第6章 スナップショットを使用したシステムアップグレードの管理
Red Hat Enterprise Linux システムの復元可能なアップグレードを実行して、オペレーティングシステムを以前のバージョンに戻します。Snapshot Manager (snapm
)、Boom Boot Manager (boom
)、および Leapp オペレーティングシステムモダナイゼーションフレームワークを使用できます。
Snapshot Manager は、LVM2 または Stratis を使用したストレージスナップショットに使いやすいフロントエンドを提供するものです。Snapshot Manager はプラグインの設計を使用して、一連のマウントポイントまたはブロックデバイスパスのスナップショットプロバイダーを自動的に検出します。
スナップショットは、指定のマウントポイントまたはデバイス (ソース) ごとに作成され、スナップショットセット にまとめられます。Snapshot Manager は Boom Boot Manager と統合されています。ユーザーが --boot
または --revert
オプションを使用すると、Snapshot Manager によってシステムスナップショットのブートエントリーが自動的に管理されます。
オペレーティングシステムのアップグレードを実行する前に、次の点を考慮してください。
スナップショットを使用したシステムアップグレードでは、次の条件が満たされている場合に、復元によって保護されるアップグレードがサポートされます。
- システム (およびスナップショットプロセスに含まれるすべてのファイルシステム) が、LVM2 論理ボリュームまたは Stratis ストレージファイルシステムにインストールされている。LVM2 では、リニア (シック) ボリュームとシンプロビジョニングボリュームの両方がサポートされます。
- アップグレードプロセス中にスナップショットを維持するのに十分な空き領域がある。
- Red Hat Enterprise Linux 9.6 以降を実行している。
復元は、ファイルシステムのマウントの粒度で行われます。次のディレクトリーが
/var
またはルートファイルシステムに含まれている場合、アップグレードを復元すると、これらのディレクトリーの内容も復元されます。-
/var/log
-
/var/lib/libvirt/images
/var/lib/containers
これが望ましくない場合は、必要に応じてログ、イメージ、およびコンテナーディレクトリーの内容を保持するために、システムを独立したボリュームにインストールすることを検討してください。AMD および Intel 64 ビット、および 64 ビット ARM アーキテクチャー上のパーティションの詳細は、推奨されるパーティションスキーム を参照してください。
-
整合性の確保:
- Snapshot Manager は、実行中のシステムのスナップショットを取得します。
- クラッシュ整合性 を確保するために、ファイルシステムが凍結されます。
-
アプリケーション整合性 を確保するために、実行中のサービスをシャットダウンするか、特定の systemd ユニット (たとえば、
rescue.target
) に分離することを検討してください。
- スナップショットを使用したシステムアップグレードは、Red Hat Update Infrastructure (RHUI) システムでは機能しません。Snapshot Manager を使用する代わりに、仮想マシン (VM) のスナップショットを作成することを検討してください。
- Snapshot Manager を使用したシステムアップグレードは、イメージモードでデプロイされたシステムでは現在サポートされていません。
6.1. Snapshot Manager プロセスの概要
snapm
コマンドを使用して スナップショットセット を作成し、オペレーティングシステムの以前のバージョンにアクセスして使用したり、以前のバージョンに復元したりできるようにします。
Snapshot Manager は、ユーザーが GRUB ブートローダーメニューから選択してアクセスできるブートエントリーを自動的に作成できます。スナップショットエントリー を使用すると、以前のバージョンのオペレーティングシステムを起動してアクセスできます。snapm snapset revert
コマンドと組み合わせて 復元エントリー を使用すると、更新を試行する前のシステムの状態を復元できます。
アップグレードおよび復元プロセスには、次のブートエントリーが関係します。
Upgrade boot entry
-
leapp
ユーティリティーを使用してメジャーバージョンアップグレードを実行するときに、Leapp アップグレード環境を起動します。leapp
ユーティリティーを使用して、このブートエントリーを作成および管理します。Leapp
アップグレードプロセスでは、このエントリーは自動的に削除されます。 Red Hat Enterprise Linux 10 boot entry
-
アップグレードシステム環境を起動します。アップグレードプロセスが成功すると、
leapp
ユーティリティーによってこのブートエントリーが自動的に作成されます。 Snapshot boot entry
-
元のシステムのスナップショットを起動します。これは、アップグレードの成功または失敗後に、以前のオペレーティングシステムの状態を確認およびテストするために使用します。このブートエントリーを作成するには、オペレーティングシステムをアップグレードする前に、
snapm snapset create
コマンドを-b
(--boot
) 付きで使用します。 Revert boot entry
snapm snapset revert
コマンドを使用して復元を開始した後、元のシステム環境を起動します。この方法で起動すると、アップグレードが取り消され、以前のシステムの状態が復元されます。このブートエントリーを作成するには、アップグレード手順を元に戻す操作を開始するときに、snapm snapset create
コマンドを-r
(--revert
) 付きで使用します。独立した復元エントリーにより、アップグレードプロセス中にイメージが削除または変更される可能性からシステムが保護されます。Boom Boot Manager により、システムの起動に必要なブートイメージ (
vmlinuz
およびinitramfs
) が自動的にバックアップされるためです。