5.5. Ceph Manager バランサーモジュールの使用
バランサーは、Ceph Manager (ceph-mgr
) のモジュールで、OSD 全体の配置グループ (PG) の配置を最適化することで、自動または監視された方法でバランスの取れた分散を実現します。
現在、バランサーモジュールを無効にできません。これをオフにして設定をカスタマイズすることしかできません。
モード
現在、サポートされるバランサーモードが 2 つあります。
crush-compat: CRUSH compat モードは、Ceph Luminous で導入された compat の
weight-set
機能を使用して、CRUSH 階層のデバイスの別の重みセットを管理します。通常の重みは、デバイスに保存する目的のデータ量を反映するために、デバイスのサイズに設定したままにする必要があります。その後バランサーは、可能な限り目的のディストリビューションに一致するディストリビューションを達成するために、weight-set
の値を少しずつ増減させ、値を最適化します。PG の配置は擬似ランダムプロセスであるため、配置には自然なばらつきが伴います。重みを最適化することで、バランサーはこの自然なばらつきに対応します。このモードは、古いクライアントと完全に後方互換性があります。OSDMap および CRUSH マップが古いクライアントと共有されると、バランサーは最適化された重みを実際の重みとして提示します。
このモードの主な制限は、階層のサブツリーが OSD を共有する場合に、バランサーが配置ルールの異なる複数の CRUSH 階層を処理できないことです。この設定では、共有 OSD での領域の使用を管理するのが困難になるため、一般的には推奨されません。そのため、通常、この制限は問題にはなりません。
upmap: Luminous 以降、OSDMap は、通常の CRUSH 配置計算への例外として、個々の OSD の明示的なマッピングを保存できます。これらの
upmap
エントリーにより、PG マッピングを細かく制御できます。この CRUSH モードは、バランスの取れた分散を実現するために、個々の PG の配置を最適化します。多くの場合、この分散は各 OSD の PG 数 +/-1 PG で完璧です。これは割り切れない場合があるためです。重要この機能の使用を許可するには、次のコマンドを使用して、luminous 以降のクライアントのみをサポートする必要があることをクラスターに伝える必要があります。
[ceph: root@host01 /]# ceph osd set-require-min-compat-client luminous
このコマンドは、luminous 以前のクライアントまたはデーモンがモニターに接続されていると失敗します。
既知の問題により、カーネル CephFS クライアントは自身を jewel クライアントとして報告します。この問題を回避するには、
--yes-i-really-mean-it
フラグを使用します。[ceph: root@host01 /]# ceph osd set-require-min-compat-client luminous --yes-i-really-mean-it
使用しているクライアントのバージョンは、以下で確認できます。
[ceph: root@host01 /]# ceph features
前提条件
- 稼働中の Red Hat Ceph Storage クラスターがある。
手順
balancer モジュールが有効になっていることを確認します。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph mgr module enable balancer
balancer モジュールをオンにします。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer on
デフォルトのモードは
upmap
です。モードは以下のように変更できます。例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer mode crush-compact
または
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer mode upmap
ステータス
バランサーの現在のステータスは、以下を実行していつでも確認できます。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer status
自動バランシング
デフォルトでは、バランサーモジュールをオンにする場合、自動分散が使用されます。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer on
以下を使用して、バランサーを再度オフにできます。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer off
これには、古いクライアントと後方互換性があり、時間の経過とともにデータディストリビューションに小さな変更を加えて、OSD を同等に利用されるようにする crush-compat
モードを使用します。
スロットリング
たとえば、OSD が失敗し、システムがまだ修復していない場合などに、クラスターのパフォーマンスが低下する場合は、PG ディストリビューションには調整は行われません。
クラスターが正常な場合、バランサーは変更を調整して、置き間違えた、または移動する必要のある PG の割合がデフォルトで 5% のしきい値を下回るようにします。この割合は、target_max_misplaced_ratio
の設定を使用して調整できます。たとえば、しきい値を 7% に増やすには、次のコマンドを実行します。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph config-key set mgr target_max_misplaced_ratio .07
自動バランシングの場合:
- 自動バランサーの実行間におけるスリープ時間を秒単位で設定します。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph config set mgr mgr/balancer/sleep_interval 60
- 自動バランシングを開始する時刻を HHMM 形式で設定します。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph config set mgr mgr/balancer/begin_time 0000
- 自動バランシングを終了する時刻を HHMM 形式で設定します。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph config set mgr mgr/balancer/end_time 2359
-
自動バランシングをこの曜日以降に制限します。
0
は日曜日、1
は月曜日というように、crontab と同じ規則を使用します。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph config set mgr mgr/balancer/begin_weekday 0
-
自動バランシングをこの曜日以前に制限します。
0
は日曜日、1
は月曜日というように、crontab と同じ規則を使用します。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph config set mgr mgr/balancer/end_weekday 6
-
自動バランシングを制限するプール ID を定義します。これのデフォルトは空の文字列で、すべてのプールが均衡していることを意味します。数値のプール ID は、
ceph osd pool ls detail
コマンドで取得できます。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph config set mgr mgr/balancer/pool_ids 1,2,3
監視付き最適化
balancer 操作はいくつかの異なるフェーズに分類されます。
-
プラン
の構築。 -
現在の PG ディストリビューションまたは
プラン
実行後に得られる PG ディストリビューションに対するデータ分散の品質の評価。 プラン
の実行。現在のディストリビューションを評価し、スコアを付けます。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer eval
単一プールのディストリビューションを評価するには、以下を実行します。
構文
ceph balancer eval POOL_NAME
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer eval rbd
評価の詳細を表示するには、以下を実行します。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer eval-verbose ...
現在設定されているモードを使用してプランを生成するには、以下を実行します。
構文
ceph balancer optimize PLAN_NAME
PLAN_NAME は、カスタムプラン名に置き換えます。
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer optimize rbd_123
プランの内容を表示するには、以下を実行します。
構文
ceph balancer show PLAN_NAME
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer show rbd_123
古いプランを破棄するには、以下を実行します。
構文
ceph balancer rm PLAN_NAME
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer rm rbd_123
現在記録されているプランを表示するには、status コマンドを使用します。
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer status
プラン実行後に生じるディストリビューションの品質を計算するには、以下を実行します。
構文
ceph balancer eval PLAN_NAME
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer eval rbd_123
プランを実行するには、以下を実行します。
構文
ceph balancer execute PLAN_NAME
例
[ceph: root@host01 /]# ceph balancer execute rbd_123
注記ディストリビューションの改善が想定される場合にのみ、プランを実行します。実行後、プランは破棄されます。