B.4. ネットワーク設定用キックスタートコマンド
このリストのキックスタートコマンドにより、システムにネットワークを設定できます。
B.4.1. ネットワーク (任意)
オプションの network
キックスタートコマンドを使用して、ターゲットシステムのネットワーク情報を設定し、インストール環境でネットワークデバイスをアクティブにします。最初の network
コマンドで指定しているデバイスが自動的にアクティベートされます。--activate
オプションを使用して、デバイスを明示的にアクティブ化するように要求することもできます。
構文
network OPTIONS
オプション
--activate
- インストール環境でこのデバイスをアクティブにします。アクティブしているデバイスに
--activate
オプションを使用すると (たとえば、キックスタートファイルを取得できるように起動オプションで設定したインターフェイスなど)、キックスタートファイルで指定している詳細を使用するようにデバイスが再度アクティブになります。デバイスにデフォルトのルートを使用させないようにする場合は
--nodefroute
オプションを使用します。--no-activate
- インストール環境でこのデバイスをアクティブにしません。デフォルトでは、
--activate
オプションにかかわらず、Anaconda はキックスタートファイルの 1 番目のネットワークデバイスをアクティブにします。--no-activate
オプションを使用して、デフォルトの設定を無効にできます。--bootproto=
-dhcp
、bootp
、ibft
、またはstatic
のいずれかになります。dhcp
がデフォルトのオプションになります。dhcp
とbootp
は同じように処理されます。デバイスのipv4
設定を無効にするには、--noipv4
オプションを使用します。注記このオプションは、デバイスの ipv4 設定を行います。ipv6 の設定には、
--ipv6
オプションおよび--ipv6gateway
オプションを使用します。DHCP メソッドでは、DHCP サーバーシステムを使用してネットワーク設定を取得します。BOOTP メソッドも同様で、BOOTP サーバーがネットワーク設定を提供する必要があります。システムが DHCP を使用するようにする場合は、以下のように指定します。
network --bootproto=dhcp
BOOTP を使用してネットワーク設定を取得する場合は、キックスタートファイルで次の行を使用します。
network --bootproto=bootp
iBFT で指定されている設定を使用する場合は、以下のようにします。
network --bootproto=ibft
static
メソッドの場合は、キックスタートファイルに IP アドレスおよびネットマスクを指定する必要があります。これらの情報は静的となるため、インストール時およびインストール後にも使用されます。静的なネットワーク設定情報はすべて 一行で 指定する必要があります。コマンドラインのようにバックスラッシュ (
\
) を使用して行を折り返すことはできません。network --bootproto=static --ip=10.0.2.15 --netmask=255.255.255.0 --gateway=10.0.2.254 --nameserver=10.0.2.1
ネームサーバーは同時に複数設定することもできます。以下のように、1 つの
--nameserver=
オプションに対して、ネームサーバーの IP アドレスをコンマ区切りで指定します。network --bootproto=static --ip=10.0.2.15 --netmask=255.255.255.0 --gateway=10.0.2.254 --nameserver=192.168.2.1,192.168.3.1
--device=
-network
コマンドで設定する (また最終的に Anaconda でアクティベートさせる) デバイスを指定します。最初 に使用される
network
コマンドに--device=
オプションがない場合は、Anaconda の起動オプションinst.ks.device=
の値が使用されます (使用可能な場合)。ただし、この動作は廃止が予定されているため注意してください。ほとんどの場合において、すべてのnetwork
コマンドには必ず--device=
オプションを指定してください。重要Red Hat Enterprise Linux 9 では、ネットワークチーミングが非推奨になりました。代わりに、ネットワークボンディングドライバーの使用を検討してください。詳細は、Configuring network bonding を参照してください。
