第2章 最も重要な新機能
本項では、Red Hat OpenStack Platform の今回のリリースにおける最も重要な新機能の概要を説明します。
2.1. Red Hat OpenStack Platform 15 に影響を及ぼす Red Hat Enterprise Linux 8 の機能
本項では、Red Hat OpenStack Platform 15 に影響を及ぼす Red Hat Enterprise Linux 8 の新機能について説明します。
Red Hat OpenStack Platform 15 では、オペレーティングシステムに Red Hat Enterprise Linux 8 を使用するようになりました。これには、アンダークラウドノード、オーバークラウドノード、およびコンテナー化されたサービスが含まれます。Red Hat Enterprise Linux 7 と 8 の主な相違点が、Red Hat OpenStack Platform 15 のアーキテクチャーに影響を及ぼします。以下の一覧で、これらの主要な相違点およびその相違点が Red Hat OpenStack Platform に及ぼす影響について説明します。
- 新しい Red Hat Enterprise Linux 8 リポジトリー
OpenStack Platform では、Red Hat OpenStack Platform 15 のリポジトリーに加えて、Red Hat Enterprise Linux 8 固有の新しいリポジトリーセットを使用するようになりました。これには、以下のリポジトリーが含まれます。
- BaseOS: メインのオペレーティングシステムパッケージ用
- AppStream: Python 3 パッケージや仮想化ツールなどの依存関係用。
- Red Hat Enterprise Linux 8 バージョンの高可用性ツール向けの高可用性ツール
- Red Hat Ansible Engine: サポートされる最新バージョンの Ansible エンジン用
この変更は、アンダークラウドとオーバークラウドの両方で有効にする必要があるリポジトリーに影響します。
- Red Hat Enterprise Linux 8 コンテナーイメージ
- すべての OpenStack Platform 15 コンテナーイメージは、ベースとして Red Hat Enterprise Linux 8 Universal Base Image(UBI)を使用します。OpenStack Platform director は、アンダークラウドおよびオーバークラウドの作成時にこれらのコンテナーイメージを自動的に設定します。
Red Hat は、Red Hat Enterprise Linux 7 をベースとする OpenStack Platform コンテナーを Red Hat Enterprise Linux 8 ホスト上で実行することをサポートしません。
- Red Hat Enterprise Linux 8 ベアメタルイメージ
- すべての OpenStack Platform 15 オーバークラウドカーネル、ramdisk、および QCOW2 イメージは、ベースとして Red Hat Enterprise Linux 8 を使用します。これには、OpenStack Bare Metal(ironic)イントロスペクションイメージが含まれます。
- Python 3 パッケージ
- すべての OpenStack Platform 15 サービスは Python 3 パッケージを使用します。
- 新しいコンテナーツール
Red Hat Enterprise Linux 8 には Docker が含まれなくなりました。その代わりに、Red Hat はコンテナーをビルドし、管理するための新しいツールを提供しています。
- Pod Manager(Podman) は、ほとんどすべての Docker CLI コマンドを実装するコンテナー管理ツールです。これには Docker Swarm に関連するコマンドは含まれません。Podman は、ポッド、コンテナー、およびコンテナーイメージを管理します。Podman と Docker の主な違いの 1 つは、Podman がバックグラウンドでデーモンを実行せずにリソースを管理できることです。Podman についての詳しい情報は、Podman の Web サイト を参照してください。
-
Buildah は Open Containers Initiative(OCI)イメージのビルドに特化したツールで、Podman と共に使用します。Buildah コマンドは、Dockerfile のコマンドと等価です。Buildah は、コンテナーイメージをビルドするための低レベル
coreutils
インターフェースも提供します。Buildah は、他のスクリプト言語を使用してコンテナーイメージをビルドすることもできます。
- Docker レジストリーの代替
Red Hat Enterprise Linux 8 には、Docker Registry v2 をインストールするための
docker-distribution
パッケージが含まれなくなりました。互換性を維持するために、OpenStack Platform 15 には Apache Web サーバーとimage-serve
という仮想ホストが含まれており、これによりコンテナーレジストリーが提供されます。docker-distribution
と同様に、このレジストリーでは SSL/TLS を無効にしたポート 8787/TCP が使用されます。このレジストリーは 読み取り専用コンテナーレジストリー で、
podman push
コマンドおよびbuildah push
コマンドはサポートされません。つまり、director または OpenStack Platform 以外のコンテナーをレジストリーにプッシュすることはできません。ただし、ContainerImagePrepare
パラメーターを使用する director のコンテナー準備ワークフローにより、サポートされる OpenStack Platform イメージを変更することができます。- ネットワークの時刻同期
-
Red Hat Enterprise Linux 8 には、システムクロックを同期するための
ntpd
が含まれなくなりました。Red Hat Enterprise Linux 8 では、代替のサービスとしてchronyd
が提供されるようになりました。director はchronyd
を自動的に設定しますが、手動で時刻を同期するにはchronyc
クライアントを実行する必要があります。 - 高可用性および共有サービス
- Pacemaker 2.0 のサポート。本リリースでは Pacemaker のバージョンが 2.0 にアップグレードされ、Red Hat Enterprise Linux 8 上でのデプロイメントがサポートされるようになりました。これには、Knet および複数の NIC のサポートが含まれます。director を使用して、高可用性クラスターに対して Pacemaker でフェンシングを設定できるようになりました。
- director での HAProxy 1.8 のサポート本リリースでは HAProxy のバージョンが 1.8 にアップグレードされ、Red Hat Enterprise Linux 8 上でのデプロイメントがサポートされるようになりました。director を使用して、高可用性クラスター用の HAProxy を設定できるようになりました。