第1章 フェンシング設定の前に行なうべき準備
本章では、 Red Hat High Availability Add-On を使用したクラスターへのフェンシング導入を行なう前に実行すべき作業および注意事項について述べておきます。 以下のセクションで構成されています。
1.1. 統合フェンスデバイスで使用するための ACPI の設定
クラスターで統合フェンスデバイスを使用している場合には、 フェンシングが直ちにまた完全に機能するよう ACPI (Advanced Configuration and Power Interface) の設定を行なう必要があります。
注記
Red Hat High Availability Add-On で対応している統合フェンスデバイスの最新情報については、 http://www.redhat.com/cluster_suite/hardware/ をご覧ください。
クラスターノードを統合フェンスデバイスで隔離するよう設定している場合は、そのノードの ACPI Soft-Off を無効にします。ACPI Soft-Off を無効にすると、明示的なシャットダウン (
shutdown -h now
など) をしなくても統合フェンスデバイス側でノードを直ちに完全電源オフにすることができます。これに対して、ACPI Soft-Off が有効な場合、統合フェンスデバイスによるノードの電源オフに 4 秒以上かかることがあります (以下の注記参照)。さらに、ACPI Soft-Off が有効な状態でシャットダウン中にノードがパニックやフリーズを起こすと、統合フェンスデバイスがノードの電源を切れなくなる場合があります。このような場合、フェンシングの動作が遅れる、または失敗することになります。結果、統合フェンスデバイスを使ってノードのフェンシングを行うよう設定する一方、ACPI Soft-Off を有効にしておくと、クラスターの復帰に時間がかかったり、管理者の介入が必要になります。
注記
ノードのフェンシングにかかる時間は使用する統合フェンスデバイスによって異なります。 電源ボタンを押し続けて電源を切るのと同じくらいの時間となる統合フェンスデバイスもあれば (統合フェンスデバイスによるノードの電源オフにかかる時間が4 秒ないしは 5 秒以内)、 電源ボタンを一度押してあとはオペレーティングシステムに任せて電源を切るのと同じくらいの時間となる統合フェンスデバイスもあります (統合フェンスデバイスによるノードの電源オフが前述のような 4、 5 秒に比べかなり時間がかかる)。
ACPI Soft-Off を無効にする場合、
chkconfig
管理を使用して行い、 フェンシングの際にノードが直ちに電源オフになることを確認します。 ACPI Soft-Off は chkconfig
管理を使用して無効にする方法をお勧めします。 ただし、 この方法がクラスターに適していない場合には次のような代替方法を使って ACPI Soft-Off を無効にすることもできます。
- BIOS の設定を "instant-off" または「遅延なくノードの電源をオフにする」に相当する設定に変更する
注記
BIOS では ACPI Soft-Off を無効にできないコンピュータもあります。 /boot/grub/grub.conf
ファイルのカーネルブートコマンドラインにacpi=off
を追加する重要
この方法を使用すると ACPI が完全に無効になります。 ACPI が完全に無効になっていると正しく起動しないコンピュータがあります。 この方法を使用するのは 他の方法がクラスターに適さない場合に限ってください 。
ACPI Soft-Off を無効にする方法として推奨している方法、 およびその代替となる方法について次のセクションで説明していきます。
- 「
chkconfig
管理を使って ACPI Soft-Off を無効にする」 — 推奨している方法 - 「BIOS を使って ACPI Soft-Off を無効にする」 — 代替方法 1
- 「
grub.conf
ファイル内で ACPI を完全に無効にする」 — 代替方法 2
1.1.1. chkconfig
管理を使って ACPI Soft-Off を無効にする
chkconfig
管理を使って ACPI Soft-Off を無効にする場合は、 ACPI デーモン (acpid
) を chkconfig
管理から削除するか、 acpid
をオフにします。
注記
この方法が ACPI Soft-Off を無効にする方法として推奨している方法になります。
以下のようにして、 各クラスターノードで
chkconfig
を使い ACPI Soft-Off を無効にします。
- 次のいずれかのコマンドを実行します。
chkconfig --del acpid
— このコマンドによりacpid
がchkconfig
管理から削除されます。— または —chkconfig --level 2345 acpid off
— このコマンドによりacpid
がオフになります。
- ノードを再起動します。
- クラスターを設定して実行を開始したら、 フェンシングの際にノードの電源が直ちにオフになることを確認します。
注記
ノードのフェンシングはfence_node
コマンドや Conga を使っても行なうことができます。
1.1.2. BIOS を使って ACPI Soft-Off を無効にする
ACPI Soft-Off を無効にする場合に推奨している方法は
chkconfig
管理を使用する方法です (「chkconfig
管理を使って ACPI Soft-Off を無効にする」)。 ただし、 推奨している方法がクラスターに適していない場合には、 このセクションの手順に従ってください。
注記
BIOS では ACPI Soft-Off を無効にできないコンピュータもあります。
以下のようにして、 各クラスターノードの BIOS を設定し ACPI Soft-Off を無効にします。
- ノードを再起動して、
BIOS CMOS Setup Utility
