5.4. バグ修正
本パートでは、ユーザーに大きな影響を及ぼしていた Red Hat Enterprise Linux 8.2 のバグで修正されたものを説明します。
5.4.1. インストーラーおよびイメージの作成
カーネル起動パラメーター version
または inst.version
を指定しても、インストールプログラムが停止しなくなります。
以前では、version
または inst.version
のブートパラメーターを指定してカーネルコマンドラインからインストールプログラムを起動すると、バージョン (例: anaconda 30.25.6
) が表示され、インストールプログラムが停止していました。
今回の更新で、カーネルコマンドラインからインストールプログラムを起動した場合に、version
パラメーターおよび inst.version
パラメーターが無視されるため、インストールプログラムは停止しません。
(BZ#1637472)
インストーラーにおける s390x のセキュアブートのサポート
以前は、RHEL 8.1 は、セキュアブートの使用を強制する IBM Z 環境で使用するためにブートディスクの準備をサポートしていました。インストール時に使用されるサーバーおよびハイパーバイザーの機能により、そのオンディスクフォーマットにセキュアブートのサポートが含まれるかを判断していました。インストール時にオンディスク形式に影響を与える方法はありませんでした。したがって、セキュアブートに対応している環境で RHEL 8.1 をインストールした場合、セキュアブートに対応していない環境に移行すると、一部のフェイルオーバーシナリオで起動したようにシステムを起動することはできませんでした。
今回の更新で、zipl
ツールのセキュアブートオプションを設定できるようになりました。これを行うには、以下のいずれかを使用します。
-
キックスタート
zipl
コマンドと、そのオプション (--secure-boot
、--no-secure-boot
、--force-secure-boot
など) の 1 つ。 - GUI の Installation Summary ウィンドウから、System > Installation Destination > Full disk summary and boot loader リンクを選択してシステムの起動デバイスを設定することができます。その結果、セキュアブートに対応していない環境でも、インストールを起動できるようになりました。
(BZ#1659400)
セキュアブート機能が利用できるようになりました。
以前は、secure=
ブートオプションのデフォルト値が auto に設定されていなかったため、セキュアブート機能が利用できませんでした。今回の更新で、事前設定されていない限り、デフォルト値が auto に設定され、セキュアブート機能が利用できるようになりました。
(BZ#1750326)
/etc/sysconfig/kernel
ファイルが new-kernel-pkg
スクリプトを参照しなくなりました。
以前は、/etc/sysconfig/kernel
ファイルが new-kernel-pkg
スクリプトを参照していました。ただし、 new-kernel-pkg
スクリプトは RHEL 8 システムに含まれていません。今回の更新で、new-kernel-pkg
スクリプトの参照が /etc/sysconfig/kernel
ファイルから削除されました。
インストールで、許容される最大値を超える数のデバイスを boot-device NVRAM
変数に設定しません。
以前は、RHEL 8 のインストールプログラムが、許容される最大値を超える数のデバイスを boot-device NVRAM
変数に設定していました。これにより、デバイスが最大数を超えるシステムでインストールが失敗していました。今回の更新で、RHEL 8 インストールプログラムが、最大デバイス設定を確認し、許可された数のデバイスしか追加しないようになりました。
(BZ#1748756)
インストールが、ネットワーク上にないキックスタートファイルの URL コマンドで指定されたイメージの場所に対して機能します。
以前は、イメージのリモートの場所によってトリガーされるネットワークアクティベーションが、ネットワーク上にないキックスタートファイルの URL コマンドで指定されていた場合、インストールがプロセスの初期段階で失敗していました。今回の更新で問題が修正され、CD-ROM やローカルブロックデバイスなど、ネットワーク上にないキックスタートファイルの URL コマンドを使用してイメージの場所を提供するインストールが期待どおりに機能するようになりました。
(BZ#1649359)
RHEL 8 インストールプログラムは、未フォーマットのデバイスの ECKD DASD のみを確認します。
以前は、未フォーマットのデバイスを確認する際に、インストールプログラムがすべての DASD デバイスを確認していました。しかし、インストールプログラムが確認する必要があるのは、ECKD DASD デバイスのみでした。これにより、SWAPGEN のある FBA DASD デバイスが使用されると、インストールはトレースバックで失敗していました。今回の更新で、インストールプログラムが FBA DASD デバイスを確認しなくなり、インストールが正常に実行されるようになりました。
(BZ#1715303)
5.4.2. ソフトウェア管理
yum repolist
が、利用できない最初のリポジトリーで終了しないようになりました。
以前は、リポジトリー設定オプション skip_if_unavailable
はデフォルトで以下のように設定されていました。
skip_if_unavailable=false
この設定により、エラーと終了ステータス 1 が付いた利用できない最初のリポジトリーで yum repolist
コマンドが強制終了していました。したがって、yum repolist
は、利用可能なリポジトリーのリスト表示を続行しませんでした。
今回の更新で、yum repolist
が修正され、一切のダウンロードを必要としなくなりました。これにより、yum repolist
はメタデータを必要とする出力を提供しなくなり、コマンドは、期待どおりに利用可能なリポジトリーをリスト表示し続けます。
利用可能なパッケージの数は、利用可能なメタデータを引き続き必要とする yum repolist --verbose
または yum repoinfo
によってしか返されないことに留意してください。したがって、これらのコマンドは利用できない最初のリポジトリーで終了します。
