第12章 Kafka Exporter


Kafka Exporter は、Apache Kafka ブローカーおよびクライアントの監視を強化するオープンソースプロジェクトです。Kafka Exporter は、Kafka クラスターとのデプロイメントを実現するために AMQ Streams で提供され、オフセット、コンシューマーグループ、コンシューマーラグ、およびトピックに関連する Kafka ブローカーから追加のメトリクスデータを抽出します。

一例として、メトリクスデータを使用すると、低速なコンシューマーの識別に役立ちます。

ラグデータは Prometheus メトリクスとして公開され、解析のために Grafana で使用できます。

ビルトイン Kafka メトリクスを監視するために Prometheus および Grafana をすでに使用している場合、Kafka Exporter Prometheus エンドポイントをスクレープするように Prometheus を設定することもできます。

12.1. コンシューマーラグ

コンシューマーラグは、メッセージの生成と消費の差を示しています。具体的には、指定のコンシューマーグループのコンシューマーラグは、パーティションの最後のメッセージと、そのコンシューマーが現在ピックアップしているメッセージとの時間差を示しています。ラグには、パーティションログの最後を基準とする、コンシューマーオフセットの相対的な位置が反映されます。

この差は、Kafka ブローカートピックパーティションの読み取りと書き込みの場所である、プロデューサーオフセットとコンシューマーオフセットの間の デルタ とも呼ばれます。

あるトピックで毎秒 100 個のメッセージがストリーミングされる場合を考えてみましょう。プロデューサーオフセット (トピックパーティションの先頭) と、コンシューマーが読み取った最後のオフセットとの間のラグが 1000 個のメッセージであれば、10 秒の遅延があることを意味します。

コンシューマーラグ監視の重要性

可能な限りリアルタイムのデータの処理に依存するアプリケーションでは、コンシューマーラグを監視して、ラグが過度に大きくならないようにチェックする必要があります。ラグが大きくなるほど、リアルタイム処理の達成から遠ざかります。

たとえば、パージされていない古いデータの大量消費や、予定外のシャットダウンが、コンシューマーラグの原因となることがあります。

コンシューマーラグの削減

通常、ラグを削減するには以下を行います。

  • 新規コンシューマーを追加してコンシューマーグループをスケールアップします。
  • メッセージがトピックに留まる保持時間を延長します。
  • ディスク容量を追加してメッセージバッファーを増強します。

コンシューマーラグを減らす方法は、基礎となるインフラストラクチャーや、AMQ Streams によりサポートされるユースケースによって異なります。たとえば、ラグが生じているコンシューマーの場合、ディスクキャッシュからフェッチリクエストに対応できるブローカーを活用できる可能性は低いでしょう。場合によっては、コンシューマーの状態が改善されるまで、自動的にメッセージをドロップすることが許容されることがあります。

12.2. Kafka Exporter アラートルールの例

メトリクスをデプロイメントに導入するステップが実行済みである場合、Kafka Exporter をサポートするアラート通知ルールを使用するよう Kafka クラスターがすでに設定された状態になっています。

Kafka Exporter のルールは prometheus-rules.yaml に定義されており、Prometheus でデプロイされます。詳細は、「Prometheus」を参照してください。

Kafka Exporter に固有のサンプルのアラート通知ルールには以下があります。

UnderReplicatedPartition
トピックで複製の数が最低数未満であり、ブローカーがパーティションで十分な複製を作成していないことを警告するアラートです。デフォルトの設定では、トピックに複製の数が最低数未満のパーティションが 1 つ以上ある場合のアラートになります。このアラートは、Kafka インスタンスがダウンしているか Kafka クラスターがオーバーロードの状態であることを示す場合があります。レプリケーションプロセスを再起動するには、Kafka ブローカーの計画的な再起動が必要な場合があります。
TooLargeConsumerGroupLag
特定のトピックパーティションでコンシューマーグループのラグが大きすぎることを警告するアラートです。デフォルト設定は 1000 レコードです。ラグが大きい場合、コンシューマーが遅すぎてプロデューサーの処理に追い付いてない可能性があります。
NoMessageForTooLong
トピックが一定期間にわたりメッセージを受信していないことを警告するアラートです。この期間のデフォルト設定は 10 分です。この遅れは、設定の問題により、プロデューサーがトピックにメッセージを公開できないことが原因である可能性があります。

これらのルールのデフォルト設定は、特定のニーズに合わせて調整してください。

12.3. Kafka Exporter メトリクス

ラグ情報は、Grafana で示す Prometheus メトリクスとして Kafka Exporter によって公開されます。

Kafka Exporter は、ブローカー、トピック、およびコンシューマーグループのメトリクスデータを公開します。

抽出されるデータを以下に示します。

表12.1 ブローカーメトリクスの出力
名前詳細

kafka_brokers

Kafka クラスターに含まれるブローカーの数

表12.2 トピックメトリクスの出力
名前詳細

kafka_topic_partitions

トピックのパーティション数

kafka_topic_partition_current_offset

ブローカーの現在のトピックパーティションオフセット

kafka_topic_partition_oldest_offset

ブローカーの最も古いトピックパーティションオフセット

kafka_topic_partition_in_sync_replica

トピックパーティションの In-Sync レプリカ数

kafka_topic_partition_leader

トピックパーティションのリーダーブローカー ID

kafka_topic_partition_leader_is_preferred

トピックパーティションが優先ブローカーを使用している場合は、1 が示されます。

kafka_topic_partition_replicas

このトピックパーティションのレプリカ数

kafka_topic_partition_under_replicated_partition

トピックパーティションの複製の数が最低数未満である場合に 1 が示されます。

表12.3 コンシューマーグループメトリクスの出力
名前詳細

kafka_consumergroup_current_offset

コンシューマーグループの現在のトピックパーティションオフセット

kafka_consumergroup_lag

トピックパーティションのコンシューマーグループの現在のラグ (概算値)

12.4. Kafka Exporter Grafana ダッシュボードの有効化

Kafka Exporter を Kafka クラスターでデプロイした場合、Grafana により公開されるメトリクスデータを表示するように Grafana を有効化できます。

Kafka Exporter ダッシュボードは、JSON ファイルとして提供され、examples/metrics ディレクトリーに含まれています。

  • strimzi-kafka-exporter.json

この手順では、Grafana ユーザーインターフェースにアクセスでき、Prometheus がデータソースとして追加されていることを前提とします。ユーザーインターフェースに初めてアクセスする場合は、「Grafana」を参照してください。

手順

  1. Grafana ユーザーインターフェースにアクセスします。
  2. DashboardsImport の順にクリックして Import Dashboard ウィンドウを開き、Kafka Exporter ダッシュボードのサンプルをインポートします (または JSON を貼り付けます)。

    メトリクスデータが収集されると、Kafka Exporter のチャートにデータが反映されます。

Kafka Exporter Grafana チャート

メトリクスから、チャートを作成して以下を表示できます。

  • 毎秒のメッセージ (トピックから)
  • 毎分のメッセージ (トピックから)
  • コンシューマーグループごとのラグ
  • 毎分のメッセージ消費 (コンシューマーグループごと)

Grafana のチャートを使用して、ラグを分析し、ラグ削減の方法が対象のコンシューマーグループに影響しているかどうかを確認します。たとえば、ラグを減らすように Kafka ブローカーを調整する場合、ダッシュボードには コンシューマーグループごとのラグ のチャートが下降し 毎分のメッセージ消費 のチャートが上昇する状況が示されます。

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