第6章 非同期エラータの更新
このセクションでは、z-stream リリースのバグ修正、既知の問題、機能拡張を説明します。
6.1. Red Hat Ceph Storage 7.1z1
Red Hat Ceph Storage リリース 7.1z1 が利用可能になりました。この更新に含まれるバグ修正は、RHBA-2024:5080 および RHBA-2024:5081 アドバイザリーに記載されています。
6.1.1. 既知の問題
このセクションでは、Red Hat Ceph Storage のこのリリースで見つかった既知の問題について説明します。
6.1.1.1. Ceph Object Gateway
オブジェクト圧縮と暗号化のための Intel QAT アクセラレーション
圧縮と暗号化を有効にするときにノードの CPU 使用率を削減し、Ceph Object Gateway のパフォーマンスを向上させることができるように、Intel QuickAssist テクノロジー (QAT) が実装されています。QAT は新しいセットアップ (Greenfield のみ) でしか設定できない点は既知の問題です。QAT Ceph Object Gateway デーモンは、非 QAT (通常の) Ceph Object Gateway デーモンと同じクラスター内に設定できません。
6.1.1.2. Ceph のアップグレード
RHEL 8 から RHEL 9 へのアップグレード中に、クラスターキーと特定の設定ディレクトリーが削除されます。
libunwind
パッケージの RHEL 8 非推奨のため、RHEL 9 にアップグレードするとこのパッケージは削除されます。ceph-common
パッケージは libunwind
パッケージに依存しているため、同様に削除されます。ceph-common
パッケージを削除すると、クラスターキーと、/etc/ceph
および /var/log/ceph
ディレクトリー内の特定の設定が削除されます。
その結果、さまざまなノード障害が発生する可能性があります。/etc/ceph
パッケージ
が削除されたことが原因で、一部のノードで Ceph 操作が機能しない可能性があります。また、/var/log/ceph パッケージが削除されたため、ノード上の Ceph サービスで systemd と Podman を起動できません。
回避策として、libunwind
パッケージが削除されないように LEAPP を設定します。完全な手順は、Red Hat カスタマーポータルの Upgrading RHCS 5 hosts from RHEL 8 to RHEL 9 removes ceph-common packageServices fail to start を参照してください。
6.1.1.3. Cephadm ユーティリティー
--export
フラグを指定して ceph orch ls
コマンドを使用すると、cert/key ファイルの形式が破損します。
以前は、--export
フラグを指定して ceph orch ls
を使用すると、cert/key ファイル形式のような長い複数行の文字列が破損していました。具体的には、一部の改行が削除されます。その結果、ユーザーが --export
を指定して ceph orch ls
から取得した cert/key を使用して仕様を再適用すると、cert/key はデーモンで使用できなくなります。
回避策として、--export
を指定した ceph orch ls
を使用して現在の内容を取得し、仕様を変更するには、仕様を再適用する前に、cert/key ファイルの形式を変更する必要があります。'|' とインデントされた文字列を含む形式を使用することを推奨します。
以下に例を示します。
client_cert: | -----BEGIN CERTIFICATE----- MIIFCTCCAvGgAwIBAgIUO6yXXkNb1+1tJzxZDplvgKpwWkMwDQYJKoZIhvcNAQEL BQAwFDESMBAGA1UEAwwJbXkuY2xpZW50MB4XDTI0MDcyMzA3NDI1N1oXDTM0MDcy ...
6.1.2. 機能拡張
このセクションでは、Red Hat Ceph Storage のこのリリースで導入された機能拡張を説明します。
6.1.2.1. Ceph ファイルシステム
並列クローンの制限が原因で、新しいクローンの作成に時間がかからなくなりました。
以前は、並列クローンの制限に達すると、残りのクローンがキューに入れられ、クローン作成が遅くなっていました。
この機能拡張により、一度に並列して作成できるクローンの制限に達すると、新しいクローン作成要求は拒否されます。この機能はデフォルトで有効になっていますが、無効にすることもできます。
Ceph ファイルシステムの名前を交換できるようになり、障害復旧が強化されました。
この機能拡張により、ceph fs swap コマンドを使用して 2 つのファイルシステムの名前を交換するオプションが提供されます。このコマンドでは、オプションでファイルシステム ID を交換することもできます。
この API の機能では、障害復旧に向け、ファイルシステムを簡単にスワップします。特に、名前付きファイルシステムが一時的に失われ、上位レベルのストレージ Operator に対して、なくなったファイルシステムを再作成するように促すといった状況を回避します。
quota.max_bytes
がよりわかりやすいサイズ値に設定されるようになりました
以前は、quota.max_bytes
値はバイト単位で設定されていたため、サイズの値が非常に大きくなることが多く、設定や変更が困難でした。
この機能強化により、quota.max_bytes
値を M/Mi、G/Gi、T/Ti などのわかりやすい値に設定できるようになりました。たとえば、10 GiB または 100 K などです。
スタンバイリプレイ MDS のヘルス警告が除外されました。
以前は、standby-replay MDS 中に、すべての inode および stray カウンターのヘルス警告が表示されていました。
この機能拡張により、standby-replay MDS ヘルス警告は関連性がないため表示されなくなりました。
6.1.2.2. Ceph Object Gateway
S3 リクエストはシャットダウン中に送信途中で切断されなくなりました。
以前は、シャットダウン中に S3 リクエストが送信の途中で待機せずに切断されるという問題が一部のクライアントで発生していました。
この機能強化により、S3 リクエストは、Ceph Object Gateway プロセスを無条件に終了する前に、すべての未処理のリクエストが完了するまで rgw_exit_timeout_secs
パラメーターで定義された期間、待機するように設定できます (デフォルトではオフ)。Ceph Object Gateway は、無条件に終了する前に、進行中のすべての S3 リクエストが完了するまで最大 120 秒 (設定可能) 待機するようになりました。この間、新しい S3 リクエストは受け入れられません。
コンテナー化されたデプロイメントでは、追加の extra_container_agrs
パラメーター設定 --stop-timeout=120
(または、デフォルトでない場合は rgw_exit_timeout_secs
パラメーターの値) も必要です。