5.5. IBM Z エージェントの手動追加


PXE アセットを作成した後、IBM Z® エージェントを追加できます。この手順は、IBM Z® クラスターにのみ使用してください。

IBM Z® 環境に応じて、以下の方法から選択できます。

  • z/VM を使用した IBM Z® エージェントの追加
  • RHEL KVM を使用した IBM Z® エージェントの追加
  • 論理パーティション (LPAR) を使用した IBM Z® エージェントの追加
注記

現在、IBM Z® (s390x) 上の ISO ブートサポートは Red Hat Enterprise Linux (RHEL) KVM でのみ利用できます。RHEL KVM では、PXE ベースのインストールか ISO ベースのインストールのどちらかを柔軟に選択できます。z/VM および論理パーティション (LPAR) を使用したインストールでは、PXE ブートのみがサポートされます。

5.5.1. IBM Z のネットワーク要件

IBM Z 環境では、Open Systems Adapter (OSA)、HiperSockets、Remote Direct Memory Access (RDMA) over Converged Ethernet (RoCE) などの高度なネットワークテクノロジーでは、標準のネットワーク設定とは異なる特定の設定が必要であり、エージェントベースのインストールで発生する複数のブートシナリオに対してそれらの設定が保持される必要があります。

起動中にこれらのパラメーターを保持するには、.parm ファイルに ai.ip_cfg_override=1 パラメーターが必要です。このパラメーターは、IBM Z での正常かつ効率的なデプロイメントを確実にするために、設定されたネットワークカードで使用されます。

次の表は、ネットワーク設定のオーバーライド機能について各ハイパーバイザーでサポートされているネットワークデバイスを示しています。

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ネットワークデバイスz/VMKVMLPAR ClassicLPAR Dynamic Partition Manager (DPM)

Virtual Switch

サポート対象 [1]

該当なし [2]

該当なし

該当なし

直接接続 Open Systems Adapter (OSA)

サポート対象

不要 [3]

サポート対象

不要

コンバージドイーサネット上 RDMA (RoCE)

不要

不要

不要

不要

HiperSockets

サポート対象

不要

サポート対象

不要

  1. サポート対象: インストール手順に ai.ip_cfg_override パラメーターが必要な場合。
  2. 該当なし: ネットワークカードがハイパーバイザーで使用できない場合。
  3. 不要: インストール手順で ai.ip_cfg_override パラメーターが必要ない場合。

5.5.2. IBM Z 環境でのネットワークオーバーライドの設定

論理パーティション (LPAR) と z/VM を使用する IBM Z マシンで静的 IP アドレスを指定できます。これは、ネットワークデバイスに静的 MAC アドレスが割り当てられていない場合に便利です。

注記

OSA ネットワークデバイスを Processor Resource/Systems Manager (PR/SM) モードで使用している場合、永続的な MAC アドレスがないと、ノードのロールが動的に割り当てられる可能性があります。つまり、各ノードのロールが固定されず、変更される可能性があります。システムが特定の MAC アドレスを指定されたノードロールに確実に関連付けることができないためです。どのインターフェイスの MAC アドレスも永続的でない場合は、エージェントベースのインストール中にノードのロールがランダムに割り当てられます。

手順

  • 既存の .parm ファイルがある場合は、次のエントリーを追加するように編集します。

    ai.ip_cfg_override=1
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    このパラメーターにより、ファイルが Red Hat Enterprise Linux CoreOS (RHCOS) インストーラーにネットワーク設定を追加できるようになります。

    .parm ファイルの例

    rd.neednet=1 cio_ignore=all,!condev
    console=ttysclp0
    coreos.live.rootfs_url=<coreos_url> 
    1
    
    ip=<ip>::<gateway>:<netmask>:<hostname>::none nameserver=<dns>
    rd.znet=qeth,<network_adaptor_range>,layer2=1
    rd.<disk_type>=<adapter> 
    2
    
    rd.zfcp=<adapter>,<wwpn>,<lun> random.trust_cpu=on 
    3
    
    zfcp.allow_lun_scan=0
    ai.ip_cfg_override=1
    ignition.firstboot ignition.platform.id=metal
    random.trust_cpu=on
    Copy to Clipboard Toggle word wrap

