第4章 ネットワークの設定
それぞれのプロビジョニングタイプにはネットワーク設定が必要です。新規ホストが Satellite Server の統合 Capsule または外部 Capsule Server のいずれかにアクセスできるようにする必要があります。Satellite Server または Capsule Server の設定を行うには、以下の 2 つの基本的な要件を満たしている必要があります。
統合 Capsule または Capsule Server のネットワークサービスの設定。これには以下が含まれます 。
- コンテンツ配信サービス
- ネットワークサービス (DHCP、DNS、および TFTP)
- Puppet 設定
- Satellite Server でのネットワークリソースデータの定義。これは新規ホストでネットワークインターフェースを設定するのに役立ちます。
本章では、Satellite Server の統合 Capsule でネットワークサービスを設定する方法を重点的に説明します。これらの方法は、特定のネットワークを管理するスタンドアロン Capsule Server の設定にも同様に当てはまります。
この例では、ACME にはホストをプロビジョニングするためのプライベートネットワークがあります。このプライベートネットワークの詳細は以下のようになります。
サブネット |
192.168.140.0/24 | |
外部ゲートウェイ |
192.168.140.1 | |
Satellite Server |
192.168.140.2 | |
検出されたホストおよび管理対象外のホストの DHCP 割り当てプール |
192.168.140.10 - 192.168.140.110 | |
ホストプロビジョニングの DHCP 割り当てプール |
192.168.140.111 - 192.168.140.250 |
Satellite Server では、検出/管理対象外サービスとプロビジョニングサービスの両方に同じ DHCP 範囲を定義することはできますが、それぞれのサービスに同じサブネット内の別々の範囲を使用することが推奨されます。
4.1. ネットワークサービスの設定
一部のプロビジョニング方法では Capsule Server サービスを各種の目的で使用します。たとえば、ネットワークが Capsule Server に対して DHCP サーバーとして機能することを要求する場合があります。また、 オペレーティングシステムを新規ホストにインストールする手段として PXE ブートサービスを必要とするシステムもあります。この場合には、主な PXE ブートサービスである DHCP、DNS および TFTP を使用できるよう Capsule Server を設定する必要があります。これを実行するには、これらのサービスを設定するオプションと共に satellite-installer
スクリプトを実行します。
この例では、ACME は PXE ブートサービスを提供できるよう Satellite Server の統合 Capsule をプロビジョニングネットワークに接続します。Satellite Server は以下の NIC 設定を使用します。
# ip addr 1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00 inet 127.0.0.1/8 scope host lo valid_lft forever preferred_lft forever inet6 ::1/128 scope host valid_lft forever preferred_lft forever 2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast state UP qlen 1000 link/ether 52:54:00:33:e3:1c brd ff:ff:ff:ff:ff:ff inet 192.168.125.35/24 brd 192.168.125.255 scope global dynamic ens3 valid_lft 3042sec preferred_lft 3042sec inet6 fe80::5054:ff:fe33:e31c/64 scope link valid_lft forever preferred_lft forever 3: eth1: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast state UP qlen 1000 link/ether 52:54:00:fd:24:ae brd ff:ff:ff:ff:ff:ff inet 192.168.140.2/24 brd 192.168.140.255 scope global ens8 valid_lft forever preferred_lft forever inet6 fe80::5054:ff:fefd:24ae/64 scope link valid_lft forever preferred_lft forever
Satellite Server は、Red Hat の CDN などの外部接続に eth0
を使用します。ACME は eth1
インターフェースから、192.168.140.0/24
サブネットを使用したホストのプライベートプロビジョニングネットワークに接続しようとします。ここでは、Satellite Server の統合 Capsule がこのネットワーク上で新規ホストの DHCP、DNS、および TFTP サーバーとして機能させることが目標になります。
Satellite Server の統合 Capsule は上記のサービスを提供します。これらのサービスは、他のネットワークの追加の Satellite Capsule にも設定することができます。
この例では、satellite-installer
スクリプトはそれらのサービスを設定するために以下のオプションを使用します。
DHCP オプション
- --foreman-proxy-dhcp
-
DHCP サービスを有効にします。このオプションを
true
に設定します。 - --foreman-proxy-dhcp-gateway
-
DHCP プールのゲートウェイを定義します。この例では、これを ACME のプライベートネットワークの外部ゲートウェイのアドレスである
192.168.140.1
に設定します。 - --foreman-proxy-dhcp-interface
-
