4.14. Identity Management
すべての依存関係を持つ AppStream リポジトリーで ansible-freeipa
が利用できるようになる
以前の RHEL 8 では、ansible-freeipa
パッケージをインストールする前に、まず Ansible リポジトリーを有効にして ansible
パッケージをインストールする必要がありました。RHEL 8.6 および RHEL 9 では、準備手順なしで ansible-freeipa
をインストールできます。ansible-freeipa
をインストールすると、依存関係として、ansible
のより基本的なバージョンである ansible-core
パッケージが自動的にインストールされます。ansible-freeipa
と ansible-core
の両方が、rhel-9-for-x86_64-appstream-rpms
リポジトリーで利用できます。
RHEL 8.6 および RHEL 9 の ansible-freeipa
には、RHEL 8 で含まれていたモジュールがすべて含まれています。
(JIRA:RHELPLAN-100359)
IdM は、automountlocation
、automountmap
、および automountkey
Ansible モジュールをサポートするようになる
この更新では、ansible-freeipa
パッケージに、ipaautomountlocation
、ipaautomountmap
、および ipaautomountkey
モジュールが含まれています。これらのモジュールを使用して、IdM の場所にある IdM クライアントにログインした IdM ユーザーが自動的にマウントされるようにディレクトリーを設定できます。現在サポートされているのはダイレクトマップのみであることに注意してください。
(JIRA:RHELPLAN-79161)
subID 範囲の管理が shadow-utils でサポートされる
以前は、shadow-utils
が /etc/subuid
および /etc/subgid
ファイルから subID 範囲を自動的に設定していました。今回の更新で、subid
フィールドに値を設定することで、/etc/nsswitch.conf
ファイルで subID 範囲の設定を利用できるようになりました。詳細は man subuid
および man subgid
を参照してください。また、この更新により、IPA サーバーからの subID 範囲を提供する shadow-utils
プラグインの SSSD 実装が利用可能になりました。この機能を使用するには、subid: sss
を /etc/nsswitch.conf
に追加します。このソリューションは、コンテナー化した環境でルートレスコンテナーを容易にするために役立ちます。
/etc/nsswitch.conf
ファイルが authselect
ツールで設定されている場合は、authselect
のドキュメントに記載されている手順に従う必要があります。そうでない場合は、/etc/nsswitch.conf
を手動で修正できます。
(JIRA:RHELPLAN-103579)
従来の RHEL の ansible-freeipa リポジトリーに代わる Ansible 自動化ハブ
この更新では、標準の RHEL リポジトリーからダウンロードする代わりに、Ansible Automation Hub (AAH) から ansible-freeipa
モジュールをダウンロードできます。AAH を使用することで、このリポジトリーで利用可能な ansible-freeipa
モジュールのより高速な更新の恩恵を受けることができます。
AAH では、ansible-freeipa
のロールとモジュールがコレクション形式で配布されます。AAH ポータルのコンテンツにアクセスするには、Ansible Automation Platform (AAP) サブスクリプションが必要であることに注意してください。また、ansible
バージョン 2.9 以降も必要です。
redhat.rhel_idm
コレクションには、従来の ansible-freeipa
パッケージと同じコンテンツが含まれています。ただし、コレクション形式では、名前空間とコレクション名で構成される完全修飾コレクション名 (FQCN) が使用されます。たとえば、redhat.rhel_idm.ipadnsconfig
モジュールは、RHEL リポジトリーによって提供される ansible-freeipa
の ipadnsconfig
モジュールに対応します。名前空間とコレクション名の組み合わせにより、オブジェクトが一意になり、競合することなく共有できるようになります。
(JIRA:RHELPLAN-103147)
ansible-freeipa モジュールを IdM クライアントでリモートで実行できるようになる
以前は、ansible-freeipa
モジュールは IdM サーバーでのみ実行できました。これには、Ansible 管理者が IdM サーバーへの SSH
アクセスを持っている必要があり、潜在的なセキュリティーの脅威を引き起こしていました。この更新により、IdM クライアントであるシステム上で ansible-freeipa
モジュールをリモートで実行できるようになります。その結果、IdM の設定とエンティティーをより安全な方法で管理できます。
IdM クライアントで ansible-freeipa
