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第6章 アプリケーションライフサイクルの作成

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「アプリケーションライフサイクルの定義」 では、アプリケーションライフサイクルを定義し、それが Red Hat Satellite 6 にとって重要な理由を説明しました。本章では、アプリケーションライフサイクルのプランニングと Red Hat Satellite 6 での実装を説明します。

6.1. アプリケーションライフサイクルの再検討

ここまで見てきたように、アプリケーションライフサイクルはあるステージでシステムがどのように表示されるかを定義します。しかし、実際のライフサイクルは、組織と、組織が特定の実稼働チェーンを構成する方法によって異なります。

たとえば、メールサーバーの場合は、実際の使用における実稼働レベルのサーバーと、最新のメールサーバーパッケージをテストするテストサーバーという、単純なアプリケーションライフサイクルのみを必要とします。テストサーバーが初期段階をパスすれば、実稼働レベルのサーバーで新パッケージを使用するように設定できます。

別の例としては、ソフトウェア製品の開発ライフサイクルがあります。開発環境でソフトウェアの新しい部分を開発し、品質保証環境でこれをテストしてベータ版としてプレリリースした後、実稼働レベルのアプリケーションとしてリリースします。

各アプリケーションライフサイクルでは、環境 と呼ばれる段階を使用します。各環境は、システムに対して特定の状態として機能します。各環境は前の環境に続くもので、アプリケーションライフサイクルを構成することになる環境チェーンを作り出します。アプリケーションライフサイクルはそれぞれ、初期の ライブラリー が備わった状態で開始し、これは Definitive Media Library (DML) 内の中央ソースとして機能します。ライブラリー環境には、ここまでの章で同期した全コンテンツが含まれています。ここからは、ライブラリー環境からリンクされる新たな環境を作成します。

6.2. 新規アプリケーションライフサイクルの作成

本書のシナリオでは、ACME の Exampleware を開発してリリースする単純なアプリケーションライフサイクルを作成します。初期環境にライブラリー環境を使用し、その後 開発テスト、および 実稼働 の 3 つの環境をこの順に続けます。

Web UI をご利用の場合

コンテンツ > ライフサイクル環境 に移動します。お使いのアプリケーションライフサイクルにおける現在の環境が表示されます。この時点では、ライブラリー環境しか存在しません。

新規環境パス をクリックして、新規のアプリケーションライフサイクルを起動します。ライブラリーに新規環境を追加するフォームが表示されます。名前Development と入力すると、ラベル が自動的に完了します。説明Environment for ACME’s Development Team と入力します。保存 をクリックします。

環境一覧に戻ります。開発環境の新たなテーブルが表示されます。このテーブルは、新規のアプリケーションライフサイクルを示します。これで残りの環境をアプリケーションライフサイクルに追加できます。

新規テーブルの上にある 新規環境の追加 をクリックします。名前Testing説明Environment for ACME’s Quality Engineering Team と入力して、保存 をクリックします。

再度 新規環境の追加 をクリックします。名前Production説明Environment for ACME's Product Releases と入力して、保存 をクリックします。

これで DevelopmentTesting、および Production という 3 つの環境が揃ったテーブルのアプリケーションライフサイクルが表示されます。

CLI をご利用の場合

各環境で hammer lifecycle-environment create を実行します。前の環境を指定するには、以下のように --prior オプションを使用します。

# hammer lifecycle-environment create \
--name "Development" \
--description "Environment for ACME's Development Team" \
--prior "Library" \
--organization "ACME"
# hammer lifecycle-environment create \
--name "Testing" \
--description "Environment for ACME's Quality Engineering Team" \
--prior "Development" \
--organization "ACME"
# hammer lifecycle-environment create \
--name "Production" \
--description "Environment for ACME's Product Releases" \
--prior "Testing" \
--organization "ACME"

hammer lifecycle-environment paths コマンドでチェーンを確認できます。

# hammer lifecycle-environment paths --organization "ACME"
-----------------------------------------------
LIFECYCLE PATH
-----------------------------------------------
Library >> Development >> Testing >> Production
-----------------------------------------------