プログラムを開始します。 - 例1.1「メニューで の機能 (またはこれに相当する機能) を (またはこれに相当し遅延なく電源ボタンでノードの電源を切る設定) に設定します。
BIOS CMOS Setup Utility
: が に設定されている状態」 では、 メニューで が に、 が に設定されている例を示しています。注記
BIOS CMOS Setup Utility
プログラムを終了して BIOS の設定を保存します。- クラスターを設定して実行を開始したら、 フェンシングの際にノードの電源が直ちにオフになることを確認します。
注記
ノードのフェンシングはfence_node
コマンドや Conga を使っても行なうことができます。
例1.1 BIOS CMOS Setup Utility
: が に設定されている状態
+------------------------------------------|-----------------+ | ACPI Function [Enabled] | Item Help | | ACPI Suspend Type [S1(POS)] |-----------------| | x Run VGABIOS if S3 Resume [Auto] | Menu Level * | | Suspend Mode [Disabled] | | | HDD Power Down [Disabled] | | | Soft-Off by PWR-BTTN [Instant-Off]| | | CPU THRM-Throttling [50.0%] | | | Wake-Up by PCI card [Enabled] | | | Power On by Ring [Enabled] | | | Wake Up On LAN [Enabled] | | | x USB KB Wake-Up From S3 [Disabled] | | | Resume by Alarm [Disabled] | | | x Date(of Month) Alarm 0 | | | x Time(hh:mm:ss) Alarm 0 : 0 : | | | POWER ON Function [BUTTON ONLY]| | | x KB Power ON Password Enter | | | x Hot Key Power ON Ctrl-F1 | | +------------------------------------------|-----------------+
この例では、
が に、 が に設定されています。
1.1.3. grub.conf
ファイル内で ACPI を完全に無効にする
推奨している方法は
chkconfig
管理を使って ACPI Soft-Off を無効にする方法です (「chkconfig
管理を使って ACPI Soft-Off を無効にする」)。 推奨している方法がクラスターには適さない場合には、BIOS の電源管理を使って ACPI Soft-Off を無効にすることができます (「BIOS を使って ACPI Soft-Off を無効にする」)。 これらいずれの方法もクラスターに適さない場合には、 grub.conf
ファイル内のカーネルブートコマンドラインに acpi=off
を追加して ACPI を完全に無効にします。
重要
この方法を使用すると ACPI が完全に無効になります。 ACPI が完全に無効になっていると正しく起動しないコンピュータがあります。 この方法を使用するのは 他の方法がクラスターに適さない場合に限ってください 。
以下のようにして、 各クラスターノードの
grub.conf
ファイルを編集し ACPI を完全に無効にします。
- テキストエディタで
/boot/grub/grub.conf
を開きます。 acpi=off
を/boot/grub/grub.conf
内のカーネルブートコマンドラインに追加します (例1.2「カーネルブートコマンドラインにacpi=off
を追加した状態」 を参照)。- ノードを再起動します。
- クラスターを設定して実行を開始したら、 フェンシングの際にノードの電源が直ちにオフになることを確認します。
注記
ノードのフェンシングはfence_node
コマンドや Conga を使っても行なうことができます。
例1.2 カーネルブートコマンドラインに acpi=off
を追加した状態
# grub.conf generated by anaconda # # Note that you do not have to rerun grub after making changes to this file # NOTICE: You have a /boot partition. This means that # all kernel and initrd paths are relative to /boot/, eg. # root (hd0,0) # kernel /vmlinuz-version ro root=/dev/mapper/vg_doc01-lv_root # initrd /initrd-[generic-]version.img #boot=/dev/hda default=0 timeout=5 serial --unit=0 --speed=115200 terminal --timeout=5 serial console title Red Hat Enterprise Linux Server (2.6.32-193.el6.x86_64) root (hd0,0) kernel /vmlinuz-2.6.32-193.el6.x86_64 ro root=/dev/mapper/vg_doc01-lv_root console=ttyS0,115200n8 acpi=off initrd /initramrs-2.6.32-131.0.15.el6.x86_64.img
この例では、
acpi=off
がカーネルブートコマンドライン ("kernel /vmlinuz-2.6.32-193.el6.x86_64.img" で始まる行) に追加されています。