第10章 Red Hat OpenStack Platform でのクラウドインスタンスのプロビジョニング
Red Hat OpenStack Platform は、Red Hat Enterprise Linux をベースとして、プライベートまたはパブリックの Infrastructure-as-a-Service (IaaS) クラウドを構築するための基盤を提供します。これにより、スケーラビリティーが極めて高く、耐障害性に優れたプラットフォームをクラウド対応のワークロード開発にご利用いただくことができます。Red Hat Satellite 6 は、Red Hat OpenStack Platforms REST API と対話し、新規クラウドインスタンスを作成できます。また、それらの電源管理の状態を制御することができます。本章では、接続を ACME の Red Hat OpenStack Platform 環境に追加し、クラウドインスタンスをプロビジョニングします。
10.1. Red Hat OpenStack Platform のプロビジョニングの要件定義
Red Hat OpenStack Platform のプロビジョニングの要件には、以下が含まれます。
- Red Hat Enterprise Linux 7 の同期済みのコンテンツリポジトリー。詳細は、『コンテンツ管理ガイド』 の 「Red Hat リポジトリーの同期」 を参照してください。
- OpenStack 環境でネットワークを管理する Capsule Server。詳細は、4章ネットワークの設定 を参照してください。
- イメージベースのプロビジョニング用に OpenStack Image Storage (glance) サービスに追加されたイメージ。詳細は、『Red Hat OpenStack Platform インスタンスおよびイメージガイド』 を参照してください。
- ホスト登録のためのアクティべーションキーのサンプル。詳細は、「アクティベーションキーの作成」 を参照してください。
10.2. Satellite Server への Red Hat OpenStack Platform 接続の追加
このプロセスでは、Satellite Server のコンピュートリソースで Red Hat OpenStack Platform 接続を追加します。
Web UI を使用する場合
インフラストラクチャー > コンピュートリソース に移動し、新規のコンピュートリソース をクリックします。UI には、コンピュートリソースの一連のフィールドがあります。
-
名前: リソースのテキスト形式の名前。例:
ACME's OpenStack
-
プロバイダー: コンピュートリソースプロバイダーを選択するためのフィールド。
RHEL OpenStack Platform
を選択すると、新規のフィールドのセットが表示されます。 -
説明: リソースのテキスト形式の説明。例:
ACME's OpenStack environment at openstack.example.com
-
URL:
tokens
リソースの OpenStack 認証 (keystone) サービスの API をポイントする URL。例:http://openstack.example.com:5000/v2.0/tokens
- ユーザー名 および パスワード:Satellite から環境にアクセスするために使用する認証ユーザーおよびパスワード。
- テナント - Satellite Server が管理するテナントまたはプロジェクト。
- 外部ネットワークを主要ネットワークとして許可 (Allow external network as main network): これを選択して外部ネットワークをホストのプライマリーネットワークとして使用できるようにします。
ロケーション および 組織 タブは現在のコンテキストに自動的に設定されます。他のコンテキストをこれらのタブに追加します。
送信 をクリックして Red Hat OpenStack Platform の接続を保存します。
CLI を使用する場合
hammer compute-resource create
コマンドで接続を作成します。
# hammer compute-resource create --name "ACME's OpenStack" \ --provider "OpenStack" \ --description "ACME's OpenStack environment at openstack.example.com" \ --url "http://openstack.example.com:5000/v2.0/tokens" --user "admin" \ --password "p@55w0rd!" --tenant "openstack" --locations "New York" \ --organizations "ACME"
10.3. Satellite Server での Red Hat OpenStack Platform イメージの追加
