第1章 概要
『パフォーマンスチューニングガイド』 は、Red Hat Enterprise Linux における総合的な設定および最適化のリファレンスです。このリリースには Red Hat Enterprise Linux 5 のパフォーマンス機能に関する情報も含まれていますが、本書内の指示はすべて Red Hat Enterprise Linux 6 に固有のものです。
1.1. 本書を読むにあたって
本書は、Red Hat Enterprise Linux の特定のサブシステムについて説明する章に分かれています。『パフォーマンスチューニングガイド』 は、サブシステムごとに以下の 3 つの主要テーマについてフォーカスしています。
- 機能
- 各サブシステムの章では、Red Hat Enterprise Linux 6 特有の (または別の方法で実装されている) パフォーマンス機能を説明します。また、Red Hat Enterprise Linux 5 と比べて特定のサブシステムのパフォーマンスを大幅に改善した Red Hat Enterprise Linux 6 の更新も説明します。
- 分析
- 本書では、各サブシステム特有のパフォーマンス指標も紹介します。これら指標の通常の値は特定サービスのコンテキスト内で説明されるので、実際の本番システムでの重要度の理解が容易になります。また『パフォーマンスチューニングガイド』 は、サブシステムのパフォーマンスデータ (プロファイリング) の別の取得方法も紹介します。ここで示されているプロファイリングツールには、本書以外でより詳しく説明されているものもあります。
- 設定
- 本書で最も重要な情報は、おそらく Red Hat Enterprise Linux 6 の固有のサブシステムのパフォーマンスを調整する方法に関する指示になります。『パフォーマンスチューニングガイド』 では、特定のサービスについて Red Hat Enterprise Linux 6 のサブシステムを微調整する方法を説明しています。
特定のサブシステムのパフォーマンスを微調整すると、時には別のサブシステムのパフォーマンスに悪影響を与える場合もあることに留意してください。Red Hat Enterprise Linux 6 のデフォルト設定は、 ほとんどの サービスが 適度な 負荷の下で実行する際に最適となっています。
『パフォーマンスチューニングガイド』 で示されている手順は、ラボと実地の両方で Red Hat エンジニアが徹底的にテストしていますが、Red Hat ではこれらを実稼働サーバーに適用する前に安全なテスト環境で予定するすべての設定を正確にテストすることを推奨しています。また、システムのチューニング前にデータと設定情報すべてをバックアップすることも推奨しています。
1.1.1. 対象読者
本書は以下の 2 つのタイプの読者を対象としています。
- システム / ビジネスアナリスト
- 本書では、Red Hat Enterprise Linux 6 の高いレベルのパフォーマンス機能を説明しており、(デフォルトと最適化された時の両方での) 特定の作業負荷においてサブシステムがどのように作動するかについての十分な情報を提供しています。Red Hat Enterprise Linux 6 のパフォーマンス機能は詳細なレベルで説明されているので、受け入れ可能なレベルでリソース集約型のサービスを提供する際のこのプラットフォームの適合性を潜在的な顧客やセールスエンジニアが理解できるようになっています。『パフォーマンスチューニングガイド』 は、可能な限り各機能のより詳細なドキュメンテーションへのリンクも提供しています。この詳細なレベルでは、ユーザーはパフォーマンス機能を十分に理解して Red Hat Enterprise Linux 6 の導入および最適化における高レベルな戦略を形成することができます。これによりユーザーは、インフラストラクチャー提案を開発しかつ 評価することができます。本書は機能にフォーカスしたドキュメンテーションなので、Linux サブシステムおよび企業レベルのネットワークを高度に理解できるユーザーが対象となります。
- システム管理者
- 本書の手順は、RHCE [1] スキルレベル (もしくはそれと同等。つまり、Linux の導入および管理の経験が 3-5 年) のシステム管理者向けとなっています。『パフォーマンスチューニングガイド』 では、各設定の影響に関してできるだけの詳細を提供しており、パフォーマンスの代償の可能性もすべて説明されています。パフォーマンスチューニングで基礎となるスキルは、サブシステムの分析やチューニング方法の知識ではありません。むしろ、パフォーマンスチューニングに精通しているシステム管理者は、特定の目的で Red Hat Enterprise Linux 6 システムのバランスを取り最適化する方法を理解しています。これは、特定のサブシステムのパフォーマンスを改善するための設定を実装する際に、代償やパフォーマンス低下についても理解していることを意味します。