5.3. 分析した SELinux 拒否の修正
ほとんどの場合、sealert
ツールが提供する提案により、SELinux ポリシーに関連する問題を修正するための適切なガイドが提供されます。SELinux 拒否のメッセージを解析 を参照してください。sealert
を使用して SELinux 拒否の解析方法を参照してください。
ツールが、audit2allow
ツールを使用して設定変更を提案している場合は注意が必要です。audit2allow
を使用して、SELinux 拒否を確認する際に、最初のオプションとしてローカルポリシーモジュールを生成することはできません。トラブルシューティングは、ラベル付けの問題があるかどうかを最初に確認します。2 番目に多いのが、SELinux が、プロセスの設定変更を認識していない場合です。
ラベル付けの問題
ラベル付けの問題の一般的な原因として、非標準ディレクトリーがサービスに使用される場合が挙げられます。たとえば、管理者が、Web サイト /var/www/html/
ではなく、/srv/myweb/
を使用したい場合があります。Red Hat Enterprise Linux では、/srv
ディレクトリーには var_t
タイプのラベルが付けられます。/srv
で作成されるファイルおよびディレクトリーは、このタイプを継承します。また、/myserver
などの最上位のディレクトリーに新規作成したオブジェクトには、default_t
タイプのラベルが付けられます。SELinux は、Apache HTTP Server (httpd
) がこの両方のタイプにアクセスできないようにします。アクセスを許可するには、SELinux では、/srv/myweb/
のファイルが httpd
からアクセス可能であることを認識する必要があります。
# semanage fcontext -a -t httpd_sys_content_t "/srv/myweb(/.*)?"
この semanage
コマンドは、/srv/myweb/
ディレクトリーおよびその下のすべてのファイルおよびディレクトリーのコンテキストを SELinux ファイルコンテキストの設定に追加します。semanage
ユーティリティーはコンテキストを変更しません。root で restorecon
ユーティリティーを使用して変更を適用します。
# restorecon -R -v /srv/myweb
コンテキストの誤り
matchpathcon
ユーティリティーは、ファイルパスのコンテキストを確認し、そのパスのデフォルトラベルと比較します。以下の例では、ラベルが間違っているファイルを含むディレクトリーにおける matchpathcon
の使用方法を説明します。
$ matchpathcon -V /var/www/html/*
/var/www/html/index.html has context unconfined_u:object_r:user_home_t:s0, should be system_u:object_r:httpd_sys_content_t:s0
/var/www/html/page1.html has context unconfined_u:object_r:user_home_t:s0, should be system_u:object_r:httpd_sys_content_t:s0
この例では、index.html
ファイルおよび page1.html
ファイルに、user_home_t
タイプのラベルが付けられています。このタイプは、ユーザーのホームディレクトリーのファイルに使用されます。mv
コマンドを使用してファイルをホームディレクトリーから移動すると、ファイルに user_home_t
タイプのラベルが付けられることがあります。このタイプは、ホームディレクトリーの外に存在してはなりません。このようなファイルを正しいタイプに復元するには、restorecon
ユーティリティーを使用します。
# restorecon -v /var/www/html/index.html
restorecon reset /var/www/html/index.html context unconfined_u:object_r:user_home_t:s0->system_u:object_r:httpd_sys_content_t:s0
ディレクトリー下の全ファイルのコンテキストを復元するには、-R
オプションを使用します。
# restorecon -R -v /var/www/html/
restorecon reset /var/www/html/page1.html context unconfined_u:object_r:samba_share_t:s0->system_u:object_r:httpd_sys_content_t:s0
restorecon reset /var/www/html/index.html context unconfined_u:object_r:samba_share_t:s0->system_u:object_r:httpd_sys_content_t:s0
標準以外の方法で設定された制限のあるアプリケーション
サービスはさまざまな方法で実行できます。この場合は、サービスの実行方法を指定する必要があります。これは、SELinux ポリシーの一部をランタイム時に変更できるようにする SELinux ブール値を使用して実行できます。これにより、SELinux ポリシーの再読み込みや再コンパイルを行わずに、サービスが NFS ボリュームにアクセスするのを許可するなどの変更が可能になります。また、デフォルト以外のポート番号でサービスを実行するには、semanage
コマンドを使用してポリシー設定を更新する必要があります。
たとえば、Apache HTTP Server が MariaDB と接続するのを許可する場合は、httpd_can_network_connect_db
のブール値を有効にします。
# setsebool -P httpd_can_network_connect_db on
-P
オプションを使用すると、システムの再起動後も設定が永続化されることに注意してください。
特定のサービスでアクセスが拒否される場合は、getsebool
ユーティリティーおよび grep
ユーティリティーを使用して、アクセスを許可するブール値が利用できるかどうかを確認します。たとえば、getsebool -a | grep ftp
コマンドを使用して FTP 関連のブール値を検索します。