Red Hat OpenStack Platform はイメージベースのプロビジョニングを使用して新規ホストを作成します。つまり、イメージの詳細を Satellite Server に追加する必要があり、これにはアクセスの詳細およびイメージの場所が含まれます。
Web UI を使用する場合
インフラストラクチャー > コンピュートリソース に移動し、 Red Hat OpenStack Platform 接続の名前をクリックします。UI には、イメージ タブを含む接続についての情報が表示されます。このタブには、新規プロバイダーのイメージは含まれませんが、新規イメージを追加することができます。新規イメージ をクリックすると、UI に Red Hat OpenStack Platform イメージの一連のフィールドが表示されます。
-
名前: イメージのテキスト形式の名前。例:
Test OpenStack Image
-
オペレーティングシステム: イメージのベースオペレーティングシステムを選択するためのフィールド。例:
RedHat 7.2
-
アーキテクチャー: オペレーティングシステムのアーキテクチャーを選択するためのフィールド。例:
x86_64
-
ユーザー名: イメージにアクセスするための SSH ユーザー名。通常、これは
root
ユーザーになります。 - パスワード: イメージにアクセスするための SSH パスワード。
- イメージ: OpenStack Image Storage のイメージ。
-
ユーザーデータ - イメージが
cloud-init
データなどのユーザーデータ入力をサポートするかどうかを設定します。
送信 をクリックしてイメージの詳細を保存します。
CLI を使用する場合
hammer compute-resource image create
コマンドでイメージを作成します。--uuid
フィールドを使用して Red Hat OpenStack Platform サーバーのイメージの場所の完全パスを保存します。
# hammer compute-resource image create --name "Test OpenStack Image" \ --operatingsystem "RedHat 7.2" --architecture "x86_64" \ --username root --user-data true \ --compute-resource "ACME's OpenStack Platform"
10.4. Red Hat OpenStack Platform の詳細をコンピュートプロファイルへ追加
Red Hat OpenStack Platform のインスタンスの特定のハードウェア設定を事前に定義することができます。これらのハードウェア設定をコンピュートプロファイルに追加して実行できます。この例では、4-Example
プロファイルにいくつかの基本的なハードウェア設定を組み込みます。
Web UI を使用する場合
インフラストラクチャー > コンピュートプロファイル に移動し、プロファイルの名前をクリックします。たとえば、事前に作成した 4-Example
プロファイルを使用します。UI には、コンピュートリソースの一覧が表示されます。OpenStack Platform 接続をクリックします。
UI には、プロファイルに OpenStack 固有の詳細を入力できる一連のフィールドがあります。これには以下が含まれます。
- フレーバー: ホストに使用する OpenStack Platform のハードウェアのプロファイル。
- 利用可能ゾーン (Availability zone): OpenStack Platform 環境内で使用するターゲットクラスター。
-
イメージ: イメージベースのプロビジョニングに使用するイメージ。この例では、
Test OpenStack Image
を使用します。 - テナント: OpenStack Platform インスタンスのテナントまたはプロジェクト。
- セキュリティーグループ - ポートおよび IP アドレスのクラウドベースのアクセスルール。
- 内部ネットワーク - ホストが加わるプライベートネットワーク。
- Floating IP ネットワーク - ホストが加わる外部ネットワークで、Floating IP アドレスを割り当てます。
- ボリュームからの起動 - イメージからボリュームが作成されるかを設定します。これが選択されていない場合、インスタンスはイメージを直接起動します。
- 新規起動ボリュームサイズ (GB) - 新規起動ボリュームのサイズ (GB)。
送信 をクリックしてコンピュートプロファイルを保存します。
CLI を使用する場合
コンピュートプロファイルの CLI コマンドは、Red Hat Satellite 6.3 ではまだ実装されていません。代替方法として、ホストの作成プロセスで同じ設定を直接組み込むことができます。
10.5. Red Hat OpenStack Platform でのイメージベースのホストの作成
Red Hat OpenStack Platform プロビジョニングプロセスでは、Red Hat OpenStack Platform サーバーで既存イメージから新規ホストを作成します。
Web UI を使用する場合
