第1章 はじめに
デフォルトでは、Red Hat Enterprise Linux インスタンスはカスタマーポータルに登録され、そこからコンテンツを取得するようになっています。
Red Hat Satellite Server 6 で管理する Red Hat Enterprise Linux インスタンスは Satellite Server に登録され、そこからコンテンツや製品サブスクリプションを取得します。
現代の IT インフラストラクチャーは物理ハードウェアと仮想ハードウェアが混在しており、仮想化を活用して、物理ハードウェアでは簡単に実現できないレベルの柔軟性やスケーラビリティーを提供します。
Red Hat のサブスクリプションでは以下を提供します。
- サポートサービスへのアクセス
- コンテンツ配信およびホストされたリポジトリー
- ナレッジベース、フォーラム、ビデオなどのリソースへのアクセス
Red Hat のサブスクリプションモデルでは、物理サーバーを使用する場合はサブスクリプションがソケット数やコア数などのマシンの物理属性に対応している必要があります。ソケットまたはコアのペアに対応するように、サブスクリプションが適用される数は常に 2 つで 1 セットとなります。仮想マシンのサブスクリプションを購入し、仮想 CPU 属性に合わせて適用することもできますが、ホストベースの Virtual Data Center (VDC) サブスクリプションの方がより適しています。ハイパーバイザーにはホストベースのサブスクリプションが適用され、それによりハイパーバイザーがその仮想マシンにサブスクリプションを付与できるようになります。ホストベースのサブスクリプションでは、仮想 CPU の構成に関係なく、ゲストごとにサブスクリプションが 1 つ必要です。
1.1. サポートされる仮想化プラットフォーム
Virtual Data Center (VDC) サブスクリプションを適用できる、サポート対象の仮想化プラットフォームは以下のとおりです。
- Red Hat Virtualization (RHV)
- Red Hat OpenStack Platform (RHOSP)
- Red Hat Enterprise Linux ハイパーバイザー
- VMware vSphere
Microsoft Hyper-V
注記virt-who
デーモンでは、現在、Microsoft System Center 2012 R2 Virtual Machine Manager (SCVMM) はサポートされません。virt-who
が接続する各 Microsoft Hyper-V ホストにそれぞれvirt-who
の設定ファイルが必要です。
VDC サブスクリプションは、ハイパーバイザーそのものではなく、ハイパーバイザーのゲスト仮想マシンにのみ適用されます。Red Hat Enterprise Linux ハイパーバイザーが必要な全仮想化プラットフォームで、そのハイパーバイザー用のサブスクリプションが必要です。
1.2. サブスクリプションの選択
Red Hat は、仮想マシンのプロビジョニング時に柔軟性を高めることができるため、仮想マシンがサブスクリプションを継承できるサブスクリプションを推奨しますが、お使いの環境の要件に適したものを選択してください。どのサブスクリプションがお客様のニーズを満たしているかが不明な場合は、Red Hat アカウントマネージャーにご相談ください。Red Hat サブスクリプションモデルの詳細は『Subscription Concepts and Workflows』を参照してください。
以下は、継承可能なサブスクリプションを提供する Red Hat のサブスクリプション例です。
- Red Hat Enterprise Linux for Virtual Datacenters
- Red Hat Enterprise Linux with Smart Virtualization and Management
本ガイドでは、すべての例で Red Hat Enterprise Linux for Virtual Datacenters (VDC) サブスクリプションを使用します。継承可能なサブスクリプションはすべて同じワークフローとなっています。
virt-who が必要かどうかの確認
virt-who デーモンが必要かどうかを確認するには、Red Hat Certificate Tool を使用するか、Red Hat サポートにお問い合わせください。Red Hat Certificate Tool (rct) のコマンドラインは、サブスクリプションのマニフェストファイルを読み込み、マニフェストの詳細をプレーンテキストで表示します。Red Hat Certificate Tool は、Red Hat Enterprise Linux 7.3 または Fedora 24 の subscription-manager-1.17.10 (以降) のパッケージに含まれています。
Red Hat Certificate Tool でのサブスクリプションマニフェストの検証
- カスタマーポータルからサブスクリプションマニフェストをダウンロードします。
Red Hat Certificate Tool コマンドラインを実行します。
# rct cat-manifest --no-content manifest_file.zip
以下は、OpenShift Container Platform, Premium (1-2 Sockets) サブスクリプションの例です。
Subscription: Name: OpenShift Container Platform, Premium (1-2 Sockets) Quantity: 50 Created: 2017-09-16T01:47:59.000+0000 Start Date: 2017-07-04T04:00:00.000+0000 End Date: 2018-07-04T03:59:59.000+0000 . . . Virt Limit: unlimited Requires Virt-who: True
rct
の出力に Virt Limit: unlimited
、Requires Virt-who: True
、またはその両方が含まれる場合には、virt-who デーモンが必要です。この例では両方が含まれているため、virt-who デーモンが必要になります。
1.3. 仮想ゲストのサブスクリプションの適用
Virtual Data Center (VDC) サブスクリプションは、Red Hat が提供するホストベースのサブスクリプションの一種です。ホストベースのサブスクリプションはホストに適用され、ゲストに継承されます。ホストベースのサブスクリプションには、仮想化マネージャーまたはハイパーバイザーに割り当てるプールと、仮想ゲストがサブスクリプションを継承するプールの 2 つが含まれています。仮想化マネージャーまたはハイパーバイザーのサブスクリプションでは、製品コンテンツへのエンタイトルメントは提供されません。
