第1章 High Availability Add-On の概要
High Availability Add-On は、基幹実稼働サービスへ信頼性、スケーラビリティーおよび可用性を提供するクラスター化されたシステムです。以下のセクションでは、High Availability Add-On のコンポーネントおよび機能の概要を説明します。
1.1. クラスターの基礎
クラスターとは、ひとつのタスクを行うために連動して機能する 2 つ以上のコンピューターを指します(ノード または メンバー と呼ばれる)。クラスターには主に以下の 4 つのタイプがあります。
- ストレージ
- 高可用性
- 負荷分散
- ハイパフォーマンス
ストレージクラスターは、クラスター内の複数のサーバーに対して一貫性のあるファイルシステムイメージを提供し、ひとつの共有ファイルシステムに対する読み書きを同時に行えるようにします。アプリケーションのインストールやパッチの適用を任意のファイルシステムに制限することでストレージの管理を簡略化します。また、クラスター全体に一つのファイルシステムを持たせることでアプリケーションデータのコピーを重複して持たせる必要性が解消されるためバックアップや障害からの復元が簡略化されます。High Availability Add-On では、Red Hat GFS2 (Resilient Storage Add-On の一部) と併用することでストレージのクラスタ化を提供します。
高可用性クラスターは、単一点障害を排除し、ひとつのクラスターノードが動作不能になった場合にサービスを 1 つのクラスターノードから別のクラスターノードにフェイルオーバーすることにより、連続的にサービスの可用性を提供します。通常、高可用性クラスター内のサービスはデータの読み取りや書き込みを行います (read-write でファイルシステムがマウントされる)。従って、1 つのクラスターノードが別のクラスターノードからサービスの制御を引き継ぐ時点で、高可用性クラスターはデータの整合性を維持しなければなりません。高可用性クラスター内のノードの障害はクラスターの外側にあるクライアントからは見えません (高可用性クラスターはフェイルオーバークラスターと呼ばれることもあります)。High Availability Add-On では、高可性サービス管理コンポーネントの
rgmanager
を介して高可用性のクラスタ化を提供します。
負荷分散クラスターは、ネットワークサービス要求を複数のクラスターノードに分配して、クラスターノード間の要求負荷のバランスを取ります。負荷要件に応じてノード数を調節することができるため、対費用効果の高いスケーラビリティーを提供します。負荷分散クラスター内の 1 つのノードが動作不能になると、負荷分散ソフトウェアにより障害が検出され、要求が別のクラスターノードにリダイレクトされます。負荷分散クラスター内のノードの障害は、クラスターの外側にあるクライアントからは見えません。負荷分散機能は Load Balancer Add-On で利用できます。
ハイパフォーマンスクラスターは、クラスターノード群を使用して並列演算を行います。複数のアプリケーションが並行して動作できるため、アプリケーションのパフォーマンスが向上します (ハイパフォーマンスクラスターは演算クラスターまたはグリッドコンピューティングとも呼ばれます)。
注記
前述のクラスタータイプの要約は基本的な設定を説明しています。ニーズに応じて、複数のクラスタータイプを組み合わせる必要がある場合があります。
また、Red Hat Enterprise Linux High Availability Add-On に含まれるのは高可用性サーバーの設定および管理に対するサポートのみになります。ハイパフォーマンスクラスターには対応していません。