第1章 RPM の概要
RPM Package Manager (RPM) は、Red Hat Enterprise Linux (RHEL)、CentOS、および Fedora で実行できるパッケージ管理システムです。RPM を使用すると、これらのオペレーティングシステム用に作成したソフトウェアを配布、管理、および更新できます。
RPM パッケージ管理システムには、従来のアーカイブファイルでソフトウェアを配布する場合と比べて、次のような利点があります。
- RPM は、ソフトウェアを個別にインストール、更新、または削除できるパッケージの形式で管理されるため、オペレーティングシステムのメンテナンスが容易になります。
- RPM パッケージは圧縮アーカイブと同様にスタンドアロンのバイナリーファイルであるため、RPM によりソフトウェアの配布が簡素化されます。これらのパッケージは、特定のオペレーティングシステムとハードウェアアーキテクチャー向けにビルドされています。RPM には、コンパイルされた実行可能ファイルやライブラリーなどのファイルが含まれています。これらのファイルは、パッケージのインストール時にファイルシステム上の適切なパスに配置されます。
RPM を使用すると、次のタスクを実行できます。
- パッケージ化されたソフトウェアをインストール、アップグレード、削除する。
- パッケージソフトウェアの詳細情報を問い合わせる。
- パッケージ化されたソフトウェアの整合性を検証する。
- ソフトウェアソースから独自のパッケージをビルドし、ビルド手順を完了する。
- GNU Privacy Guard (GPG) ユーティリティーを使用して、パッケージにデジタル署名する。
- パッケージを YUM リポジトリーに公開する。
Red Hat Enterprise Linux では、RPM は YUM や PackageKit などの上位レベルのパッケージ管理ソフトウェアに完全に統合されています。RPM には独自のコマンドラインインターフェイスが用意されていますが、ほとんどのユーザーはこのようなソフトウェアを通じて RPM を操作するだけで済みます。ただし、RPM パッケージをビルドする場合は、rpmbuild(8)
などの RPM ユーティリティーを使用する必要があります。
1.1. RPM パッケージ
RPM パッケージは、ファイルのアーカイブと、これらのファイルのインストールと消去に使用されるメタデータで構成されます。具体的には、RPM パッケージには次の要素が含まれています。
- GPG 署名
- GPG 署名は、パッケージの整合性を検証するために使用されます。
- RPM ヘッダー (パッケージのメタデータ)
- RPM パッケージマネージャーは、このメタデータを使用して、パッケージの依存関係、ファイルのインストール先、その他の情報を確認します。
- ペイロード
-
ペイロードは、システムにインストールするファイルを含む
cpio
アーカイブです。
RPM パッケージには 2 つの種類があります。いずれも、同じファイル形式とツールを使用しますが、コンテンツが異なるため、目的が異なります。
ソース RPM (SRPM)
SRPM には、ソースコードと、ソースコードをバイナリー RPM にビルドする方法を記述した
spec
ファイルが含まれています。必要に応じて、SRPM にはソースコードへのパッチを含めることができます。- バイナリー RPM
- バイナリー RPM には、ソースおよびパッチから構築されたバイナリーが含まれます。