第1章 はじめに
SystemTap は、オペレーティングシステム (特にカーネル) の動作を詳細に観察および監視できる追跡およびプロービングのツールです。netstat、ps、top、iostat などのツールの出力と同様の情報を提供します。ただし、SystemTap は、収集された情報に対してより多くのフィルタリングおよび分析オプションを提供するように設計されています。
SystemTap は、システム管理者が Red Hat Enterprise Linux 5 以降のパフォーマンス監視ツールとして使用できます。これは、他の同様のツールではシステムのボトルネックを正確に特定できず、システムアクティビティーの詳細な分析が必要な場合に最も役立ちます。同様に、アプリケーション開発者は SystemTap を使用して、Linux システム内でアプリケーションがどのように動作するかを詳細に監視することもできます。
1.1. 本ガイドの目的
SystemTap は、分析を詳細に行うために、稼働中の Linux システムを監視するインフラストラクチャーを提供します。これは、管理者や開発者がバグやパフォーマンス問題の根本的な原因を特定する手助けとなります。
SystemTap を使用しないで、実行中のカーネルのアクティビティーを監視しようとすると、インストルメント化、再コンパイル、インストール、および再起動という面倒なプロセスが必要になります。SystemTap を使用するとこのプロセスが不要になり、ユーザーが作成する SystemTap スクリプトを実行するだけで同様の情報を収集できるようになります。
ただし、SystemTap は当初、Linux カーネルに関する中級から上級の知識を備えたユーザーのために設計されました。このため、SystemTap は Linux カーネルに関する知識と経験があまりない管理者や開発者にはそれほど有用なものではありません。さらに、既存の SystemTap ドキュメントのほとんどは、同様に知識と経験が豊富なユーザーを対象としています。
そこで、『SystemTap ビギナーズガイド』 では初級者を対象に、以下を説明します。
- SystemTap の概要を紹介するほか、ユーザーにアーキテクチャーについて説明し、全カーネルタイプの設定手順を提供します。
- システムの異なるコンポーネントで詳細なアクティビティーを監視するための事前作成された SystemTap スクリプトを提供し、それらの実行方法と出力の分析方法も提供します。