3.3. Keycloak CR の移行
Keycloak CR は、すべてのサーバー設定オプションをサポートするようになりました。関連するすべてのオプションを、CR 仕様で、直接ファーストクラスシチズンフィールドとして使用できます。CR のすべてのオプションは、サーバーオプションと同じ命名規則に準拠しています。これにより、ベアメタルデプロイメントと Operator デプロイメント間のエクスペリエンスがシームレスになります。
さらに、SPI プロバイダー設定など、CR に不足しているオプションを additionalOptions
フィールドで定義できます。また、サポートされる代替フィールドが CR のファーストクラスシチズンフィールドとして存在しない場合は、podTemplate
(テクノロジープレビューのフィールド) を使用して、Kubernetes デプロイメントの RAW Pod テンプレートを変更することもできます。
以下は、Operator を通じて Red Hat build of Keycloak をデプロイするための Keycloak CR の例を示しています。
apiVersion: k8s.keycloak.org/v2alpha1 kind: Keycloak metadata: name: example-kc spec: instances: 1 db: vendor: postgres host: postgres-db usernameSecret: name: keycloak-db-secret key: username passwordSecret: name: keycloak-db-secret key: password http: tlsSecret: example-tls-secret hostname: hostname: test.keycloak.org additionalOptions: - name: spi-connections-http-client-default-connection-pool-size value: 20
CLI 設定との類似点に注目してください。
./kc.sh start --db=postgres --db-url-host=postgres-db --db-username=user --db-password=pass --https-certificate-file=mycertfile --https-certificate-key-file=myprivatekey --hostname=test.keycloak.org --spi-connections-http-client-default-connection-pool-size=20
3.3.1. データベース設定の移行
Red Hat build of Keycloak は、以前に Red Hat Single Sign-On 7.6 で使用されていたのと同じデータベースインスタンスを使用できます。データベーススキーマは、Red Hat build of Keycloak が初めてデータベースに接続するときに自動的に移行されます。
Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator によって管理される組み込みデータベースの移行は、サポートされていません。
Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator では、外部データベース接続はシークレットを使用して設定していました。次に例を示します。
apiVersion: v1 kind: Secret metadata: name: keycloak-db-secret namespace: keycloak labels: app: sso stringData: POSTGRES_DATABASE: kc-db-name POSTGRES_EXTERNAL_ADDRESS: my-postgres-hostname POSTGRES_EXTERNAL_PORT: 5432 POSTGRES_USERNAME: user POSTGRES_PASSWORD: pass type: Opaque
Red Hat build of Keycloak では、データベースは、シークレットとして参照される認証情報を使用して Keycloak CR に直接設定されます。次に例を示します。
apiVersion: k8s.keycloak.org/v2alpha1 kind: Keycloak metadata: name: example-kc spec: db: vendor: postgres host: my-postgres-hostname port: 5432 usernameSecret: name: keycloak-db-secret key: username passwordSecret: name: keycloak-db-secret key: password ... apiVersion: v1 kind: Secret metadata: name: keycloak-db-secret stringData: username: "user" password: "pass" type: Opaque
3.3.1.1. サポートされているデータベースベンダー
Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator は PostgreSQL データベースのみをサポートしていました。一方、Red Hat build of Keycloak Operator はサーバーでサポートされているすべてのデータベースベンダーをサポートしています。
3.3.2. TLS 設定の移行
Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator では、デフォルトで、OpenShift CA によって生成された TLS シークレットを使用するようにサーバーが設定されていました。Red Hat build of Keycloak Operator では、実稼働環境のベストプラクティスを実現するために、TLS については何も前提を設けておらず、ユーザーが独自の TLS 証明書とキーペアを提供する必要があります。次に例を示します。
apiVersion: k8s.keycloak.org/v2alpha1 kind: Keycloak metadata: name: example-kc spec: http: tlsSecret: example-tls-secret ...
tlsSecret で参照されるシークレットの形式には、標準の Kubernetes TLS シークレット (kubernetes.io/tls
) タイプを使用する必要があります。
Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator は、デフォルトで、ルートで再暗号化 TLS Termination ストラテジーを使用していました。Red Hat build of Keycloak Operator は、デフォルトでパススルーストラテジーを使用します。また、Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator は、TLS Termination の設定をサポートしていました。Red Hat build of Keycloak Operator は、現在のリリースでは TLS Termination をサポートしていません。
デフォルトの Operator 管理のルートが必要な TLS 設定を満たさない場合は、ユーザーがカスタムルートを作成し、デフォルトのルートを次のようにして無効にする必要があります。
apiVersion: k8s.keycloak.org/v2alpha1 kind: Keycloak metadata: name: example-kc spec: ingress: enabled: false ...