要求をリッスンするために DHCP サービスのインターフェースを設定します。この例では、
eth1
に設定します。 - --foreman-proxy-dhcp-nameservers
-
DHCP でクライアントに提供されたネームサーバーのアドレスを設定します。この例では、
eth1
の Satellite Server のアドレス192.168.140.1
に設定します。 - --foreman-proxy-dhcp-range
-
検出および管理対象外サービスのスペースで区切られた DHCP プール範囲を定義します。この例では、
192.168.140.10 192.168.140.110
に設定します。これにより、100 アドレスを含むプールが提供されます。 - --foreman-proxy-dhcp-server
-
管理する DHCP サーバーのアドレスを設定します。この例では、
192.168.140.2
になります。
DNS オプション
- --foreman-proxy-dns
-
DNS サービスを有効にします。このオプションを
true
に設定します。 - --foreman-proxy-dns-forwarders
-
DNS フォワーダーを設定します。この例では、これを
8.8.8.8; 4.4.4.4
に設定し、2 つのパブリック DNS サーバーを使用します。個人用としては独自の DNS サーバーを代わりに使用してください。 - --foreman-proxy-dns-interface
-
DNS 要求をリッスンするためのインターフェースを設定します。この場合、
eth1
に設定します。 - --foreman-proxy-dns-reverse
-
DNS 逆引きゾーン名を定義します。この例では
140.168.192.in-addr.arpa
を使用します。 - --foreman-proxy-dns-server
-
管理する DNS サーバーのアドレスを設定します。この例では
192.168.140.2
になります。 - --foreman-proxy-dns-zone
-
DNS ゾーン名を設定します。この例では
example.com
を使用します。
TFTP オプション
- --foreman-proxy-tftp
-
TFTP サービスを有効にします。このオプションを
true
に設定します。
satellite-installer --help
を実行し、DHCP、DNS、TFTP その他の Satellite Capsule サービスに関するオプションを表示します。
以下は、設定コマンドの例になります。
# satellite-installer --foreman-proxy-dhcp true \ --foreman-proxy-dhcp-gateway "192.168.140.1" \ --foreman-proxy-dhcp-interface "eth1" \ --foreman-proxy-dhcp-nameservers "192.168.140.2" \ --foreman-proxy-dhcp-range "192.168.140.10 192.168.140.110" \ --foreman-proxy-dhcp-server "192.168.140.2" \ --foreman-proxy-dns true \ --foreman-proxy-dns-forwarders "8.8.8.8; 4.4.4.4" \ --foreman-proxy-dns-interface "eth1" \ --foreman-proxy-dns-reverse "140.168.192.in-addr.arpa" \ --foreman-proxy-dns-server "192.168.140.2" \ --foreman-proxy-dns-zone "example.com" \ --foreman-proxy-tftp true
satellite-installer
スクリプトはこれらの設定オプションを適用し、必要なネットワークサービスをセットアップします。設定が完了したら、hammer proxy info
コマンドを使用して選択した Capsule Server でこれらのサービスを確認します。この例では、Satellite Server の統合 Capsule のドメイン名として satellite.example.com
を使用しています。
# hammer proxy info --name "satellite.example.com"
出力には、DNS、DHCP、および TFTP などの有効にされた機能の一覧が表示されます。
Features: Pulp TFTP DNS DHCP Puppet Puppet CA Dynflow SSH
4.2. ドメインの Satellite Server への追加
Satellite Server はネットワーク上の各ホストのドメイン名を定義します。これは、Satellite Server がドメインとドメイン名を割り当てる Capsule Server を認識している必要があることを意味しています。この例では、ACME の内部ネットワーク用に example.com
ドメインを作成します。
Satellite Server には、Satellite Server のインストールの一環として関連するドメインがすでに作成されている可能性があります。コンテキストを 任意の組織
および 任意のロケーション
に切り替えてから、ドメインの一覧でこれが存在するかどうかを確認します。存在する場合は、そのドメインエントリーを修正し、DNS capsule を定義し、組織を設定してからロケーションを設定します。
Web UI を使用する場合
インフラストラクチャー > ドメイン に移動して、新規ドメイン をクリックします。この UI には、ドメインの詳細を入力できるフィールドがあります。
ドメイン タブ:
-
Name (名前): ドメイン名。この例では
example.com
を使用しています。 -
Description (フルネーム): ドメインのテキスト形式の説明。この例では
ACME's example domain
を使用しています。 - DNS Capsule (DNS プロキシー): DNS の割り当てに使用する Capsule。この例では、Satellite Server の統合 Capsule を使用しています。
-
Name (名前): ドメイン名。この例では
ロケーション タブ:
-
このドメインを使用する場所を選択します。たとえば、
New York
