動的に有効化します。- dhcp_start、dhcp_end
- オーバークラウドノードの DHCP 割り当て範囲 (開始アドレスと終了アドレス)。ノードを割り当てるのに十分な IP アドレスがこの範囲に含まれるようにします。
- dhcp_exclude
- DHCP 割り当て範囲で除外する IP アドレス
- dns_nameservers
-
サブネットに固有の DNS ネームサーバー。サブネットにネームサーバーが定義されていない場合には、サブネットは
undercloud_nameservers
パラメーターで定義されるネームサーバーを使用します。 - gateway
-
オーバークラウドインスタンスのゲートウェイ。外部ネットワークにトラフィックを転送するアンダークラウドのホストです。director に別の IP アドレスを使用する場合または直接外部ゲートウェイを使用する場合以外は、この値はデフォルト (
192.168.24.1
) のままにします。 - host_routes
-
このネットワーク上のオーバークラウドインスタンス用の neutron が管理するサブネットのホストルート。このパラメーターにより、アンダークラウド上の
local_subnet
のホストルートも設定されます。 - inspection_iprange
-
検査プロセス中に使用するこのネットワーク上のノードの一時的な IP 範囲。この範囲は、
dhcp_start
とdhcp_end
で定義された範囲と重複することはできませんが、同じ IP サブネット内になければなりません。
実際の構成に応じて、これらのパラメーターの値を変更してください。完了したら、ファイルを保存します。