(BZ#1697472)
5.4.3. シェルおよびコマンドラインツール
ReaR
が更新されました。
RHEL 8.2 では、ReaR
(Relax-and-Recover) ユーティリティーに多くの更新が導入されました。
build ディレクトリーの処理が変更されました。以前のリリースでは、ReaR
に障害が発生した場合に、build ディレクトリーが一時的な場所に保持されていました。今回の更新で、非対話的な実行で build ディレクトリーがデフォルトで削除され、ディスク領域が消費されなくなりました。
KEEP_BUILD_DIR
設定変数のセマンティクスが拡張され、新しい errors
値が追加されるようになりました。KEEP_BUILD_DIR
変数を以下の値に設定できます。
-
errors
- エラーのある build ディレクトリーを保存を保存してデバッグする (以前の動作) -
y
(true
) - 常に build ディレクトリーを保持する -
n
(false
) - build ディレクトリーを保持しない
デフォルト値は空の文字列です。これは、ReaR
を対話的に (端末内で) 実行した場合に errors
を、ReaR
を非対話的に実行する場合は false
として処理されます。KEEP_BUILD_DIR
は、デバッグモード (-d
) とデバッグスクリプトモード (-D
) では自動的に true
に設定され、この動作は変更されていません。
以下は、主なバグ修正です。
- NetBackup 8.0 のサポートが修正されました。
-
ReaR
は、ユーザー、グループ、グループごとのユーザー数が多いシステムで、xrealloc: cannot allocate
と同様なバッシュエラーで中断されなくなりました。 -
bconsole
コマンドで、プロンプトが表示され、Bacula 統合の使用時に復元操作を実行できるようになりました。 -
ReaR
は、docker
サービスが実行中ではあるものの、docker
の root ディレクトリーが定義されていない状況や、docker
サービスのステータスが判断できない場合に、正しくファイルをバックアップするようになりました。 - 移行モードでシンプールを使用したり、システムを復旧したりする場合にリカバリーに失敗しなくなりました。
-
LVM を使用したリカバリープロセス中に
initramfs
の再ビルドに時間がかかる問題が解決されました。 -
ReaR
は、UEFI ブートローダーの使用時に、AMD および Intel 64 ビットアーキテクチャーで、正しく機能するブータブル ISO イメージを作成するようになりました。このセットアップでレスキューイメージを起動すると、エラーメッセージUnknown command 'configfile' (…) Entering rescue mode…
で Grub で中止されなくなりました。この設定での GRUB_RESCUE のサポート (XFS ファイルシステムのサポートがないため、以前は失敗する可能性がありました) も修正されました。
mlocate
パッケージのインストール時に mlocate-updatedb.timer
が有効化されるようになりました。
以前のバージョンでは、 mlocate
パッケージのインストール後に mlocate-updatedb.timer
が無効になるため、ファイルデータベースの再インデックスは自動的に実行されませんでした。今回の更新で、mlocate-updatedb.timer
タイマーが 90-default.preset
ファイルに含まれるようになり、mlocate
パッケージのインストール後にデフォルトで有効になります。その結果、ファイルデータベースが自動的に更新されます。
5.4.4. インフラストラクチャーサービス
dnsmasq
が非再帰 DNS クエリーを正しく処理するようになりました。
以前は、dnsmasq
は、非再帰クエリーをすべてアップストリームサーバーに転送し、その結果、さまざまな応答が発生していました。今回の更新で、DHCP ホストリース名や /etc/hosts
ファイルから読み込まれたホストなど、ローカルで既知の名前に対する非再帰的クエリーが dnsmasq
で処理されるようになり、アップストリームサーバーに転送されなくなりました。その結果、既知の名前への再帰クエリーと同じ応答が返されます。
dhclient
が、システム時間の変更後に IP アドレスの更新に失敗しなくなりました。
以前は、システム時間を変更すると、カーネルによる削除の影響で、割り当てられた IP アドレスがシステムで失われる可能性がありました。今回の更新で、dhclient
が巻き戻しジャンプ検出にモノトニックタイマーを使用し、システム時刻で連続しないジャンプがあった場合のリース拡張に DHCPREQUEST
メッセージを発行するようになりました。その結果、上述のシナリオでシステムが IP アドレスを失わなくなりました。
ipcalc
が、/31
ネットワークの正しいブロードキャストアドレスを返すようになりました。
今回の更新で、ipcalc
ユーティリティーが正しく RFC 3021 規格に従うように修正されています。これにより、インターフェイスで /31
接頭辞を使用すると、ipcalc
は正しいブロードキャストアドレスを返します。
(BZ#1638834)
/etc/services
に適切な NRPE ポート定義が含まれるようになりました。
今回の更新で、適切な Nagios Remote Plug-in Executor (NRPE) サービスポート定義が /etc/services
ファイルに追加されました。
postfix
DNS リゾルバーコードは、res_query
ではなく、res_search
を使用するようになりました。
DNS リゾルバーコードは、postfix
の前回の更新後、 res_search
関数ではなく、res_query
関数を使用していました。これにより、以下の postfix
設定を使用する場合は、DNS リゾルバーで、現在のドメインおよび親ドメインのホスト名が検索されませんでした。
# postconf -e "smtp_host_lookup = dns" # postconf -e "smtp_dns_resolver_options = res_defnames, res_dnsrch"
たとえば、
# postconf -e "relayhost = [smtp]"
と example.com 形式のドメイン名を使用している場合には、DNS リゾルバーは smtp.example.com の SMTP サーバーをリレーに使用しませんでした。