同じキックスタートファイルに記載される 2 番目以降の
network
コマンドの動作は、--device=
オプションを指定しないと詳細が不明になります。1 番目以降のnetwork
コマンドに、このオプションを指定していることを確認してください。起動するデバイスは、以下のいずれかの方法で指定します。
-
インターフェイスのデバイス名を使用して指定する (
em1
など) -
インターフェイスの MAC アドレスを使用して指定する (
01:23:45:67:89:ab
など) -
link
キーワードを使用する (リンクがup
状態になっている 1 番目のインターフェイス)。 -
キーワード
bootif
を使用する。これは、pxelinux がBOOTIF
変数に設定した MAC アドレスを使用します。pxelinux にBOOTIF
変数を設定する場合は、pxelinux.cfg
ファイルにIPAPPEND 2
を設定します。
以下に例を示します。
network --bootproto=dhcp --device=em1
-
インターフェイスのデバイス名を使用して指定する (
--ipv4-dns-search
/--ipv6-dns-search
- DNS 検索ドメインを手動で設定します。これらのオプションを--device
オプションと一緒に使用し、それぞれの NetworkManager プロパティーをミラーリングする必要があります。次に例を示します。network --device ens3 --ipv4-dns-search domain1.example.com,domain2.example.com
-
--ipv4-ignore-auto-dns
/--ipv6-ignore-auto-dns
- DHCP からの DNS 設定を無視するように設定します。これらのオプションは--device
オプションと一緒に使用する必要があります。これらのオプションには引数は必要ありません。 -
--ip=
- デバイスの IP アドレスを指定します。 -
--ipv6=
- デバイスの IPv6 アドレスを address[/prefix length] の形式で指定します (例:3ffe:ffff:0:1::1/128
)。prefix を省略すると、64
が使用されます。auto
を使用すると自動設定に、dhcp
を使用すると DHCPv6 限定の設定 (ルーター広告なし) となります。 -
--gateway=
- 1 つの IPv4 アドレスのデフォルトゲートウェイを指定します。 -
--ipv6gateway=
- 1 つの IPv6 アドレスのデフォルトゲートウェイを指定します。 -
--nodefroute
- インターフェイスがデフォルトのルートとして設定されないようにします。iSCSI ターゲット用に用意した別のサブネットにある NIC など、--activate=
オプションで追加デバイスを起動させる場合は、このオプションを使用してください。 -
--nameserver=
- IP アドレスに DNS ネームサーバーを指定します。複数のネームサーバーを指定する場合は、1 つの オプションに対して、IP アドレスをコンマ区切りで指定します。 -
--netmask=
- インストール後のシステムのネットワークマスクを指定します。 --hostname=
- ターゲットシステムのホスト名を設定するために使用されます。ホスト名は、hostname.domainname
形式の完全修飾ドメイン名 (FQDN)、またはドメインなしの短縮ホスト名のいずれかにします。多くのネットワークには、自動的に接続したシステムにドメイン名を提供する DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol) サービスがあります。DHCP サービスが、このマシンにドメイン名を割り当てるようにするには、短縮ホスト名のみを指定してください。静的 IP およびホスト名の設定を使用する場合、短縮名または FQDN を使用するかどうかは、計画したシステムのユースケースによって異なります。Red Hat Identity Management はプロビジョニング時に FQDN を設定しますが、サードパーティーのソフトウェア製品によっては短縮名が必要になる場合があります。いずれの場合も、すべての状況で両方のフォームの可用性を確保するには、
IP FQDN short-alias
の形式で/etc/hosts
にホストのエントリーを追加します。ホスト名に使用できるのは、英数字と
-
または.
のみです。ホスト名は 64 文字以下である必要があります。ホスト名は、-
および.
