2.2. コールド移行とウォーム移行
MTV は、以下からのコールド移行をサポートしています。
- VMware vSphere
- Red Hat Virtualization (RHV)
- OpenStack
- リモートの OpenShift Virtualization クラスター
MTV は、VMware vSphere および RHV からのウォーム移行をサポートします。
2.2.1. コールド移行
コールド移行は、デフォルトの移行タイプです。ソース仮想マシンは、データのコピー中にシャットダウンします。
VMware のみ: コールド移行の場合、移行中にパッケージマネージャーを使用できない状況では、MTV は移行された仮想マシンに qemu-guest-agent
デーモンをインストールしません。これにより、移行された仮想マシンの機能に多少の影響が出ますが、全体的には引き続き機能すると予想されます。
MTV が移行された VM に qemu-guest-agent
を自動的にインストールできるようにするには、移行後に仮想マシンの初回起動時にパッケージマネージャーがデーモンをインストールできることを確認してください。
それが不可能な場合は、自動または手動の任意の手順を使用して、qemu-guest-agent
をインストールしてください。
2.2.2. ウォーム移行
ほとんどのデータは、ソース仮想マシン (VM) の実行中に、プレコピー 段階でコピーされます。
その後、仮想マシンがシャットダウンされ、残りのデータが カットオーバー 段階でコピーされます。
プレコピー段階
仮想マシンはプレコピー段階ではシャットダウンされません。
仮想マシンディスクは、変更ブロックのトラッキング (CBT) スナップショットを使用して増分がコピーされます。スナップショットは、デフォルトでは 1 時間間隔で作成されます。forklift-controller
デプロイメントを更新して、スナップショットの間隔を変更できます。
各ソース仮想マシンおよび各仮想マシンディスクに対して CBT を有効にする必要があります。
仮想マシンは、最大 28 CBT スナップショットをサポートします。ソース仮想マシンの CBT スナップショットが多すぎて、Migration Controller
サービスが新規スナップショットを作成できない場合は、ウォーム移行に失敗する可能性があります。スナップショットが不要になると、Migration Controller
サービスは各スナップショットを削除します。
プレコピー段階は、カットオーバー段階を手動で開始するか、開始がスケジュールされるまで実行されます。
カットオーバー段階
カットオーバーの段階で仮想マシンはシャットダウンされ、残りのデータは移行されます。RAM に格納されたデータは移行されません。
MTV コンソールを使用してカットオーバー段階を手動で開始するか、Migration
マニフェストでカットオーバー時間をスケジュールできます。
2.2.3. コールド移行とウォーム移行の長所と短所
次の表では、コールド移行とウォーム移行の利点と欠点をさらに詳しく説明します。MTV をインストールした Red Hat OpenShift プラットフォームに Red Hat Enterprise Linux (RHEL) 9 がインストールされていることを前提としています。
コールド移行 | ウォーム移行 | |
---|---|---|
Duration | ディスク上のデータ量に相関します。各ブロックは 1 回コピーされます。 | ディスク上のデータ量と仮想マシンの使用率に相関します。ブロックは複数回コピーされる場合があります。 |
フェイルファースト | 変換してから転送します。各仮想マシンは OpenShift と互換性が確保されるように変換され、変換が成功すると仮想マシンが転送されます。仮想マシンを変換できない場合、移行は即座に失敗します。 | 転送してから変換します。MTV は各仮想マシンのスナップショットを作成し、それを Red Hat OpenShift に転送します。カットオーバーを開始すると、MTV は最後のスナップショットを作成し、それを転送してから、仮想マシンを変換します。 |
ツール |
|
コンテナー化データインポーター (CDI)、永続ストレージ管理アドオン、および |
転送されるデータ | すべてのディスクの概算合計 | すべてのディスクおよび仮想マシン使用率の概算値 |
VM のダウンタイム | 高: 仮想マシンがシャットダウンされ、ディスクが転送されます。 | 低: ディスクはバックグラウンドで転送されます。カットオーバーの段階で仮想マシンはシャットダウンされ、残りのデータは移行されます。RAM に格納されたデータは移行されません。 |
並列処理 | ディスクは仮想マシンごとに順番に転送されます。リモート移行の場合、ディスクは並行して転送されます。 [a] | ディスクは異なる Pod によって並行して転送されます。 |
接続の使用 | ディスク転送中のみソースへの接続を維持します。 | ディスク転送中はソースへの接続が維持されますが、スナップショット間では接続が解放されます。 |
ツール | MTV のみ。 | OpenShift Virtualization からの MTV および CDI。 |
[a]
リモート移行: MTV がインストールされていないターゲット環境。CDI を使用したリモート環境への移行を指します。
|
上の表は実行中の仮想マシンの状況を示しています。ウォーム移行の主な利点はダウンタイムの短縮です。また、ダウンしている仮想マシンに対してウォーム移行を開始する理由はありません。ただし、MTV が virt-v2v
と RHEL 9 を使用している場合でも、ダウンしている仮想マシンのウォーム移行を実行することは、コールド移行と同じではありません。ダウンしている仮想マシンの場合、MTV はコールド移行とは異なり、CDI を使用してディスクを転送します。
VMware からインポートする場合、ESXi、vSphere、または VDDK に関連する制限など、移行速度に影響する追加の要因があります。
2.2.3.1. まとめ
前述の情報に基づいて、コールド移行とウォーム移行について次のような結論を導き出すことができます。
- ウォーム移行を使用すると、仮想マシンのダウンタイムを最小限に抑えることができます。
- 1 つのディスクに大量のデータがある仮想マシンでは、コールド移行を使用すると時間を最小限に抑えることができます。
- 大量のデータが複数のディスクに均等に分散された仮想マシンでは、ウォーム移行を使用すると期間を最小限に抑えることができます。