第1章 はじめに
移行計画ガイドでは Red Hat Enterprise Linux 5 インストールのマイナーバージョンを Red Hat Enterprise Linux 6 に移行する際に注目すべき主な動作変更を中心とした移行に関する説明を記載しています。
本ガイドでは Red Hat Enterprise Linux 5 と Red Hat Enterprise Linux 6 の製品上の変更点に関するガイドラインを説明することで Red Hat Enterprise Linux 6 の使い勝手を向上させることを目的としています。 ただし、 本ガイドは新機能をすべて説明するためのガイドではありません。 Red Hat Enterprise Linux 5 の一部であり Red Hat Enterprise Linux 6 では変更されているアプリケーションやコンポーネントの 動作、 またはその機能が別のパッケージによって置換されているパッケージに焦点を絞って説明しています。
1.1. Red Hat Enterprise Linux 6
Red Hat Enterprise Linux はオープンソースコンピューティング業界で主要となるプラットフォームです。 サブスクリプション方式による販売でその真価を継続的に配信、トップクラス企業のハードウェアベンダーやソフトウェアベンダーによる認定を受けています。 デスクトップからデータセンターまで、 Red Hat Enterprise Linux はオープンソース技術による革新と真のエンタープライズクラスプラットフォームとしての安定性との統合を実現しています。
Red Hat Enterprise Linux 6 は、ミッションクリティカルな企業用コンピューティング向けに設計された次世代オペレーティングシステムの総合パッケージになります。本リリースは以下のアーキテクチャで単独キットとして使用できます。
- i386
- AMD64/Intel64
- System z
- IBM Power (64-bit)
本リリースではサーバーやデスクトップ全体における改善、オープンソース開発で得た技術の集大成を提供しています。以下に、数多くの改善点の一部、また本リリースに収納されている新機能などを示します。
- 電力管理
- Tuned による適応型システムチューニング、電力管理 (ASPM、ALPM)、PowerTOP による電力消費測定、ウェイクアップ低減のためのアプリケーションスタックに対する各種改善点、ティックレスカーネルなど
- 次世代のネットワーキング
- IPv6 の総合サポート (NFS 4、CIFS、モバイルサポート [RFC 3775]、ISATAP サポート)、FCoE、iSCSI、新たに改善が加えられた mac80211 ワイヤレススタックなど
- 信頼性、 可用性、 サービスの有用性
- 業界間の連携により大部分のハードウェアに RAS 機能および NUMA アーキテクチャを搭載させることでシステムレベルでの強化を実現
- 詳細レベルの制御と管理
- CFS (Completely Fair Scheduler) と CG (Control Groups) によるカーネル内でのリソース管理やスケジューラの改善
- スケーラブルなファイルシステム
- デフォルトのファイルシステムは ext4 、パフォーマンス性の高い堅固でスケーラブルなファイルシステムは xfs で提供
- 仮想化
- KVM に対するパフォーマンス関連の改善および新機能の追加 (sVirt ではホスト、仮想マシンおよびデータをゲストによる侵害から保護、SRIOV および NPIV では物理デバイスの仮想使用におけるパフォーマンスを向上、libvirt ではカーネルの CG コントローラー機能の活用)
- 企業レベルのセキュリティ強化
- SELinux では、 使い易さを向上させアプリケーションのサンドボックス機能やシステムサービスの対象範囲を大幅に拡張させている一方、SSSD では識別や認証サービスに対する統合アクセスやオフライン使用向けのキャッシング機能なども提供
- 開発およびランタイムのサポート
- SystemTap (再コンパイルすることなく実行中のカーネルを操作)、 ABRT (バグ情報のシンプルな収集)、および GCC (バージョン 4.4.3)、 glibc (バージョン 2.11.1)、 GDB (バージョン 7.0.1) に対する各種の改善