で開始したり終了したりできません。DNS に準拠するには、FQDN の各部分は 63 文字以下で、ドットを含む FQDN の合計の長さは 255 文字を超えることができません。ターゲットシステムのホスト名のみを設定する場合は、
network
コマンドで--hostname
オプションを使用し、他のオプションは含めないでください。ホスト名の設定時に追加オプションを指定すると、
network
コマンドは指定したオプションを使用してデバイスを設定します。--device
オプションを使用して設定するデバイスを指定しないと、デフォルトの--device link
の値が使用されます。また、--bootproto
オプションを使用してプロトコルを指定しないと、デバイスはデフォルトで DHCP を使用するように設定されます。-
--ethtool=
- ethtool プログラムに渡されるネットワークデバイスの低レベルの追加設定を指定します。 -
--onboot=
- システムの起動時にデバイスを有効にするかどうかを指定します。 -
--dhcpclass=
- DHCP クラスを指定します。 -
--mtu=
- デバイスの MTU を指定します。 -
--noipv4
- このデバイスで IPv4 を無効にします。 -
--noipv6
- このデバイスで IPv6 を無効にします。 --bondslaves=
- このオプションを使用すると、--bondslaves=
オプションで定義されたセカンダリーデバイスを使用して、--device=
オプションで指定したボンディングデバイスが作成されます。以下に例を示します。network --device=bond0 --bondslaves=em1,em2
上記のコマンドは、インターフェイスの
em1
およびem2
をセカンダリーデバイスとして使用し、ボンドデバイスbond0
を作成します。オプションの
--bondopts=
---bondslaves=
および--device=
を使用して指定されるボンドインターフェイス用のオプションパラメーターのリストです。このリスト内のオプションは必ずコンマ (,) またはセミコロン (;) で区切ってください。オプション自体にコンマが含まれている場合はセミコロンを使用してください。以下に例を示します。network --bondopts=mode=active-backup,balance-rr;primary=eth1
重要--bondopts=mode=
パラメーターは、balance-rr
やbroadcast
などのフルモード名にしか対応しません。0
や3
などの数値による表記には対応していません。利用可能なモードおよびサポートされるモードの一覧は、Configuring and Managing Networking Guide を参照してください。-
--vlanid=
---device=
で指定したデバイスを親として作成する仮想デバイスの仮想 LAN (VLAN) の ID 番号 (802.1q タグ) を指定します。たとえば、network --device=em1 --vlanid=171
を使用すると仮想 LAN デバイスのem1.171
が作成されます。 --interfacename=
- 仮想 LAN デバイスのカスタムのインターフェイス名を指定します。--vlanid=
オプションで生成されるデフォルト名が望ましくない場合に使用してください。--vlanid=
と併用する必要があります。以下に例を示します。network --device=em1 --vlanid=171 --interfacename=vlan171
上記のコマンドにより、
em1
デバイスに ID171
の仮想 LAN インターフェイスvlan171
が作成されます。インターフェイスには任意の名前 (
my-vlan
など) を付けることができますが、場合によっては次の命名規則に従う必要があります。-
名前にドット (
.
) が含まれている場合は、NAME.ID
の形にする必要があります。NAME は任意ですが、ID は VLAN ID にする必要があります。たとえば、em1.171
、my-vlan.171
などにします。 -
vlan
で開始する名前を付ける場合は、vlanID
の形式にする必要があります。たとえば、vlan171
などにします。
-
名前にドット (
--teamslaves=
- このオプションで指定したセカンダリーデバイスを使用して、--device=
オプションで指定したチームデバイスが作成されます。セカンダリーデバイスはコンマで区切ります。各セカンダリーデバイスの後ろにその設定を指定できます。\
記号でエスケープした二重引用符で、一重引用符の JSON 文字列を囲っている部分が実際の設定になります。以下に例を示します。network --teamslaves="p3p1'{\"prio\": -10, \"sticky\": true}',p3p2'{\"prio\": 100}'"
--teamconfig=
オプションも参照してください。重要Red Hat Enterprise Linux 9 では、ネットワークチーミングが非推奨になりました。代わりに、ネットワークボンディングドライバーの使用を検討してください。詳細は、Configuring network bonding を参照してください。
--teamconfig=
- チームデバイスの設定を二重引用符で囲って指定します。これは、二重引用符と\