モジュールを実行するには、次のいずれかのオプションを選択します。
-
Playbook の
hosts
変数を IdM クライアントホストに設定します。 -
ansible-freeipa
モジュールを使用する Playbook タスクにipa_context: client
行を追加します。
ipa_context
変数を IdM サーバー上の client
に設定することもできます。ただし、通常、サーバーコンテキストの方がパフォーマンスが向上します。ipa_context
が設定されていない場合、ansible-freeipa
はサーバーまたはクライアントで実行されているかどうかを確認し、それに応じてコンテキストを設定します。IdM クライアントホスト上の server
に context
が設定された ansible-freeipa
モジュールを実行すると、missing libraries
エラーが発生することに注意してください。
(JIRA:RHELPLAN-103146)
ipadnsconfig
モジュールには、グローバルフォワーダーを除外するための action: member
が必要になる
今回の更新で、ansible-freeipa
ipadnsconfig
モジュールを使用して Identity Management (IdM) のグローバルフォワーダーを除外するには、state: absent
オプションの他に action: member
オプションを使用する必要があります。Playbook で action: member
を使用せずに state: absent
だけを使用すると、その Playbook は失敗します。そのため、すべてのグローバルフォワーダーを削除するには、Playbook でこれらをすべて個別に指定する必要があります。一方、state: present
オプションに action: member
は必要ありません。
Identity Management はデフォルトで SHA384withRSA 署名をサポートするようになりました
この更新により、IdM の認証局 (CA) は、SHA-384 With RSA 暗号化署名アルゴリズムをサポートします。SHA384withRSA は、連邦情報処理標準 (FIPS) に準拠しています。
SSSD のデフォルトの SSH ハッシュ値が OpenSSH 設定と一致するようになりました
ssh_hash_known_hosts
のデフォルト値が false に変更になりました。これは、デフォルトでホスト名をハッシュしない OpenSSH 設定と一致するようになりました。
ただし、引き続きホスト名をハッシュする必要がある場合は、/etc/sssd/sssd.conf
設定ファイルの [ssh]
セクションに ssh_hash_known_hosts = True
を追加します。
samba がバージョン 4.15.5 にリベースされました。
samba パッケージがアップストリームバージョン 4.15.5 にアップグレードされ、以前のバージョンに対するバグ修正や機能強化が追加されました。
- 一貫したユーザーエクスペリエンスのために、Samba ユーティリティーのオプションの名前が変更され、削除されました。
- サーバーのマルチチャンネルサポートがデフォルトで有効になりました。
-
SMB2_22
、SMB2_24
、およびSMB3_10
のダイアレクトは、Windows のテクニカルプレビューでのみ使用されていましたが、削除されました。
Samba を起動する前にデータベースファイルがバックアップされます。smbd
、nmbd
、またはwinbind
サービスが起動すると、Samba が tdb
データベースファイルを自動的に更新します。Red Hat は、tdb
データベースファイルのダウングレードをサポートしていないことに留意してください。
Samba を更新したら、testparm
ユーティリティーを使用して /etc/samba/smb.conf
ファイルを確認します。
重要な変更の詳細は、更新の前に アップストリーム のリリースノートを参照してください。
Directory Server がバージョン 1.4.3.28 にリベース
389-ds-base
パッケージがアップストリームバージョン 1.4.3 にアップグレードされ、以前のバージョンに対するバグ修正や機能強化が数多く追加されました。
- レプリカで潜在的なデッドロックが修正されました。
-
dnaInterval
が0
に設定されていると、サーバーが予想外に終了しなくなりました。 - 接続処理のパフォーマンスが改善されました。
-
アクセス制御命令 (ACI) での
targetfilter
のパフォーマンスが改善されました。
Directory Server が、tmpfs
ファイルシステムのデータベースのメモリーマッピングされたファイルを保存するようになりました。
Directory Server の nsslapd-db-home-directory
パラメーターは、データベースのメモリーマッピングファイルの場所を定義します。この改善により、パラメーターのデフォルト値が /var/lib/dirsrv/slapd-instance_name/db/
から /dev/shm/
に変更になりました。その結果、tmpfs
ファイルシステムに保存されている内部データベースがあると、Directory Server のパフォーマンスが向上します。