4.2. プロセスデザイナーでの BPMN2 イベント
イベントとは、ビジネスプロセスに発生する内容のことです。BPMN2 では、3 つのイベントカテゴリーをサポートします。
- 開始
- 終了
- 中間
開始イベントはイベントトリガーをキャッチし、終了イベントはイベントトリガーを出力します。中間イベントは、イベントトリガーをキャッチおよび出力できます。
以下のビジネスプロセスダイアグラムでは、イベントの例を紹介します。
この例では、以下のイベントが発生します。
- シグナルを受信すると、ATM カード挿入のシグナル開始イベントがトリガーされます。
- タイムアウトの中間イベントは、タイマートリガーをもとにした割り込みイベントです。つまり、タイマーイベントがトリガーされると、暗証番号待ちのサブプロセスがキャンセルされるという意味です。
- プロセスへの入力に応じて、Validate User Pin タスクに関連付けられた終了イベント、または Inform User of Timeout タスクに関連付けられた終了イベントが、プロセスを終了します。
4.2.1. 開始イベント
開始イベントを使用して、ビジネスプロセスの始端を示します。開始イベントには、受信シーケンスフローを割り当てることができず、外向きシーケンスフローだけを割り当てる必要があります。なし (none) 開始イベントは、トップレベルプロセス、埋め込みサブプロセス、呼び出し可能サブプロセス、イベントサブプロセスで使用できます。
なし (none) 開始イベントの例外を除けば、開始イベントはすべてキャッチイベントです。たとえば、シグナルの開始イベントは、参照のシグナル (イベントトリガー) を受け取った場合にのみプロセスを開始します。イベントサブプロセスの開始イベントを割り込みまたは割り込みなしイベントに設定できます。イベントサブプロセスに対する割り込みありの開始イベントでは、包含プロセスまたは親プロセスの実行を停止または中断します。割り込みなしの開始イベントは、包含プロセスまたは親プロセスの実行を停止したり、中断したりしません。
開始イベントタイプ | トップレベル | サブプロセス | |
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割り込み | 割り込みなし | ||
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なし
なしの開始イベントは、トリガー条件のない開始イベントです。プロセスまたはサブプロセスには、最大 1 つのなし開始イベントを含めることができます。このイベントは、デフォルトでプロセスまたはサブプロセスの開始によりトリガーされ、外向きフローがすぐに実行されます。
サブプロセスでなし開始イベントを使用すると、親プロセスからサブプロセスに、プロセスフローの実行が移動し、なし開始イベントがトリガーされます。これは、トークン (プロセスフローの内の現在の場所) が親プロセスからサブプロセスのアクティビティーに渡され、サブプロセスのなし開始イベントが独自のトークンを生成します。
条件付き
条件付きの開始イベントは、ブール型の条件定義を含む開始イベントです。条件が最初に false
と評価され、次に true
に評価された場合に実行がトリガーされます。プロセスの実行は、開始イベントがインスタンス化された後に条件が true
と評価された場合にのみ開始されます。
プロセスには、複数の条件開始イベントを含めることができます。
補正
補正開始イベントは、補正中間イベントのターゲットアクティビティーとしてサブプロセスを使用した場合に、補正イベントのサブプロセスを開始するのに使用します。
エラー
プロセスまたはサブプロセスには、複数のエラー開始イベントを含めることができます。特定の ErrorRef
プロパティーを含むエラーオブジェクトを受け取った場合に、この開始イベントが開始します。エラーオブジェクトは、エラーの終了イベントで生成可能です。これは、プロセスの終端が不正であることを示します。エラーの開始イベントが含まれるプロセスインスタンスは、該当するエラーオブジェクトを受け取ると実行が開始します。エラー開始イベントは、エラーオブジェクトの受け取り直後に実行し、外向きフローが実行します。
エスカレーション
エスカレーション開始イベントは、特定のエスカレーションコードを含むエスカレーションによりトリガーされる開始イベントです。プロセスには、複数のエスカレーション開始イベントを含めることができます。エスカレーション開始イベントが含まれるプロセスインスタンスは、定義されているエスカレーションオブジェクトを受け取ると、実行を開始します。プロセスがインスタンス化され、直後にエスカレーション開始イベントが実行し、外向きフローが実行します。
メッセージ
プロセスまたはイベントのサブプロセスには、複数のメッセージ開始イベントを含めることができます。これらのイベントは、通常特定のメッセージにより開始します。メッセージ開始イベントが含まれるプロセスインスタンスの実行は、該当のメッセージを受け取った後に、このイベントからのみ開始します。メッセージの受け取り後、プロセスはインスタンス化され、メッセージ開始イベントが即座に実行します (外向きフローが実行します)。
メッセージは、要素なしなど、任意の数のプロセスおよびプロセス要素により消費可能であるため、1 つのメッセージで複数のメッセージ開始イベントをトリガーできるため、複数のプロセスがインスタンス化されます。