    1
    coreos.live.rootfs_url アーティファクトには、起動する kernelinitramfs に合った rootfs アーティファクトを指定します。HTTP プロトコルおよび HTTPS プロトコルのみがサポートされます。
    2
    direct access storage device (DASD) タイプのディスクにインストールする場合は、rd. を使用して、Red Hat Enterprise Linux CoreOS (RHCOS) をインストールする DASD を指定します。Fibre Channel Protocol (FCP) ディスクにインストールする場合は、rd.zfcp=<adapter>,<wwpn>,<lun> を使用して、RHCOS のインストール先となる FCP ディスクを指定します。
    3
    rd.zfcp=0.0.8002,0x500507630400d1e3,0x4000404600000000 の例のように、adapterwwpn、および lun の値を指定します。
注記

override パラメーターは、ホストのネットワーク設定をオーバーライドします。

5.5.3. z/VM を使用した IBM Z エージェントの追加

z/VM を使用して IBM Z® エージェントを手動で追加するには、次の手順を使用します。この手順は、z/VM を使用する IBM Z® クラスターにのみ使用してください。

前提条件

  • ゲスト仮想マシンにアクセスできる実行中のファイルサーバー。

手順

  1. z/VM ゲストのパラメーターファイルを作成します。

    パラメーターファイルの例

    +

    rd.neednet=1 \
    console=ttysclp0 \
    coreos.live.rootfs_url=<rootfs_url> \
    1
    
    ip=172.18.78.2::172.18.78.1:255.255.255.0:::none nameserver=172.18.78.1 \
    2
    
    zfcp.allow_lun_scan=0 \
    3
    
    ai.ip_cfg_override=1 \
    rd.znet=qeth,0.0.bdd0,0.0.bdd1,0.0.bdd2,layer2=1 \
    rd.dasd=0.0.4411 \
    4
    
    rd.zfcp=0.0.8001,0x50050763040051e3,0x4000406300000000 \
    5
    
    fips=1 \
    6
    
    random.trust_cpu=on rd.luks.options=discard \
    ignition.firstboot ignition.platform.id=metal \
    console=tty1 console=ttyS1,115200n8 \
    coreos.inst.persistent-kargs="console=tty1 console=ttyS1,115200n8"
    Copy to Clipboard Toggle word wrap
    1
    coreos.live.rootfs_url アーティファクトには、起動する kernelinitramfs に合った rootfs アーティファクトを指定します。HTTP プロトコルおよび HTTPS プロトコルのみがサポートされます。
    2
    ip パラメーターには、DHCP を使用して自動的に IP アドレスを割り当てるか、「z/VM を使用したクラスターの IBM Z® および IBM® LinuxONE へのインストール」の説明に従って手動で割り当てます。
    3
    デフォルトは 1 です。OSA ネットワークアダプターを使用する場合は、このエントリーを省略してください。
    4
    DASD タイプのディスクにインストールする場合は、rd.dasd を使用して、Red Hat Enterprise Linux CoreOS (RHCOS) をインストールする DASD を指定します。FCP タイプのディスクの場合は、このエントリーを省略します。
    5
    FCP タイプのディスクにインストールする場合は、rd.zfcp=<adapter>,<wwpn>,<lun> を使用して、RHCOS がインストールされる FCP ディスクを指定します。DASD タイプのディスクの場合は、このエントリーを省略します。
    注記

    FCP マルチパス設定の場合、1 つのディスクではなく 2 つのディスクを用意します。

    rd.zfcp=<adapter1>,<wwpn1>,<lun1> \
    rd.zfcp=<adapter2>,<wwpn2>,<lun2>
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    6
    FIPS モードを有効にするには、fips=1 を指定します。このエントリーに加えて、install-config.yaml ファイルで fips パラメーターを true に設定することが必要です。