今回の更新で、DNS リゾルバーコードが res_query
の代わりに res_search
を使用するように変更され、現在のドメインおよび親ドメインのホスト名が正しく検索されるようになりました。
Postfix で PCRE、CDB、および SQLite が使用できるようになりました。
RHEL 8 では、postfix
パッケージは複数のサブパッケージに分けられており、各サブパッケージが特定のデータベースのプラグインを提供しています。以前は、postfix-pcre
プラグイン、postfix-cdb
プラグイン、postfix-sqlite
プラグインを含む RPM パッケージは提供されていませんでした。したがって、Postfix では、これらのプラグインを使用するデータベースを使用できませんでした。今回の更新で、PCRE、CDB、および SQLite プラグインを含む RPM パッケージが AppStream リポジトリーに追加されました。そのため、適切な RPM パッケージのインストール後、これらのプラグインを使用できます。
5.4.5. セキュリティー
fapolicyd
が RHEL の更新を阻止しなくなりました。
更新で実行中のアプリケーションのバイナリーが置き換えられると、カーネルにより、接尾辞 " (deleted) が追加されて、メモリー内のアプリケーションのバイナリーパスが変更されます。以前のバージョンでは、fapolicyd
ファイルアクセスポリシーデーモンは、信頼できないアプリケーションなどのように処理し、他のファイルを開き、実行できませんでした。そのため、更新の適用後にシステムを起動できないことがありました。
RHBA-2020:5243 アドバイザリーのリリースでは、fapolicyd
がバイナリーパスの接尾辞を無視し、バイナリーが信頼データベースに一致するようにします。これにより、fapolicyd
がルールを正しく適用し、更新プロセスを完了できるようになりました。
(BZ#1897091)
openssl-pkcs11
が、複数のデバイスへのログイン試行によるデバイスのロックをしなくなりました。
以前は、openssl-pkcs11
エンジンは、PKCS #11 URI が提供する最初の検索結果へのログインを試みていました。この際、最初の検索結果が目的のデバイスではなく、PIN が別のデバイスに適合するものだったとしても、提供された PIN を使用していました。これらの認証試行の失敗により、デバイスはロックされていました。
openssl-pkcs11
は、提供された PKCS #11 URI が単一のデバイスと一致する場合にのみ、ログインを試みるようになりました。PKCS #11 検索で複数のデバイスが検出される場合には、エンジンが意図的に失敗するようになりました。このため、openssl-pkcs11
を使用してデバイスにログインする場合には、単一のデバイスにのみ一致する PKCS #11 URI を提供しなければなりません。
rpmverifyfile
を使用する OpenSCAP オフラインスキャンが正常に動作するようになりました。
今回の更新以前は、OpenSCAP スキャナーは、オフラインモードで現在の作業ディレクトリーを正しく変更せず、fchdir
関数を、OpenSCAP rpmverifyfile
プローブの正しい引数で呼び出していませんでした。OpenSCAP スキャナーが、オフラインモードで現在の作業ディレクトリーを正しく変更するように修正され、また、fchdir
関数が rpmverifyfile
で正しい引数を使用するように修正されました。その結果、OVAL rpmverifyfile
を含む SCAP コンテンツを、OpenSCAP で任意のファイルシステムのスキャンに使用できるようになりました。
(BZ#1636431)
PKCS #11 デバイスに保存された公開鍵とは一致しない ECDSA 秘密鍵を使用する場合でも、httpd
が正常に起動するようになりました。
RSA 鍵とは異なり、ECDSA 秘密鍵には、公開鍵情報が含まれているとは限りません。この場合、ECDSA 秘密鍵から公開鍵を取得することはできません。このため、PKCS #11 デバイスは、公開鍵オブジェクトまたは証明書オブジェクトのいずれであっても、別のオブジェクトに公開鍵情報を格納します。OpenSSL は、秘密鍵に公開鍵情報を含めるために、エンジンが提供する EVP_PKEY
構造を想定していました。OpenSSL に提供する EVP_PKEY
構造を満たす場合、openssl-pkcs11
パッケージのエンジンは、一致する公開鍵オブジェクトのみから公開鍵情報を取得し、現在の証明書オブジェクトを無視していました。
OpenSSL がエンジンから ECDSA 秘密鍵を要求する場合、指定された EVP_PKEY
構造には、公開鍵を含む一致する証明書が利用可能な場合でも、PKCS#11 デバイスに公開鍵がなければ、公開鍵情報が含まれていませんでした。これにより、Apache httpd
の Web サーバーは、公開鍵を必要とする X509_check_private_key()
関数を (起動プロセスで) 呼び出すため、このシナリオで httpd
が起動しなくなっていました。この問題は、公開鍵オブジェクトが利用できない場合に、証明書から EC 公開鍵を読み込むことで解決されています。これにより、ECDSA 鍵が PKCS#11 デバイスに保存されている場合、httpd
が正常に起動するようになりました。
Audit ルールの scap-security-guide
PCI-DSS 修正が適切に動作するようになりました。
以前は、scap-security-guide
パッケージには、修正の組み合わせと、以下のいずれかのシナリオで生じるチェックが含まれていました。
- 監査ルールの誤った修正
- 渡されたルールが失敗とマークされた誤検出を含むスキャン評価
これにより、RHEL インストールプロセス時に、インストール済みシステムのスキャンが、失敗またはエラーとして Audit ルールを報告していました。
今回の更新で、修復が修正され、PCI-DSS セキュリティーポリシーでインストールしたシステムのスキャンで、Audit ルールの誤検出が報告されなくなりました。
OpenSCAP が、仮想マシンおよびコンテナーのオフラインスキャンを提供するようになりました。
