第1章 概要
1.1. RHEL 8.4 における主な変更点
セキュリティー
Libreswan が提供するIPsec VPN が、IKEv2 の TCP カプセル化およびセキュリティーラベルに対応するようになりました。
scap-security-guide
パッケージがバージョン 0.1.54 にリベースされ、OpenSCAP がバージョン 1.3.4 にリベースされました。これらの更新により、以下を含む大幅に改善が行われます。
- メモリー管理の改善
- RHEL8 ANSSI-BP-028 Minimal、Intermediary および Enhanced プロファイルが追加されました
- RHEL8 STIG プロファイルが DISA STIG v1r1 に更新されました。
fapolicyd
フレームワークは、整合性チェック を提供し、RPM プラグインは YUM パッケージマネージャーまたは RPM Package Manager によって処理されるシステム更新を登録するようになりました。
rhel8-tang
コンテナーイメージは、OpenShift Container Platform (OCP) クラスターまたは別の仮想マシンで実行する Clevis クライアントの Tang-server 復号化機能を提供します。
詳細は、「セキュリティー」 を参照してください。
ネットワーク
nmstate はホストのネットワーク API で、RHEL 8.4 で完全に対応しています。nmstate
パッケージは、ライブラリーと nmstatectl
コマンドラインユーティリティーを提供し、ホストのネットワーク設定を宣言型で管理できます。
Multi-protocol Label Switching (MPLS) は、エンタープライズネットワーク全体でトラフィックフローをルーティングするカーネル内データ転送メカニズムです。たとえば、特定ポートから受信したパケットの管理や、特定のタイプのトラフィックを一貫した方法で伝送する tc filters
を追加できます。MPLS サポートは、本リリースではテクノロジープレビューとして提供されています。
iproute2
ユーティリティーには、新しいトラフィック制御 (tc
) アクションを 3 つ導入します。mac_push
、push_eth
、および pop_eth
は、パケットの先頭に MPLS ラベルを追加し、イーサネットヘッダーの最初にイーサネットヘッダーを構築して、outer Ethernet ヘッダーをドロップします。
bareudp
デバイスのサポートが、テクノロジープレビューとして ip link
コマンドで利用できるようになりました。
本リリースで導入された機能および既存機能の変更に関する詳細は、「ネットワーク」 を参照してください。
カーネル
kpatch-dnf
パッケージは、RHEL システムをカーネルライブパッチ更新にサブスクライブするための DNF プラグインを提供します。このプラグインは、現在システムが使用するカーネルの自動サブスクリプションと、将来にカーネルのインストールが可能です。
プロアクティブな圧縮 は、割り当ての要求が実行される 前に、メモリー圧縮機能を定期的に開始します。したがって、特定のメモリー割り当て要求のレイテンシーは短くなります。
コントロールグループ 技術にスラブメモリーコントローラーの新しい実装が RHEL 8 で利用可能になりました。slab メモリーコントローラーにより、スラブ使用率が改善され、ページレベルからオブジェクトレベルへメモリーアカウンティングの移動を有効にします。その結果、カーネルメモリーフットプリントの合計とメモリーの断片化の影響が大幅に低下することができます。
時間名前空間機能は、RHEL 8.4 で利用できます。この機能は、Linux コンテナー内の日時の変更に適しています。チェックポイントからの復元後のコンテナー内クロックの調整も可能になりました。
RHEL 8 は、第 8 世代および 9 世代 Intel Core プロセッサーで設定された Error Detection and Correction (EDAC) カーネルモジュールをサポートします。
本リリースで導入された機能および既存機能の変更に関する詳細は、「カーネル」 を参照してください。
高可用性およびクラスター
状態データを維持する永続的な Pacemaker リソースエージェントは、次のモニターの間隔を待たずに、失敗を非同期的に検出し、Pacemaker に即座に挿入することができます。また、永続的なリソースエージェントは、状態データをメンテナンスし、起動、停止、監視などのクラスターアクションの状態のオーバーヘッドを下げ、アクションごとに個別に呼び出しされないため、状態の高いオーバーヘッドのサービスに対してクラスターの応答時間を短縮することもできます。
永続的な Pacemaker リソースエージェントの作成方法は、Creating a Persistent (Daemonized) Pacemaker Resource Agent の記事を参照してください。
動的プログラミング言語、Web サーバー、およびデータベースサーバー
以下のコンポーネントの後続のバージョンが、新しいモジュールストリームとして利用できるようになりました。
- Python 3.9
- SWIG 4.0
- subversion 1.14
- Redis 6
- PostgreSQL 13
- MariaDB 10.5
詳細は、「動的プログラミング言語、Web サーバー、およびデータベースサーバー」 を参照してください。
コンパイラーおよび開発ツール
以下のコンパイラーツールセットが更新されました。
- GCC Toolset 10
- LLVM Toolset 11.0.0
- Rust Toolset 1.49.0
- Go Toolset 1.15.7
詳細は、「コンパイラーおよび開発ツール」 を参照してください。
OpenJDK 11 が利用可能に
新しいバージョンの Open Java Development Kit (OpenJDK) が利用できるようになりました。このリリースで導入された機能や既存の機能の変更に関する詳細は、OpenJDK 11 のドキュメント を参照してください。
Identity Management
RHEL 8.4 は、Identity Management (IdM) のロールベースアクセス制御 (RBAC)、IdM サーバーのバックアップおよび復元用の Ansible ロール、およびロケーション管理の Ansible モジュールを自動管理するための Ansible モジュールを提供します。
詳細は、「ID 管理」 を参照してください。