3.3.3. エクステンションのためのカスタムイメージの使用
Red Hat build of Keycloak Operator では、ベストプラクティスを反映し、イミュータブルコンテナーをサポートするために、Keycloak CR でのエクステンションの指定がサポートされていません。エクステンションをデプロイするには、最適化されたカスタムイメージをビルドする必要があります。Keycloak CR には、Red Hat build of Keycloak イメージを指定するための専用フィールドが含まれるようになりました。次に例を示します。
apiVersion: k8s.keycloak.org/v2alpha1 kind: Keycloak metadata: name: example-kc spec: image: quay.io/my-company/my-keycloak:latest ...
カスタムイメージを指定した場合、Operator はそれがすでに最適化されていると想定し、サーバーを起動するたびにコストのかかる最適化を実行しません。
3.3.4. アップグレードストラテジーオプションの削除
Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator は、サーバーのアップグレード実行時の再作成およびローリングストラテジーをサポートしていました。このアプローチは現実的ではありませんでした。Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator がアップグレードとデータベース移行を実行する前にデプロイメントをスケールダウンするかどうかは、ユーザーが選択する必要がありました。ローリングストラテジーがいつ安全に使用できるかは、ユーザーには明らかではありませんでした。
したがって、このオプションは Red Hat build of Keycloak Operator では削除され、再作成ストラテジーは常に暗黙的に実行されるようになりました。これにより、新しいサーバーコンテナーイメージで Pod を作成する前にデプロイメント全体がスケールダウンされ、単一のサーバーバージョンのみがデータベースにアクセスできるようになります。
3.3.5. デフォルトで有効になっているヘルスエンドポイント
Red Hat build of Keycloak は、デフォルトで OpenShift プローブで使用されるヘルスエンドポイントを公開するようにサーバーを設定します。エンドポイントは、専用ポート(デフォルトでは9000)を使用する管理インターフェイスで公開され、OpenShift 内からアクセスできますが、Operator がルートとして公開されません。
3.3.6. Pod テンプレートを使用した高度なデプロイメントオプションの移行
Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator は、ボリュームなどのデプロイメント設定用の複数の低レベルフィールドを公開していました。Red Hat build of Keycloak Operator は事前設定される部分が多く、これらのフィールドのほとんどは公開されません。ただし、podTemplate
として指定されたデプロイメントフィールドを設定することは可能です。次に例を示します。
apiVersion: k8s.keycloak.org/v2alpha1 kind: Keycloak metadata: name: example-kc spec: unsupported: podTemplate: metadata: labels: foo: "bar" spec: containers: - volumeMounts: - name: test-volume mountPath: /mnt/test volumes: - name: test-volume secret: secretName: test-secret ...
spec.unsupported.podTemplate
フィールドは テクノロジープレビュー 機能です。これは、すべての条件下で完全な機能がテストされていない低レベルの設定を公開するため、限定的なサポートのみを提供します。可能な限り、CR 仕様の最上位で、完全にサポートされているファーストクラスシチズンフィールドを使用してください。
たとえば、spec.unsupported.podTemplate.spec.imagePullSecrets
の代わりに、spec.imagePullSecrets
を直接使用します。
3.3.7. 外部インスタンスへの接続はサポート対象外
Red Hat Single Sign-On 7.6 Operator では、Red Hat Single Sign-On 7.6 の外部インスタンスへの接続がサポートされていました。Red Hat build of Keycloak Operator では、たとえば、クライアント CR を使用して既存のレルム内にクライアントを作成することは、サポートされなくなりました。
3.3.8. Horizontal Pod Autoscaler 対応デプロイメントの移行
Red Hat Single Sign-On 7.6 で Horizontal Pod Autoscaler (HPA) を使用するには、Keycloak CR の disableReplicasSyncing: true
フィールドを設定し、サーバーの StatefulSet をスケーリングする必要がありました。これは不要になりました。Red Hat build of Keycloak Operator の Keycloak CR は、HPA によって直接スケーリングできるためです。