以前は、OpenSCAP のコードベースをリファクターリングすると、特定の RPM プローブがオフラインモードで仮想マシンおよびコンテナーのファイルシステムをスキャンするのに失敗していました。このため、次のツール (oscap-vm
および oscap-chroot
) を openscap-utils
パッケージに含めることができませんでした。さらに、openscap-containers
パッケージは、RHEL 8 から完全に削除されました。今回の更新で、プローブの問題が修正されました。
これにより、RHEL 8 には、openscap-utils
パッケージに oscap-podman
ツール、oscap-vm
ツール、および oscap-chroot
ツールが含まれるようになりました。
(BZ#1618489)
OpenSCAP rpmverifypackage
が正常に動作するようになりました。
以前は、rpmverifypackage
プローブにより、システムコール chdir
および chroot
が 2 回呼び出されていました。これにより、カスタムの OVAL (Open Vulnerability and Assessment Language) コンテンツを使用した OpenSCAP をスキャンする際にこのプルーブを使用していると、エラーが発生していました。rpmverifypackage
プローブが、システムコール chdir
および chroot
を正常に使用するように修正されました。その結果、rpmverifypackage
が正常に動作するようになりました。
(BZ#1646197)
5.4.6. ネットワーク
qdisc_run
関数におけるロックによって、カーネルのクラッシュが発生しないようになりました。
以前は、pfifo_fast
キュー規律がトラフィックのデキュー中にリセットされる場合の競合状態が、開放後のパケット転送につながっていました。これにより、カーネルが突然終了することがありました。今回の更新で、qdisc_run
関数のロックが改善されました。これにより、上述のシナリオでカーネルがクラッシュしなくなりました。
(BZ#1744397)
org.fedoraproject.FirewallD1.config.service
の DBus API が期待どおりに動作するようになりました。
以前は、org.fedoraproject.FirewallD1
内の DBus API getIncludes
、setIncludes
、および queryIncludes
関数が、間違ったインデックスのために org.fedoraproject.FirewallD1.Exception: list index out of range
というエラーメッセージを返していました。今回の更新で、DBus API 関数 getIncludes
、setIncludes
、および queryIncludes
が期待どおりに動作するようになりました。
RHEL で、ipvs
モジュールのアンロード時にカーネル警告をログに記録しなくなりました。
以前は、IP 仮想サーバー (ipvs
) モジュールが誤った参照カウントを使用していたため、モジュールのアンロード時に競合状態が発生していました。これにより、RHEL がカーネル警告をログ記録していました。今回の更新で競合状態が修正されています。その結果、ipvs
モジュールのアンロード時に、カーネルが警告をログ記録しなくなりました。
(BZ#1687094)
nft
ユーティリティーが、最初のオプション以外の引数の後に、引数をコマンドラインオプションとして解釈することがなくなりました。
以前は、nft
ユーティリティーは nft
コマンド内のどの場所でもオプションを受け入れていました。たとえば、管理者はオプション以外の引数の間や、またはその後に、オプションを使用することができました。これにより、ダッシュ記号のために、nft
は負の優先順位の値をオプションとして解釈し、コマンドに失敗していました。nft
ユーティリティーのコマンドラインパーサーが、最初のオプション以外の引数を一度読み込んだ後は、ダッシュ記号で始まる引数を解釈しないよう更新されました。その結果、管理者が、負の優先順位の値を nft
に渡すための回避策をとる必要がなくなりました。
この変更により、すべてのコマンドオプションは、最初のオプション以外の引数より前に nft
に渡さなければならなくなりましたので、留意してください。この更新をインストールした後でも確実に nftables スクリプトが期待どおりに動作するよう、更新前に、スクリプトがこの新しい条件を満たしていることを確認してください。
/etc/hosts.allow
および /etc/hosts.deny
ファイルに、削除された tcp_wrappers
への古い参照が含まれなくなりました。
以前では、/etc/hosts.allow
ファイルおよび /etc/hosts.deny
ファイルには tcp_wrappers
パッケージに関する古い情報が含まれていました。これは、削除された tcp_wrappers
に必要なくなったため、RHEL 8 ではファイルが削除されました。
ゾーンのドリフトを無効にする設定パラメーターを firewalld
に追加されました
以前のリリースでは、firewalld
サービスに、ゾーンのドリフトとして知られる、文書化されていない動作が含まれていました。RHEL 8.0 では、セキュリティーに悪影響を及ぼす可能性があるという理由から、この動作が削除されました。その結果、この動作を使用して汎用ゾーンまたはフォールバックゾーンを設定するホストでは、以前許可されていた接続を firewalld
が拒否するようになりました。今回の更新で、ゾーンのドリフト動作が設定可能な機能として再度追加されました。これにより、ゾーンのドリフトを使用するか、動作を無効化してよりセキュアなファイアウォール設定を使用するかを、ユーザーが決定できるようになりました。
RHEL 8.2 では、/etc/firewalld/firewalld.conf
ファイルの新しい AllowZoneDrifting
パラメーターはデフォルトで yes
に設定されています。このパラメーターが有効な場合、以下のメッセージが firewalld
ログに記録されるので注意してください。
WARNING: AllowZoneDrifting is enabled. This is considered an insecure configuration option. It will be removed in a future release. Please consider disabling it now.