シグナル
シグナル開始イベントは、特定のシグナルコードを含むシグナルによりトリガーされます。プロセスには、複数のシグナル開始イベントを含めることができます。シグナル開始イベントは、インスタンスが該当のシグナルを受け取った後にのみ、プロセスインスタンス内で実行します。その後に、シグナル開始イベントが実行され、外向きフローが実行されます。
タイマー
タイマー開始イベントは、タイミングのメカニズムを含む開始イベントです。プロセスには、複数のタイマー開始イベントを含めることができます。タイマー開始イベントは、タイミングのメカニズムが適用された後に、プロセスの開始時に発生します。
サブプロセスでタイマー開始イベントを使用すると、プロセスフローの実行が親プロセスからサブプロセスに移動し、タイマー開始イベントが発生します。親サブプロセスアクティビティーからトークンを取得し、サブプロセスのタイマー開始イベントが開始し、タイマーが発生するまで待機します。タイミングの定義で指定した時間が経過したら、外向きフローが実行されます。
4.2.2. 中間イベント
中間イベントは、ビジネスプロセスのフローを駆動します。中間イベントは、ビジネスプロセスの実行中にイベントをキャッチまたは出力するときに使用します。中間イベントは、開始イベントと終了イベントの間に配置され、サブプロセス、人間のタスクなどのアクティビティーの境界にキャッチイベントとして使用することもできます。BPMN モデラーでは、プロセスインスタンスの詳細にアクセスするために追加のプロセスで使用される境界イベントの Data Output and Assignments フィールドにデータの出力を設定できます。補正イベントは、データ出力変数の設定機能をサポートしないことに注意してください。
たとえば、境界イベントに以下のデータ出力変数を設定できます。
-
nodeInstance
: 境界イベントがトリガーされたときに追加のプロセスで使用するノードインスタンスの詳細を取得します。 -
signal
: シグナルの名前を取得します。 -
event
: イベントの詳細を取得します。 -
workItem
: ワークアイテムの詳細を取得します。この変数は、ワークアイテムまたはユーザータスクに設定できます。
境界キャッチイベントは、割り込みまたは割り込みなしとして設定できます。割り込みありの境界キャッチイベントは、バインドされているアクティビティーを取り消しますが、割り込みなしのイベントは取り消しません。
中間イベントは、プロセス実行時に発生する特定の状況を処理します。このような状況が中間イベントのトリガーになります。プロセスには、外向きフローを 1 つ含む中間イベントを、アクティビティーの境界に配置できます。
アクティビティーの実行時にイベントが発生した場合には、このイベントにより、外向きフローへの実行が発生します。1 つのアクティビティーに、複数の境界中間イベントが含まれる可能性があります。境界中間イベントで、アクティビティーからの必要な動作によって、以下のいずれかの中間イベントタイプを使用できる点に注意してください。
- 割り込みあり: アクティビティーの実行は中断され、中間イベントの実行が発生します。
- 割り込みなし: 中間イベントがトリガーされ、アクティビティーの実行が続行します。
中間イベントタイプ | キャッチ | 境界 | 送出 | |
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割り込み | 割り込みなし | |||
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メッセージ
メッセージの中間イベントは、メッセージオブジェクトを管理可能にする中間イベントです。以下のイベントのいずれかを使用します。
- 出力メッセージの中間イベントでは、定義したプロパティーをもとにメッセージオブジェクトを作成します。
- キャッチメッセージの中間イベントは、定義したプロパティーを使用してメッセージオブジェクトがないかリッスンします。
タイマー
タイマー中間イベントでは、ワークフローの実行を遅延させたり、定期的に発生させたりできます。このイベントは、指定した期間が経過したら 1 回または複数回、トリガーできるタイマーを表します。タイマー中間イベントが開始したら、タイマー条件 (定義した時間) がチェックされ、外向きフローが実行されます。タイマー中間イベントがプロセスワークフローに配置されている場合には、内向きフローが 1 つと、外向きフローが 1 つ含まれます。内向きフローがイベントに移動すると、これが実行されます。タイマー中間イベントがアクティビティー境界に配置されている場合は、アクティビティーの実行と同時に、この実行がトリガーされます。
包含のプロセスインスタンスを完了するか、中断するなど、タイマー要素がキャンセルされると、タイマーがキャンセルされます。
条件付き
条件の中間イベントは、ブール型の条件がトリガーとして含まれる中間イベントです。このイベントは、条件で true
と判断され、外向きフローが実行された場合に、さらにワークフロー実行をトリガーします。
このイベントは、Expression
