第1章 概要
インストーラーおよびイメージの作成
RHEL 8.3 では、インストールを開始する前に root パスワードを設定し、ユーザーアカウントを作成できます。以前は、インストールプロセス開始後に、root パスワードを設定してユーザーアカウントを作成していました。非常に優れたバックエンドに基づいてカスタマイズしたイメージを作成し、RHEL Web コンソールでイメージをクラウドにプッシュすることもできます。
RHEL for Edge
RHEL 8.3 では、Edge サーバーで RHEL をリモートでインストールするための RHEL for Edge が導入されました。RHEL for Edge は、Image Builder を使用して設定できる rpm-ostree イメージです。キックスタートファイルを使用してイメージをインストールし、イメージを管理し、イメージを更新して以前の機能状態にイメージをロールバックすることができます。
RHEL for Edge の主な特色を以下に示します。
- アトミックアップグレード。各更新の状態が分かっており、デバイスを再起動するまで変更が加えられません。
- 回復性を確保するためのカスタムヘルスチェックおよびインテリジェントなロールバック。
- コンテナー中心のワークフロー: アプリケーションの更新からコア OS の更新を分離し、異なるバージョンのアプリケーションをテストし、デプロイすることができます。
- 低帯域幅環境向けに最適化された OTA ペイロード。
詳細は、「RHEL for Edge」を参照してください。
インフラストラクチャーサービス
Tuned システムチューニングツールがバージョン 2.13 にリベースされ、アーキテクチャー依存チューニングと複数の include ディレクティブのサポートが追加されました。
Security
RHEL 8.3 は、Clevis および Tang を使用した PBD (Policy-Based Decryption) ソリューションの自動デプロイメント用の Ansible ロールを提供します。また、このバージョンの rhel-system-roles
パッケージには、Rsyslog を介して RHEL ロギング用の Ansible ロールも含まれます。
scap-security-guide
パッケージがバージョン 0.1.50 にリベースされ、OpenSCAP がバージョン 1.3.3 にリベースされました。これらの更新では、CIS RHEL 7 Benchmark v2.2.0 に準拠するプロファイルや、北米の医療機関で必要な HIPAA Health Insurance Portability and Accountability Act (HIPAA) に一致するプロファイルなど、大幅に改良されました。
今回の更新で、SCAP Workbench
ツールを使用して、カスタマイズしたプロファイルから結果ベースの修復ロールを生成できるようになりました。
USBGuard フレームワークは、独自の SELinux ポリシーを提供し、GUI でデスクトップユーザーに通知されるようになり、バージョン 0.7.8 には多くの改善およびバグ修正が含まれています。
動的プログラミング言語、Web サーバー、およびデータベースサーバー
以下のコンポーネントの後続のバージョンが、新しいモジュールストリームとして利用できるようになりました。
- nginx 1.18
- Node.js 14
- Perl 5.30
- PHP 7.4
- Ruby 2.7
RHEL 8.3 では、以下のコンポーネントが更新されました。
- Git がバージョン 2.27 へ
- squid がバージョン 4.11 へ
詳細は、「動的プログラミング言語、Web サーバー、およびデータベースサーバー」 を参照してください。
コンパイラーツールセット
RHEL 8.3 では、以下のコンパイラーツールセットが更新されました。
- GCC Toolset 10
- LLVM Toolset 10.0.1
- Rust Toolset 1.45.2
- Go Toolset 1.14.7
詳細は、「コンパイラーおよび開発ツール」 を参照してください。
ID 管理
RHEL 8 では、Rivest Cipher 4 (RC4) 暗号スイート、ユーザー、サービスのデフォルト暗号化タイプ、および AD フォレスト内の Active Directory (AD) ドメイン間の信頼が非推奨になりました。互換性の理由から、今回の更新で新しい暗号化サブポリシー AD-SUPPORT
が導入され、非推奨の RC4 暗号化タイプのサポートが可能になります。新しいサブポリシーを使用すると、RHEL Identity Management (IdM) および SSSD Active Directory 統合ソリューションで RC4 を使用できます。
詳細は、「ID 管理」 を参照してください。
Web コンソール
Web コンソールには、ユーザーセッション内から管理アクセスと制限付きアクセスを切り替えるオプションがあります。
仮想化
IBM Z ハードウェアでホストされる仮想マシン (VM) が、IBM Secure Execution 機能を使用できるようになりました。これにより、ホストが侵害された場合の仮想マシンの攻撃に対する耐性が高まり、信頼できないホストが仮想マシンから情報を取得するのを防ぐことができます。さらに、DASD デバイスが IBM Z の仮想マシンに割り当てられるようになりました。
デスクトップおよびグラフィックス
IBM Z システムで GNOME デスクトップを使用できるようになりました。
Direct Rendering Manager (DRM) カーネルグラフィックサブシステムが、アップストリームの Linux カーネルバージョン 5.6 にリベースされました。このバージョンでは、新しい GPU および APU のサポートや、さまざまなドライバー更新など、以前のバージョンから多くの機能強化が行われています。
詳細は、「デスクトップ」 および 「グラフィックインフラストラクチャー」 を参照してください。
インプレースアップグレードおよび OS 移行
RHEL 7 から RHEL 8 へのインプレースアップグレード
現在サポートされているインプレースアップグレードパスは次のとおりです。
- 64 ビット Intel、IBM POWER 8 (little endian)、および IBM Z アーキテクチャーでの RHEL 7.8 から RHEL 8.2 のアップグレード。
- カーネルバージョン 4.14 を必要とするアーキテクチャー (IBM POWER 9 (リトルエンディアン) および IBM Z (Structure A)) での RHEL 7.6 から RHEL 8.2 のアップグレード。