(BZ#1772208)
5.4.7. カーネル
サブセクションのメモリーホットプラグが完全にサポートされるようになりました。
以前のリリースでは、デュアルインラインモジュール (DIMM) やインターリーブなど、調整された物理メモリー領域が 64MiB メモリー境界に設定されているものがありました。ただし、Linux ホットプラグサブシステムは 128MiB のメモリーサイズを使用するため、新しいデバイスをホットプラグすると、複数のメモリー領域が 1 つのホットプラグメモリーウィンドウに重なっていました。そのため、以下または同様の呼び出しトレースの、利用可能な永続メモリー名前空間をリスト表示できませんでした。
WARNING: CPU: 38 PID: 928 at arch/x86/mm/init_64.c:850 add_pages+0x5c/0x60 [..] RIP: 0010:add_pages+0x5c/0x60 [..] Call Trace: devm_memremap_pages+0x460/0x6e0 pmem_attach_disk+0x29e/0x680 [nd_pmem] ? nd_dax_probe+0xfc/0x120 [libnvdimm] nvdimm_bus_probe+0x66/0x160 [libnvdimm]
今回の更新で問題が修正され、複数のメモリー領域が単一のホットプラグメモリーウィンドウを共有できるように Linux ホットプラグサブシステムをサポートするようになりました。
(BZ#1724969)
データの破損の場合、WARN メッセージではなく BUG がトリガーされるようになりました。
今回の機能強化により、lib/list_debug.c
でリストが破損すると、BUG がトリガーされ、vmcore
でレポートが生成されるようになりました。以前は、データの破損に遭遇すると、単純な WARN が生成されていましたが、これは見過ごされやすいものでした。CONFIG_BUG_ON_DATA_CORRUPTION
を設定することで、カーネルがデータ破損に反応して、クラッシュを作成し、BUG をトリガーするようになりました。これにより、さらなる損傷が回避され、セキュリティーリスクが低減されます。kdump
が vmcore
を生成するようになり、データ破損のバグレポートが改善されました。
(BZ#1714330)
Intel Carlsville
カードのサポートが追加されましたが、RHEL 8.2 で検証されていません。
Intel Carlsville
カードのサポートを利用できるようになりましたが、Red Hat Enterprise Linux 8.2 でテストされていません。
(BZ#1720227)
RPS および XPS は、分離された CPU にジョブを配置しなくなりました
以前は、Receive Packet Steering (RPS) ソフトウェアキューメカニズムと Transmit Packet Steering (XPS) 送信キュー選択メカニズムが、分離された CPU を含むすべての CPU セットにジョブを割り当てていました。その結果、遅延の影響を受けやすいワークロードが RPS または XPS ジョブが実行されているのと同じ CPU を使用していた場合は、リアルタイム環境で予期しない遅延スパイクが発生する可能性がありました。今回の更新により、store_rps_map()
関数には、RPS 設定の目的で分離された CPU が含まれなくなりました。同様に、XPS 設定に使用されるカーネルドライバーは、CPU 分離を考慮しています。その結果、RPS および XPS は、説明されているシナリオで分離された CPU にジョブを配置しなくなりました。/sys/devices/pci*/net/dev/queues/rx-*/rps_cpus
ファイルで分離された CPU を設定すると、次のエラーが表示されます。
Error: "-bash: echo:write error: Invalid argument"
ただし、/sys/devices/pci*/net/dev/queues/tx-*/xps_cpus
ファイルで分離された CPU を手動で設定すると、分離された CPU に XPS ジョブが正常に割り当てられます。
分離された CPU を使用する環境でのネットワークワークロードでは、パフォーマンスが多少変動する可能性があることに注意してください。
(BZ#1867174)
5.4.8. ファイルシステムおよびストレージ
SCSI ドライバーがメモリーを過剰に使用しなくなりました。
以前は、SCSI ドライバーの中には、RHEL 7 よりも大容量のメモリーを使用しているものがありました。ファイバーチャネルホストバスアダプター (HBA) での vPort 作成など、特定のケースでは、システム設定によってはメモリー使用量が過剰になっていました。
メモリー使用量の増加は、ブロックレイヤーでのメモリーの事前割り当てにより発生していました。各 I/O リクエストに対して、マルチキューブロックデバイススケジューリング (BLK-MQ) とマルチキューの SCSI スタック (SCSI-MQ) の両方がメモリーを事前に割り当てていたため、メモリー使用量が増えていました。
今回の更新で、ブロック層がメモリーの事前割り当て量を制限するようになり、その結果、SCSI ドライバーが過剰な量のメモリーを使用することはなくなりました。
(BZ#1698297)
UDS が再構築を終了する前に VDO を一時停止できるようになりました。
以前のリリースでは、UDS インデックスの再構築中に VDO ボリュームを一時停止しようとすると、dmsetup suspend
コマンドが応答しなくなりました。このコマンドは、再構築後にのみ終了します。
今回の更新で、この問題が修正されています。dmsetup suspend
コマンド は、応答しなくなることなく UDS の再構築が完了する前に終了できます。
5.4.9. 動的プログラミング言語、Web サーバー、およびデータベースサーバー
mod_cgid
ロギングの問題が修正されました。
今回の更新以前は、mod_cgid
Apache httpd
モジュールをスレッド化マルチプロセッシングモジュール (MPM) で使用する場合、以下のロギング問題が発生していました。
-
CGI スクリプトの
stderr
出力に、標準のタイムスタンプ情報が付いていませんでした。 -
VirtualHost
に特有のログファイルに CGI スクリプトのstderr
出力が設定されていても、正しくリダイレクトされませんでした。
今回の更新で問題が修正され、mod_cgid
ロギングが期待どおりに動作するようになりました。