仮想マシンを適切にプロビジョニングしてホストサブスクリプションを継承させるには、以下を実行する必要があります。
- VDC サブスクリプションを含むマニフェストを Satellite Server にアップロードします。詳細は、コンテンツ管理ガイド の Satellite Server へのサブスクリプションマニフェストのインポート を参照してください。
-
virt-who
サービスをインストール、設定して、開始します。詳細は 3章virt-who の設定 を参照してください。 - VDC サブスクリプションを、仮想ゲストをホストしているハイパーバイザーにアタッチします。詳細は 「VDC サブスクリプションのハイパーバイザーへの割り当て」 を参照してください。
- 自動割り当てが有効になっていて、サブスクリプションが割り当てられていないアクティベーションキーを使用して仮想マシンを登録します。これで、仮想マシンが、ハイパーバイザーから VDC サブスクリプションを継承します。詳細は 「ゲスト仮想マシンの登録」 を参照してください。
1.4. サブスクリプションのステータス
登録した仮想ホストまたは物理ホストには、インストールした製品と割り当てたサブスクリプションをベースにしたサブスクリプションのステータスがあります。
Satellite Web UI で仮想マシンのサブスクリプションのステータスを確認するには以下を実行します。
-
Satellite Web UI を開いて、
ホスト
>コンテンツホスト
に移動します。 - ホストの名前をクリックします。
-
サブスクリプションステータス
コラムの内容を確認します。各ホストのサブスクリプションステータスは、色 (緑、黄、または赤) と文字で表示されます。
サブスクリプションステータスの説明
赤
- ホストにインストールされている製品に、有効なサブスクリプションがないものがあります。ステータスが 赤 になっているホストは、サブスクリプションの対象外の製品のコンテンツにアクセスできません。このステータスのサブスクリプションは、手動で解決する必要があります。
黄
- ホストに十分なサブスクリプションがない、または割り当てられているサブスクリプションの数が正しくない (たとえば、2 ソケットのサブスクリプションが 4 ソケットのホストに割り当てられている)、もしくは仮想マシンをホストしている仮想化マネージャーまたはハイパーバイザーを Satellite が把握しておらず一時的なサブスクリプションが割り当てられています。サブスクリプションが不足している場合は、手動で解決する必要があります。一時的なサブスクリプションについては、十分な数が割り当てられるように、Satellite が自動的に利用可能なサブスクリプションを提供して解決します。
緑
- ホストは正しくサブスクライブされています。
ハイパーバイザーは、正しくサブスクライブされると、そのステータスにかかわらず 常に Satellite Web UI に表示されます。
1.4.1. 一時的なサブスクリプション
初めて仮想マシンを登録した時点では、仮想マシンが割り当てられている仮想化マネージャーまたはハイパーバイザーを Satellite が把握していないため、サブスクリプションを割り当てることができません。このような場合には、最大 7 日間有効なサブスクリプションが一時的に付与されます。次に virt-who デーモンが実行したときに、仮想マシンのホストを特定すると、永続的なサブスクリプションが適用され、利用可能で適切なサブスクリプションが提供されます。永続的なサブスクリプションが付与されている場合は、仮想マシンのサブスクリプションのステータスが サブスクライブ済
に変わります。一時的なサブスクリプションが付与された仮想マシンは、7 日を過ぎると、自動的に物理ホスト向けのサブスクリプションを選択し、利用可能なサブスクリプションの数を制限します。7 日過ぎても、適切なサブスクリプションを要求できなかった場合には、ホストのステータスが サブスクライブなし
に変わります。
仮想マシンに一時的なサブスクリプションが付与されると、以下のようなオプションが利用できるようになります。
virt-who をインストールして待機する
virt-who がインストール、設定されていない場合はそれを行い、virt-who が仮想マシンをホストする仮想化マネージャーまたはハイパーバイザーを特定するまで待機します。利用可能なものから、サブスクリプションが自動的に選択されます。
手動でサブスクリプションを割り当てる
一時的なサブスクリプションの有効期限前にサブスクリプションを割り当てる場合、または特定のサブスクリプションを割り当てる場合は、virt-who をインストールして設定し、手動でサブスクリプションを割り当てます。
なにもしない
この状況は、サブスクリプションが必要以上に使用されることになるため回避する必要があります。一時的なサブスクリプションが割り当てられた仮想マシンに、物理ホスト向けのサブスクリプションが割り当てられる場合があります。たとえば、CPU が 2 つある仮想マシンに、VDC サブスクリプションが 1 つではなく、2 つ割り当てられる可能性があります。
1.4.2. 仮想マシンの移行
Red Hat Satellite に登録した別のハイパーバイザーに仮想マシンを自動または手動で移行する場合、仮想マシンのサブスクリプションは以下のように動作します。
- virt-who で仮想マシンがレポートされており、ハイパーバイザーに有効な VDC サブスクリプションがある場合、仮想マシンは、ハイパーバイザーにすでに存在する仮想ゲストプールを使用します。理想的には、仮想マシンのホストになれるすべてのハイパーバイザーに、有効な VDC サブスクリプションが必要です。
- virt-who で仮想マシンがレポートされており、Red Hat Satellite に十分なサブスクリプションがあっても、ハイパーバイザーに有効な VDC サブスクリプションが割り当てられていない場合は、VDC サブスクリプションがハイパーバイザーに自動的に割り当てられ、仮想マシンによって継承されます。
- Red Hat Satellite に十分なサブスクリプションがあっても、virt-who で仮想マシンがレポートされていない場合、仮想マシンは物理サブスクリプションを使用します。
- ハイパーバイザーに有効な VDC サブスクリプションが割り当てられておらず、Red Hat Satellite でサブスクリプションが足りない場合は、仮想マシンに有効なサブスクリプションが割り当てられず、コンテンツにアクセスすることができません。