第3章 キックスタートインストールの基礎
以下は、キックスタートの基本情報と、それを使用して Red Hat Enterprise Linux のインストールを自動化する方法を説明します。
3.1. キックスタートを使用したインストールの概要
キックスタートは、RHEL インストールプロセスを部分的または完全に自動化する方法を提供します。
キックスタートファイルには、RHEL インストールオプションの一部またはすべてが含まれます。たとえば、タイムゾーン、ドライブのパーティション設定方法、インストールするパッケージなどです。事前に準備したキックスタートファイルを使用すると、ユーザーによる操作を必要としないインストールが可能になります。これは、Red Hat Enterprise Linux を多数のシステムに一度にデプロイする場合などに特に便利です。
キックスタートファイルによりソフトウェア選択の幅を広げることができます。グラフィカルインストールインターフェイスで Red Hat Enterprise Linux を手動でインストールする場合、ソフトウェアの選択は事前定義されている環境とアドオンの選択に限られます。キックスタートファイルを使用すると、パッケージを個別にインストールしたり、除外したりできます。
キックスタートファイルを 1 つのサーバーに置くことで、インストール時に各コンピューターが読み込むことができます。この方法を使用すると、1 つのキックスタートファイルで複数のマシンに Red Hat Enterprise Linux をインストールできるため、ネットワークおよびシステム管理者には理想的な方法になります。
キックスタートスクリプトおよびそのスクリプトの実行により生成されるログファイルは、インストール問題のデバッグの手助けとなるよう、新たにインストールしたシステムの /tmp
ディレクトリーにすべて保存されます。インストールに使用されるキックスタートおよび Anaconda が生成した出力キックスタートは、ターゲットシステムの /root
に保存され、キックスタートスクリプトレット実行のログは /var/log/anaconda
に保存されます。
キックスタートは、Red Hat Enterprise Linux の以前のバージョンではシステムをアップグレードするのに使用できました。Red Hat Enterprise Linux 7 以降では、この機能は削除されており、システムのアップグレードではなく、特殊なツールにより処理されます。Red Hat Enterprise Linux 8 へのアップグレードの詳細は、Upgrading from RHEL 7 to RHEL 8 および Considerations in adopting RHEL を参照してください。