$ getsebool -a | grep ftp
ftpd_anon_write --> off
ftpd_full_access --> off
ftpd_use_cifs --> off
ftpd_use_nfs --> off
ftpd_connect_db --> off
httpd_enable_ftp_server --> off
tftp_anon_write --> off
ブール値のリストを取得し、ブール値が有効または無効かどうかを確認する場合は、getsebool -a
コマンドを使用します。ブール値のリストとその意味を取得し、有効かどうかを調べるには、selinux-policy-devel
パッケージをインストールして、root で semanage boolean -l
コマンドを実行します。
ポート番号
ポリシー設定によっては、サービスは特定のポート番号でのみ実行できます。ポリシーを変更せずにサービスが実行するポートを変更しようとすると、サービスが起動できなくなる可能性があります。たとえば、root で semanage port -l | grep http
コマンドを実行して、http
関連のポートを一覧表示します。
# semanage port -l | grep http
http_cache_port_t tcp 3128, 8080, 8118
http_cache_port_t udp 3130
http_port_t tcp 80, 443, 488, 8008, 8009, 8443
pegasus_http_port_t tcp 5988
pegasus_https_port_t tcp 5989
http_port_t
ポートタイプは、Apache HTTP サーバーがリッスンできるポートを定義します。この場合は、TCP ポート 80、443、488、8008、8009、および 8443 です。httpd
がポート 9876 (Listen 9876
) でリッスンするように管理者が httpd.conf
を設定しても、これを反映するようにポリシーが更新されていない場合、以下のコマンドは失敗します。
# systemctl start httpd.service Job for httpd.service failed. See 'systemctl status httpd.service' and 'journalctl -xn' for details. # systemctl status httpd.service httpd.service - The Apache HTTP Server Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/httpd.service; disabled) Active: failed (Result: exit-code) since Thu 2013-08-15 09:57:05 CEST; 59s ago Process: 16874 ExecStop=/usr/sbin/httpd $OPTIONS -k graceful-stop (code=exited, status=0/SUCCESS) Process: 16870 ExecStart=/usr/sbin/httpd $OPTIONS -DFOREGROUND (code=exited, status=1/FAILURE)
以下のような SELinux 拒否メッセージのログは、/var/log/audit/audit.log
に記録されます。
type=AVC msg=audit(1225948455.061:294): avc: denied { name_bind } for pid=4997 comm="httpd" src=9876 scontext=unconfined_u:system_r:httpd_t:s0 tcontext=system_u:object_r:port_t:s0 tclass=tcp_socket
httpd
が http_port_t
ポートタイプに追加されていないポートをリッスンできるようにするには、semanage port
コマンドを使用して別のラベルをポートに割り当てます。
# semanage port -a -t http_port_t -p tcp 9876
-a
オプションは新規レコードを追加します。-t
オプションはタイプを定義し、-p
オプションはプロトコルを定義します。最後の引数は、追加するポート番号です。
進化または破損したアプリケーション、および侵害されたシステム (稀に発生する難しいケース)
アプリケーションにバグが含まれ、SELinux がアクセスを拒否する可能性があります。また、SELinux ルールは進化しています。アプリケーションが特定の方法で実行しているのを SELinux が認識しておらず、アプリケーションが期待どおりに動作していても、アクセスを拒否してしまうような場合もあります。たとえば、PostgreSQL の新規バージョンがリリースされると、現在のポリシーが考慮されないアクションが実行される可能性があり、アクセスが許可される場合でもアクセスが拒否されます。
このような状況では、アクセスが拒否された後に audit2allow
ユーティリティーを使用して、アクセスを許可するカスタムポリシーモジュールを作成します。SELinux ポリシーで足りないルールは Red Hat Bugzilla から報告できます。Red Hat Enterprise Linux 9 の場合、Red Hat Enterprise Linux 9
の製品に対してバグを作成し、selinux-policy
コンポーネントを選択します。このバグレポートに、audit2allow -w -a
および audit2allow -a
コマンドの出力を追加します。
アプリケーションが主要なセキュリティー特権を要求すると、そのアプリケーションが危険にさらされたことを示す警告が発生することがあります。侵入検出ツールを使用して、このような疑わしい動作を検証します。
また、Red Hat カスタマーポータル の Solution Engine では、同じ問題または非常に類似する問題に関する記事が提供されます。ここでは、問題の解決策と考えられる方法が示されています。関連する製品とバージョンを選択し、selinux、avc などの SELinux 関連のキーワードと、ブロックされたサービスまたはアプリケーションの名前 (selinux samba
など) を使用します。