6.3. Capsule Server へのライフサイクル環境の追加

以下の手順は、Capsule Server を使用してコンテンツをプロビジョニングする環境に対するオプションです。

Capsule Server でコンテンツ機能が有効な場合は、環境を追加する必要があります。環境を追加すると、Capsule Server で Satellite Server のコンテンツを同期し、コンテンツをホストシステムに提供できます。

Capsule Server は、Satellite Server の Hammer CLI、または Web UI を使用して設定できます。

Web UI をご利用の場合

インフラストラクチャー > Capsule に移動し、Capsule を選択します。

編集 をクリックします。

ライフサイクル環境タブで Env を選択します。

カプセルのコンテンツを同期するには、概要タブの 同期 ボタンをクリックします。

以下のいずれかのオプションを選択します。

  • 最適同期
  • 完全同期

CLI をご利用の場合

Capsule Server の一覧を表示し、ID を書き留めます。

# hammer capsule list

その ID を使用して、Capsule Server の詳細を確認します。

# hammer capsule info --id capsule_id_number

利用可能なライフサイクル環境を確認し、環境 ID を書き留めます。

# hammer capsule content available-lifecycle-environments \
--id capsule_id_number

利用可能なライフサイクル環境は Capsule Server に対して利用可能ですが、現在接続されていません。

ライフサイクル環境を Capsule Server に追加します。

# hammer capsule content add-lifecycle-environment \
--id capsule_id_number --environment-id environment_id_number

Capsule Server に追加する各ライフサイクル環境に対して手順を繰り返します。

Satellite Server 環境のすべてのコンテンツを Capsule Server に同期するには、以下のコマンドを実行します。

# hammer capsule content synchronize --id capsule_id_number

Satellite Server 環境の特定のライフサイクル環境を Capsule Server と同期するには、以下のコマンドを実行します。

# hammer capsule content synchronize --id external_capsule_id_number \
--environment-id environment_id_number

ライフサイクル環境への作業は『アーキテクチャーガイド』「ライフサイクル環境」を参照してください。

6.4. アプリケーションライフサイクルでのコンテンツのプロモーション

アプリケーションライフサイクルのチェーンでは、コンテンツはある環境から次の環境に移動します。このプロセスは プロモーション と呼ばれます。プロモーションはアプリケーションライフサイクルでコンテンツを管理する基礎となるもので、これを理解することは重要です。

本ガイドのシナリオでは、ACME の Exampleware の開発が完了しており、実稼働しているとします。ACME は Exampleware コンテンツを RPM ファイルにパッケージ化し、これは別製品の一部となります。この状態では、ACME は Exampleware のバージョン 1.0 をリリースしており、このため exampleware-1.0-0.noarch.rpm が実稼働環境にあることになります。

ACME では、Exampleware のパッチをリリースするために、Exampleware バージョン 1.1 の開発を開始します。この例では、アプリケーションライフサイクルの環境に以下の Exampleware のバージョンが含まれます。

開発テスト実稼働

exampleware-1.1-0.noarch.rpm

exampleware-1.0-0.noarch.rpm

exampleware-1.0-0.noarch.rpm

ACME では、パッチ開発の完了後、RPM をテスト環境にプロモートして、ACME の品質保証エンジニアチームがレビューできるようにします。この時点では、アプリケーションライフサイクルに以下のバージョンが含まれます。

開発テスト実稼働

exampleware-1.1-0.noarch.rpm

exampleware-1.1-0.noarch.rpm

exampleware-1.0-0.noarch.rpm

品質保証エンジニアチームがレビューを行う間、開発チームは Exampleware 2.0 の作業に着手します。このため、アプリケーションライフサイクルは以下のようになります。

開発テスト実稼働

exampleware-2.0-0.noarch.rpm

exampleware-1.1-0.noarch.rpm

exampleware-1.0-0.noarch.rpm

品質保証エンジニアチームがパッチのレビューを完了し、Exampleware 1.1 をリリースする準備が完了しました。ACME は 1.1 を実稼働環境にプロモートします。