(BZ#1633224)
5.4.10. コンパイラーおよび開発ツール
dlopen
の失敗時に、未配置で初期化されていない共有オブジェクトが失敗することがなくなりました。
以前は、dlopen
呼び出しに失敗すると、glibc
動的リンカーは、エラー報告前に NODELETE
マークの付いた共有オブジェクトを削除しませんでした。そのため、未配置で初期化されていない共有オブジェクトがプロセスイメージに残され、最終的にはアサーションの失敗またはクラッシュにつながっていました。今回の更新で、動的ローダーは dlopen
失敗時に、保留中の NODELETE
状態を使用して共有オブジェクトを削除した後で、それらを永続的に NODELETE
としてマークするようになりました。その結果、再配置されていないオブジェクトがプロセスに取り残されることはありません。また、ELF コンストラクターおよびデストラクターの実行中に遅延結合が失敗すると、プロセスが終了するようになりました。
64 ビット ARM アーキテクチャーの Advanced SIMD 関数は遅延解決時に誤ってコンパイルしなくなりました。
以前のリリースでは、Advanced SIMD の新しいベクトルプロシージャーコール標準 (PCS) で、Advanced SIMD 機能の遅延解決時に、特定の呼出先退避レジスターが正しく保存、復元されませんでした。そのため、ランタイム時にバイナリーが誤作動する可能性がありました。今回の更新では、シンボルテーブルの Advanced SIMD と SVE ベクトル関数は .variant_pcs
とマーク付されたので、動的なリンカーはこのような関数を初期にバインドするようになります。
sudo
ラッパースクリプトはオプションを解析するようになりました。
以前のリリースでは、/opt/redhat/devtoolset*/root/usr/bin/sudo
ラッパースクリプトは sudo
オプションを正しく解析しませんでした。そのため、一部の sudo
オプション (sudo -i
など) を実行できませんでした。今回の更新で、sudo
オプションが正しく解析され、sudo
ラッパースクリプトが /usr/bin/sudo
と同様に動作するようになりました。
glibc
での TLS 変数の調整が修正されました。
以前のリリースでは、特定の条件下で、調整されたスレッドローカルストレージ (TLS) データは、想定の調整なしにインスタンス化される可能性がありました。今回の更新で、POSIX Thread Library libpthread
が拡張され、どのような条件下でも正しい調整を行うようになりました。これにより、調整された TLS データは、正しく調整されすべてのスレッドに対して適切にインスタンス化されるようになりました。
EINTR
または EAGAIN
エラーの発生後に pututxline
呼び出しを繰り返しても、utmp
ファイルが破損しなくなりました。
pututxline
関数がロックを取得しようとして、時間内に成功しなかった場合には、関数は EINTR
または EAGAIN
のエラーコードを返します。以前のリリースでは、は、pututxline
がすぐに呼び出されて、ロックを取得するように管理できた場合に、utmp
ファイルにすでに割り当てられている対応のスロットを使用せず、別のエントリーを追加していました。そのため、このような未使用のエントリーにより、utmp
ファイルのサイズが大幅に増大していました。今回の更新で問題が修正され、エントリーが utmp
ファイルに正しく追加されるようになりました。
内部障害が発生しても mtrace
がハングしなくなりました。
以前のリリースでは、mtrace
ツールの実装に不具合が原因で、メモリートレースがハングする可能性がありました。この問題を修正するために、mtrace
メモリートレースの実装が堅牢化され、内部障害の発生時にもハングが発生しなくなりました。その結果、mtrace
を呼び出しても、ハングしなくなり、制限時間内に完了するようになりました。
fork
関数は pthread_atfork
を使用すると発生する特定のデッドロックを回避するようになりました。
以前のリリースは、プログラムが atfork
ハンドラーを登録し、非同期署名ハンドラーから fork
を呼び出すと、内部実装依存ロックの不具合により、プログラムがフリーズする可能性がありました。今回の更新で、フォーク
とその atfork
ハンドラーの実装を調整し、シングルスレッドプログラムでデッドロックを回避できるようになりました。
strstr
は、省略されたパターンに対して、正しい一致内容を返すようになりました。
一部の IBM Z プラットフォーム (z15、以前は arch13) では、strstr
関数は、ページの境界をまたぐ検索パターンを処理する場合に CPU レジスターが適切に更新されませんでした。これにより、strstr
は誤った一致内容を返していました。今回の更新でこの問題が修正され、上記のシナリオで strstr
が期待どおりに動作するようになりました。
glibc
における C.UTF-8 ロケールソースの省略表現が修正されました。
以前は、C.UTF-8 ソースロケールに不具合があると、U+10000 を超えるすべての Unicode コードポイントに照合の重み付けが欠けていました。これにより、U+10000 を超えるすべてのコードポイントが期待どおりに照合されませんでした。C.UTF-8 ソースロケールが修正され、新たにコンパイルされたバイナリーロケールでは、すべての Unicode コードポイントが照合の重み付けを持つようになりました。コンパイルされた C.UTF-8 ロケールは、この修正により 5.3MiB 大きくなります。
setpwent()
を呼び出しせずに getpwent()
が呼び出されても glibc
が失敗しなくなりました。
/etc/nsswitch.conf
ファイルが Berkeley DB (db
) パスワードプロバイダーを参照する場合は、最初に setpwent()
を 1 度のみ呼び出すことなく、getpwent()
関数を使用してデータを要求できます。endpwent()
関数を呼び出すとき、最初に setpwent()
を呼び出さずに getpwent()
に呼び出しを行うと、glibc
が失敗していました。これは、endpwent()
が新しいクエリーを許可するように内部をリセットできなかったためです。今回の更新でこの問題が修正されています。その結果、endpwent()
で 1 つのクエリーを終了すると、setpwent()
を呼び出さなくても、getpwent()
への呼び出しがさらに新しいクエリーを開始します。
ltrace
