1.2.3. 分散システム


水平的スケーラビリティを完全に実現するために、Red Hat Enterprise Linux では多くの 分散コンピューティング のコンポーネントを用いています。分散コンピューティングを形成する技術は、以下の 3 つの層に分けられます。
通信
水平的スケーラビリティでは、多くのタスクが (パラレルで) 同時実行される必要があります。このため、これらのタスクは、プロセス間通信 で作業を調整する必要があります。さらに、水平的スケーラビリティのプラットホームは、複数システムにわたってタスク共有が可能である必要があります。
ストレージ
ローカルディスクによるストレージは、水平的スケーラビリティの要件に対応するには不十分です。なんらかの分散もしくは共有ストレージが必要です。単一ストレージボリュームの容量が新たなストレージハードウェアを追加することで、シームレスに拡大できるような抽象化レイヤーを備えたものが必要になります。
管理
分散コンピューティングにおける最も重要な任務は、管理 層になります。この管理層は、すべてのソフトウェアおよびハードウェアのコンポーネントを連携させ、通信とストレージ、共有リソースの使用を効率的に管理するものです。
以下のセクションでは、各層の技術を詳細に説明します。

1.2.3.1. 通信

通信層はデータ移動を確実にするもので、以下の 2 つで構成されています。
  • ハードウェア
  • ソフトウェア
複数システムが通信する最も簡潔な (かつ最速の) 方法は、共有メモリ です。これには、よくあるメモリの読み取り/書き込み操作が必要になります。共有メモリには、高い帯域幅、短い待ち時間、通常のメモリ読み取り/書き込み操作における低いオーバーヘッドが備わっています。
イーサネット

コンピューター間の最も一般的な通信方法は、イーサネットを使ったものです。現在ではシステム上で Gigabit イーサネット (GbE) がデフォルトで提供されており、ほとんどのサーバーには Gigabit イーサネットのポートが 2-4 個あります。GbE はすぐれた帯域幅と待ち時間を提供します。これは、現在使用されているほとんどの分散システムの基礎となっています。システムに高速ネットワークハードウェアがある場合でも、専用の管理インターフェースには GbE を使うのが一般的です。

10GbE

10 Gigabit イーサネット (10GbE) の使用は、ハイエンドおよびミッドレンジサーバーで急速に拡大しています。10GbE は、GbE の 10 倍の帯域幅を提供します。その主な長所の一つは、最新のマルチコアプロセッサーと使用すると、通信とコンピューティングのバランスを回復する点です。シングルコアシステムで GbE を使う場合と 8 コアシステムで 10GbE を使う場合を比較すると違いがよく分かります。この方法で使うと、総合的なシステムパフォーマンスを維持し、通信ボトルネックを回避するという点で 10GbE は特に有用です。

残念ながら 10GbE は高価なものです。10GbE NIC の価格は低下したものの、相互接続 (特に光ファイバー) の価格は高いままで、また 10GbE ネットワークスイッチは非常に高価です。長期的にはこれらの価格は下がると思われますが、10GbE は現在、サーバールームのバックボーンとパフォーマンスクリティカルなアプリケーションで最もよく使われています。
Infiniband

Infiniband は 10GbE よりもさらに高いパフォーマンスを提供します。イーサネットで使用する TCP/IP および UDP ネットワーク接続に加えて、Infiniband は共有メモリ通信もサポートします。これにより Infiniband は、remote direct memory access (RDMA) によるシステム間での作業が可能になります。

Infiniband は RDMA を使うことで、TCP/IP のオーバーヘッドやソケット接続なしでデータを直接システム間で移動できます。アプリケーションによっては必須である短い待ち時間が、これで可能になります。
Infiniband は、高い帯域幅や短い待ち時間、低いオーバーヘッドを必要とする High Performance Technical Computing (HPTC) で最もよく使われています。多くのスーパーコンピューティングアプリケーションがこの恩恵を受けており、パフォーマンス改善にはより高速のプロセッサーやより多くのメモリではなく、Infiniband に投資するのが最善の方法になっているほどです。
RoCE

RDMA over Converged Ethernet (RoCE) は、Infiniband スタイルの通信 (RDMA を含む) を 10GbE インフラストラクチャー上で実装します。増大している 10GbE 製品の価格改善傾向を考えると、RDMA と RoCE が幅広いシステムやアプリケーションでより多く使われることが見込まれます。

Red Hat は、これら通信方法の Red Hat Enterprise Linux 6 における使用を完全にサポートしています。
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