開発テスト実稼働

exampleware-2.0-0.noarch.rpm

exampleware-1.1-0.noarch.rpm

exampleware-1.1-0.noarch.rpm

開発チームが Exampleware 2.0 の作業を完了し、これをテスト環境にプロモートします。

開発テスト実稼働

exampleware-2.0-0.noarch.rpm

exampleware-2.0-0.noarch.rpm

exampleware-1.1-0.noarch.rpm

最後に品質保証エンジニアチームがこのパッケージのレビューを行います。レビューが完了したら、パッケージを実稼働環境にプロモートします。

開発テスト実稼働

exampleware-2.0-0.noarch.rpm

exampleware-2.0-0.noarch.rpm

exampleware-2.0-0.noarch.rpm

この例では、ACME の開発プロセスを Red Hat Satellite 6 アプリケーションライフサイクルにマッピングする手順を説明します。各環境には、Red Hat Satellite 6 に登録したシステムが含まれ、そのシステムがアクセスできるのは、各環境に関連するリポジトリーに限られます。ある環境から次の環境にパッケージをプロモートすると、プロモート先のリポジトリーはパッケージの新バージョンを受け取ります。この結果、プロモート先の環境にあるシステムはパッケージを新バージョンに更新することができます。

次章では、コンテンツビュー という概念を説明します。これは、ライブラリーから収集されフィルタリングされたコンテンツのコレクションで、リポジトリーに公開されたものです。Red Hat のリポジトリーとこれまでに同期したカスタムリポジトリーはソースコンテンツとして機能しますが、コンテンツビューは作成したリポジトリーがどのように表示されるかをカスタマイズするものです。コンテンツビューにはパッケージが含まれ、Satellite Server はアプリケーションライフサイクルの各環境にコンテンツビューをプロモートします。ある環境でコンテンツビュー (バージョン 1.0) を使用していても、次に新バージョン (バージョン 1.1) のコンテンツビューを受け取ります。この場合、バージョン 1.0 のリポジトリーは、Exampleware RPM の新バージョンが含まれているバージョン 1.1 のリポジトリーに置き換えられます。

6.5. Red Hat Satellite Capsule Server へのライフサイクル環境の追加

新たに作成した Red Hat Satellite Capsule Server でコンテンツ機能が有効な場合は、Capsule Server に、Satellite Server からコンテンツを同期し、ホストシステムにコンテンツを同期するために有効にする環境を追加する必要があります。

重要

Satellite Capsule Server は、Satellite Server のコマンドラインインターフェース (CLI) で設定します。Satellite Server 上ですべての hammer コマンドを実行します。

Satellite Capsule Server への環境の追加:

  1. root で Satellite Server CLI にログインします。
  2. 一覧から使用する Red Hat Satellite Capsule Server を選択し、その ID を書き留めます。

    # hammer capsule list

    Satellite Capsule Server の詳細を確認するには、以下のコマンドを入力します。

    # hammer capsule info \
    --id capsule_id_number
  3. Red Hat Capsule Server に利用できるライフサイクル環境の一覧を確認し、環境 ID を書き留めます。

    # hammer capsule content available-lifecycle-environments \
    --id capsule_id_number

    ここで、

    available-lifecycle-environments は、Satellite Capsule で利用できるライフサイクル環境ですが、現時点では Satellite Capsule にアタッチされていません。

  4. Satellite Capsule Server にライフサイクル環境を追加します。

    # hammer capsule content add-lifecycle-environment \
    --id capsule_id_number \
    --environment-id environment_id_number

    ここで、

    • capsule_id_number は、Satellite Capsule Server の ID 番号です。
    • environment_id_number は、ライフサイクル環境の ID 番号です。

