第4章 GFS2 のクォータ管理
ファイルシステムのクォータは、ユーザーまたはグループが使用可能なファイルシステム領域のサイズを制限するために使用されます。ユーザーまたはグループには、クォータ制限が設定されないと、クォータ制限がありません。GFS2 ファイルシステムが quota=on
オプションまたは quota=account
オプションでマウントされていると、GFS2 は、制限がない場合でも、各ユーザーおよび各グループが使用している領域を追跡します。GFS2 は、システムがクラッシュしてもクォータの使用量を再構築しなくてもいいように、トランザクション形式でクォータ情報を更新します。パフォーマンス低下を防ぐためにも、GFS2 ノードは定期的にクォータファイルに更新を同期します。ファジークォータアカウンティングでは、ユーザーまたはグループは、設定された制限を若干超えることができます。これを最小限に抑えるために、GFS2 はハードクォータの制限に近づくと同期期間を動的に短縮します。
GFS2 は、標準の Linux クォータ機能に対応しています。これを使用するためには、quota RPM をインストールする必要があります。これは、GFS2 でクォータを管理するのに推奨される方法であるため、クォータを使用した GFS2 の新規デプロイメントには必ず使用してください。
ディスククォータに関する詳細は、以下のコマンドの man
ページを参照してください。
-
quotacheck
-
edquota
-
repquota
-
quota
4.1. GFS2 ディスククォータの設定
GFS2 ファイルシステムのディスククォータを実装するには、3 つの手順を実行します。
ディスククォータを実装する手順は、以下のとおりです。
- 強制またはアカウンティングモードでクォータを設定します。
- 現在のブロック使用情報の入ったクォータデータベースファイルを初期化します。
- クォータポリシーを割り当てます。(アカウンティングモードでは、このポリシーは強制されません。)
この各ステップは、以下のセクションで詳しく説明します。
4.1.1. 強制モードまたはアカウンティングモードでのクォータの設定
GFS2 ファイルシステムでは、クォータはデフォルトで無効になっています。ファイルシステムのクォータを有効にするには、quota=on
オプションを指定して、ファイルシステムを次のようにマウントします。
クォータが有効なファイルシステムをマウントするには、クラスターで GFS2 ファイルシステムリソースを作成するときに options
引数に quota=off
を指定します。たとえば、次のコマンドは、作成している GFS2 の Filesystem
リソースが、クォータが有効になっている状態でマウントされることを指定します。
# pcs resource create gfs2mount Filesystem options="quota=on" device=BLOCKDEVICE directory=MOUNTPOINT fstype=gfs2 clone
limit と warn の値を適用せずに、ディスクの使用状況を追跡し、各ユーザーおよび各グループのクォータアカウントを維持することができます。これを行うには、quota=account
オプションを指定して、ファイルシステムをマウントします。
クォータが無効なファイルシステムをマウントするには、クラスターで GFS2 ファイルシステムリソースを作成するときに options
引数に quota=off
を指定します。
4.1.2. クォータデータベースファイルの作成
クォータが有効なファイルシステムがマウントされると、システムがディスククォータを操作できるようになります。ただし、ファイルシステム自体がクォータに対応するようにするには、追加の設定が必要です。次の手順では、quotacheck
コマンドを実行します。
quotacheck
コマンドは、クォータが有効になっているファイルシステムを調べ、ファイルシステムごとの現在のディスク使用量の表を作成します。次に、この表を使用して、オペレーティングシステムのディスク使用量を更新します。さらに、ファイルシステムのディスククォータファイルが更新されます。
ファイルシステムにクォータファイルを作成するには、quotacheck
コマンドに -u
オプションおよび -g
オプションを指定します。ユーザーおよびグループのクォータを初期化するには、両方のオプションを指定する必要があります。たとえば、クォータが /home
ファイルシステムに対して有効な場合は、/home
ディレクトリーにファイルを作成します。
# quotacheck -ug /home
4.1.3. ユーザーごとにクォータの割り当て
最後の手順では、edquota
コマンドでディスククォータを割り当てます。(quota=account
オプションを指定して) ファイルシステムをアカウンティングモードでマウントした場合は、クォータが適用されないことに注意してください。
ユーザーにクォータを設定するには、シェルプロンプトで、root で次のコマンドを実行します。
# edquota username
クォータが必要な各ユーザーに対して、この手順を実行します。たとえば、クォータが /home
パーティションに対して有効になっている場合 (以下の例では /dev/VolGroup00/LogVol02
) に edquota testuser
コマンドを実行すると、システムのデフォルトとして設定されているエディターに次のように表示されます。
Disk quotas for user testuser (uid 501): Filesystem blocks soft hard inodes soft hard /dev/VolGroup00/LogVol02 440436 0 0
EDITOR
環境変数により定義されたテキストエディターは、edquota
により使用されます。エディターを変更するには、~/.bash_profile
ファイルの EDITOR
環境変数を、使用するエディターのフルパスに設定します。
最初の列は、クォータが有効になっているファイルシステムの名前です。2 列目には、ユーザーが現在使用しているブロック数が示されます。その次の 2 列は、ファイルシステム上のユーザーのソフトブロック制限およびハードブロック制限を設定するのに使用されます。
ソフトブロック制限は、使用可能な最大ディスク容量を定義します。
ハードブロック制限は、ユーザーまたはグループが使用できる最大ディスク容量 (絶対値) です。この制限に達すると、それ以上のディスク領域は使用できなくなります。
GFS2 ファイルシステムは inode のクォータを維持しないため、この列は GFS2 ファイルシステムには適用されず、空白になります。
いずれかの値が 0 に設定されていると、その制限は設定されません。テキストエディターで制限を変更します。以下に例を示します。
Disk quotas for user testuser (uid 501): Filesystem blocks soft hard inodes soft hard /dev/VolGroup00/LogVol02 440436 500000 550000
ユーザーのクォータが設定されていることを確認するには、次のコマンドを使用します。
# quota testuser
setquota
コマンドを使用して、コマンドラインからクォータを設定することもできます。setquota
コマンドの詳細は、setquota
(8) man ページを参照してください。
4.1.4. グループごとにクォータの割り当て
クォータは、グループごとに割り当てることもできます。(account=on
オプションを指定して) ファイルシステムをアカウンティングモードでマウントした場合は、クォータが適用されません。
devel
グループのグループクォータを設定するには (グループはグループクォータを設定する前に存在している必要があります)、次のコマンドを使用します。
# edquota -g devel
このコマンドにより、グループの既存クォータがテキストエディターに表示されます。
Disk quotas for group devel (gid 505): Filesystem blocks soft hard inodes soft hard /dev/VolGroup00/LogVol02 440400 0 0
GFS2 ファイルシステムは inode のクォータを維持しないため、この列は GFS2 ファイルシステムには適用されず、空白になります。この制限を変更して、ファイルを保存します。
グループクォータが設定されていることを確認するには、次のコマンドを使用します。
$ quota -g devel