プロパティーを定義する必要があります。条件の中間イベントがプロセスワークフローに配置されている場合は、内向きフロー 1 つ、外向きフロー 1 つ含まれ、内向きフローがイベントに移動したときに、実行が開始されます。条件の中間イベントがアクティビティー境界に配置されている場合は、アクティビティーの実行時に、この実行が発生します。イベントが割り込みなしの場合は、条件が true
の場合は継続して、このイベントが発生します。
シグナル
シグナルの中間イベントでは、シグナルオブジェクトを生成または消費できます。以下のオプションのいずれかを使用してください。
- 出力シグナルの中間イベントは、定義したプロパティーをもとにシグナルオブジェクトを生成します。
- キャッチシグナルの中間イベントは、定義したプロパティーを使用してシグナルオブジェクトがないかリッスンします。
エラー
エラーの中間イベントは、アクティビティー境界でのみ使用可能な中間イベントです。このイベントでは、プロセスが、該当するアクティビティー内のエラー終了イベントに反応できるようになります。このアクティビティーは、アトミックにしないでください。アクティビティーが、エラー終了イベントで完了し、対応の ErrorCode
プロパティーでエラーオブジェクトを生成した場合は、エラーの中間イベントがこのエラーオブジェクトをキャッチして、実行が外向きフローに進みます。
補正
補正中間イベントは、トランザクションサブプロセスのアクティビティーに接続している境界イベントです。補正終了イベントまたはキャンセル終了イベントで、このイベントを終了できます。補正中間イベントは、補正アクティビティーに接続しているフローと関連付ける必要があります。
境界補正の仲介イベントに関連付けられているアクティビティーは、トランザクションサブプロセスが補正終了イベントで終了した場合に実行します。この実行は、対応のフローで続行します。
エスカレーション
エスカレーション中間イベントは、エスカレーションオブジェクトを生成または消費できる中間イベントです。イベント要素が実行すべきアクションに合わせて、以下のオプションのいずれかを使用する必要があります。
- 出力エスカレーションの中間イベントは、定義したプロパティーをもとにエスカレーションオブジェクトを生成します。
- キャッチエスカレーションの中間イベントは、定義したプロパティーを使用してエスカレーションオブジェクトがないかリッスンします。
リンク
リンク中間イベントは、プロセスに追加のロジックを追加しなくても、プロセスのダイアグラムを簡単に理解できるようにする中間イベントです。リンク中間イベントは単一のプロセスレベルに制限されます。たとえば、リンク中間イベントは、サブプロセスと親プロセスを接続できません。
以下のオプションのいずれかを使用してください。
- 発生するリンク中間イベントは、定義されたプロパティーに基づいてリンクオブジェクトを生成します。
- 取得するリンク中間イベントは、定義されたプロパティーでリンクオブジェクトをリッスンします。
4.2.3. 終了イベント
終了イベントは、ビジネスプロセスを終了するために使用され、発信シーケンスフローがない場合があります。ビジネスプロセスには複数の終了イベントが存在する場合があります。なし、および中断終了イベント以外の終了イベントはすべて出力イベントです。
終了イベントは、ビジネスプロセスの完了を示します。終了イベントは、特定のワークフローを終了するノードです。このイベントには、1 つまたは複数の内向きシーケンスフローがあり、外向きフローはありません。
プロセスには最低でも 1 つの終了イベントが含まれている必要があります。
ランタイム中は、終了イベントでプロセスワークフローを終了します。終了イベントは、そのイベントに到達したワークフローのみ終了できます。終了イベントタイプによってはプロセスインスタンス内の全ワークフローを終了できます。
終了イベント | アイコン |
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なし
なし終了イベントは、他に特別な動作がプロセスの終端に関連付けられていないことを示します。
メッセージ
フローがメッセージの終了イベントに入ると、このフローは終了し、終了イベントがプロパティーに定義されているようにメッセージを生成します。
シグナル
出力シグナルの終了イベントは、プロセスまたはサブプロセスフローの終了に使用します。実行フローがこの要素に入ると、実行フローが終了し、SignalRef
プロパティーで特定されたシグナルを生成します。
エラー
出力エラーの終了イベントは、内向きワークフローを完了します。つまり、内向きのトークンを消費し、エラーオブジェクトを生成します。プロセスまたはサブプロセスで他に実行されているワークフローは、影響を受けません。
補正
補正終了イベントは、トランザクションのサブプロセスを終了し、サブプロセスアクティビティーの境界に接続されている補正中間イベントで定義した補正を発生させるのに使用します。
エスカレーション
エスカレーション終了イベントは、内向きワークフローを終了します。これは、内向きのトークンを消費して、プロパティーに定義されているようにエスカレーションシグナルを生成し、エスカレーションプロセスを発生させます。
終了
中断終了イベントは、指定したプロセスインスタンス内の全実行フローを終了します。実行中のアクティビティーはキャンセルされます。サブプロセスインスタンスは、中断終了イベントに到達した場合は中断されます。