1.4. リソースエージェント


RHEL 9 では、SAP 環境のさまざまなインスタンスタイプを管理するために、resource-agents-sap RPM パッケージ で以下のリソースエージェントが提供されています。

1.4.1. SAPInstance リソースエージェント

SAPInstance リソースエージェントは、SAP カーネルの一部である SAP Start Service を使用して、SAP アプリケーションサーバーインスタンスを管理するために使用できます。このリソースエージェントは、(A)SCS、ERS、PAS、および AAS インスタンスに加えて、他の SAP インスタンスタイプ (スタンドアロン SAP Web Dispatcher インスタンスや、スタンドアロン SAP Gateway インスタンスなど) の管理にも使用できます (このようなインスタンスを管理する pacemaker リソースを設定する方法は、How to manage standalone SAP Web Dispatcher instances using the RHEL HA Add-On を参照してください)。

SAPInstance リソースエージェントのすべての操作は、SAP Startup Framework が提供するコマンドで実行されます。これらのコマンドは、各 SAP インスタンスの sapstartsrv プロセスと通信します。sapstartsrv は、4 つのステータスカラーを使用します。

意味

すべて問題ありません。

何か問題がありますが、サービスは動作しています。

サービスが動作しません。

灰色

サービスが起動していません。

SAPInstance リソースエージェントは、緑と黄の場合は問題ないと解釈し、ステータスが赤またはグレーの場合は NOT_RUNNING としてクラスターに報告します。

RHEL 9 に同梱される SAPInstance リソースエージェントのバージョンは、systemd に対応した SAP Startup Framework によって管理される SAP インスタンスもサポートします (詳細は、The Systemd-Based SAP Startup Framework を参照してください)。

1.4.1.1. SAPInstance リソースエージェントの重要なパラメーター

属性名必須Default value設定

InstanceName

はい

null

完全な SAP インスタンスプロファイル 名 (<SAPSID>_<INSTNAME+INSTNO>_<virt hostname>) (例: S4H_ASCS20_s4ascs)。

START_PROFILE

いいえ

null

SAP スタートプロファイルへの完全パス (SAP NetWeaver 7.1 以降では、SAP スタートプロファイルはインスタンスプロファイルと同一です)。

IS_ERS

いいえ

false

昇格可能なリソースを実装せず、リソース障害の後に別のクラスターノードで実行されている ERSASCS が検出できるようになっていない ASCS/ERS SAP Netweaver インストールにのみ使用されます。SAP NetWeaver 7.50 HA 認定 (NW-HA-CLU-750; ENSA1) に従う実装の ERS インスタンスを管理するために使用するリソースでは、このパラメーターを true に設定する必要があります。これには、ENSA1 を使用する場合の NetWeaver 7.50 未満のシステムも含まれます。

DIR_EXECUTABLE

いいえ

null

sapstartsrv および sapcontrol バイナリーの場所の完全修飾パス (SAP カーネルバイナリーのデフォルトの場所が変更されている場合にのみ必要)。

DIR_PROFILE

いいえ

null

SAP スタートプロファイルの場所の完全修飾パス (インスタンスプロファイルのデフォルトの場所が変更されている場合にのみ必要)。

AUTOMATIC_RECOVER

いいえ

false

SAPInstance リソースエージェントは、起動試行が失敗した場合、自動的に再起動を 1 回試みます。そのために、実行中のインスタンスプロセスを強制終了し、kill.sap ファイルを削除して、cleanipc を実行します。SAP インスタンスがクラッシュすると、一部のプロセスや共有メモリーセグメントが残ることがあります。このオプションを true に設定すると、起動操作中に残存物の削除を試みます。

MONITOR_SERVICES

いいえ

disp+work|msg_server|enserver|enrepserver|jcontrol|jstart

インスタンスの健全性を判断するために監視する必要がある SAP インスタンスサービスのリスト。監視するサービスの増減や、sapstartsrv がサポートする他のサービスの監視を行うには、このパラメーターを使用してリストを変更します。名前は、コマンド sapcontrol -nr [Instance-Nr] -function GetProcessList の出力で使用される文字列と一致する必要があり、(パイプ) 記号で区切って複数のサービスを指定できます (このパラメーターの値は常に、監視するサービスの完全なリストである必要があります)。

パラメーターの完全なリストは、pcs resource describe SAPInstance を実行することで取得できます。

1.4.2. SAPDatabase リソースエージェント

SAPDatabase リソースエージェントを使用すると、SAP NetWeaver ベースの HA クラスターセットアップの一部として、単一の Oracle、IBM DB2、SAP ASE、または MaxDB のデータベースインスタンスを管理できます。詳細は、Support Policies for RHEL High Availability Clusters - Management of SAP NetWeaver in a Cluster を参照し、RHEL 9 でサポートされているデータベースバージョンのリストを確認してください。

SAPDatabase リソースエージェントは、データベースコマンドを直接実行しません。SAP Host Agent を使用してデータベースを制御します。したがって、SAP Host Agent を各クラスターノードにインストールする必要があります。

SAPDatabase リソースエージェントは、データベースインスタンスを管理するための基本機能のみを提供します。そのため、データベースインスタンスにさらに多くの HA 機能が必要な場合は、代わりにデータベースの HA 機能 (Oracle RAC や IBM DB2 HA/DR など) を使用することを推奨します。

S/4HANA HA セットアップの場合、HANA システムレプリケーションを使用して、HANA インスタンスの障害に対する堅牢性を高めることを推奨します。HANA システムレプリケーション HA セットアップは、別個のクラスターを使用して実行できます。あるいは、HANA システムレプリケーションセットアップの管理に使用するのと同じ HA クラスターが ASCS インスタンスと ERS インスタンスを管理する、“コスト最適化“ された S/4HANA HA セットアップを使用することもできます。

1.4.2.1. SAPDatabase リソースエージェントの重要なパラメーター

属性名必須Default value設定

SID

はい

null

一意のデータベースシステム識別子 (通常は SAP SID と同一)。

DBTYPE

はい

null

管理するデータベースのタイプ。有効な値は、ADA (SAP MaxDB)、DB6 (IBM DB2)、ORA (Oracle DB)、SYB (SAP ASE) です。

DBINSTANCE

いいえ

null

データベースインスタンス名が SID と等しくない、特殊なデータベース実装に使用する必要があります (Oracle DataGuard など)。

DBOSUSER

いいえ

ADA=/etc/opt/sdb から取得、DB6=db2SID、ORA=oraSID および oracle、SYB=sybSID、HDB=SIDadm

このパラメーターは、オペレーティングシステムレベルのデータベースプロセスが、使用しているデータベースタイプのデフォルトユーザーで実行されていない場合に設定できます。

STRICT_MONITORING

いいえ

false

これは、リソースエージェントがデータベースを監視する方法を制御します。true に設定すると、saphostctrl -function GetDatabaseStatus を使用してデータベースの状態をテストします。false に設定すると、オペレーティングシステムプロセスのみを監視します。

MONITOR_SERVICES

いいえ

Instance|Database|Listener

STRICT_MONITORINGtrue に設定されている場合に、SAPDatabase リソースエージェントが監視するサービスを定義します。サービス名は、saphostctrl -function GetDatabaseStatus コマンドの出力と一致する必要があります。

AUTOMATIC_RECOVER

いいえ

false

これを true に設定すると、saphostctrl -function StartDatabase が常に -force オプションを使用して呼び出されます。

パラメーターの完全なリストは、pcs resource describe SAPDatabase を実行することで取得できます。

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