第6章 VNC を使用したリモート RHEL インストールの実行
このセクションでは、VNC を使用して RHEL をリモートでインストールする方法について説明します。
6.1. VNC を使用したリモート RHEL インストールの実行
このセクションでは、Virtual Network Computing (VNC) を使用して、リモート RHEL インストールを実行する方法を説明します。
6.1.1. 概要
CD、DVD、または USB フラッシュドライブから、または PXE を使用してネットワークからシステムを起動して RHEL をインストールする場合は、グラフィカルユーザーインターフェイスを使用することが推奨されます。ただし、IBM Power Systems や 64 ビットの IBM Z など、多くのエンタープライズシステムは、自動的に実行されても、ディスプレイ、キーボード、およびマウスには接続されていないリモートのデータセンター環境に置かれています。通常、これらのシステムは ヘッドレスシステム と呼ばれ 、通常はネットワーク接続で制御されます。RHEL インストールプログラムには、ターゲットマシンでグラフィカルインストールを実行する Virtual Network Computing (VNC) インストールが含まれます。ただし、グラフィカルインストールの制御はネットワーク上の別のシステムで処理されます。RHEL インストールプログラムでは、Direct および Connectのつの VNC インストールモードを利用できます。接続が確立されれば、この 2 つのモードに違いはありません。選択するモードは、環境によって異なります。
- Direct モード
- Direct モードでは、RHEL インストールプログラムがターゲットシステムで起動するように設定されています。また、続行前に別のシステムにインストールされている VNC ビューアーを待ちます。Direct モードインストールの一環として、IP アドレスとポートがターゲットシステムに表示されます。VNC ビューアーを使用することで、IP アドレスとポートを使用して、ターゲットシステムにリモートで接続し、グラフィカルインストールを完了できます。
- Connect モード
- Connect モードでは、VNC ビューアーが リスニング モードでリモートシステムで開始されます。VNC ビューアーは、指定したポート上のターゲットシステムからの着信接続を待ちます。RHEL インストールプログラムがターゲットシステムで起動すると、起動オプションまたはキックスタートコマンドを使用して、システムのホスト名とポート番号が提供されます。次に、インストールプログラムは指定したシステムホスト名およびポート番号を使用して、リスニング VNC ビューアーで接続を確立します。Connect モードを使用するには、リッスンしている VNC ビューアーを持つシステムが、着信ネットワーク接続を許可できる必要があります。
6.1.2. 留意事項
VNC を使用してリモート RHEL インストールを実行する場合は、以下の項目を考慮してください。
VNC クライアントアプリケーション - VNC クライアントアプリケーションは、VNC Direct および Connect インストールの両方を実行する必要があります。VNC クライアントアプリケーションは多くの Linux ディストリビューションのリポジトリーで入手できます。また、Windows などの他のオペレーティングシステムにもには、無料の VNC クライアントアプリケーションを利用できます。RHEL では、以下の VNC クライアントアプリケーションを利用できます。
-
tigervnc
はデスクトップ環境から独立しており、tigervnc
パッケージの一部としてインストールされます。 -
vinagre
は GNOME デスクトップ環境に含まれており、vinagre
パッケージの一部としてインストールされます。
-
VNC サーバーはインストールプログラムに含まれているため、インストールは不要です。
ネットワークおよびファイアウォール:
- ターゲットシステムがファイアウォールにより着信接続が許可されていない場合は、Connect モードを使用するかファイアウォールを無効にする必要があります。ファイアウォールを無効にすると、セキュリティーに影響を及ぼす可能性があります。
- VNC ビューアーを実行しているシステムがファイアウォールにより着信接続を許可されていない場合は、Direct モードを使用するか、ファイアウォールを無効にする必要があります。ファイアウォールを無効にすると、セキュリティーに影響を及ぼす可能性があります。ファイアウォールの設定の詳細は、セキュリティー強化 を参照してください。
- カスタム起動オプション: VNC インストールを開始するにはカスタムの起動オプションを指定する必要があります。インストール手順はシステムのアーキテクチャーによって異なる可能性があります。
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キックスタートインストールの VNC: キックスタートでは、VNC 固有のコマンドを使用できます。
vnc
コマンドのみを使用すると、Direct モードで RHEL インストールを実行します。Connect モードでインストールを設定するために追加オプションを使用することができます。
6.1.3. VNC Direct モードでのリモート RHEL インストールの実行
