第2章 SystemTap の使用
本章では、SystemTap のインストール方法と SystemTap スクリプトの実行方法を説明します。
2.1. インストールと設定
SystemTap のデプロイにインストールが必要となるのは、SystemTap パッケージと対応するカーネルの
-devel
、-debuginfo
、および -debuginfo-common-arch
パッケージです。システムに複数のカーネルがインストールされていて、それらのカーネル上で SystemTap を使用するには、それらの 各 カーネルバージョン用に -devel
と -debuginfo
パッケージをインストールします。
これらの手順は、以下のセクションで詳細に説明します。
重要
多くのユーザーは、
-debuginfo
と -debug
を混同します。SystemTap のデプロイに必要となるのは、カーネルの -debuginfo
パッケージのインストールであって、カーネルの -debug
バージョンではない点に注意してください。
2.1.1. SystemTap のインストール
SystemTap をデプロイするには、以下の RPM パッケージをインストールします。
systemtap
systemtap-runtime
システムに
yum
がインストールされていることを前提として、これら 2 つの RPM パッケージは yum install systemtap systemtap-runtime
を使用してインストールすることができます。SystemTap を使用する前に、必要なカーネル情報パッケージをインストールします。
2.1.2. 必要なカーネル情報 RPM パッケージのインストール
SystemTap は、カーネル内にインストルメンテーションを配置する (プローブする) ためにカーネルの情報が必要になります。この情報により、SystemTap はインストルメンテーションのコード生成が可能になります。この情報は、一致するカーネル用の
-devel
、-debuginfo
、および -debuginfo-common-arch
パッケージに含まれています。通常の「vanilla」カーネルに必要な -devel
および -debuginfo
パッケージは、以下のとおりです。
kernel-debuginfo
kernel-debuginfo-common-arch
kernel-devel
同様に、PAE カーネルに必要なパッケージは、
kernel-PAE-debuginfo
、kernel-PAE-debuginfo-common-arch
、および kernel-PAE-devel
になります。
システムで現在使用中のカーネルを確認するには、以下のコマンドを実行します。
uname -r
たとえば、32 ビット AMD および Intel アーキテクチャーのマシン上のカーネルバージョン
2.6.32-53.el6
で SystemTap を使用する場合は、以下の RPM パッケージをダウンロードおよびインストールする必要があります。
kernel-debuginfo-2.6.32-53.el6.i686.rpm
kernel-debuginfo-common-i686-2.6.32-53.el6.i686.rpm
kernel-devel-2.6.32-53.el6.i686.rpm
重要
-devel
、-debuginfo
、および -debuginfo-common-arch
パッケージのバージョン、バリアント、アーキテクチャーは、SystemTap によって 正確に プローブされるためにカーネルと一致する必要があります。
システムで SystemTap が必要とするチャンネルの一覧を取得するには、以下のスクリプトを使用します。
#! /bin/bash pkg=`rpm -q --whatprovides "redhat-release"` releasever=`rpm -q --qf "%{version}" $pkg` variant=`echo $releasever | tr -d "[:digit:]" | tr "[:upper:]" "[:lower:]" ` if test -z "$variant"; then echo "No Red Hat Enterprise Linux variant (workstation/client/server) found." exit 1 fi version=`echo $releasever | tr -cd "[:digit:]"` base=`uname -i` echo "rhel-$base-$variant-$version" echo "rhel-$base-$variant-$version-debuginfo" echo "rhel-$base-$variant-optional-$version-debuginfo" echo "rhel-$base-$variant-optional-$version"
チャンネルを追加したら、コマンド
debuginfo-install kernelname-version
を使用して、カーネルに必要な -devel
、debuginfo
、および debuginfo-install arch
パッケージをインストールします。kernelname
を適切なカーネルバリアント名 (kernel-PAE
など) に置き換え、version
をターゲットカーネルのバージョンに置き換えます。たとえば、kernel-PAE-2.6.32-53.el6
カーネルに必要なカーネル情報パッケージをインストールするには、debuginfo-install kernel-PAE-2.6.32-53.el6
を実行します。
2.1.3. 初期テスト
SystemTap でプローブするカーネルが現在使用中であれば、デプロイメントが成功したかどうかを直ちにテストできます。別のカーネルをプローブする場合は、再起動して該当カーネルを読み込みます。
テストを開始するには、
stap -v -e 'probe vfs.read {printf("read performed\n"); exit()}'
のコマンドを実行します。このコマンドは単に、SystemTap に read performed
をプリントして、仮想ファイルシステムの読み込みが検出されると、正常に終了するよう指示します。SystemTap が正常にデプロイされていれば、以下のような出力になります。
Pass 1: parsed user script and 45 library script(s) in 340usr/0sys/358real ms. Pass 2: analyzed script: 1 probe(s), 1 function(s), 0 embed(s), 0 global(s) in 290usr/260sys/568real ms. Pass 3: translated to C into "/tmp/stapiArgLX/stap_e5886fa50499994e6a87aacdc43cd392_399.c" in 490usr/430sys/938real ms. Pass 4: compiled C into "stap_e5886fa50499994e6a87aacdc43cd392_399.ko" in 3310usr/430sys/3714real ms. Pass 5: starting run. read performed Pass 5: run completed in 10usr/40sys/73real ms.
(
Pass 5
で始まる) 出力の最後の 3 行は、SystemTap がカーネルをプローブするインストルメンテーションを正常に作成できたこと、インストルメンテーションを実行したこと、プローブしているイベントを検出したこと (このケースでは、仮想ファイルシステムの読み込み)、および有効なハンドラーを実行したこと (テキストをプリントし、エラーなしで終了) を示しています。