記号でエスケープした JSON 文字列になります。デバイス名は、--device=
オプションで指定し、セカンダリーデバイスとその設定は、--teamslaves=
オプションで指定します。以下に例を示します。network --device team0 --activate --bootproto static --ip=10.34.102.222 --netmask=255.255.255.0 --gateway=10.34.102.254 --nameserver=10.34.39.2 --teamslaves="p3p1'{\"prio\": -10, \"sticky\": true}',p3p2'{\"prio\": 100}'" --teamconfig="{\"runner\": {\"name\": \"activebackup\"}}"
重要Red Hat Enterprise Linux 9 では、ネットワークチーミングが非推奨になりました。代わりに、ネットワークボンディングドライバーの使用を検討してください。詳細は、Configuring network bonding を参照してください。
--bridgeslaves=
- このオプションを使用すると、--device=
オプションで指定したデバイス名でネットワークブリッジが作成され、このネットワークブリッジに、--bridgeslaves=
オプションで指定したデバイスが追加されます。以下に例を示します。network --device=bridge0 --bridgeslaves=em1
--bridgeopts=
- オプションでブリッジしたインターフェイス用パラメーターのリストをコンマで区切って指定します。使用できる値はstp
、priority
、forward-delay
、hello-time
、max-age
、ageing-time
などです。これらのパラメーターの詳細は、nm-settings(5)
man ページまたは ネットワーク設定仕様 にある ブリッジ設定 の表を参照してください。ネットワークブリッジの一般情報は、Configuring and managing networking も参照してください。
-
--bindto=mac
- インストールされたシステムのデバイス設定ファイルをインターフェイス名 (DEVICE
) へのデフォルトのバインドではなく、デバイスの MAC アドレス (HWADDR
) にバインドします。このオプションは--device=
オプションとは独立している点に注意してください。同じnetwork
コマンドでデバイス名、またはlink
、bootif
が指定されていても、--bindto=mac
が適用されます。
注記
-
命名方法の変更により、Red Hat Enterprise Linux では
eth0
などのethN
デバイス名を使用できなくなりました。デバイスの命名スキームの詳細は、アップストリームドキュメント Predictable Network Interface Names を参照してください。 - キックスタートのオプションまたは起動オプションを使用して、ネットワークにあるインストールリポジトリーを指定したものの、インストール開始時にネットワークが利用できない状態になっている場合は、インストール概要 ウィンドウが表示される前に、ネットワーク接続の設定を求める ネットワークの設定 ウィンドウが表示されます。詳細は、標準的な RHEL 9 インストールの実行 ドキュメントの ネットワークおよびホスト名のオプションの設定 セクションを参照してください。
B.4.2. realm
キックスタートコマンドの realm
は任意です。Active Directory や IPA ドメインを参加させます。このコマンドの詳細は、man ページ realm(8)
の join
のセクションを参照してください。
構文
realm join [OPTIONS] domain
必須オプション
-
domain
- 参加するドメイン。
オプション
-
--computer-ou=OU=
- コンピューターアカウントを作成するために、組織単位の識別名を指定します。識別名の形式は、クライアントソフトウェアおよびメンバーシップのソフトウェアにより異なります。通常、識別名のルート DSE の部分は省略できます。 -
--no-password
- パスワードの入力なしで自動的に参加します。 -
--one-time-password=
- ワンタイムパスワードを使用して参加します。すべてのレルムで使用できるとは限りません。 -
--client-software=
- ここで指定したクライアントソフトウェアを実行できるレルムにしか参加しません。使用できる値はsssd
やwinbind
などになります。すべてのレルムがすべての値に対応しているとは限りません。デフォルトでは、クライアントソフトウェアは自動的に選択されます。 -
--server-software=
- ここで指定したサーバーソフトウェアを実行できるレルムにしか参加しません。使用できる値はactive-directory
やfreeipa
などになります。 -
--membership-software=
- レルムに参加する際に、ここに指定したソフトウェアを使用します。使用できる値はsamba
やadcli
などになります。すべてのレルムがすべての値に対応しているとは限りません。デフォルトでは、メンバーシップソフトウェアは自動的に選択されます。