この手順では、VNC Direct モードで、リモート RHEL インストールを実行します。Direct モードでは、RHEL にインストールされているターゲットシステムへの接続を VNC ビューアーにより開始されることが想定されます。この手順では、VNC ビューアーを使用するシステムが、リモート システムと呼ばれます。RHEL インストールプログラムにより、リモートシステムの VNC ビューアーからターゲットシステムへの接続を開始することが求められます。
以下の手順では、VNC ビューアーとして TigerVNC を使用します。その他のビューアーの手順は異なる場合がありますが、一般的な原則が適用されます。
前提条件
- root ユーザーとして、リモートシステムに VNC ビューアーをインストールした。
- ネットワークブートサーバーを設定して、ターゲットシステムでインストールを起動した。
手順
-
ターゲットシステムの RHEL ブートメニューから、キーボードの
Tab
キーを押して、起動オプションを編集します。 inst.vnc
オプションをコマンドラインの最後に追加します。インストールしているシステムに VNC アクセスを制限する場合は、コマンドラインの末尾に
inst.vncpassword=PASSWORD
起動オプションを追加します。PASSWORD をインストールに使用するパスワードに置き換えます。VNC パスワードは 6 文字から 8 文字に設定する必要があります。重要inst.vncpassword=
オプションには一時的なパスワードを使用してください。既存のパスワードまたは root パスワードは指定しないでください。
- Enter を押してインストールを開始します。ターゲットシステムはインストールプログラムを初期化し、必要なサービスを開始します。システムの準備ができると、システムの IP アドレスとポート番号を示すメッセージが表示されます。
- リモートシステムで VNC ビューアーを開きます。
- VNC サーバー フィールドに IP アドレスとポート番号を入力します。
- Connect をクリックします。
- VNC パスワードを入力して、OK をクリックします。新しいウィンドウが開き、VNC 接続が確立され、RHEL インストールメニューが表示されます。このウィンドウから、グラフィカルユーザーインターフェイスを使用して、ターゲットシステムに RHEL をインストールできます。
6.1.4. VNC Connect モードでのリモート RHEL インストールの実行
この手順を使用して、VNC Connect モードで、リモート RHEL インストールを実行します。Connect モードでは、RHEL でインストールするターゲットシステムが、別のシステムにインストールされている VNC ビューアーに接続を開始します。この手順では、VNC ビューアーを使用するシステムが、リモート システムと呼ばれます。
以下の手順では、VNC ビューアーとして TigerVNC を使用します。その他のビューアーの手順は異なる場合がありますが、一般的な原則が適用されます。
前提条件
- root ユーザーとして、リモートシステムに VNC ビューアーをインストールした。
- ターゲットシステムでインストールを開始するよう、ネットワーク起動サーバーを設定している。
- VNC Connect インストールに対して起動オプションを使用するようにターゲットシステムを設定している。
- VNC ビューアーでリモートシステムが必要なポートで着信接続を受け入れるよう設定されていることを確認している。検証は、ネットワークとシステム設定によって異なります。詳細は、セキュリティーの強化 および ネットワークのセキュリティー保護 を参照してください。
手順
以下のコマンドを実行して、リモートシステム上で VNC ビューアーを リスニングモード で開始します。
$ vncviewer -listen PORT
- PORT は、接続に使用されるポート番号に置き換えます。
端末には、ターゲットシステムからの着信接続を待機していることを示すメッセージが表示されます。
TigerVNC Viewer 64-bit v1.8.0 Built on: 2017-10-12 09:20 Copyright (C) 1999-2017 TigerVNC Team and many others (see README.txt) See http://www.tigervnc.org for information about TigerVNC. Thu Jun 27 11:30:57 2019 main: Listening on port 5500
- ターゲットシステムをネットワークから起動します。
-
ターゲットシステムの RHEL ブートメニューから、キーボードの
Tab
キーを押して、起動オプションを編集します。 -
inst.vnc inst.seLinuxOptions=HOST:PORT
オプションをコマンドラインの最後に追加します。 - HOST には、リッスンしている VNC ビューアーを実行しているリモートシステムの IP アドレス、PORT には、VNC ビューアーがリッスンしているポート番号を入力します。
- Enter を押してインストールを開始します。システムはインストールプログラムを初期化し、必要なサービスを開始します。初期化プロセスが終了すると、インストールプログラムは指定の IP アドレスとポートへの接続を試行します。
- 接続に成功すると、新しいウィンドウが開き、VNC 接続が確立され、RHEL インストールメニューが表示されます。このウィンドウから、グラフィカルユーザーインターフェイスを使用して、ターゲットシステムに RHEL をインストールできます。