7.7. カーネル
トレースのための eBPF
システムコール
Red Hat Enterprise Linux 7.6 では、eBPF (Extended Berkeley Packet Filter) ツールがテクノロジープレビューとして導入されます。このツールは、トレーシングサブシステムに対してのみ有効になります。詳細は Red Hat ナレッジベースアーティクル Kernel tracing using eBPF を参照してください。
(BZ#1559615)
HMM (heterogeneous memory management) 機能がテクノロジープレビューとして利用可能に
Red Hat Enterprise Linux 7.3 では、テクノロジープレビューとして heterogeneous memory management (HMM) 機能が導入されました。この機能は、プロセスアドレス空間を独自のメモリー管理ユニット (MMU) にミラーする必要のあるデバイスのヘルパーレイヤーとして、カーネルに追加されています。これにより、CPU 以外のデバイスプロセッサーは、統一システムアドレス空間を使用してシステムメモリーを読み取ることができます。この機能を有効にするには、experimental_hmm=enable
をカーネルコマンドラインに追加します。
(BZ#1230959)
kexec
がテクノロジープレビューとして利用可能に
kexec
システムコールがテクノロジープレビューとして提供されています。このシステムコールを使用すると現在実行中のカーネルから別のカーネルを読み込んだり、起動したりすることが可能で、カーネル内のブートローダーとして機能します。通常はシステム起動中に実行されるハードウェアの初期化が kexec
の起動中に行われないため、再起動にかかる時間が大幅に短縮されます。
(BZ#1460849)
テクノロジープレビューとしての kexec fast reboot
Red Hat Enterprise Linux 7.5 で導入された kexec fast reboot
機能は、引き続きテクノロジープレビューとして利用できます。kexec fast reboot
を使用するとシステムの再起動の速度が大幅に向上します。この機能を使用するには、kexec カーネルを手動で読み込んでから、オペレーティングシステムを再起動する必要があります。
kexec fast reboot
をデフォルトの再起動アクションにすることはできません。特例は、Anaconda
に kexec fast reboot
を使用することです。この場合も、kexec fast reboot
をデフォルトにすることはできません。ただし、Anaconda
と併用すると、anaconda オプションを使用してカーネルを起動してインストールが完了したあと、オペレーティングシステムが自動的に kexec fast reboot
を使用します。kexec の再起動スケジュールを設定するには、カーネルコマンドラインの inst.kexec
コマンドを使用するか、キックスタートファイルに reboot --kexec
行を追加します。
(BZ#1464377)
perf cqm
が resctrl
に置き換え
Intel Cache Allocation Technology (CAT) が Red Hat Enterprise Linux 7.4 でテクノロジープレビューとして導入されました。ただし、perf インストラクチャーと CQM (Cache Quality of Service Monitoring) ハードウェアサポートの不整合により、perf cqm
ツールが正常に機能しませんでした。したがって、perf cqm
の使用時にさまざまな問題が生じていました。
主な問題は以下のとおりです。
-
perf cqm
が、resctrl
を使用して割り当てたタスクのグループに対応しない -
リサイクルに関するさまざまな問題により、
perf cqm
が不規則で不正確なデータを提供する -
異なるタイプのイベント (例: タスク、全システム、cgroup イベント) を同時に実行する場合に、
perf cqm
のサポートが不十分である -
cgroup イベントに対して
perf cqm
は部分的なサポートしか提供しない - cgroup イベントが階層構造を持つ場合、または cgroup 内のタスクと cgroup を同時に監視する場合、cgroup イベントに対する部分的なサポートが機能しない
-
ライフタイムの監視タスクにより
perf
オーバーヘッドが発生する -
perf cqm
がソケット全体のキャッシュ占有の集計値またはメモリー帯域幅を報告するが、多くのクラウドおよび VMM ベースのユースケースでは、ソケットごとの使用状況が求められる
Red Hat Enterprise Linux 7.5 で、perf cqm
が、resctrl
ファイルシステムをベースにしたアプローチで置き換えられ、上述の問題にすべて対応しました。
(BZ#1457533)
TC HW オフロード処理がテクノロジープレビューとして利用可能に
Red Hat Enterprise Linux 7.6 以降、トラフィック制御 (TC) ハードウェアのオフロードがテクノロジープレビューとして利用できます。
ハードウェアのオフロード処理は、シェーピング、スケジューリング、ポリシング、破棄など、選択したネットワークトラフィック処理の機能が、ソフトウェア処理を待たずにハードウェアで直接実行されるようになり、パフォーマンスが改善しました。
(BZ#1503123)
AMD xgbe
ネットワークドライバーがテクノロジープレビューとして利用可能に
Red Hat Enterprise Linux 7.6 以降、AMD xgbe
ネットワークドライバーがテクノロジープレビューとして利用できます。
(BZ#1589397)
Secure Memory Encryption はテクノロジープレビューとしてのみ利用可能に
現在、Secure Memory Encryption (SME) には、kdump 機能と互換性がありません。これは、kdump カーネルが SME で暗号化したメモリーの暗号化を解除するためのメモリーキーが欠如しているためです。Red Hat は、SME を有効にすると、テスト中のサーバーが一部の機能を実行できない可能性があるため、この機能は実稼働環境での使用には適していないことを把握しています。このため、SME はサポートレベルをサポート対象からテクノロジープレビューに変更しています。Red Hat またはシステムベンダーへの実稼働前のテスト中に見つかった問題を報告することが推奨されます。
(BZ#1726642)
criu
がバージョン 3.5 にリベース
Red Hat Enterprise Linux 7.2 では、criu
ツールがテクノロジープレビューとして導入されました。このツールは、実行中のアプリケーションをフリーズさせ、ファイルの集合としてこれを保存する Checkpoint/Restore in User-space (CRIU) を実装します。アプリケーションは、後にフリーズ状態から復元できます。
criu
ツールは Protocol Buffers
に依存します。これは、構造化データをシリアル化するための、言語とプラットフォームに中立的な拡張性のあるメカニズムです。依存パッケージを提供する protobuf
パッケージと protobuf-c
パッケージも、Red Hat Enterprise Linux 7.2 にテクノロジープレビューとして導入されています。
Red Hat Enterprise Linux 7.7 では、criu
パッケージが最新のアップストリームバージョンにアップグレードされました。これにより、Podman がコンテナーのチェックポイントおよび復元を行うサポートが提供されます。新たに追加された機能は、SELinux サポートなしでのみ動作します。
mlx5_core
ドライバーがテクノロジープレビューとして Mellanox ConnectX-6 Dx ネットワークアダプターに対応
今回の機能拡張により、Mellanox ConnectX-6 Dx ネットワークアダプターの PCI ID が mlx5_core
ドライバーに追加されました。このアダプターを使用するホストでは、RHEL は mlx5_core
ドライバーを自動的に読み込みます。Red Hat は、この機能をサポート対象外のテクノロジープレビューとして提供していることに注意してください。
(BZ#1685900)