- SAP HANA のシステムにおける RHEL 7.7 から RHEL 8.2 へのアップグレード。
RHEL 8.2 へのアップグレード後もシステムがサポートされるようにするには、最新の RHEL 8.3 バージョンに更新するか、RHEL 8.2 Extended Update Support (EUS) リポジトリーを有効にします。SAP HANA を使用するシステムで、RHEL 8.2 Update Services for SAP Solutions (E4S) リポジトリーを有効にします。
詳細は Red Hat Enterprise Linux のサポート対象のインプレースアップグレードパス を参照してください。インプレースアップグレードの実行方法は、RHEL 7 から RHEL 8 へのアップグレード を参照してください。
主な機能強化は、次のとおりです。
-
Leapp
は、アップグレードの続行方法を判断するために、true/false の質問を生成してユーザー入力をサポートするようになりました。 - Satellite Web UI を使用して、複数のホストを同時にアップグレードできるようになりました。
- Red Hat Update Infrastructure (RHUI) を使用して、AWS および Microsoft Azure のオンデマンドインスタンスでサポートされるインプレースアップグレードがサポートされるようになりました。
-
RHBA-2021:0569 アドバイザリーのリリースでは、
Leapp
のアップグレード前のレポート用のカスタムスクリプトを作成できます。詳細は、Automating your Red Hat Enterprise Linux pre-upgrade report workflow を参照してください。
RHEL 6 から RHEL 8 へのインプレースアップグレード
RHEL 6.10 から RHEL 8.2 にアップグレードするには、RHEL 6 から RHEL 8 へのアップグレード の手順に従います。
別の Linux ディストリビューションから RHEL への移行
CentOS Linux 8 または Oracle Linux 8 を使用している場合は、Red Hat がサポートする Convert2RHEL
ユーティリティーを使用してオペレーティングシステムを RHEL 8 に変換できます。詳細は、RPM ベースの Linux ディストリビューションから RHEL への変換 を参照してください。
CentOS Linux または Oracle Linux の旧バージョン (バージョン 6 または 7) を使用している場合は、お使いのオペレーティングシステムを RHEL に移行してから、RHEL 8 へのインプレースアップグレードを実行できます。CentOS Linux 6 および Oracle Linux 6 変換は、サポート対象外の Convert2RHEL
ユーティリティーを使用することに注意してください。サポートされない変換の詳細は、How to convert from CentOS Linux 6 or Oracle Linux 6 to RHEL 6 を参照してください。
Red Hat が他の Linux ディストリビューションから RHEL への移行は、Convert2RHEL サポートポリシー を参照してください。
OpenJDK 11 が利用可能に
新しいバージョンの Open Java Development Kit (OpenJDK) が利用できるようになりました。このリリースで導入された機能や既存の機能の変更に関する詳細は、OpenJDK 11 のドキュメント を参照してください。
関連情報
- 他のバージョンと比較した Red Hat Enterprise Linux 8.0 の 機能および制限 は、Red Hat ナレッジベースの記事 Red Hat Enterprise Linux technology capabilities and limits を参照してください。
- Red Hat Enterprise Linux の ライフサイクル に関する情報は Red Hat Enterprise Linux のライフサイクル を参照してください。
- RHEL 8 の パッケージリスト は、パッケージマニフェスト を参照してください。
- RHEL 7 と RHEL 8 の主な相違点 は、RHEL 8 の導入における検討事項 を参照してください。
- RHEL 7 から RHEL 8 へのインプレースアップグレード を実行する方法は、RHEL 7 から RHEL 8 へのアップグレード を参照してください。
- すべての RHEL サブスクリプションで、既知の技術問題の特定、検証、および解決をプロアクティブに行う Red Hat Insights サービスが利用できるようになりました。Red Hat Insights クライアントをインストールし、システムをサービスに登録する方法は、Red Hat Insights を使い始める ページを参照してください。
Red Hat Customer Portal Labs
Red Hat Customer Portal Labs は、カスタマーポータルのセクションにあるツールセットで、https://access.redhat.com/labs/ から入手できます。Red Hat Customer Portal Labs のアプリケーションは、パフォーマンスの向上、問題の迅速なトラブルシューティング、セキュリティー問題の特定、複雑なアプリケーションの迅速なデプロイメントおよび設定に役立ちます。最も一般的なアプリケーションには、以下のものがあります。
- Registration Assistant
- Product Life Cycle Checker
- Kickstart Generator
- Kickstart Converter
- Red Hat Enterprise Linux Upgrade Helper
- Red Hat Satellite Upgrade Helper
- Red Hat Code Browser
- JVM Options Configuration Tool
- Red Hat CVE Checker
- Red Hat Product Certificates
- Load Balancer Configuration Tool
- Yum Repository Configuration Helper
- Red Hat メモリー不足アナライザー