    その他のパラメーターはすべて変更しません。

  2. z/VM ゲスト仮想マシンの仮想リーダーに対して、kernel.imggeneric.parm、および initrd.img ファイルの punch を実行します。

    詳細は、PUNCH (IBM ドキュメント) を参照してください。

    ヒント

    CP PUNCH コマンドを使用するか、Linux を使用している場合は vmur コマンドを使用して、2 つの z/VM ゲスト仮想マシン間でファイルを転送できます。

  3. ブートストラップマシン上の会話型モニターシステム (CMS) にログインします。
  4. 次のコマンドを実行して、リーダーからブートストラップマシンを IPL します。

    $ ipl c
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    詳細は、IPL (IBM ドキュメント) を参照してください。

5.5.4. RHEL KVM を使用した IBM Z エージェントの追加

RHEL KVM を使用して IBM Z® エージェントを手動で追加するには、次の手順を使用します。この手順は、RHEL KVM を使用する IBM Z® クラスターにのみ使用してください。

注記

KVM ブートには nmstateconfig パラメーターを設定する必要があります。

手順

  1. RHEL KVM マシンを起動します。
  2. 仮想サーバーをデプロイするために、次のパラメーターを指定して virt-install コマンドを実行します。

    $ virt-install \
       --name <vm_name> \
       --autostart \
       --ram=16384 \
       --cpu host \
       --vcpus=8 \
       --location <path_to_kernel_initrd_image>,kernel=kernel.img,initrd=initrd.img \
    1
    
       --disk <qcow_image_path> \
       --network network:macvtap ,mac=<mac_address> \
       --graphics none \
       --noautoconsole \
       --wait=-1 \
       --extra-args "rd.neednet=1 nameserver=<nameserver>" \
       --extra-args "ip=<IP>::<nameserver>::<hostname>:enc1:none" \
       --extra-args "coreos.live.rootfs_url=http://<http_server>:8080/agent.s390x-rootfs.img" \
       --extra-args "random.trust_cpu=on rd.luks.options=discard" \
       --extra-args "ignition.firstboot ignition.platform.id=metal" \
       --extra-args "console=tty1 console=ttyS1,115200n8" \
       --extra-args "coreos.inst.persistent-kargs=console=tty1 console=ttyS1,115200n8" \
       --osinfo detect=on,require=off
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    1
    --location パラメーターには、kernel ファイルと initrd ファイルの場所を指定します。ファイルの場所は、ローカルサーバーのパスか、HTTP または HTTPS を使用した URL にすることができます。
  3. オプション: FIPS モードを有効にします。

    RHEL KVM を使用する IBM Z® クラスターで FIPS モードを有効にするには、代わりに PXE ブートを使用し、次のパラメーターを指定して virt-install コマンドを実行する必要があります。

    PXE ブート

    $ virt-install \
       --name <vm_name> \
       --autostart \
       --ram=16384 \
       --cpu host \
       --vcpus=8 \
       --location <path_to_kernel_initrd_image>,kernel=kernel.img,initrd=initrd.img \
    1
    
       --disk <qcow_image_path> \
       --network network:macvtap ,mac=<mac_address> \
       --graphics none \
       --noautoconsole \
       --wait=-1 \
       --extra-args "rd.neednet=1 nameserver=<nameserver>" \
       --extra-args "ip=<IP>::<nameserver>::<hostname>:enc1:none" \
       --extra-args "coreos.live.rootfs_url=http://<http_server>:8080/agent.s390x-rootfs.img" \
       --extra-args "random.trust_cpu=on rd.luks.options=discard" \
       --extra-args "ignition.firstboot ignition.platform.id=metal" \
       --extra-args "console=tty1 console=ttyS1,115200n8" \
       --extra-args "coreos.inst.persistent-kargs=console=tty1 console=ttyS1,115200n8" \
       --extra-args "fips=1" \
    2
    
       --osinfo detect=on,require=off
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    注記

    IBM Z 上の DASD デバイスを使用する KVM ベースのインストールでは、fdasd パーティションツールを使用してパーティション (/dev/dasdb1 など) を作成する必要があります。

