2.6. テクノロジープレビュー
本項では、Red Hat OpenStack Platform 16.0 のテクノロジープレビュー機能について説明します。
テクノロジープレビューと記した機能のサポート範囲についての詳しい情報は、「テクノロジプレビュー機能のサポート範囲」を参照してください。
2.6.1. 新規テクノロジープレビュー
- 単一アンダークラウドからの複数オーバークラウドのデプロイおよび管理
本リリースでは、1 つのアンダークラウドから複数のオーバークラウドをデプロイする機能が追加されました。
- 1 つのアンダークラウドに対して操作を行い、独立した複数のオーバークラウドを管理します。
- アンダークラウドでコンテキストを切り替えて、さまざまなオーバークラウドに対する操作を行います。
- 冗長な管理ノードを削減します。
- アンダークラウドミニオン
-
今回のリリースでは、アンダークラウドミニオンをインストールすることができます。アンダークラウドミニオンにより、別個のホスト上に
heat-engine
サービスおよびironic-conductor
サービスが追加されます。これらの追加サービスは、アンダークラウドのオーケストレーションおよびプロビジョニング操作をサポートします。アンダークラウドの操作を複数ホスト間に分散することにより、オーバークラウドのデプロイメントにより多くのリソースを割り当てることができ、結果として大規模なデプロイメントをより迅速に実施することができます。 - 検証フレームワーク
- Red Hat OpenStack Platform に含まれる検証フレームワークは、アンダークラウドおよびオーバークラウドの要件と機能を検証するのに役立ちます。フレームワークには、以下に示す 2 つの検証種別が含まれます。
-
Ansible ベースの手動検証:
openstack tripleo validator
コマンドセットを使用して実行します。 - デプロイメントプロセス中に実行される、自動検証
director の提供する新たなコマンドセットを使用して、検証を一覧表示し、アンダークラウドおよびオーバークラウドに対して検証を実行します。
それらのコマンドを以下に示します。
-
openstack tripleo validator list
openstack tripleo validator run
これらのコマンドは、
openstack-tripleo-validations
パッケージから提供される Ansible ベースのテストセットと共に機能します。この機能を有効にするには、undercloud.conf
ファイルのenable_validations
パラメーターをtrue
に設定し、openstack undercloud install
を実行します。
-
- Block Storage サービスにアクティブ/アクティブ設定を作成する新たな director 機能
Red Hat OpenStack Platform director を使用して、バックエンドドライバーがこの設定をサポートする場合には、アクティブ/アクティブ設定の Block Storage サービス(cinder)をデプロイできるようになりました。GA 時点では、Ceph RADOS Block Device(RBD)バックエンドドライバーのみがアクティブ/アクティブ設定をサポートしています。
新たな
cinder-volume-active-active.yaml
ファイルのCinderVolumeCluster
パラメーターに値を割り当てて、アクティブ/アクティブ設定のクラスターの名前を定義します。CinderVolumeCluster
はグローバル Block Storage パラメーターなので、クラスター化されたバックエンド (アクティブ/アクティブ) およびクラスター化されていないバックエンドを同じデプロイメントに含めることはできません。cinder-volume-active-active.yaml
ファイルにより、director は Pacemaker 以外の cinder-volume Orchestration サービステンプレートを使用し、etcd サービスが分散ロックマネージャー (DLM) として Red Hat OpenStack Platform デプロイメントに追加されます。- Block Storage サービスのアベイラビリティーゾーンを設定するための新たな director パラメーター
-
Red Hat OpenStack Platform director を使用して、Block Storage サービス (cinder) ボリュームバックエンドに、異なるアベイラビリティーゾーンを設定できるようになりました。director に新たなパラメーター
CinderXXXAvailabilityZone
が追加されました。なお、XXX はそれぞれのバックエンドに対応する値です。 - Bare Metal サービス向けの新たな Redfish BIOS 管理インターフェース
