3.2. DHCP リレーの設定
DHCP リレーサービスは、リクエストを転送したいリモートネットワークセグメントに接続されているスイッチ、ルーター、またはサーバーで実行します。
アンダークラウド上で DHCP リレーサービスを実行しないでください。
アンダークラウドは、プロビジョニングネットワーク上の 2 つの DHCP サーバーを使用します。
- イントロスペクション DHCP サーバー。
- プロビジョニング DHCP サーバー。
DHCP リレーは、アンダークラウド上の両方の DHCP サーバーに DHCP リクエストを転送するように設定する必要があります。
UDP ブロードキャストに対応するデバイスで UDP ブロードキャストを使用して、アンダークラウドのプロビジョニングネットワークが接続されている L2 ネットワークセグメントに DHCP 要求をリレーすることができます。または、DHCP 要求を特定の IP アドレスにリレーする UDP ユニキャストを使用することができます。
特定のデバイス種別での DHCP リレーの設定は、本書の対象外となっています。本ガイドでは参考として、ISC DHCP ソフトウェアの実装を使用した DHCP リレー設定の例を説明します。詳細は、dhcrelay(8) の man ページを参照してください。
DHCP オプション 79 は、一部のリレー、特に DHCPv6 アドレスを提供するリレー、および元の MAC アドレスを渡さないリレーに必要です。詳細は、RFC6939 を参照してください。
ブロードキャスト DHCP リレー
この方法では、UDP ブロードキャストトラフィックを使用して DHCP 要求を、DHCP サーバーが存在する L2 ネットワークセグメントにリレーします。ネットワークセグメント上のすべてのデバイスがブロードキャストトラフィックを受信します。UDP ブロードキャストを使用する場合は、アンダークラウド上の両方の DHCP サーバーがリレーされた DHCP 要求を受信します。実装に応じて、インターフェイスまたは IP ネットワークアドレスを指定して設定できます。
- インターフェイス
- DHCP 要求がリレーされる L2 ネットワークセグメントに接続されるインターフェイスを指定します。
- IP ネットワークアドレス
- DHCP 要求がリレーされる IP ネットワークのネットワークアドレスを指定します。
ユニキャスト DHCP リレー
この方法では、UDP ユニキャストトラフィックを使用して DHCP 要求を特定の DHCP サーバーにリレーします。UDP ユニキャストを使用する場合には、DHCP リレーを提供するデバイスが、アンダークラウド上のイントロスペクション用に使用されるインターフェイスに割り当てられた IP アドレスと、ctlplane
ネットワーク用の DHCP サービスをホストするために OpenStack Networking (neutron) サービスが作成するネットワーク名前空間の IP アドレスの両方に対して、DHCP 要求をリレーするように設定する必要があります。
イントロスペクションに使用されるインターフェイスは、undercloud.conf
ファイルで inspection_interface
として定義されるインターフェイスです。このパラメーターを設定していない場合には、アンダークラウドのデフォルトインターフェイスは br-ctlplane
になります。
br-ctlplane
インターフェイスをイントロスペクションに使用するのは一般的です。undercloud.conf
ファイルで local_ip
として定義する IP アドレスは、br-ctlplane
インターフェイス上にあります。
Neutron DHCP 名前空間に確保される IP アドレスは、undercloud.conf
ファイルの local_subnet
で設定する IP 範囲内で利用可能な最初のアドレスです。IP 範囲内の最初のアドレスは、設定の dhcp_start
で定義するアドレスです。たとえば、以下の設定を使用する場合、192.168.10.10
がその IP アドレスになります。
[DEFAULT] local_subnet = leaf0 subnets = leaf0,leaf1,leaf2 [leaf0] cidr = 192.168.10.0/24 dhcp_start = 192.168.10.10 dhcp_end = 192.168.10.90 inspection_iprange = 192.168.10.100,192.168.10.190 gateway = 192.168.10.1 masquerade = False
DHCP 名前空間の IP アドレスは自動的に割り当てられます。多くの場合、これは IP 範囲の最初のアドレスになります。これを確認するには、アンダークラウドで以下のコマンドを実行します。
$ openstack port list --device-owner network:dhcp -c "Fixed IP Addresses" +----------------------------------------------------------------------------+ | Fixed IP Addresses | +----------------------------------------------------------------------------+ | ip_address='192.168.10.10', subnet_id='7526fbe3-f52a-4b39-a828-ec59f4ed12b2' | +----------------------------------------------------------------------------+ $ openstack subnet show 7526fbe3-f52a-4b39-a828-ec59f4ed12b2 -c name +-------+--------+ | Field | Value | +-------+--------+ | name | leaf0 | +-------+--------+
dhcrelay
の設定例
以下の例では、dhcp
パッケージの dhcrelay
コマンドは以下の設定を使用します。
-
DHCP の受信要求をリレーするインターフェイスは
eth1
、eth2
、eth3
です。 -
ネットワークセグメント上のアンダークラウドの DHCP サーバーが接続されているインターフェイスは
eth0
です。 -
イントロスペクションに使用される DHCP サーバーがリッスンしている IP アドレスは
192.168.10.1
です。 -
プロビジョニングに使用される DHCP サーバーがリッスンしている IP アドレスは
192.168.10.10
です。
これで、dhcrelay
コマンドは以下のようになります。
dhcrelay
バージョン 4.2.x:$ sudo dhcrelay -d --no-pid 192.168.10.10 192.168.10.1 \ -i eth0 -i eth1 -i eth2 -i eth3
dhcrelay
バージョン 4.3.x 以降:$ sudo dhcrelay -d --no-pid 192.168.10.10 192.168.10.1 \ -iu eth0 -id eth1 -id eth2 -id eth3
Cisco IOS ルーティングスイッチの設定例
この例では、次のタスクを実行するために、以下に示す Cisco IOS 設定を使用しています。
- プロビジョニングネットワークに使用する VLAN を設定する。
- リーフの IP アドレスを追加する。
-
IP アドレス
192.168.10.1
をリッスンするイントロスペクション用 DHCP サーバーに、UDP および BOOTP 要求を転送する。 -
IP アドレス
192.168.10.10
をリッスンするプロビジョニング用 DHCP サーバーに、UDP および BOOTP 要求を転送する。
interface vlan 2 ip address 192.168.24.254 255.255.255.0 ip helper-address 192.168.10.1 ip helper-address 192.168.10.10 !
これでプロビジョニングネットワークの設定が完了したので、残りのオーバークラウドリーフネットワークを設定することができます。