第2章 ML2/OVN の操作
Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) のネットワークは、Networking サービス (neutron) によって管理されます。Networking サービスの中核は Modular Layer 2 (ML2) プラグインで、RHOSP ML2 プラグインのデフォルトメカニズムドライバーは Open Virtual Networking (OVN) メカニズムドライバーです。
以前の RHOSP バージョンでは、デフォルトで Open vSwitch (OVS) メカニズムドライバーが使用されていました。RHOSP 16.0 以降のすべての新規デプロイメントについて、Red Hat では ML2/OVN をデフォルトのメカニズムドライバーとして選択しました。これは、今日のほとんどのお客様にとって ML2/OVS メカニズムドライバー以上のメリットが即座に得られるためです。Red Hat およびコミュニティーが継続して ML2/OVN 機能セットの拡張および改善を行っているため、これらのメリットはリリースと共に拡大します。
既存の Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) デプロイメントで ML2/OVS メカニズムドライバーが使用されている場合、OVS ドライバーを ML2/OVN メカニズムドライバーに置き換えるメリットおよび現実性の評価をする必要があります。Red Hat は、RHOSP 16.1 の ML2/OVN への直接移行をサポートしていません。ML2/OVN メカニズムドライバーに移行する前に、最新の RHOSP 16.2 バージョンにアップグレードする必要があります。
2.1. RHOSP OVN アーキテクチャーのコンポーネントリスト
RHOSP OVN アーキテクチャーでは、Networking API をサポートするために OVS Modular Layer 2 (ML2) メカニズムドライバーが OVN ML2 メカニズムドライバーに置き換えられます。OVN は、Red Hat OpenStack Platform のネットワークサービスを提供します。
図 2.1 に示すように、OVN アーキテクチャーは次のコンポーネントとサービスで設定されます。
- OVN メカニズムドライバーを備えた ML2 プラグイン
- ML2 プラグインは、OpenStack 固有のネットワーク設定を、プラットフォーム非依存の OVN 論理ネットワーク設定に変換します。通常、コントローラーノード上で実行されます。
- OVN northbound (NB) データベース (
ovn-nb
) -
このデータベースは、OVN ML2 プラグインからの論理 OVN ネットワーク設定を保管します。通常コントローラーノードで実行され、TCP ポート
6641
をリッスンします。 - OVN northbound サービス (
ovn-northd
) - このサービスは OVN NB データベースからの論理ネットワーク設定を論理データパスフローに変換して、それらを OVN Southbound データベースに投入します。通常、コントローラーノード上で実行されます。
- OVN southbound (SB) データベース (
ovn-sb
) -
このデータベースは、変換された論理データパスフローを保管します。通常コントローラーノードで実行され、TCP ポート
6642
をリッスンします。 - OVN コントローラー (
ovn-controller
) -
このコントローラーは OVN SB データベースに接続して Open vSwitch コントローラーとして機能し、ネットワークトラフィックの制御とモニタリングを行います。これにより、
OS::Tripleo::Services::OVNController
が定義されているすべてのコンピュートおよびゲートウェイノードで実行されます。 - OVN メタデータエージェント (
ovn-metadata-agent
) -
このエージェントは、OVS インターフェイス、ネットワーク名前空間、メタデータ API 要求のプロキシーに使用される HAProxy プロセスを管理するための
haproxy
インスタンスを作成します。このエージェントは、OS::TripleO::Services::OVNMetadataAgent
が定義されているすべてのコンピュートおよびゲートウェイノードで実行されます。 - OVS データベースサーバー (OVSDB)
-
OVN の Northbound および Southbound データベースをホストします。また、
ovs-vswitchd
と連携して OVS データベースconf.db
をホストします。
NB データベースのスキーマファイルは /usr/share/ovn/ovn-nb.ovsschema
にあり、SB データベースのスキーマファイルは /usr/share/ovn/ovn-sb.ovsschema
にあります。
図2.1 RHOSP 環境の OVN アーキテクチャー