は、強化されたバイナリーでのシステムコールを追跡できるようになりました。
以前のリリースでは、ltrace
を使用して、AMD および Intel 64 ビットアーキテクチャー上のシステムバイナリーなど、特定の強化されたバイナリーで結果が生成されませんでした。今回の更新で、ltrace
が、強化されたバイナリーでのシステムコールを追跡できるようになりました。
(BZ#1655368)
Intel の JCC の不具合により、GCC コンパイラーでパフォーマンスが大幅に低下することがなくなりました。
特定の Intel CPU は、マシン命令が誤って実行される原因となるジャンプ条件コード (JCC) バグの影響を受けます。したがって、影響を受けた CPU は、プログラムを適切に実行しない可能性があります。完全な修正には、脆弱な CPU のマイクロコードの更新が含まれており、パフォーマンス低下につながる可能性があります。今回の更新で、パフォーマンスの低下を軽減するのに役立つアセンブラーでの回避策が可能になりました。回避策は、デフォルトでは有効になっていません。
回避策を適用するには、GCC で -Wa,-mbranches-within-32B-boundaries
コマンドラインオプションを使用して、プログラムを再コンパイルします。このコマンドラインオプションで再コンパイルしたプログラムは、JCC の不具合の影響を受けませんが、システムを完全に保護するにはマイクロコードの更新が依然として必要になります。
回避策を適用するとプログラムのサイズが増大します。再コンパイルを行わなかった場合よりは軽微ではあるものの、パフォーマンスがわずかに低下する可能性があることに留意してください。
並行ビルド中に make
の速度が低下することがなくなりました。
以前のバージョンでは、並行ビルドの実行中に、シーケンスの実行を待機すると、make
サブプロセスが一時的に応答しなくなる可能性がありました。その結果、-j
の値が高いビルドは遅延するか、効果的な -j
の値が低いで実行されました。今回の更新では、make
のジョブ制御ロジックがブロックされなくなりました。その結果、-j
の値が高いビルドが完全な -j
の速度で実行されます。
ltrace
ツールが関数呼び出しを正しく報告するようになりました。
すべての RHEL コンポーネントに適用されるバイナリー強化を改善したことが原因で、以前は、ltrace
ツールで RHEL コンポーネントからのバイナリーファイルの関数呼び出しを検出できませんでした。これにより、ltrace
の出力では、このようなバイナリーファイルで使用されたときに検出される呼び出しが報告されず、空になっていました。今回の更新で、ltrace
が関数呼び出しを処理する方法が修正され、上記の問題が発生しなくなりました。
(BZ#1618748)
5.4.11. ID 管理
dsctl
ユーティリティーが、名前にハイフンが付いたインスタンスの管理に失敗しなくなりました。
以前は、dsctl
ユーティリティーは Directory Server インスタンス名のハイフンを正しく解析しませんでした。そのため、管理者は dsctl
を使用して名前にハイフンを含むインスタンスを管理することができませんでした。今回の更新でこの問題が修正され、上記のシナリオで dsctl
が期待どおりに動作するようになりました。
Directory Server インスタンス名が、最大 103 文字になりました。
LDAP クライアントが Directory Server への接続を確立すると、サーバーはクライアントアドレスに関連する情報をローカルバッファーに保存します。以前は、このバッファーのサイズが小さすぎて、46 文字を超える LDAPI パス名を格納できませんでした。たとえば、Directory Server インスタンスの名前が長すぎる場合などがこれに該当します。これにより、バッファーオーバーフローが原因で、サーバーが突然終了していました。今回の更新で、Netscape Portable Runtime (NSPR) ライブラリーがパス名用にサポートするバッファーサイズが最大サイズに増えます。その結果、上述のシナリオで Directory Server がクラッシュしなくなりました。
NSPR ライブラリーの制限により、インスタンス名は最大 103 文字になる可能性があることに留意してください。
pkidestroy
ユーティリティーが正しいインスタンスを選択するようになりました。
以前のリリースでは、半分削除されたインスタンスで pkidestroy --force
コマンドを実行すると、 -i instance
でインスタンス名を指定しても、デフォルトで pki-tomcat
インスタンスが選択されていました。
これにより、目的のインスタンスではなく、pki-tomcat
インスタンスが削除され、--remove-logs
オプションを指定しても、目的のインスタンスのログが削除されませんでした。pkidestroy
は、正しいインスタンス名を適用し、目的のインスタンスの残り物のみを削除するようになりました。
sssd-ldap
の man ページで ldap_user_authorized_service
の説明が更新されました。
RHEL 8 では、プラグ可能な認証モジュール (PAM) スタックが変更されました。たとえば、systemd
ユーザーセッションは、PAM サービス systemd-user
を使用して PAM 対話を開始するようになりました。このサービスは、PAM サービスの system-auth
を再帰的に追加します。ここには、pam_sss.so
インターフェイスが含まれる場合もあります。これは、SSSD アクセス制御が常に呼び出されることを意味します。
RHEL 8 システムのアクセス制御ルールを規定する場合は、変更に注意してください。たとえば、systemd-user
サービスを、許可されたサービスリストに追加できます。
IPA HBAC、AD GPO などの一部のアクセス制御メカニズムでは、systemd-user
サービスが、許可されたサービスリストにデフォルトで追加されているため、何もする必要はありません。
sssd-ldap
の man ページが更新され、上記の情報が追加されるようになりました。
IdM で AD 信頼のサポートを有効にすると、必要な DNS レコードに関する情報が表示されるようになりました。
以前のリリースでは、外部 DNS 管理を使用した Red Hat Enterprise Linux Identity Management (IdM) インストールで Active Directory (AD) 信頼のサポートを有効にすると、必要な DNS レコードに関する情報が表示されません。IdM で必要とされる全 DNS レコードのリストを取得するには、ipa dns-update-system-records --dry-run
