第5章 JCache API の使用
Data Grid は、一時的な Java オブジェクトをメモリーにキャッシュするための標準 Java API を指定する JCache (JSR-107) API の実装を提供します。Java オブジェクトをキャッシュすると、取得にコストがかかるデータや、計算が難しいデータを使用することで発生するボトルネックを回避するのに役立ちます。これらのタイプのオブジェクトをメモリーにキャッシュすると、コストのかかるラウンドトリップや再計算を行う代わりに、メモリーから直接データを取得することで、アプリケーションのパフォーマンスを高速化できます。
5.1. データの保管および取得
JCache の API が java.util.Map または java.util.concurrent.ConcurrentMap のいずれも拡張していないにもかかわらず、キー/値の API を提供してデータを格納および取得します。
import javax.cache.*; import javax.cache.configuration.*; CacheManager cacheManager = Caching.getCachingProvider().getCacheManager(); Cache<String, String> cache = cacheManager.createCache("namedCache", new MutableConfiguration<String, String>()); cache.put("hello", "world"); // Notice that javax.cache.Cache.put(K) returns void! String value = cache.get("hello"); // Returns "world"
標準の java.util.Map とは異なり、javax.cache.Cache には put と getAndPut と呼ばれる 2 つの基本的な put メソッドが含まれています。前者は void
を返しますが、後者はキーに関連付けられた以前の値を返します。そのため、JCache の java.util.Map.put(K) に相当するものは javax.cache.Cache.getAndPut(K) になります。
JCache API はスタンドアロンキャッシングのみを対象としていますが、永続ストアにプラグインすることができ、クラスタリングまたは分散を念頭に置いて設計されています。javax.cache.Cache が 2 つの put メソッドを提供する理由は、標準の java.util.Map put 呼び出しにより以前の値を計算するためです。永続ストアが使用されている場合、またはキャッシュが分散されている場合、前の値を返すことはコストのかかる操作になる可能性があり、多くの場合、ユーザーは戻り値を使用せずに標準の java.util.Map.put(K) を呼び出します。そのため、JCache ユーザーは戻り値が関連するかどうかについて考慮する必要があります。この場合、javax.cache.Cache.getAndPut(K) を呼び出す必要があります。それ以外の場合は、java.util.Map.put(K, V) を呼び出すことができ、以前の値を返すようなコストのかかる操作が返されなくなります。