3.5. Debezium コネクターを実行するための Db2 の設定
Db2 テーブルにコミットされた変更イベントを Debezium がキャプチャーするには、必要な権限を持つ Db2 データベース管理者が、変更データキャプチャー (CDC) のデータベースでテーブルを設定する必要があります。Debezium の実行を開始した後、キャプチャーエージェントの設定を調整してパフォーマンスを最適化できます。
Debezium コネクターと使用するために Db2 を設定する場合の詳細は、以下を参照してください。
3.5.1. 変更データキャプチャーの Db2 テーブルの設定
テーブルをキャプチャーモードにするために、Debezium ではユーザー定義関数 (UDF) のセットが提供されます。ここでは、これらの管理 UDF をインストールおよび実行する手順を説明します。また、Db2 制御コマンドを実行してテーブルをキャプチャーモードにすることもできます。その後、管理者は Debezium がキャプチャーする各テーブルに対して、CDC を有効にする必要があります。
前提条件
-
db2instl
ユーザーとして Db2 にログインしている。 - Db2 ホストの $HOME/asncdctools/src ディレクトリーで Debezium 管理 UDF を使用できる。UDF は Debezium サンプルリポジトリー から入手できます。
手順
Db2 で提供される
bldrtn
コマンドを使用して、Db2 サーバーホストで Debezium 管理 UDF をコンパイルします。cd $HOME/asncdctools/src
./bldrtn asncdc
データベースが稼働していない場合は起動します。
DB_NAME
は、Debezium が接続するデータベースの名前に置き換えます。db2 start db DB_NAME
JDBC が Db2 メタデータカタログを読み取りできるようにします。
cd $HOME/sqllib/bnd
db2 bind db2schema.bnd blocking all grant public sqlerror continue
データベースが最近バックアップされたことを確認します。ASN エージェントには、読み取りを始める最新の開始点が必要です。バックアップを実行する必要がある場合は、以下のコマンドを実行して、最新のバージョンのみを利用できるようにデータをプルーニングします。古いバージョンのデータを保持する必要がない場合は、バックアップの場所に
dev/null
を指定します。データベースをバックアップします。
DB_NAME
およびBACK_UP_LOCATION
を適切な値に置き換えます。db2 backup db DB_NAME to BACK_UP_LOCATION
データベースを再起動します。
db2 restart db DB_NAME
データベースに接続して、Debezium 管理 UDF をインストールします。
db2instl
ユーザーとしてログインしていることを前提とするため、UDF がdb2inst1
ユーザーにインストールされている必要があります。db2 connect to DB_NAME
Debezium 管理 UDF をコピーし、その権限を設定します。
cp $HOME/asncdctools/src/asncdc $HOME/sqllib/function
chmod 777 $HOME/sqllib/function
ASN キャプチャーエージェントを開始および停止する Debezium UDF を有効にします。
db2 -tvmf $HOME/asncdctools/src/asncdc_UDF.sql
ASN 制御テーブルを作成します。
$ db2 -tvmf $HOME/asncdctools/src/asncdctables.sql
テーブルをキャプチャーモードに追加し、キャプチャーモードからテーブルを削除する Debezium UDF を有効にします。
$ db2 -tvmf $HOME/asncdctools/src/asncdcaddremove.sql
Db2 サーバーを設定したら、UDF を使用して SQL コマンドで Db2 レプリケーション (ASN) を制御します。UDF によっては戻り値が必要な場合があります。この場合、SQL の
VALUE
ステートメントを使用して呼び出します。その他の UDF には、SQL のCALL
ステートメントを使用します。ASN エージェントを起動します。
VALUES ASNCDC.ASNCDCSERVICES('start','asncdc');
前述のステートメントは、以下のいずれかの結果を返します。
-
asncap is already running
start -->
<COMMAND>
この場合は、以下の例のように、ターミナルウィンドウに指定の
<COMMAND>
を入力します。/database/config/db2inst1/sqllib/bin/asncap capture_schema=asncdc capture_server=SAMPLE &
-
テーブルをキャプチャーモードにします。キャプチャーする各テーブルに対して、以下のステートメントを呼び出します。
MYSCHEMA
は、キャプチャーモードにするテーブルが含まれるスキーマの名前に置き換えます。同様に、MYTABLE
は、キャプチャーモードにするテーブルの名前に置き換えます。CALL ASNCDC.ADDTABLE('MYSCHEMA', 'MYTABLE');
ASN サービスを再初期化します。
VALUES ASNCDC.ASNCDCSERVICES('reinit','asncdc');
3.5.2. Db2 キャプチャーエージェント設定のサーバー負荷およびレイテンシーへの影響
データベース管理者がソーステーブルに対して変更データキャプチャーを有効にすると、キャプチャーエージェントの実行が開始されます。エージェントは新しい変更イベントレコードをトランザクションログから読み取り、イベントレコードをキャプチャーテーブルに複製します。変更がソーステーブルにコミットされてから、対応する変更テーブルに変更が反映される間、常に短いレイテンシーが間隔で発生します。この遅延間隔は、ソーステーブルで変更が発生したときから、Debezium がその変更を Apache Kafka にストリーミングできるようになるまでの差を表します。
データの変更に素早く対応する必要があるアプリケーションについては、ソースとキャプチャーテーブル間で密接に同期を維持するのが理想的です。キャプチャーエージェントを実行してできるだけ迅速に変更イベントを継続的に処理すると、スループットが増加し、レイテンシーが減少するため、イベントの発生後にほぼリアルタイムで新しいイベントレコードが変更テーブルに入力されることを想像するかもしれません。しかし、これは必ずしもそうであるとは限りません。同期を即時に行うとパフォーマンスに影響します。変更エージェントが新しいイベントレコードについてデータベースにクエリーを実行するたびに、データベースホストの CPU 負荷が増加します。サーバーへの負荷が増えると、データベース全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があり、特にデータベースの使用がピークに達するときにトランザクションの効率が低下する可能性があります。
データベースメトリックを監視して、サーバーがキャプチャーエージェントのアクティビティーをサポートできなくなるレベルにデータベースが達した場合に認識できるようにすることが重要となります。キャプチャーエージェントの実行中にパフォーマンスの問題が発生した場合は、キャプチャーエージェント設定を調整して CPU の負荷を減らします。
3.5.3. DB2 キャプチャーエージェントの設定パラメーター
Db2 では、IBMSNAP_CAPPARMS
テーブルにはキャプチャーエージェントの動作を制御するパラメーターが含まれています。これらのパラメーターの値を調整して、キャプチャープロセスの設定を調整すると、CPU の負荷を減らしながら許容レベルのレイテンシーを維持することができます。
Db2 のキャプチャーエージェントパラメーターの設定方法に関する具体的なガイダンスは、本書の範囲外となります。
IBMSNAP_CAPPARMS
テーブルでは、CPU 負荷の削減に最も影響を与えるパラメーターは以下のとおりです。
COMMIT_INTERVAL
- キャプチャーエージェントがデータを変更データテーブルにコミットするまで待つ期間を秒単位で指定します。
- 値が大きいほど、データベースホストの負荷が減少し、レイテンシーが増加します。
-
デフォルト値は
30
です。
SLEEP_INTERVAL
- キャプチャーエージェントがアクティブなトランザクションログの最後に到達した後に、新しいコミットサイクルの開始まで待つ期間を秒単位で指定します。
- 値が大きいほど、サーバーの負荷が減少し、レイテンシーが増加します。
-
デフォルト値は
5
です。
関連情報
- キャプチャーエージェントパラメーターの詳細は、Db2 のドキュメントを参照してください。