コマンドを手動で入力する必要がありました。
今回の更新で、ipa-adtrust-install
コマンドは、DNS ゾーンに手動で追加する DNS サービスレコードを正しくリスト表示するようになりました。
再帰 DNS クエリーは、統合 DNS を備えた IdM サーバーでデフォルトで無効になりました。
以前は、統合 DNS を備えた Identity Management (IdM) サーバーを使用する場合、再帰クエリーがデフォルトで有効になっていました。その結果、サーバーが DNS 増幅攻撃に使用される可能性がありました。今回の更新により、再帰 DNS クエリーがデフォルトで無効になり、サーバーを DNS 増幅攻撃に使用できなくなりました。
IdM サーバーの統合 DNS 設定を変更することで、特定のクライアントの再帰クエリーを手動で許可できます。たとえば、信頼できるクライアントのみがキャッシュと再帰にアクセスできるように、誰でもサーバーにクエリーを実行して信頼できるデータを取得できるようにするには、trusted
アクセス制御リスト (ACL) にクライアントをリストします。
/etc/named/ipa-ext.conf
ファイルにtrusted
ACL を作成します。acl "trusted" { 192.168.0.0/16; 10.153.154.0/24; localhost; localnets; };
trusted
ACL を/etc/named/ipa-options-ext.conf
ファイルに追加します。allow-query { any; }; allow-recursion { trusted; }; allow-query-cache { trusted; };
(BZ#2151696)
5.4.12. デスクトップ
Wayland 上の GNOME Shell でソフトウェアレンダラーを使用しても、動作が遅くならなくなりました。
以前は、GNOME Shell の Wayland バックエンドは、ソフトウェアレンダラーの使用時にキャッシュ可能なフレームバッファーを使用していませんでした。そのため、Wayland 上のソフトウェアレンダリングされた GNOME Shell は、X.org バックエンド上のソフトウェアレンダリングされた GNOME Shell と比較して遅くなっていました。
今回の更新で、Wayland 上の GNOME Shell に中間シャドウフレームバッファーが追加されました。その結果、Wayland 上のソフトウェアレンダリングされた GNOME Shell が、X.org 上の GNOME Shell と同じように実行できるようになりました。
(BZ#1737553)
5.4.13. 仮想化
第 10 世代の Intel Core プロセッサーにおける仮想マシンの起動に失敗しなくなりました。
以前は、第 10 世代 Intel Core プロセッサーを使用するホストモデル (Icelake-Server ともいう) では、仮想マシン (VM) の起動に失敗していました。今回の更新で、libvirt
が QEMU でサポートされていない pconfig
CPU 機能の無効化を試みなくなりました。その結果、第 10 世代 Intel プロセッサーを実行するホストモデルでの仮想マシンの起動に失敗しなくなりました。
cloud-init
を使用した Microsoft Azure での仮想マシンのプロビジョニングが正しく機能するようになりました。
以前のリリースでは、cloud-init
ユーティリティーを使用して、Microsoft Azure プラットフォームで RHEL 8 仮想マシンをプロビジョニングすることができませんでした。今回の更新で、Azure エンドポイントの cloud-init
処理が修正され、Azure での RHEL 8 仮想マシンのプロビジョニングが期待通りに実行されるようになりました。
(BZ#1641190)
RHEL 7 ホスト上の RHEL 8 仮想マシンが、1920x1200 を超える解像度で確実に表示できます。
以前は、RHEL 7 ホストシステムで RHEL 8 仮想マシンを実行している場合は、kiosk モードでアプリケーションを実行するなど、仮想マシンのグラフィカル出力を表示する方法によっては、1920x1200 を超える解像度を表示することはできませんでした。そのため、ホストハードウェアがより高い解像度に対応している場合でも、この方法での仮想マシンを表示できる解像度は最大 1920x1200 のみでした。今回の更新で、上述の問題が発生しないように DRM ドライバーおよび QXL ドライバーが調整されています。
(BZ#1635295)
cloud-init
を使用する ESXi 仮想マシンのカスタマイゼーションと、仮想マシンの再起動が正常に動作するようになりました。
以前は、cloud-init
サービスを使用して VMware ESXi ハイパーバイザーで実行している仮想マシンを修正し、静的 IP を使用して仮想マシンをクローンすると、新しいクローンの仮想マシンを再起動するのにかかる時間が非常に長くなる場合がありました。今回の更新で、cloud-init
が仮想マシンの静的 IP を DHCP に書き直さないように修正され、上記の問題が発生しなくなりました。
(BZ#1666961, BZ#1706482)
5.4.14. コンテナー
quay.io レジストリーからイメージをプルする場合に、意図しないイメージが生じなくなりました。
以前のリリースでは、/etc/containers/registries.conf
内のデフォルトのレジストリー検索リストに quay.io コンテナーイメージレジストリーを記載した場合に、短縮名を使用すると、スプーフィングされたイメージをプルできていました。この問題を修正するため、quay.io コンテナーイメージレジストリーが、 /etc/containers/registries.conf
のデフォルトのレジストリー検索リストから削除されました。その結果、quay.io
レジストリーからイメージをプルする場合、ユーザーは完全なリポジトリー名 (quay.io/myorg/myimage
など) を指定することが必要になりました。Quay.io レジストリーは、/etc/containers/registries.conf
のデフォルトのレジストリー検索リストに再び追加し、短縮名を使用したコンテナーイメージのプルを有効化し直すことができますが、セキュリティーリスクが生じる可能性があるため、これは推奨されません。