Red Hat OpenStack Platform の Bare Metal サービス (ironic) に BIOS 管理インターフェースが追加され、デバイスの BIOS 設定を検査および変更できるようになりました。
Red Hat OpenStack Platform 16.0 の Bare Metal サービスは、Redfish API に準拠するデータセンターデバイスの BIOS 管理機能をサポートします。Bare Metal サービスは、Python ライブラリー Sushy を使用して Redfish の呼び出しを実装します。
- 複数 Ceph クラスターのデプロイ
-
クラスターごとに個別の heat スタックを使用して、director により (Ceph 実行専用のノードまたはハイパーコンバージドノードに) 複数の Ceph クラスターをデプロイすることができます。エッジサイトの場合には、同じノード上の Compute 機能および Ceph ストレージを使用するハイパーコンバージドインフラストラクチャー (HCI) スタックをデプロイすることができます。たとえば、専用のアベイラビリティーゾーンに、それぞれ
HCI-01
およびHCI-02
という名前の 2 つのエッジスタックをデプロイする場合があります。この場合には、それぞれのエッジスタックには専用の Ceph クラスターおよび Compute サービスが含まれます。
- ソース種別をファイルに、アクセスモードを共有に設定した memoryBacking 要素を有効にする新たな Compute (nova) 設定の追加
新たな Compute (nova) パラメーター
QemuMemoryBackingDir
が利用できるようになりました。libvirt のmemoryBacking
要素がsource type="file"
およびaccess mode="shared"
と設定された場合に、このパラメーターによりメモリーバッキングファイルを保存するディレクトリーが指定されます。注記:
memoryBacking
要素は、libvirt 4.0.0 および QEMU 2.6.0 以降でのみ利用可能です。- redfish API 用フェンシング
- Pacemaker により、RedFish API 用のフェンシングが利用可能になりました。
- director を使用した IPv6 へのベアメタルのデプロイ
- IPv6 ノードおよびインフラストラクチャーがある場合には、IPv4 ではなく IPv6 を使用するようにアンダークラウドおよびプロビジョニングネットワークを設定することができます。これにより、director は IPv6 ノードに Red Hat OpenStack Platform をプロビジョニングおよびデプロイすることができます。
- Compute (nova) サービスを使用しないベアメタルノードのプロビジョニング
Red Hat OpenStack Platform 16.0 では、デプロイメントのプロビジョニングおよびデプロイメントステージを、別個のステップに分離することができます。
ベアメタルノードをプロビジョニングする。
- ノード定義ファイルを yaml 形式で作成します。
- ノード定義ファイルを指定して、プロビジョニングコマンドを実行します。
オーバークラウドをデプロイする。
- プロビジョニングコマンドにより生成される heat 環境ファイルを指定して、デプロイメントコマンドを実行します。
プロビジョニングプロセスにより、ノードがプロビジョニングされ、ノード数、予測可能なノード配置、カスタムイメージ、カスタム NIC 等のさまざまなノード仕様が含まれる heat 環境ファイルが生成されます。オーバークラウドをデプロイする際に、このファイルをデプロイメントコマンドに追加します。
- networking-ansible のトランクポートのサポート
- Red Hat OpenStack Platform 16.0 では、アクセスモードに加えてトランクモードでスイッチポートを使用して、複数の VLAN をスイッチポートに割り当てることができます。
- networking-ansible の Arista のサポート
- Red Hat OpenStack Platform 16.0 では、Arista Extensible Operating System (Arista EOS) スイッチと共に、ML2 networking-ansible 機能を設定することができます。
- Redfish 仮想メディアブート
- Redfish 仮想メディアブートを使用して、ノードの Baseboard Management Controller (BMC) にブートイメージを提供することができます。これにより、BMC はイメージを仮想ドライブのいずれかに挿入することができます。その後、ノードは仮想ドライブからイメージに存在するオペレーティングシステムにブートすることができます。