などのロケーションを選択します。
-
このドメインを使用する場所を選択します。たとえば、
組織 タブ:
-
ACME
など、このドメインを使用する組織を選択します。
-
CLI を使用する場合
以下のコマンドでドメインを作成します。
# hammer domain create --name "example.com" --description "ACME's example domain" --dns_id 1 --locations "New York" --organizations "ACME"
この例では --dns-id
オプションに 1 を指定しています。1 は Satellite Server の統合 Capsule の ID です。
4.3. サブネットの Satellite Server への追加
Satellite Server は新規ホストのインターフェースを設定します。そのため、Satellite Server はこれらのインターフェースに接続するネットワークを認識している必要があります。これは、各サブネットの情報を Satellite Server に追加する必要があることを意味しており、これにはゲートウェイ、DHCP、および DNS などの情報が含まれます。この例では、Satellite Server の統合 Capsule が管理する ‘192.168.140.0/24’ ネットワークのサブネットのマッピングを作成します。
Web UI を使用する場合
インフラストラクチャー > サブネット に移動して、新規サブネット をクリックします。UI には、サブネットの詳細を入力できる一連のフィールドがあります。
サブネット タブ:
-
名前: サブネットのテキスト形式の名前。例:
ACME's Internal Network
-
ネットワークアドレス: サブネットのネットワークアドレス。例:
192.168.140.0
-
ネットワークマスク: サブネットのネットワークマスク。例:
255.255.255.0
-
ゲートウェイアドレス: サブネットの外部ゲートウェイ。例:
192.168.140.1
-
プライマリー DNS サーバー: サブネットのプライマリー DNS。例:
192.168.140.2
-
セカンダリー DNS サーバー: サブネットのセカンダリー DNS。例:
8.8.8.8
IPAM: IP アドレス管理 (IPAM) に使用するメソッド:
- DHCP: サブネットには DHCP サーバーが含まれます。
- 内部 DB: サブネットには DHCP サーバーは含まれませんが、Satellite で IP アドレスの割り当てを管理し、内部データベースに IP アドレスを記録できるようにすることが想定されます。
なし: IP アドレス管理がありません。
この例では、Satellite Server は DHCP サーバーとして機能するために
DHCP
を使用します。
-
開始アドレス (Start of IP range): プロビジョニングサービスの IP 割り当て範囲の開始を定義します。例:
192.168.140.111
-
終了アドレス (End of IP range): プロビジョニングサービスの IP 割り当ての終了を定義します。例:
192.168.140.250
- VLAN ID: ブロードキャストを分離するためにサブネットの VLAN ID 番号を定義します。この例では VLAN を使用しないため、このフィールドを空白にします。
- ブートモード: このネットワークのネットワークインターフェースのデフォルトブートモードを定義します。静的に割り当てられた IP アドレスに 静的 を使用し、IP アドレスを動的に割り当てるには DHCP を使用します。
-
名前: サブネットのテキスト形式の名前。例:
リモート実行 タブ:
- リモート実行を制御する capsule を選択します。この例では Satellite Server 自体がこれに該当します。
ドメイン タブ:
- このサブネットに適用されるドメインを選択します。
プロキシー (Capsules) タブ:
- DHCP、TFTP、およびリバース DNS サービスを含む、サブネットの各サービスに適用される capsule を選択します。この例では、それぞれのサービスに Satellite Server の統合 Capsule を使用します。
ロケーション タブ:
-
この capsule を使用するロケーションを選択します。たとえば、
New York
というロケーションを選択します。
-
この capsule を使用するロケーションを選択します。たとえば、
組織 タブ:
-
この capsule を使用する組織を選択します。たとえば、
ACME
を選択します。
-
この capsule を使用する組織を選択します。たとえば、
送信 をクリックしてサブネットの情報を保存します。
CLI を使用する場合
以下のコマンドでサブネットを作成します。
# hammer subnet create --name "ACME's Internal Network" --network "192.168.140.0" --mask "255.255.255.0" --gateway "192.168.140.1" --dns-primary "192.168.140.2" --dns-secondary "8.8.8.8" --ipam "DHCP" --from "192.168.140.111" --to "192.168.140.250" --boot-mode "DHCP" --domains "example.com" --dhcp-id 1 --dns-id 1 --tftp-id 1 --locations "New York" --organizations "ACME"
この例では、--dhcp-id
、--dns-id
、および --tftp-id
オプションは 1 を使用します。1 は Satellite Server 上の統合 Capsule の ID です。
4.4. 章の概要
本章では、Satellite Server の統合 Capsule で特定のネットワークサービスを設定する方法や、Satellite Server が制御するドメインおよびサブネットの詳細をマップする方法を説明しました。これで、新規ホストのネットワークが提供され、また PXE ブートやネットワーク設定などの主なサービスがホストに提供されます。
次章では、新規ホストおよびホストグループを作成する方法を含む、基本的なプロビジョニングのワークフローについて扱います。