第1章 Red Hat Developer Toolset


1.1. Red Hat Developer Toolset

Red Hat Developer Toolset は、Red Hat Enterprise Linux プラットフォームで開発者向けの Red Hat 製品です。これにより、複数のバージョンの Red Hat Enterprise Linux にインストールされ、使用できる、完全な開発およびパフォーマンス分析ツールが提供されます。また、Red Hat Developer Toolset ツールチェーンで構築された実行ファイルは、複数のバージョンの Red Hat Enterprise Linux にデプロイおよび実行できます。互換性の詳細情報は、「互換性」 を参照してください。

Red Hat Developer Toolset は、これらのプラットフォームにインストールする場合に、Red Hat Enterprise Linux 7 で提供されるデフォルトのシステムツールに代わるものではありません。開発者ツールの並列セットは、開発者がオプションで使用するための代替の、新しいバージョンのツールを提供します。デフォルトのコンパイラーとデバッガーは、ベースの Red Hat Enterprise Linux システムが提供するもののままです。

Red Hat Developer Toolset 12.1 の新機能

Red Hat Developer Toolset 4.1 以降、Red Hat Developer Toolset コンテンツは、他の Red Hat Software Collections コンテンツ (https://access.redhat.com/downloads) (特に Server および Workstation) とともに ISO 形式で利用できます。「オプションパッケージのインストール」 で説明している Optional チャンネルを必要とするパッケージは、ISO イメージからインストールできないことに注意してください。

表1.1 Red Hat Developer Toolset のコンポーネント
名前バージョン説明

GCC

12.2.1

C、C++、および Fortran に対応するポータブルなコンパイラースイート。

binutils

2.36.1

オブジェクトファイルおよびバイナリーを検査および操作するためのバイナリーツールおよびその他のユーティリティーのコレクション。

elfutils

0.187

ELF ファイルを検証および操作するためのバイナリーツールおよびその他のユーティリティーのコレクション。

dwz

0.14

ELF 共有ライブラリーおよび ELF 実行ファイルに含まれる DWARF デバッグ情報 (サイズ) を最適化するツール。

GDB

11.2

C、C++、および Fortran で記述されたプログラムのコマンドラインデバッガー。

ltrace

0.7.91

プログラムが作成する動的ライブラリーへの呼び出しを表示するデバッグツール。また、プログラムが実行するシステムコールを監視することもできます。

strace

5.18

プログラムが使用するシステムコールを監視し、受信するシグナルを監視するデバッグツール。

memstomp

0.1.5

さまざまな標準で使用できないメモリー領域が重複するライブラリー関数への呼び出しを識別するデバッグツール。

SystemTap

4.7

インストルメント化、再コンパイル、インストール、および再起動を行わずにシステム全体のアクティビティーを監視するトレースおよびプローブのツール。

Valgrind

3.19.0

メモリーエラーを検出したり、メモリー管理問題を特定したり、システムコールで引数が間違って使用されているのを報告するために、アプリケーションのプロファイルを行うインストルメンテーションフレームワークや多数のツールです。

OProfile

1.4.0

システム全体のプロファイラー。プロセッサー上のパフォーマンス監視ハードウェアを使用して、システム上のカーネルと実行ファイルに関する情報を取得します。

Dyninst

12.1.0

実行時にユーザー空間の実行ファイルをインストルメント化し、作業するためのライブラリー。

make

4.3

依存関係を追跡するビルド自動化ツール

annobin

11.08

ビルドセキュリティーチェックツール。

Red Hat Developer Toolset は、これまで Red Hat Enterprise Linux で提供されていた テクノロジープレビュー コンパイラーリリースとは異なります。

  1. Red Hat Developer Toolset は、「互換性」 で説明されているように、Red Hat Enterprise Linux の複数のメジャーおよびマイナーリリースで使用できます。
  2. 以前の Red Hat Enterprise Linux で提供されるテクノロジープレビューコンパイラーや、Red Hat Developer Toolset は Red Hat Enterprise Linux サブスクリプションレベルアグリーメントで完全にサポートされており、機能的に完全であり、実稼働環境での使用を目的としています。

重要なバグ修正およびセキュリティーエラータは、各メジャーバージョンリリースから 2 年間 Red Hat Enterprise Linux と似た方法で Red Hat Developer Toolset サブスクライバーに発行されます。Red Hat Developer Toolset の新規メジャーバージョンは、年次リリースされ、既存のコンポーネントに重要な更新を提供し、主要な新規コンポーネントを追加します。新しいメジャーリリースバージョンリリースの 6 か月後に発行される新しい単一のマイナーリリースでは、バグ修正、セキュリティーエラータ、および新しいマイナーリリースの小規模な更新が提供されます。

また、Red Hat Enterprise Linux アプリケーションの互換性仕様 は、Red Hat Developer Toolset にも適用されます (「C++ 互換性」 にも説明されている新しいバージョンの C++11 言語機能を使用する一部の制限に影響を受けます)。

重要

Red Hat Developer Toolset が提供するアプリケーションおよびライブラリーは、Red Hat Enterprise Linux のシステムバージョンを置き換えず、システムバージョンを優先して使用されていません。Software Collections というフレームワークを使用すると、追加の開発者ツールセットが /opt/ ディレクトリーにインストールされ、ユーザーが scl ユーティリティーを使用してオンデマンドで明示的に有効にします。

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