ホスト > 新規ホスト に移動します。UI には、ホストの詳細を入力できる一覧のフィールドがあります。
ホスト タブ:
-
ホストの 名前 を入力します。これはプロビジョニングされたシステムのホスト名になります。この例では、
openstack-test1
と入力します。 -
プロビジョニングコンテキスト (組織 および ロケーション) は現在のコンテキストに自動的に設定されます。例:
ACME
およびNew York
-
ホストグループ を選択します。これにより、新規ホストのほとんどのフィールドが自動的に設定されます。例:
Base
-
デプロイ先 で、OpenStack Platform 接続を選択します。この例では、
ACME's OpenStack Platform
になります。仮想マシンの新規タブが表示されます。 -
コンピュートプロファイル で、クラウドインスタンスベースの設定を自動的に行うために使用するプロファイルを選択します。例:
4-Example
-
ホストの 名前 を入力します。これはプロビジョニングされたシステムのホスト名になります。この例では、
インターフェース タブ:
- ホストのインターフェースの 編集 をクリックします。
ほとんどのフィールドには、値が自動的に含まれるはずです。特に以下の点に注意してください。
- ホスト タブの 名前 は DNS 名 になります。
- Satellite Server は新規ホストの IP アドレスを自動的に割り当てます。
- MAC アドレス を空白にします。Red Hat OpenStack Platform サーバーは MAC アドレスをホストに割り当てます。
- Satellite Server は、ホストの最初のインターフェースで Managed (管理)、Primary、および Provision オプションを自動的に選択するはずです。選択されていない場合は、それらを選択してください。
オペレーティングシステム タブ:
- すべてのフィールドには値が自動的に含まれるはずです。オペレーティングシステムの各要素を確認してください。
- イメージ フィールドには、コンピュートプロファイルから選択されたイメージが含まれます。このフィールドから、新規ホストの root ボリュームのベースとなる別のイメージを選択することもできます。
- プロビジョニングテンプレート で 解決 をクリックし、新規ホストから使用する適切なプロビジョニングテンプレートを特定できることを確認します。
仮想マシン タブ:
- これらの設定には、選択されたホストグループおよびコンピュートプロファイルの詳細が入力されているはずです。必要に応じてこれらの設定を変更します。
パラメーター タブ:
-
kt_activation_keys
パラメーターが存在し、サンプル
のアクティべーションキーを使用していることを確認します。
-
送信 をクリックします。
CLI を使用する場合
hammer host create
コマンドでホストを作成し、--provision-method image
を組み込んでイメージベースのプロビジョニングを使用します。以下は例になります。
# hammer host create --name "openstack-test1" --organization "ACME" \ --location "New York" --hostgroup "Base" \ --compute-resource "ACME's OpenStack Platform" --provision-method image \ --image "Test OpenStack Image" --enabled true --managed true \ --interface "managed=true,primary=true,provision=true" \ --compute-attributes="flavor_ref=m1.small,tenant_id=openstack,security_groups=default,network=mynetwork"
このコンピュートリソースの追加のホスト作成パラメーターについての詳細は、付録B Hammer CLI の追加のホストパラメーター を参照してください。
この新規ホストのエントリーは、Red Hat OpenStack Platform サーバーが新規ボリュームのベースとして既存イメージを使用し、インスタンスを作成するようトリガーします。
10.6. 本章のまとめ
本章では、Red Hat Satellite 6 を設定して Red Hat OpenStack Platform サーバーを使用する方法と、Red Hat OpenStack Platform サーバーを使用して新規ホストをプロビジョニングする方法を説明しました。ここでは、ネットワークベースのホストおよびイメージベースのホストの両方について紹介しました。
Red Hat Satellite 6 で設定が必要なコンピュートリソースが他にない場合は、13章プロビジョニングの最終設定 のプロビジョニングについての最終メモを参照してください。
次章では、 Amazon の EC2 パブリッククラウドサービスからのプロビジョニング方法について説明します。