第1章 はじめに
1.1. Red Hat JBoss BRMS について
Red Hat JBoss BRMS は、ビジネスルール管理と複合イベント処理を組み合わせるオープンソースの意思決定管理プラットフォームであり、ビジネス上の意思決定を自動化し、ビジネスロジックをビジネス全体で利用できるようにします。
Red Hat JBoss BRMS は、すべてのリソースが保存される集中リポジトリーを使用します。これにより、ビジネス全体で一貫性や透明性を維持し、監査を行えます。ビジネスユーザーは、IT 担当者のサポートを受けなくてもビジネスロジックを編集できます。
このリリースには、Business Resource Planner が含まれています。
Red Hat JBoss BRMS は Red Hat Enterprise Linux 7 (RHEL7) での使用がサポートされています。
1.2. ユースケース: Red Hat JBoss BRMS を使用した保険業界における意思決定管理
Red Hat JBoss BRMS は、高性能なルールエンジン、ルールリポジトリー、使いやすいルールオーサリングツール、および複合イベント処理エンジン拡張によって構成されます。以下のユースケースは、これらの JBoss BRMS 機能がどのように保険業界で実装されているかについて説明しています。
消費者向け保険市場は大変競争が激しいため、オンラインの保険見積もりでは効率が良く、競合に負けない包括的なサービスを提供する必要があります。ある保険会社は、オンラインの見積もりプロセスで関連性のある追加製品のアップセルを行って売上を伸ばしました。
以下の図は、JBoss BRMS が保険会社のインフラストラクチャーにどのように統合されているかを示しています。この統合は、保険のリクエストが処理されると JBoss BRMS へ確認が行われ、適切な追加製品が保険の見積もりと共に提示される点で効果的です。
図1.1 JBoss BRMS ユースケース: 保険業界における意思決定
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JBoss BRMS は、ビジネスアナリストによって定義されたルールに基づいて申込者に提示する製品の自動決定機能などの意思決定管理機能を提供します。ルールはデシジョンテーブルとして実装されるため、IT 部門の追加サポートを必要とせずに簡単に理解し、変更することができます。
1.3. アセット
アーティファクトリポジトリーにバージョンとして格納できるものはすべてアセットです。たとえば、アセットにはルール、パッケージ、ビジネスプロセス、デシジョンテーブル、ファクトモデル、DSL などがあります。
ルール
ルールは、ルールエンジンがベースとして実行するロジックを提供します。ルールには、名前、属性、ルールの左側にある 'when' ステートメント、ルールの右側にある 'then' ステートメントなどが含まれます。
ビジネスルール
ビジネスルールはビジネスの特定の側面を定義するもので、ビジネス構造を確立したり、ビジネスの振る舞いに影響を及ぼすことを目的としています。ビジネスルールはアクセス制御の問題に重点を置いたもの、またビジネス上の計算や組織のポリシーに関連しているものが多いです。
ビジネスプロセス
ビジネスプロセスとは、ビジネス目標を達成するために必要なステップを説明したフローチャートです (詳細は、『Red Hat JBoss BRMS Business Process Management Guide』を参照してください)。
プロジェクト
プロジェクトは、ナレッジリポジトリーに置かれるアセット (ビジネスプロセス、ルール、作業定義、デシジョンテーブル、ファクトモデル、データモデルおよび DSL) のパッケージ用のコンテナーです。このコンテナーがコンテンツに適用される KIE ベースおよび KIE セッションのプロパティーを定義します。GUI では、Project Editor でこれらのエンティティーを編集することができます。
プロセスまたはルール定義などのアセットがプロジェクトのパッケージにない場合、それをデプロイすることはできません。そのため、アセットをパッケージとしてまとめる必要があります。また、パッケージの名前は KIE セッション名と同じなければならないことに注意してください。
プロジェクトは Maven プロジェクトであるため、出力アーティファクトをビルドする方法についての情報と共にプロジェクトオブジェクトモデルファイル (pom.xml
) が含まれます。さらに、プロジェクト内のアセットの KIE ベースおよび KIE セッションの設定を記載するモジュール記述子ファイル kmodule.xml
も含まれます。
パッケージ
パッケージは、デプロイ可能なアセットのコレクションです。ルールとその他のアセットはパッケージとしてまとめられてからでないとデプロイできません。パッケージの構築時に、パッケージ内のアセットが検証され、デプロイ可能なパッケージにコンパイルされます。
ドメイン固有言語
ドメイン固有言語または DSL は、問題ドメインに特化したルール言語です。
デシジョンテーブル
デシジョンテーブルは、ガイド付きデシジョンテーブルとしてスプレッドシートまたは JBoss BRMS ユーザーインターフェースに格納されたルールのコレクションです。
データモデル
データモデルは、ビジネスドメインに関するファクトのコレクションです。ルールとデータモデルの対話は、ルールベースのアプリケーションで展開されます。