    Capsule Server に追加するすべてのライフサイクル環境に対してこの手順を繰り返します。

  5. Satellite Server の環境にあるコンテンツを Satellite Capsule Server に同期します。

    # hammer capsule content synchronize \
    --id capsule_id_number

    外部 Satellite Capsule Server に複数のライフサイクル環境がある場合、同期が必要なライフサイクル環境は 1 つだけとなります。環境 ID 番号を指定して、特定の環境にターゲットを絞ることができます。

    # hammer capsule content synchronize \
    --id external_capsule_id_number \
    --environment-id environment_id_number

6.6. コンテンツビューのプロモート

コンテンツビューと、2 つ以上のライフサイクル環境から構成される環境パスを作成したら、必要に応じてコンテンツビューを次の環境にプロモートできます。つまり、指定された環境に存在するコンテンツビューの最新バージョンが、ライフサイクル環境パスの次の環境にプロモート (つまり、コピー) されます。

コンテンツビューは、そのバージョンが存在しない環境にプロモートできます。ライフサイクル環境パスの次の環境が自動的に提示されますが、この値は上書きでき、必要に応じて別の環境にプロモートできます。

コンテンツビューのプロモート:

  1. メインメニューで、コンテンツ > コンテンツビュー をクリックします。
  2. 名前 列で、プロモートするコンテンツビューの名前をクリックします。
  3. バージョン タブで最新バージョンを選択し、プロモート をクリックします。
  4. コンテンツビューをプロモートするプロモーションパスを指定し、適切なライフサイクル環境を選択し、バージョンのプロモート をクリックします。
  5. プロモーションが完了したら、バージョン タブが更新され、コンテンツビューの新しいステータスが表示します。

6.7. Satellite Server からのライフサイクル環境の削除

以下の手順では、Red Hat Satellite からライフサイクル環境を削除する方法を説明します。

ライフサイクル環境の削除:

  1. メインメニューで、コンテンツ > ライフサイクル環境 をクリックします。
  2. 削除するライフサイクル環境の名前をクリックし、環境の削除 をクリックします。
  3. 確認ダイアログボックスで、削除 をクリックして環境を削除します。
注記

環境パスの最新の環境だけが削除できます。たとえば、3 つの環境 LibraryDevProd がこの順序で存在する場合は、Dev を削除する前に Prod を削除する必要があります。Library 環境は削除できません。

6.8. Capsule Server からのライフサイクル環境の削除

ライフサイクル環境を Capsule Server から削除する理由は複数あります。以下のような理由があります。

  • ライフサイクル環境とホストシステムとの関連性がなくなった場合
  • ライフサイクル環境が Capsule Server に誤って追加された場合

Capsule Server からのライフサイクル環境の削除:

  1. root ユーザーで Satellite Server CLI にログインします。
  2. 一覧から使用する Capsule Server を選択し、その ID を書き留めます。

    # hammer capsule list

    Capsule Server の詳細を確認するには、以下のコマンドを実行します。

    # hammer capsule info \
    --id capsule_id_number
  3. Capsule Server に現在アタッチされているライフサイクル環境の一覧を確認し、環境 ID を書き留めます。

    # hammer capsule content lifecycle-environments \
    --id capsule_id_number
  4. Capsule Server からのライフサイクル環境を削除します。

    # hammer capsule content remove-lifecycle-environment \
    --id capsule_id_number \
    --environment-id environment_id_number

    ここで、

    • capsule_id_number は、Capsule Server の ID 番号です。
    • environment_id_number は、ライフサイクル環境の ID 番号です。

      Capsule Server から削除するすべてのライフサイクル環境に対してこの手順を繰り返します。

  5. Satellite Server の環境にあるコンテンツを Capsule Server に同期します。

    # hammer capsule content synchronize \
    --id capsule_id_number

6.9. 本章のまとめ

本章では、アプリケーションライフサイクルの概念と、それが Red Hat Satellite 6 のコンテンツ管理にどのように適用されるかを説明しました。また、Red Hat Satellite 6 がアプリケーションライフサイクルの各環境にコンテンツをプロモートする方法も説明しました。

次章では、コンテンツビューと、コンテンツビューを使用して、既存の DML からリポジトリーをフィルタリングする方法を説明します。

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