第15章 IPv6 を使用したテナントネットワーク
本章では、テナントネットワークに IPv6 サブネットを実装する方法について説明します。director 7.3 では、テナントネットワークに加えて、IPv6 ネイティブのデプロイメントをオーバークラウドノード用に設定することが可能です。
Red Hat OpenStack Platform 6 から、テナントネットワークに IPv6 のサポートが追加されました。IPv6 サブネットは、既存のテナントネットワーク内で作成され、Stateless Address Autoconfiguration (SLAAC)、 Stateful DHCPv6、Stateless DHCPv6 の複数のアドレス割り当てモードをサポートします。本章では、IPv6 サブネット作成のオプションについて説明し、それらのステップを実行する手順の例を記載します。
15.1. IPv6 サブネットのオプション リンクのコピーリンクがクリップボードにコピーされました!
IPv6 サブネットは、neutron subnet-create コマンドを使用して作成します。また、オプションとして、アドレスモードとルーター広告モードを指定することができます。これらのオプションの設定可能な組み合わせは以下のとおりです。
RA モード | アドレスモード | 結果 |
---|---|---|
ipv6_ra_mode=not set |
ipv6-address-mode=slaac |
インスタンスは、SLAAC を使用して外部ルーター (OpenStack Networking で管理されていないルーター) から IPv6 アドレスを受信します。 |
ipv6_ra_mode=not set |
ipv6-address-mode=dhcpv6-stateful |
インスタンスは、DHCPv6 stateful を使用して、OpenStack Networking (dnsmasq) から IPv6 アドレスとオプションの情報を受信します。 |
ipv6_ra_mode=not set |
ipv6-address-mode=dhcpv6-stateless |
インスタンスは、SLAAC を使用して外部ルーターから IPv6 アドレスを受信し、DHCPv6 stateless を使用して OpenStack Networking (dnsmasq) からオプションの情報を受信します。 |
ipv6_ra_mode=slaac |
ipv6-address-mode=not-set |
インスタンスは、SLAAC を使用して OpenStack Networking (radvd) から IPv6 アドレスを受信します。 |
ipv6_ra_mode=dhcpv6-stateful |
ipv6-address-mode=not-set |
インスタンスは、DHCPv6 stateful を使用して、外部の DHCPv6 サーバーから IPv6 アドレスとオプションの情報を受信します。 |
ipv6_ra_mode=dhcpv6-stateless |
ipv6-address-mode=not-set |
インスタンスは、SLAAC を使用して OpenStack Networking (radvd) から IPv6 アドレスを受信し、DHCPv6 stateless を使用して外部 DHCPv6 サーバーからオプションの情報を受信します。 |
ipv6_ra_mode=slaac |
ipv6-address-mode=slaac |
インスタンスは、SLAAC を使用して OpenStack Networking (radvd) から IPv6 アドレスを受信します。 |
ipv6_ra_mode=dhcpv6-stateful |
ipv6-address-mode=dhcpv6-stateful |
インスタンスは、DHCPv6 stateful を使用して OpenStack Networking (dnsmasq) から IPv6 アドレスを、DHCPv6 stateful を使用して OpenStack Networking (dnsmasq) から任意の情報を取得します。 |
ipv6_ra_mode=dhcpv6-stateless |
ipv6-address-mode=dhcpv6-stateless |
インスタンスは、SLAAC を使用して OpenStack Networking (dnsmasq) から IPv6 アドレスを、DHCPv6 stateless を使用して OpenStack Networking (dnsmasq) から任意の情報を取得します。 |
15.1.1. Stateful DHCPv6 を使用した IPv6 サブネットの作成 リンクのコピーリンクがクリップボードにコピーされました!
以下の手順では、上記で説明した設定を使用してテナントネットワークに IPv6 サブネットを作成します。最初のステップでは、テナントとネットワークに関する必要な情報を収集し、次にその情報を使用してサブネットを作成するコマンドを構築します。
OpenStack Networking は、SLAAC には EUI-64 IPv6 アドレスの割り当てのみをサポートします。これにより、ホストは Base 64 ビットと MAC アドレスに基づいて自らアドレスを割り当てるため、IPv6 ネットワークが簡素化されます。SLAAC の異なるネットマスクと address_assign_type を使用してサブネットの作成を試みると失敗します。
1. IPv6 サブネットを作成するプロジェクトのテナント ID を取得します。これらの値は、OpenStack デプロイメント固有なので、実際にご使用する値は異なります。以下の例では、QA テナントが IPv6 サブネットを受信します。
2. OpenStack Networking (neutron) 内の全ネットワークの一覧を取得します。IPv6 サブネットをホストするネットワークの名前を書き留めておきます。以下の例では、database-servers を使用します。
3. 上記のステップから QA tenant-id (25837c567ed5458fbb441d39862e1399
) を使用してネットワークを作成するコマンドを構築します。もう 1 つの要件は、IPv6 サブネットをホストする宛先ネットワークの名前です。以下の例では、database-servers ネットワークを使用しています。
4. ネットワークの一覧をチェックして、設定を確認します。database-servers のエントリーには新規作成された IPv6 サブネットが反映されている点に注意してください。
この設定により、QA テナントで作成されたインスタンスが database-servers サブネットに追加されると、DHCP IPv6 アドレスを受信できるようになります。