    1
    --location パラメーターには、HTTP または HTTPS サーバー上の kernel/initrd の場所を指定します。
    2
    FIPS モードを有効にするには、fips=1 を指定します。このエントリーに加えて、install-config.yaml ファイルで fips パラメーターを true に設定することが必要です。
    注記

    現在、IBM Z® で FIPS モードを有効にするのに使用できるのは、PXE ブートだけです。

5.5.5. 論理パーティション (LPAR) への IBM Z エージェントの追加

LPAR 環境で実行されるクラスターに IBM Z® エージェントを手動で追加するには、次の手順に従います。この手順は、LPAR で実行される IBM Z® クラスターに対してのみ使用してください。

前提条件

  • Python 3 がインストールされている。
  • 論理パーティション (LPAR) にアクセスできる実行中のファイルサーバー。

手順

  1. エージェントのブートパラメーターファイルを作成します。

    パラメーターファイルの例

    rd.neednet=1 cio_ignore=all,!condev \
    console=ttysclp0 \
    ignition.firstboot ignition.platform.id=metal
    coreos.live.rootfs_url=http://<http_server>/rhcos-<version>-live-rootfs.<architecture>.img \
    1
    
    coreos.inst.persistent-kargs=console=ttysclp0 \
    ip=<ip>::<gateway>:<netmask>:<hostname>::none nameserver=<dns> \
    2
    
    rd.znet=qeth,<network_adaptor_range>,layer2=1
    rd.<disk_type>=<adapter> \
    3
    
    fips=1 \
    4
    
    zfcp.allow_lun_scan=0 \
    ai.ip_cfg_override=1 \
    random.trust_cpu=on rd.luks.options=discard
    Copy to Clipboard Toggle word wrap

    1
    coreos.live.rootfs_url アーティファクトには、起動する kernelinitramfs に合った rootfs アーティファクトを指定します。HTTP プロトコルおよび HTTPS プロトコルのみがサポートされます。
    2
    ip パラメーターには、z/VM を使用したクラスターの IBM Z および IBM LinuxONE へのインストール の説明に従って、IP アドレスを手動で割り当てます。
    3
    DASD タイプのディスクにインストールする場合は、rd.dasd を使用して、Red Hat Enterprise Linux CoreOS (RHCOS) をインストールする DASD を指定します。FCP タイプのディスクにインストールする場合は、rd.zfcp=<adapter>,<wwpn>,<lun> を使用して、RHCOS がインストールされる FCP ディスクを指定します。
    注記

    FCP マルチパス設定の場合、1 つのディスクではなく 2 つのディスクを用意します。

    rd.zfcp=<adapter1>,<wwpn1>,<lun1> \
    rd.zfcp=<adapter2>,<wwpn2>,<lun2>
    Copy to Clipboard Toggle word wrap

    4
    FIPS モードを有効にするには、fips=1 を指定します。このエントリーに加えて、install-config.yaml ファイルで fips パラメーターを true に設定することが必要です。
    注記

    .ins および initrd.img.addrsize ファイルは、インストールプログラムからのブートアーティファクトの一部として s390x アーキテクチャー用に自動的に生成され、LPAR 環境でのブート時にのみ使用されます。

    LPAR ブートによるファイルシステムの例

    boot-artifacts
        ├─ agent.s390x-generic.ins
        ├─ agent.s390x-initrd.addrsize
        ├─ agent.s390x-rootfs.img
        └─ agent.s390x-kernel.img
        └─ agent.s390x-rootfs.img
    Copy to Clipboard Toggle word wrap

  2. generic.ins パラメーターファイルにある boot-artifacts ファイルの名前を、インストールプログラムによって生成された boot-artifacts ファイルの名前と一致するように変更します。
  3. initrdkernelgeneric.ins、および initrd.img.addrsize パラメーターファイルをファイルサーバーに転送します。詳細は、Booting Linux in LPAR mode (IBM ドキュメント) を参照してください。
  4. マシンを起動します。
  5. クラスター内の他のマシンすべてに対してこの手順を繰り返します。
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